私のところで冬にやっていることは、2つだけです。餌を止めることと、野菜に寒冷紗をかけること。
加温はしていません。照明も使っていません。冬に壊れたものも、失敗したことも、いまのところありません。
「冬は大変そう」と思われがちですが、条件がそろえば、むしろ手が空く季節です。ただしその条件が3つあります。魚が錦鯉であること、ハウスがあること、そして餌を止めていること。順に書きます。

- 私のところでは加温していません。ハウスの中が氷点下2℃まで下がった朝も、水は凍りませんでした。
- 冬にやることは2つだけ。餌を止めることと、野菜に寒冷紗をかけること。
- 餌を止めるのは水温が安定して15℃を切ったら。再開は10℃を超えてからです。
- 止める温度と再開する温度は、同じでなくていい。同じ12℃でも、秋と春では明日の向きが逆だからです。
- 加温なしで越せるのは魚が錦鯉だから。ティラピアは越冬できません。
アクアポニックスの冬越しに加温はしていません|ハウスの中は氷が張らなかった
水温がそのまま魚とバクテリアと野菜の働きを決めることは、国連食糧農業機関の技術報告(2014年)でも扱われています。


いちばん冷えた朝で、ハウスの中の気温は氷点下2℃くらいまで下がりました。外に置いた水には薄い氷が張っていましたが、ハウスの中のシステムには氷が張りませんでした。
加温設備は入れていません。成り立っているのは、魚が錦鯉だからです。錦鯉は日本の冬をそのまま越せる魚で、水温が下がれば動きを落として春を待ちます。
ここが分かれ目です。ティラピアを飼っているなら、同じ話は通りません。加温なしでは越冬できないので、冬は電気代がそのまま乗ります。冬の運営は、魚を選んだ時点で半分決まっています(アクアポニックスの魚の選び方)。
保温は、3枚重ねになっている

加温していないのに凍らないのは、寒さを3回そいでいるからです。
1枚目がハウスです。ビニール1枚でも、外と中では朝の冷え方がまるで違います。気温が氷点下2℃まで下がった日に、外は薄氷、中は氷なし。この差がそのままハウスの効きです。
2枚目が寒冷紗です。野菜に直接かけて、夜のあいだに熱が逃げるのを抑えます。夏に日ざしを弱めるために使う布ですが、冬は逆に、ふとんのような使い方になります。
冬に使うなら白を選んでください。黒や銀は日ざしを遮るために作られているので、冬にかけると、昼のあいだ野菜に届く光まで減らしてしまいます。白は光を通しながら、夜に熱が逃げるのを抑えてくれます。野菜の種類にもよりますが、私は、気温が4〜5℃まで下がる日や、最低気温が氷点下になる日が出てきたころにかけはじめています。外すのは、春に暖かくなりはじめてから。寒冷紗は野菜の上に直接かけています。
3枚目が水そのものです。水は空気よりずっとゆっくりしか冷えません。同じ場所に置いても、水の多い槽ほど朝の水温が高く残ります。方式によって総水量が違うので、3方式の選び方はそのまま冬の強さの差にもなります。
ベランダなどで小さく作っているなら、背の低い温室をかぶせるだけでも1枚目の代わりになります。ただし水量が少ないぶん、3枚目が効きません。小さい設備ほど、朝の冷え込みが直に届きます。
餌を止める温度と、再開する温度は違う


餌を止めたのは、水温が安定して15℃を切ってからです。一度下がっただけでは止めません。その水温が続くようになってから止めます。
再開したのは、春に水温が安定して10℃を超えたころでした。止めた温度より、低い温度で再開しています。
矛盾しているようですが、理由があります。秋の12℃は、明日もっと冷えます。春の12℃は、明日もっとぬるみます。同じ数字でも、向きが逆なのです。
だから秋は、消化が追いつかなくなる前に早めに止める。春は、これから上がっていくと分かっているので、少し低いところから再開できる。止める温度と再開する温度を同じにしないこと。これが冬をまたぐときのこつです。
冬から春にかけては、低水温用の餌を使いました。水温が低いときは魚の消化そのものが落ちるので、通常の餌だと消化しきれずに腸に残ります。低水温用は、そこを軽くしてある餌です。
そして、この判断はすべて水温の数字でしています。外気温でも、日付でもありません。水温計が1本無いと、止めどきも再開どきも決められません。
水が壊れないのは、餌を止めているから

