秋が深くなると、水耕栽培の伸びが目に見えて遅くなります。同じ管理をしているのに、収穫までの日数が倍近く延びる。
調べると「冬は寒いから室内でライトを使いましょう」と出てきます。間違いではないのですが、屋外でやっている人には当てはまりません。
止まっている理由が、置き場所で違うからです。そこを分けるところから書きます。
- 冬でも育ちます。ただし速度は落ちます。止まるのではなく、遅くなります。
- 屋外で止まる理由は、水温と日の長さの両方です。どちらか片方を直しても、あまり変わりません。
- 室内で止まる理由は、ほぼ光だけです。温度は足りているので、保温してもうごきません。
- 冬に動くのは葉物とレタス類。ハーブと実ものは、ほぼ止まります。
- 冬は育てる季節というより、春の準備をする季節です。暖かくなってから播くのでは、いちばんいい時期を逃します。
水耕栽培は冬でも育つのか
答えを先に書きます。育ちます。ただし遅くなります。
植物が伸びる速さは、温度と光でほとんど決まります。冬はその両方が下がるので、同じ株でも1日に伸びる量が減ります。止まるのではなく、時間がかかるようになる、というほうが正確です。
だから、冬に収穫できないわけではありません。播く時期を早めて、収穫までの日数を長く見ておけば穫れます。
問題は、その「遅い」がどこから来ているかです。屋外と室内では、原因が違います。ここを取り違えると、効かない手を打つことになります。
屋外なのにライトを買っても、水温が低ければあまり変わりません。室内なのに保温しても、光が足りていなければ動きません。
だから最初に、自分がどちらなのかを決めてください。話はそこから分かれます。

屋外で止まるのは、水温と日の長さ
屋外では、下がるものが2つあります。両方です。
ひとつは水温です。根の周りが冷えると、水を吸う力も、養分を取り込む力も落ちます。夏は22℃で線を引いて下げる側の話をしましたが、冬は逆に、上がらないことが問題になります。
もうひとつが日の長さです。冬は日照時間そのものが短く、しかも太陽の高さが低いので、同じ場所でも当たる時間が減ります。夏に日が当たっていた場所が、冬は建物の影に入ることがあります。
この2つは、別々に効きます。だから片方だけ直しても、思ったほど変わりません。保温しても日が当たらなければ動かないし、日が当たっても水が冷たければ吸えません。
やることは、まず置き場所です。冬のあいだ、いちばん長く日が当たる場所へ動かします。夏に選んだ場所とは、たいてい違う場所になります。
そのうえで保温します。うちはハウスの中に入れているので、冬でも凍りません。かわりに、雨が一滴も入らないという別の性質が付いてきます。
室内で止まるのは、ほぼ光だけ
室内は、事情がまったく違います。
暖房の入る部屋なら、温度はもともと足りています。冬でも20℃前後あるので、植物にとっては春や秋と変わりません。
足りないのは光です。窓際でも、冬の室内に入る光は屋外よりずっと少なくなります。ガラス1枚で減り、日の高さが低いぶん、部屋の奥まで届く時間も短くなります。
うちは屋外はライト無しでやっていますが、室内はライトが要ります。これは冬に限った話ではなく、室内でやるなら通年で要ります。
だから室内で「冬になって伸びが落ちた」と感じたら、疑うのは光です。光が足りないと、伸びが落ちるのではなく、ひょろ長く伸びます。止まるのではなく、形が変わる。ここが屋外との違いです。
ライトを足すなら、明るさより、当てている時間と距離のほうを先に見てください。株から遠いと、届く光は急に減ります。近づけるだけで変わることがあります。
逆に言えば、室内で保温を足しても効果はほとんどありません。すでに足りているものを足しても、何も起きません。暖房を強めた部屋で、伸びだけが変わらないという状態になります。

冬に動く野菜、動かない野菜
品目で、はっきり分かれます。
動くのは葉物です。水菜、小松菜、ほうれん草。もともと涼しい時期に育つ野菜なので、冬の温度でも進みます。速度は落ちますが、止まりません。
レタス類も動きます。こちらも高温に弱い側の野菜なので、夏より冬のほうが素直に育ちます。外葉から穫れば、1株から何度でも穫れます。
止まるのがハーブです。バジルは寒さに弱く、気温が下がると葉が黒ずんで動かなくなります。青じそも同じで、季節が終われば終わりです。
