水耕栽培を始めて何週間かすると、容器の内側が緑になってきます。養液がうっすら濁り、培地の表面にも色がつく。調べると「藻対策」という言葉が並んで、養液を全部作り直せと書いてあります。
その前に、切り分けてほしいことがあります。藻が出ること自体は、止められません。止められないものを止めようとすると、終わりのない掃除になります。
この記事では、どこを守れば装置が回り続けるのかを書きます。うちは魚と一緒に育てる方式なので打てる手に制限がありますが、その制限が無いぶん、水耕栽培のほうが藻には強く出られます。そこも含めて書きます。
- 藻が出るのは失敗ではありません。養液に栄養があるかぎり、光が当たれば必ず出ます。
- 全部取ろうとしないでください。容器の壁の緑は、それ自体で株を弱らせません。
- 守るのは3か所。ポンプの吸込口・水が落ちる穴・使っていない植え穴。
- いちばん効くのは光を切ることです。魚がいない水耕栽培なら、ここは徹底できます。
- 養液の作り直しは、最後の手。先に光を切ったほうが、費用も手間も小さく済みます。
水耕栽培で藻が発生する原因は、養液そのもの
まず原因から。藻が出るのは、水が汚れているからではありません。栄養があるからです。
水耕栽培の養液には、植物を育てるための養分が溶けています。窒素もリンも入っている。その水に光が当たれば、藻にとってはこれ以上ない環境です。藻も植物なので、必要なものは同じなのです。
つまり、藻が出るのは装置が正しく動いている証拠でもあります。栄養が効いていて、光も届いている。困るのは、その栄養と光を野菜と取り合われることです。
逆から見ると、対策の道筋も見えてきます。栄養は減らせません。減らせば野菜が育たなくなる。だから触れるのは光のほうだけです。
ひとつ、分かりやすい例を書いておきます。種をまく段階では、うちは水道水しか使いません。栄養が入っていないので、藻の餌がそもそも無い。同じ場所に同じ光が当たっていても、養液を入れたとたんに緑が出はじめます。違いは栄養だけです。
藻が出て、実際に困ること
では、藻が出ると何が困るのか。ここを整理しておかないと、困らないことにまで手をかけることになります。
本当に困るのは、水の通り道がふさがることです。ポンプの吸込口に生えると流量が落ちます。水が落ちる穴に糸状の藻が絡むと、そこであふれます。装置そのものが止まる。
うちでも、吸込口に藻が生えて流れが落ちたことがあります。厄介なのは、落ち方がゆっくりで気づきにくいことです。止まってから気づくのではなく、流れが細くなっている段階で見つけたい。
次に困るのが、養分の取り合いです。藻も窒素やリンを使うので、大量に増えれば野菜に回る分が減ります。ただしこれは「大量に増えれば」の話で、うっすら緑になった程度では効いてきません。
そしてほとんど困らないのが、見た目です。容器の壁が緑になっても、それ自体で株が弱ることはまずありません。培地の表面がうっすら色づくのも同じです。
うちは壁の藻を掃除していません。こすれば濁りが出ますし、水の中をかき回すほうが負担になると考えたからです。

守るのは3か所だけ
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。藻を全部取ろうとせず、3か所だけ通しておいてください。
1つめ、ポンプの吸込口。ここが最優先です。ふさがると水量が落ち、ろ過も酸素の取り込みも同時に落ちます。目の粗いスポンジをかぶせておくと、掃除の回数が目に見えて減ります。
2つめ、水が落ちる穴と戻り口。糸状の藻が絡むと、そこで流れが止まります。水位が浅い方式ほど危ない。少しふさがるだけで水路が変わり、あふれた水が外へこぼれます。
3つめ、使っていない植え穴です。これは見落とされがちですが、効きます。株が入っていない穴からは、光が養液に直に届く。そこが発生源になります。使わない穴は、ふたをしておいてください。
ふさぐものは、何でもかまいません。スポンジの余りを詰めるのがいちばん手軽で、抜き差しもできます。アルミ箔を丸めて載せる、黒いテープを貼る、といった方法でも足ります。要は光が入らなければいいので、見た目にこだわる必要はありません。
