オニテナガエビの飼育方法|適水温・共食い対策とアクアポニックスでの育て方
アクアポニックス
2024.06.02
アクアポニックスで育てる生き物として、オニテナガエビは少し変わった選択肢です。最大30cmにもなる大型の淡水エビで、青く長いハサミが目を引きます。そして何より食用として美味しい。
その代わり、壁が2つあります。ひとつは水温——熱帯性なので日本では通年の加温が必要。もうひとつは共食いで、隠れ家が足りないと脱皮直後の個体から順に減っていきます。この2つを押さえられれば、半年ほどで収穫できるサイズまで育ちます。
- オニテナガエビは最大30cm・約6か月で成熟する大型の淡水エビ。
- 熱帯性で適水温25〜30℃。日本の屋外では越冬できず、通年の加温が必要。
- 最大の損失要因は共食い。隠れ家を個体数より多く用意し、サイズをそろえる。
オニテナガエビは最大30cm前後まで育つ大型の淡水エビ。青く長いハサミが特徴です。
オニテナガエビとはどんなエビか
オニテナガエビは東南アジアを原産とする大型の淡水エビです。学名はマクロブラキウム・ロゼンベルギー。名前のとおり長いハサミ脚を持ち、オスの成体では体長とほぼ同じ長さのハサミになります。
オニテナガエビは成長が速く、半年ほどで食べられるサイズになります。そのぶん寿命は短く、飼うより「育てて収穫する」対象です。
注目すべきは成長の速さです。おおよそ6か月で成熟サイズに達します。魚を育てるより回転が速く、「飼う」というより「育てて収穫する」感覚に近い生き物です。寿命が1〜2年と短いのも、その裏返しといえます。
体色は透明感のあるグレーがかった色で、ハサミは鮮やかな青。観賞価値も十分にあります。ただし後述するとおり、複数飼育では共食いという難題が待っています。
飼育に必要な水温と設備
最大の制約が水温です。オニテナガエビは熱帯性で、25〜30℃を保たないと成長が止まります。
熱帯性のエビなので、日本の屋外では冬を越せません。ヒーターかビニール温室での加温が前提になります。
18℃を下回ると活動が鈍り、さらに下がれば死に至ります。日本の屋外では冬を越せません。これは避けようのない事実で、通年で加温するか、加温できる期間だけ育てるかの二択になります。
屋内であればヒーターで対応できますが、大きな水量を年間通して加温する電気代は現実的な負担になります。屋外でまとまった量を育てるなら、ビニール温室で全体を保温するほうが効率的です。太陽熱を利用できるぶん、ヒーターだけに頼るより維持費を抑えられます。
水槽そのものは底面積が広いものを選びます。オニテナガエビは底を歩いて生活するため、水深より底の広さが重要です。加えて強めのろ過とエアレーションが必要になります。よく食べてよく汚す生き物なので、ろ過が追いつかないと水質が一気に悪化します。
共食い対策がすべてを決める
オニテナガエビ飼育で最大の損失要因が共食いです。ここを甘く見ると、順調に育っているつもりが気づけば数が半分になっています。
オニテナガエビ飼育で最大の損失要因が共食いです。とくに脱皮直後の個体は殻が柔らかく、隠れ家がないと確実に狙われます。
なぜ起きるかというと、脱皮の直後は殻が柔らかく、無防備になるからです。エビは成長のたびに脱皮を繰り返すので、この無防備な瞬間が何度も訪れます。そこに隠れ家がなければ、他の個体に食べられます。
対策の中心は隠れ家を個体数より多く用意することです。塩ビ管を切ったもの、植木鉢、ネットを丸めたもの——形は何でも構いません。数が足りていることが重要です。脱皮しそうな個体が確実に身を隠せる場所があるかどうか、それだけが問われます。
あわせてサイズをそろえること。成長差が開くと、大きい個体が小さい個体を襲います。同時期に導入しても成長速度には個体差が出るので、明らかに差がついたら容器を分けるのが確実です。
そして餌を切らさない。空腹は共食いの直接的な引き金になります。オニテナガエビは雑食性で、沈下性の配合飼料をよく食べます。底で生活するエビなので、必ず沈むタイプを選んでください。
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届いた稚エビの水合わせ
オニテナガエビは稚エビの状態で購入することが多く、導入時の水合わせが初期生存率を大きく左右します。
エビは魚以上に水質の急変に弱い生き物です。届いた日の水合わせを丁寧にやるかどうかで、初期の生存率が大きく変わります。
エビは魚以上に水質の急変に弱い生き物です。とくにpHと水温の差には敏感で、袋の水と飼育水をいきなり混ぜると、それだけで落ちます。30分〜1時間かけて少しずつ飼育水を足していってください。
移すときはエビだけをすくい、袋の水は入れないのが原則です。輸送中の袋の水は排泄物で汚れており、そのまま入れると水質を悪化させます。