冬に水質が崩れなかったのは、加温したからではありません。餌を止めたからです。
水温が下がると、汚れを分解しているバクテリアのはたらきが落ちます。17℃あたりから鈍りはじめ、水温が下がるほど働きは落ちていきます(硝化サイクルの仕組みに出典つきでまとめました)。
分解が落ちるなら水は汚れるはずですが、同時に汚れの出どころである餌も止まっています。だから釣り合うのです。冬の水槽で数値が動かないのは、失敗ではなく、両側とも遅くなっている状態です。
逆に言えば、水温が下がったのに餌の量を変えないのが、いちばん危ない。分解する側だけが遅くなって、汚れる側は動き続けます。冬に魚を落とすときは、寒さより先にこれを疑います(水質管理)。
冬の晴れた昼に、何週間も餌を止めている魚が水面へ寄ってきて、口をぱくぱくさせることがあります。お腹を空かせているように見えて、少しだけならあげてもいいのでは、と迷う場面です。昼の日差しで水面が少し温まっても、夜には下がります。魚の消化も、汚れを分解するバクテリアも、まだ冬の速さのままです。少しだけ、が冬にはいちばん残ります。再開は、春に水温が安定して10℃を超えてからです。
餌を止めているあいだ、野菜は止まりはしませんが、遅くなります。水に出てくる養分が減り、日も短くなるからです。冬に葉の色が薄くなったら、古い葉から黄色いのか、新しい葉だけ色が抜けるのかを見ます。見分け方と、それぞれの手当てを先に確かめてから、足すかどうかを決めます。冬の葉物は、外葉から少しずつ穫ってつなぐのが向いています。
冬に作っていた野菜|リーフレタスとスイスチャード

冬に作っていたのはリーフレタスとスイスチャードです。どちらも寒さに強く、低い水温でも育ちます。上から寒冷紗をかけて、夜の冷え込みをやわらげていました。
ただし、夏と同じようには育ちません。冬は魚が餌を食べないので、水に出てくる栄養そのものが減ります。魚が食べていない季節は、野菜も痩せます。足りない症状の見分け方は野菜が育たないへ。
だから冬は、株数を増やそうとしないほうがいいです。同じ量の栄養を多くの株で分け合うことになって、全部が細くなります。何を植えるかはおすすめの野菜にまとめました。
照明は使っていません

冬は日が短くなるので、照明を足したくなります。ただ、ここでは使っていません。
水温が低い時期は、光を足しても成長そのものがゆっくりだからです。光が足りていないのか、温度が足りていないのか。先に見るのは温度のほうです。
屋内で作っていて、そもそも日が入らないなら話は別です。その場合は光が本当に足りていません。ハウスや屋外なら、まず水温を測ってからでいいと思います。
よくある質問
Q. 冬にヒーターは必要ですか。
魚によります。錦鯉なら、屋外でも加温なしで越せます。私のところでは加温していません。ハウスの中の気温が氷点下2℃まで下がった朝も、水は凍りませんでした。ただしティラピアは別で、加温しないと越冬できません。
Q. 餌はいつ止めればいいですか。
私は、水温が安定して15℃を切ったら止めています。一度下がっただけで判断せず、その水温が続くようになってからです。止めどきを間違えると、消化しきれない餌がそのまま水を汚します。
Q. 春はいつ餌を再開しますか。
私は、水温が安定して10℃を超えたころに再開しています。止めた15℃より低いのは、春が上がっていく途中だからです。同じ12℃でも、秋は明日もっと冷え、春は明日もっとぬるみます。止める温度と再開する温度は、同じにしなくていいのです。
Q. 冬でも餌をやらないと、魚は痩せませんか。
冬の魚は代謝が落ちていて、ほとんど食べません。食べきれないものを入れれば、そのまま水の汚れになります。秋のうちにしっかり食べさせておくのが本当の対策です。
Q. 冬に水質が悪くなりませんか。
餌を止めていれば、大きくは悪くなりません。水温が下がると硝化のはたらきも落ちますが、同時にアンモニアの出どころである餌も止まっているので、釣り合います。危ないのは、水温が下がったのに餌の量を変えないときです。
Q. 冬に野菜は作れますか。
作れます。私のところではリーフレタスを育てていました。寒冷紗をかけて保温しています。ただし冬は魚が餌を食べないぶん、水に出てくる栄養も減ります。夏と同じようには育ちません。
Q. 照明は必要ですか。
ここでは使っていません。冬は日が短くなりますが、そもそも水温が低くて成長そのものがゆっくりです。光を足す前に、まず温度を見てください。
まとめ
冬にやったことは、餌を止めることと、寒冷紗をかけることだけでした。加温も照明もしていません。
止めるのは水温が安定して15℃を切ってから。再開は春に安定して10℃を超えてから。止める温度より再開する温度が低いのは、秋と春で水温の向きが逆だからです。
そして、これが成り立つのは魚が錦鯉だからです。冬の運営は、魚を選んだ時点で半分決まっています。加温設備を買い足す前に、ハウス・寒冷紗・水量の3枚が効いているかを見てください。
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