穴が多いパネルほど、この差が出ます。48穴あって12株しか植えていないなら、36か所から光が入っていることになる。植える数より穴が多いなら、そこは最初に手を打つ場所です。
この3か所さえ通っていれば、あとは緑のままでも装置は回ります。掃除の目標を「きれいにする」から「通しておく」に変えると、作業量がまるで変わります。
うっすらした緑と、糸状のアオミドロは別もの
ひとくちに藻と言っても、危なさが違います。見分けは「糸を引いているかどうか」です。
容器の壁や培地の表面につく、うっすらした緑。これは膜のように張りつくだけで、流れをふさぎません。放っておいて困らないのは、こちらです。
問題なのは、水の中に漂う糸状のものです。緑の糸がもつれて綿のような塊になる。アオミドロと呼ばれるもので、うちでも出たことがあります。これが厄介なのは、絡まって移動することです。
壁に生えた膜は、その場から動きません。ところが糸状のものは水と一緒に流れ、狭いところで引っかかって溜まります。つまり、前の章で書いた3か所に集まってくる。
だから見つけたら、糸状のものだけは取ってください。指や割り箸で巻き取れば、まとまって抜けます。壁の緑をこするより、こちらのほうがずっと効果があります。
取ったあとに気をつけることがひとつ。巻き取った塊を、その場で水の中に落とさないでください。ちぎれた断片から、また増えます。バケツか新聞紙の上に出して、水から完全に取り除いてから捨てるほうが確実です。
藻が出やすいのは、株が小さいうち
いつ出やすいかにも、はっきりした傾向があります。植えたばかりの時期です。
理由は単純で、株が小さいと養液に光が届くからです。育って葉が広がると、その下は自然に暗くなる。野菜そのものが、いちばん良い日よけになります。
逆に言えば、苗が小さいうちだけ手をかければ足ります。植え付けから数週間、養液に光が入らないよう気をつける。そこを越えれば、勝手に収まっていきます。
季節では、光と水温が上がる時期に増えます。春から夏にかけてが本番で、冬はほとんど気になりません。夏に始めると、立ち上がる前の弱い時期といちばん出やすい時期が重なります。
収穫のあとも要注意です。株を抜いた穴から、また光が入ります。次を植えるまでのあいだ、穴はふさいでおいてください。

いちばん効くのは、光を切ること
減らしたいなら、手はひとつしかありません。光を切ることです。
栄養は減らせません。減らせば野菜が育たない。だから触れるのは光だけ——これは前の章で書いたとおりです。
具体的には、養液に光が当たらないようにします。透明な容器を使わない。使うなら外側を覆う。配管も同じで、透明なホースは中で藻が育ちます。
覆うものは、光を通さなければ何でもかまいません。黒いポリ袋でも、園芸用の遮光シートでも、板を立てかけるだけでも効きます。ただし密閉はしないでください。養液も空気に触れている必要があるので、上からかぶせて閉じきってしまうと別の問題が出ます。
そして、ここが水耕栽培の強みです。養液を溜めている部分は、完全に暗くしてかまいません。植物が光を受けるのは葉であって、根ではないからです。根まわりを真っ暗にしても、株は困りません。
うちのように魚が入っていると、そこまで徹底できません。覆う場所を選ぶ必要があるからです。魚がいない水耕栽培には、その制限がない。ここが、藻の対策では一番大きな差になります。

養液を作り直すべきか
「養液をこまめに更新する」という対策をよく見かけます。施設の栽培では、これは正しい手です。ただし家庭では、順番が違うと思っています。
作り直しは、いちばん最後でかまいません。理由は3つあります。
ひとつめ、費用がかかります。肥料を捨てて買い直すことになる。しかも藻が出るたびに繰り返すことになります。
ふたつめ、原因が残ります。光が当たる状態のままなら、新しい養液にもまた藻が出ます。数週間後に同じことが起きるだけです。
みっつめ、株に負担がかかります。養液の濃さや温度が急に変わると、根が対応に追われます。根が傷む原因にもなり得ます。