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脱皮のたびに殻が柔らかくなり無防備になります。共食い対策が飼育の要です。
アクアポニックスとの相性
オニテナガエビはよく食べてよくフンを出すため、植物にとっては優秀な養分源になります。魚と同じように、排泄物が硝化バクテリアを経て野菜の栄養に変わる仕組みは問題なく働きます。
ただし正直に言えば、アクアポニックスの生体として最適とは言い切れません。理由は次の3つです。
ひとつは加温コスト。25〜30℃を通年維持する電気代は、野菜の収穫で得られる価値を上回ることがあります。ふたつめは共食いによる歩留まりの悪さ。育てた数がそのまま収穫数にならないため、計画が立てにくい。3つめは底面積を必要とすること。同じ設備規模なら、魚のほうが多くの個体を養えます。
とはいえ、他では味わえない面白さがあるのも確かです。自宅で大型の淡水エビを育てて食べるという体験は、ティラピアやメダカでは得られません。コスト効率より面白さを取るなら、挑戦する価値は十分にあります。まずは温室環境が確保できるかを確認したうえで、少数から始めるのが現実的でしょう。
なお、アクアポニックス自体の立ち上げや水質管理に不安があるなら、先に丈夫な魚で仕組みを回せるようになってからのほうが安全です。オニテナガエビは水質にも水温にも要求が高く、初挑戦の相手としては難易度が高めです。
よくあるトラブル
水質の悪化がもっとも多い問題です。よく食べる生き物なので、餌の食べ残しとフンで一気に汚れます。週1回の部分換水を基本にしつつ、アンモニアと亜硝酸を測って確認するのが確実です。
脱皮不全も起こります。脱皮の途中で力尽きる状態で、原因はミネラル不足や水質悪化です。カルシウムが不足すると殻がうまく作れないため、牡蠣殻などでカルシウムを補うと改善することがあります。
そして脱皮直後の個体を死骸と間違えないでください。脱皮殻はエビの形をそのまま残すため、死んだように見えます。取り除く前に、本体が別の場所にいないか確認してください。なお脱皮殻はそのまま食べさせて構いません。カルシウム源になります。
アクアポニックスは資本がある人のものだと思われがちですが、個人でも始められます。設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。鷲林寺アクアファームの実践の記録を
noteに書いています。見学に来られた方はのべ100人を超えました。
→ 個人で始めたアクアポニックスの費用と失敗をnoteで読む
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よくある質問(FAQ)
Q. オニテナガエビの適水温は何度ですか?
A. 25〜30℃です。熱帯性のエビなので18℃を下回ると活動が鈍り、さらに下がれば死に至ります。日本の屋外では冬を越せないため、ヒーターかビニール温室での通年の加温が前提になります。
Q. オニテナガエビはどのくらいの大きさになりますか?
A. 最大で30cm前後まで育ちます。オスの成体では体長とほぼ同じ長さのハサミを持ちます。成長は速く、おおよそ6か月で成熟サイズに達します。
Q. オニテナガエビの共食いを防ぐには?
A. 隠れ家を個体数より多く用意することが最も重要です。脱皮直後は殻が柔らかく無防備になるため、身を隠せる場所がないと確実に狙われます。あわせてサイズをそろえ、餌を切らさず、過密にしないことも効果があります。
Q. オニテナガエビの餌は何を与えますか?
A. 沈下性の配合飼料が基本です。底で生活するエビなので、浮くタイプの餌では食べられません。雑食性なのでよく食べますが、餌を切らすと共食いの引き金になるため十分に与えてください。
Q. オニテナガエビの寿命はどのくらいですか?
A. 1〜2年ほどです。成長が速いぶん寿命は短く、長期飼育より育てて収穫する対象と考えるのが実態に合っています。
Q. オニテナガエビはアクアポニックスに向いていますか?
A. フンが植物の養分になるため仕組み自体は成立します。ただし通年の加温コスト、共食いによる歩留まりの悪さ、必要な底面積の広さから、コスト効率では魚に劣ります。面白さを重視するなら挑戦する価値があります。
Q. 脱皮したあとの殻はどうすればよいですか?
A. そのまま残しておいて構いません。カルシウム源としてエビ自身が食べます。なお脱皮殻はエビの形をそのまま残すため死骸と間違えやすいので、取り除く前に本体が別の場所にいないか確認してください。
この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)
植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。
農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。