実ものも止まります。トマトやきゅうりは、実を作るのに温度と光の両方を大きく使うので、冬の条件では実まで届きません。品目ごとの可否は、一覧のほうにまとめています。
いちごは少し特殊です。うちは夏から秋口に苗を入れて、冬はそのままにしておきました。冬に育てるというより、冬を越させる作物です。
だから、冬の献立は葉物とレタスで組みます。ハーブを冬も穫りたいなら、室内でライトを付けるしかありません。
水は、替える回数が減る
管理の中で、いちばん変わるのがここです。
寒くなると、株が吸う水の量が落ちます。減らないので、足し水の回数も減ります。夏と同じ感覚で足していると、濃さが合わなくなります。
水換えの頻度は日数ではなく、水量と根の量で決まります。冬は吸う量が落ちるぶん、同じ容器でも間隔が延びます。
替えるときの温度差には気をつけてください。冷たい水をそのまま入れると、そこで一度止まります。汲み置きして、いまの液に近づけてから入れます。
藻も減ります。光と温度が下がるので、増える速さが落ちるからです。夏に毎週こすっていた人は、冬は放っておける場所が増えます。
そのかわり、根の傷みは見てください。水温が低くても、循環が止まっていれば酸素は足りなくなります。冷たいから安全、ということはありません。
冬に入る前|秋のうちに決めておく2つ
冬の出来は、冬に入ってからでは、あまり動かせません。決まるのは秋です。
ひとつめは、播く時期です。冬に穫るつもりなら、秋のうちに播いて、寒くなる前にある程度の大きさまで育てておきます。小さいまま冬に入ると、そこからは伸びが遅いので、いつまでも収穫まで届きません。
逆に、大きくしすぎても困ります。外葉から穫れる状態にしておけば、冬のあいだ、少しずつ穫り続けられます。一度に穫りきる形にしないでください。
ふたつめは、株数です。冬は水の減りが遅くなるので、夏と同じ株数を入れておく必要がありません。むしろ減らしたほうが、1株あたりに回る光が増えます。
間引きは、抜かずに切ります。秋のうちに減らしておけば、冬に入ってから根が絡んだ状態で触らずに済みます。
そして、置き場所を決め直します。夏に日が当たっていた場所は、冬には影に入ります。動かすなら、株が小さい秋のうちです。

凍らせないために
屋外でいちばん怖いのは、遅くなることではなく、凍ることです。
水が凍ると、根の中の水も凍ります。凍って膨らめば、細胞は壊れます。ここまで来ると、暖かくなっても戻りません。
効くのは、まず水量です。水が多いほど、全部が凍るまでに時間がかかります。同じ株数なら、大きい容器のほうが安全です。
次に、覆うことです。水面から熱が逃げるので、不織布などをかけると、朝の冷え込みをやわらげられます。日中は光を通す必要があるので、通す素材を選びます。
そして場所です。地面に直置きするより、建物の壁際のほうが冷え込みません。北風の当たる場所は避けます。
ハウスがあるなら、その中は凍りません。ただし、そのために建てるのはコストが合わないので、まずは水量と覆いから試してください。
魚がいる場合|先に決めるのは餌
同じ水に魚がいるなら、冬にやることがひとつ増えます。
魚は水温が下がると食べなくなります。食べないのに与えれば、残った餌がそのまま水を汚します。うちは加温なしで越冬させていて、水温を見て餌を止めています。
ここで、植物のほうに影響が出ます。餌が入らなくなれば、入ってくる養分も減ります。魚の餌の量が野菜の育ちを決めているので、餌を止めれば、そのぶん野菜も進みません。
だから冬のアクアポニックスは、魚も植物も、そろって静かになります。これは失敗ではなく、そういう季節です。
やってはいけないのが、野菜を伸ばしたくて餌を増やすことです。食べない魚に与えれば、水が悪くなるだけです。メダカ側の冬の扱いは、別にまとめています。
循環は止めないでください。止めれば酸素も養分も動かなくなります。凍結が心配な配管があるなら、そこだけ保温します。
いまやっておくと、春が早い
冬を「穫れない季節」と思うと、何もしない時間になります。ここは準備の季節です。
春に穫りたいなら、暖かくなってから播くのでは遅れます。芽が出て、本葉が出て、移して、育つ。この時間を逆算すると、播くのは冬のうちです。
播く場所は室内で構いません。スポンジの底から白い根が出て、本葉が1〜2枚になったら移せます。移す先が暖かくなるころに、ちょうど揃います。
アクアポニックスを新しく始めるなら、逆算すると4〜5月になります。冬に立ち上げると、細菌が増えるのに時間がかかって、途中で止まります。