だから順番はこうです。まず光を切る。次に3か所を通す。それでも増え続けるなら、作り直す。先に光を切っておけば、作り直したあとも長持ちします。
容器を洗うのは、いつか
洗うタイミングにも目安があります。株を入れ替えるときです。
収穫して次を植えるまでのあいだは、容器が空きます。そこでまとめて洗ってしまう。育てている最中に無理に洗うより、はるかに楽で、株にも触りません。
逆に、育てている最中に洗いたくなるのは見た目が気になるときです。そこを我慢できるかどうかで、この趣味の続けやすさが変わります。緑は、装置が動いている色だと考えてください。
洗うときは、こすり落とせば足ります。薬剤に頼る必要はありません。次に植える株の根が触れる場所なので、余計なものを残さないほうが安全です。

魚がいると、打てる手が変わる
最後に、比較を書いておきます。同じ「水で育てる」でも、魚がいるかどうかで藻への打ち手が変わります。
水耕栽培にできて、アクアポニックスにできないこと。光を完全に切ること。養液を捨てて作り直すこと。この2つは大きい。魚がいると、水を捨てられませんし、覆う場所も選ぶ必要があります。
アクアポニックスにできて、水耕栽培にできないこと。生き物に食べさせることです。エビや貝は藻を食べます。ただし期待しすぎないでください。増えた藻を追いつくほどには食べません。
薬剤については、アクアポニックスでは使えません。魚に効くだけでなく、水の中で働いている細菌まで巻き添えにします。水耕栽培なら製品によっては選択肢に入りますが、口に入れる野菜であることは変わりません。
どちらにしても、結論は同じところに着きます。全部取ろうとせず、光を切って、水の通り道だけ通しておく。方式が違っても、藻との付き合い方は変わりません。
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まとめ
藻が出るのは、養液に栄養があって、そこに光が当たっているからです。栄養は減らせないので、触れるのは光のほうだけになります。
全部取ろうとしないでください。守るのは3か所——ポンプの吸込口、水が落ちる穴、使っていない植え穴。ここさえ通っていれば、壁が緑でも装置は回ります。
減らしたいなら光を切る。養液の作り直しは、そのあとで判断すれば足ります。容器を洗うのは、株を入れ替えるときで十分です。
掃除の目標を「きれいにする」から「通しておく」に変える。それだけで、続けやすさが変わります。
よくある質問(FAQ)
Q. 水耕栽培で藻が発生したらどうすればいいですか。
A. 全部取ろうとしないでください。守るのはポンプの吸込口、水が落ちる穴、使っていない植え穴の3か所だけです。ここが通っていれば、容器の壁が緑でも装置は回ります。
Q. 水耕栽培で藻の発生を防ぐには。
A. 光を切ることです。養液に光が当たらないようにします。透明な容器やホースは避けるか、外側を覆ってください。根は光を必要としないので、養液の部分は真っ暗にしてかまいません。
Q. 藻を完全に発生させない方法はありますか。
A. ありません。養液には植物を育てる栄養が溶けているので、光が当たれば藻も育ちます。栄養を減らせば野菜も育たなくなるため、触れるのは光のほうだけです。
Q. 藻が出るのは、水が汚れているからですか。
A. 汚れているのではなく、栄養があるからです。藻も植物なので、野菜と同じものを必要とします。種まきのときに水道水を使うと藻が出にくいのは、栄養が入っていないからです。
Q. 養液は作り直したほうがいいですか。
A. 最後の手でかまいません。費用がかかるうえ、光が当たる状態のままなら新しい養液にもまた藻が出ます。先に光を切ってから判断してください。
Q. 容器はいつ洗えばいいですか。
A. 株を入れ替えるときです。収穫して次を植えるまでのあいだにまとめて洗うと、育てている最中に触るより楽で、株にも負担がかかりません。
Q. 藻が出ると野菜は育たなくなりますか。
A. 大量に増えれば養分を取り合いますが、うっすら緑になった程度では効いてきません。本当に困るのは水の通り道がふさがることのほうです。

