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アクアポニックスで野菜が育たない|魚が元気でも止まる3つの理由

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アクアポニックスで野菜が育たない。魚が元気でも止まる3つの理由 アクアポニックス

野菜が育たないとき、原因はだいたい3つです。光が足りない、ろ過が追いついていない、窒素以外の養分が足りない

魚が元気でも、野菜は止まります。魚にとって耐えられる水と、野菜が育つ水は別物だからです。だから「魚は元気だから水は大丈夫」と考えると、原因にたどり着けません。

この記事は、症状から原因をたどるための入口です。鷲林寺アクアファームの初年度に何が起きたかを最初に書いて、そのあと症状ごとにどこを見ればいいかを整理します。

初年度、うちで何が起きたか

この考え方は国連食糧農業機関の技術報告(2014年)にもまとめられています。魚が元気でも野菜が止まるのは、魚・細菌・野菜の3つの釣り合いが崩れたときだ、という見方です。

アクアポニックスで野菜が育たない連鎖。光不足・魚は元気に見える・亜硝酸が溜まり酸性に傾く・窒素以外が足りない
光が足りず、ろ過が追いつかず、窒素以外が足りない。魚は元気に見えたまま、野菜だけが止まっていった。

最初にやった失敗は、光を落としたことです。ビニールハウスの上に、遮光率の高いネットを掛けました。夏の温度を下げるつもりでしたが、結果として生育が目に見えて悪くなりました。

次が栄養です。魚の餌だけで育てようとしていました。魚のフンから出るのはほとんどが窒素で、鉄・カリウム・カルシウムはほとんど出てきません。葉物はある程度育ちましたが、そこから先へ進みませんでした。

そして水です。硝酸塩と亜硝酸が増えていき、pHが下がっていきました。原因はろ過の能力が足りていなかったことで、あとでろ過を増強して落ち着きました。いまはpHの下支えにカキ殻を使っています。

この3つは、それぞれ別の話に見えて、どれも「魚は元気に見えるのに野菜が止まる」という同じ形で出てきます。順に見ていきます。

症状から、どこを見ればよいのか

アクアポニックスで野菜が育たないときの症状と原因。徒長・古い葉の黄変・新しい葉の白化・葉のふちの枯れ・実の尻腐れ
どこから変わるかで、足りないものが分かれる。

黄色くなる場所が、いちばん分かりやすい手がかりです。古い葉から黄色くなるなら窒素。窒素は植物の中で移動できるので、足りなくなると古い葉から新しい葉へ送られます。だから古いほうから色が抜けます。

新しい葉が白っぽくなって、葉脈だけ緑に残るなら鉄です。鉄は植物の中を移動できないので、足りなくなると新しく出る葉から症状が出ます。この見分けは覚えておく価値があります(葉が黄色い原因は鉄不足)。

葉のふちが枯れてくるならカリウム(カリウム不足)、実の尻が黒くへこむならカルシウムです(トマトの尻腐れ)。実の付きが悪い、根の張りが弱いときはリン酸を疑います(リン酸)。足りない養分の全体像はアクアポニックスで足りない栄養は3つにまとめました。

茎だけ伸びて葉が小さい、葉と葉の間が開いている。これは栄養ではなく光です。徒長といって、光を求めて背を伸ばしている状態です。

光が足りないと、どうなるのか

茎だけが伸びて、葉が小さくなります。株全体が細く、色も薄くなり、最後は自分の重さで倒れます。水も栄養も足りているのに育たないときは、まずここを疑ってください。

うちの初年度は、遮光ネットを掛けたことでこれが起きました。夏の高温を抑えるつもりでしたが、遮光率の高いものを選んだために光が足りなくなりました。

温度を取るか光を取るかは天秤で、掛けるなら遮光率の低いものを、時期を区切って使うほうが安全です。

室内なら、育成用の照明が要ります。窓際でも屋内の光は屋外の何分の一しかありません。1日12時間から16時間、株の上30cmほどの高さから当てるのが目安です。葉物なら弱めでも育ちますが、実をつける野菜になると光の量がそのまま収穫量になります。

