梅雨のアクアポニックスの記事を読むと、たいてい水温と酸素の話が出てきます。ただ、うちで実際に困ったのはそこではありませんでした。
困ったのは、湿気で蒸れることと、病害虫です。魚のほうは、特に変わりませんでした。つまり梅雨に出るのは空気の側です。見るのは水槽ではなく、葉と葉のあいだ。そう決めてしまうと、やることがはっきりします。
梅雨に出るのは、水ではなく空気の側

梅雨に水温が上がりきらないのは、日が差さないからです。気温は上がっていても、水は追いついてきません。だから魚にとっての本番は、梅雨明けからです(夏の酸欠対策)。
一方で、空気のほうは梅雨のあいだずっと湿っています。湿った空気が動かないまま溜まると、そこからカビっぽいものが出て、虫も増える。うちで起きたのはこれでした。
ちなみに、雨そのものは入ってきません。ビニールハウスの中だからです。梅雨の厄介さは、降ることではなく、風が止まって湿気がこもることのほうにあります。
やることは、湿度を下げることではない

よくある記事には「湿度を70%以下に保つ」「除湿機を使う」と書いてあります。ただ、ハウスでも屋外でも、湿度そのものを下げるのは無理です。梅雨に外の空気が湿っているのを、こちらで変えられません。
できるのは、動かない空気を無くすことです。同じ湿度でも、空気が流れていれば葉の表面は乾きます。止まっていると、そこだけがいつまでも濡れたままになる。カビが出るのは、たいてい後者の場所です。

扇風機は、2方向を意識する

うちで使っているのは、業務用の扇風機です。家庭用でも風は出ますが、ハウスの端まで届かせるとなると力が足りません。そして大事なのは大きさより、空気の流れを2つに分けることでした。
ひとつは天井へ。上に溜まるのは、正確には湿気ではなく暖まった空気です。水分はそれに乗って一緒に上がります。そこを動かさないと上と下で温度の差ができ、冷えたところで結露します。ハウス全体をゆっくり回すのが、天井へ向ける理由です。
もうひとつは、野菜のほうへ流れが行くように。正面から当てるのではなく、株のあいだを空気が通っていく形にします。
葉の表面には、ほとんど動かない空気の膜ができていて、これが厚いと蒸散が進まず、葉が濡れたままになる。濡れている時間が長いほど、カビが出ます。流れは、その膜を薄くするためのものです。
ハウス用の循環扇の作法では、作物の生長点と天井のあいだに置き、正面には当てないとされています。葉のまわりに要る風は0.3〜0.5メートル毎秒という数字もあります(農研機構の資料より)。そよ風くらい、と思ってください。
つけているのは真冬以外です。梅雨だけでなく夏もそのまま回していました。ただし風量は加減します。強すぎると葉が傷みますし、水面が波立つと蒸発も増えます。止めるのは、寒くなって蒸れる心配が消えてからで足ります。
据え置きでも壁掛けでも、首を振って上下に向けられるものなら何でも構いません。天井へ流す1台と、野菜のほうへ流れが行くようにする1台。2台置けないなら、首を振らせておくだけでも構いません。一点に当て続けるより、そのほうが理にかなっています。
株の間は、梅雨の前に空けておく

詰めて植えると、葉と葉が重なった内側だけが乾きません。風を送っても、そこには届かない。間隔は、梅雨が来る前に決まっています。うちはもともと広めに取っていました。たくさん植えたい気持ちはありますが、詰めたぶんだけ梅雨に返ってきます。
もう植わっているなら、下のほうの葉を何枚か取るだけでも変わります。地際に近い葉ほど乾きにくいからです。取った葉は、その場に落とさずに持ち出してください。
カビっぽいものが出たら

うちでも出ました。手当ては単純で、付いた葉を切って、持ち出すことです。その場に落とすと、そこからまた広がります。ためらって残すより、疑わしい葉ごと落としたほうが、結果として収穫は減りません。
あわせて木酢液を使いました。木を焼いたときに出る液で、農薬ではありません。効いたかどうかを数字で示せるものではありませんが、使える手が限られているなかでは、選べるほうの1つです。
選ぶなら、原液のものにしてください。薄めて使うので、何が入っているか分からないものは避けたいからです。かける先は葉で、水槽には落とさないようにします。薄め方は品物によって違うので、書いてある倍率のいちばん薄いところから試すのが安全です。
化学の薬は使えません。葉にかけたものが水に落ちれば、魚にも、ろ材に住んでいる細菌にも効いてしまうからです(アクアポニックスの害虫対策)。ここがふつうの家庭菜園と決定的に違うところです。
なお、培地の表面や水面に出る白いもの、緑のぬめりは、カビとは別です。あれは藻や細菌の膜なので、藻・コケの記事を見てください。ほとんどは放っておいて大丈夫なものです。
梅雨は、二つの手がぶつかる