それから、設備を直すなら冬です。株が少ないので、槽を空にしても失うものが少なくて済みます。ポンプの分解掃除も、この時期に済ませておくと楽です。
月ごとに何をやるかは、1年カレンダーのほうに並べています。冬の欄が空いていないことが、見ると分かります。
どこで見切るか|終わりの判断
冬は「遅い」と「止まった」の区別がつきにくい季節です。線を決めておきます。
見るのは2週間です。2週間たって、新しい葉が1枚も増えていないなら、それは遅いのではなく止まっています。遅いだけなら、少しは増えます。
止まっていると決まったら、次は原因です。屋外なら日の当たる時間、室内なら光の量。どちらも足りているなら、根を見ます。茶色くなっていれば、温度ではなく酸素の話です。
ハーブや実ものが止まったなら、それは季節が終わったということです。引き上げて、空いた穴に葉物を入れてください。粘っても戻りません。
そして春先には、別のことが起きます。日が長くなると、葉物はとう立ちします。光を足しても止まりません。冬を越した株には、終わりの時期があります。
最後にひとつ。冬に伸びないのは、たいてい失敗ではありません。手を足すより、品目を入れ替えて、春の分を播いておくほうが、結果として穫れます。
まとめ
水耕栽培は冬でも育ちます。止まるのではなく、遅くなります。収穫までの日数を長く見ておけば、冬でも穫れます。
大事なのは、遅くなっている理由が置き場所で違うことです。屋外は水温と日の長さの両方、室内はほぼ光だけ。屋外でライトを買っても、室内で保温しても、外します。
冬に動くのは葉物とレタス類です。ハーブと実ものは止まるので、引き上げて入れ替えたほうが、槽が生きます。
そして冬は、春の準備をする季節です。暖かくなってから播くのでは、いちばんいい時期を逃します。設備を直すのも、株が少ないいまが楽です。
よくある質問(FAQ)
Q. 水耕栽培は冬でもできますか。
A. できます。ただし速度は落ちます。止まるのではなく、収穫までの日数が延びます。屋外で遅くなる理由は水温と日の長さ、室内で遅くなる理由はほぼ光だけです。どちらなのかで、打つ手が変わります。
Q. 冬に育つ野菜は何ですか。
A. 葉物とレタス類です。水菜、小松菜、ほうれん草、リーフレタス。もともと涼しい時期に育つ野菜なので、冬の温度でも進みます。バジルなどのハーブと、トマトやきゅうりの実ものは、ほぼ止まります。
Q. 室内なら冬でも普通に育ちますか。
A. 温度は足りていますが、光が足りません。窓際でも冬の室内に入る光は屋外よりずっと少なくなります。室内でやるなら、冬に限らずライトが要ります。光が足りないと、伸びが落ちるのではなく、ひょろ長く伸びます。
Q. 冬の水換えはどうすればいいですか。
A. 回数が減ります。寒くなると株が吸う量が落ちるので、水が減らず、足し水の間隔も延びます。替えるときは、冷たい水をそのまま入れないでください。汲み置きして、いまの液に温度を近づけてから入れます。
Q. 凍らせないためにどうすればいいですか。
A. 効く順に、水量を増やす、水面を覆う、置き場所を変える、です。水が多いほど全部が凍るまでに時間がかかります。覆いは光を通す素材にしてください。日中は光が要ります。
Q. 魚も一緒に飼っています。冬は何を変えますか。
A. まず餌です。水温が下がると魚は食べなくなるので、与え続けると残った餌が水を汚します。餌が減れば養分も減るので、野菜のほうも静かになります。循環だけは止めないでください。
Q. 水耕栽培で秋に植える野菜は何がいいですか。
A. 冬に穫るつもりなら葉物です。秋のうちに播いて、寒くなる前にある程度の大きさにしておくと、冬のあいだ穫り続けられます。春に穫るつもりなら、冬のうちに播いて、暖かくなるころに移します。
Q. 冬は何もしないほうがいいですか。
A. 準備の季節です。春に穫るための種を播くのは冬のうちですし、設備を直すのも株が少ないこの時期がいちばん楽です。槽を空にしても失うものが少なくて済みます。
次に見るのは、ここ
魚も一緒に飼っているならアクアポニックスの冬越し|加温なしの記録へ。光が足りているか知りたいならアクアポニックスの光はどれだけ要るのかへ。冬の水の扱いは水耕栽培の水換え|頻度は水量と根の量で決まるへ。春先に起きることは水耕栽培のとう立ち|光を足しても止まらないへ。月ごとにやることはアクアポニックスの1年カレンダーへ。