虫を止めたいなら、ハウスの側面に防虫ネットを張るのがいちばん確実です。ところが張ると風が止まり、光も減ります。蒸れを抜きたい手と、正面からぶつかるのです。
うちは側面を開けるほうを選びました。夏に熱がこもるほうが怖いと考えたからです。そのぶん虫は入ってきます(害虫対策にどう手当てしたかを書きました)。
どちらが正しいという話ではありません。ただ両方は立たないので、梅雨が来る前にどちらを取るか決めておくと、慌てずに済みます。梅雨に入ってから迷うと、たいてい何もしないまま過ぎます。
日が差さないぶん、野菜はどうなるか
梅雨は日照が減るので、野菜がひょろ長くなる(徒長する)と一般には言われます。ただ、うちでははっきりした違いを感じませんでした。
もともと株の間を広く取っていたので、光の取り合いが起きにくかったのかもしれません。数字で測ったわけではないので、断定はしません。
気になるなら、梅雨のあいだだけ収穫を早めるという手はあります。大きくしようと粘るより、若いうちに採って次を植えたほうが結果が良いことがあります。育ちが落ちる原因は野菜が育たないにまとめました。
梅雨に、水のほうで見ておくこと

魚は関係ないと書きましたが、何も見なくていいという意味ではありません。見るなら2つ、根と餌の残りです。
ひとつは根です。水温が中途半端に上がる時期なので、根が傷んでいないかだけ確かめておきます。白い根がにごって茶色くなっていたら、そこから崩れます(根腐れ)。
もうひとつは餌の残りです。曇りが続くと野菜の吸う量が落ちるので、同じだけ餌をやっていると硝酸塩が上がります。数値の見方は水質管理へ。
よくある質問
梅雨に、魚は弱りませんか。
うちでは、梅雨に魚の調子が変わったことはありませんでした。水温が本当に効いてくるのは梅雨明けからです。梅雨のうちに見るのは、水槽ではなく葉と葉のあいだだと思ってください。
いちばん困るのは何ですか。
蒸れです。湿った空気が動かないまま溜まると、そこからカビっぽいものが出て、虫も増えます。雨そのものより、風が止まることのほうが厄介です。
除湿機は要りますか。
要りません。ハウスや屋外で湿度そのものを下げるのは、そもそも無理です。やることは湿度を下げることではなく、動かない空気を無くすことです。扇風機で足ります。
扇風機はどこに向ければいいですか。
2方向です。ひとつは天井へ。上に溜まるのは湿気ではなく暖まった空気で、そこを動かさないと上下で温度の差ができ、冷えたところで結露します。
もうひとつは、野菜のほうへ流れが行くように。正面から当てるのではなく、株のあいだを空気が通っていく形にします。目安は0.3〜0.5メートル毎秒、そよ風くらいとされています。
いつからいつまで回すのですか。
うちでは真冬以外はつけたままにしていました。梅雨だけでなく夏もです。ただし風量は加減します。強すぎると葉が傷みます。
カビっぽいものが出たら、どうしますか。
付いた葉を切って、持ち出してください。その場に落とすと、そこからまた広がります。うちでは木酢液も使いました。化学の薬は、魚とろ材の細菌にも効いてしまうので使えません。
梅雨は日が差さないぶん、野菜がひょろ長くなりますか。
一般にはそう言われます。ただ、うちでははっきりした違いを感じませんでした。もともと株の間を広く取っていたので、光の取り合いが起きにくかったのかもしれません。
まとめ
梅雨に出るのは水の側ではなく、空気の側です。うちで困ったのは蒸れと病害虫で、魚は変わりませんでした。水温が効いてくるのは梅雨が明けてからです。
やることは、湿度を下げることではありません。動かない空気を無くすことです。扇風機は天井へ1つ、野菜のほうへ流れが行くように1つ。株の間を空け、出たものは切って持ち出す。
そして梅雨は、虫を止める手と蒸れを抜く手がぶつかります。両方は立たないので、どちらを取るかは季節が来る前に決めておいてください。うちは風を通すほうを選びました。