ろ過が追いつかないと、pHが下がる

アクアポニックスでpHが下がる仕組み。硝化がアルカリ分を使い、pHが下がると硝化が鈍る。カキ殻で下支えする
ろ過が追いつかないことと、pHが下がることは同じ話の表と裏。

硝化バクテリアがアンモニアを処理するとき、水のアルカリ分を使います。つまりろ過が働くほど、pHは下がっていく。これは避けられない性質です。

やっかいなのは、硝化バクテリアが働きやすいのがpH6.5から7.0あたりだということです。pHが下がると働きが鈍り、鈍るとアンモニアと亜硝酸が溜まり、さらに処理が追いつかなくなります。下がると、もっと下がるという形になります。

うちの初年度に起きたのが、これでした。亜硝酸が増え、pHが下がっていく。魚はまだ元気に見えている。でも野菜は止まっている。

原因はろ過の能力が足りていなかったことで、ろ過を増強したら落ち着きました。数値でどの段階にいるかを見る方法はアクアポニックスの硝化サイクルに書いています。

pHの下支えには、カキ殻を使っています。炭酸カルシウムなので、pHが下がったときだけ溶けます。入れっぱなしで自己調整になるのが利点です。溶けたぶんアルカリ分が戻り、しかもカルシウムが一緒に供給されます

カキ殻を選んでいるのは、行き過ぎないからです。炭酸カルシウムは酸に溶けるので、pHが上がって溶けにくいところまで来ると、そこで止まります。入れる量を増やしても際限なく上がることはありません。あわせてKH(炭酸塩硬度)も入るので、pHそのものが動きにくい水になります。水酸化物系のpH調整剤は入れた分だけ動くので、そちらのほうが行き過ぎます。

まず測る。話はそれからです

育たない原因を当てにいく前に、水を測ってください。見るのは4つ、アンモニア・亜硝酸・硝酸塩・pHです。この4つで、いま何が起きているかはほぼ分かります。

アンモニアと亜硝酸が出ているなら、ろ過が追いついていません。この状態では、野菜が吸える形の窒素がまだできていないので、肥料を足しても意味がありません。先にろ過です。

アンモニアも亜硝酸もゼロで、硝酸塩だけが出ているなら、ろ過は回っています。それでも育たないなら、原因は光か、窒素以外の養分です。硝酸塩まで低いなら、単純に魚が少ないか餌が少ない。

pHは6.0を下回っていないかを見ます。下がりすぎていると、ろ過も鈍り、養分の吸収も変わります。試験紙なら数十秒で4つとも読めるので、週に一度、決まった曜日に測る習慣にしておくと迷いません。

水温と季節は、どこまで効くのか

アクアポニックスは水の量が多いぶん、露地よりも温度の振れが小さくなります。土が凍る時期でも水は凍らないので、冬の葉物は露地より粘ります。

ただし日照までは変えられません。冬に生育が落ちるのは、水温よりも日の短さが効いています。照明で補える屋内なら冬でも育ちますが、ハウスや屋外では、冬は葉物に絞るのが現実的です。

夏は逆に、水温が上がりすぎて根が弱ります。30℃を超えると、水に溶ける酸素が減って根が呼吸しにくくなり、根腐れの入り口になります。

遮光で温度を下げたくなりますが、そこで光を落としすぎたのが、うちの初年度の失敗です。遮光率の低いものを、暑い時期だけ使ってください。

魚と野菜、どちらを増やせばよいのか

アクアポニックスで魚と野菜のどちらを増やすか。魚が少なく野菜が多いと栄養不足、魚が多く野菜が少ないと水が悪くなる
どちらか一方だけを増やすと、必ずどちらかが崩れる。

うちの初年度は、左下から右上へ行こうとして失敗しました。魚が少ないまま野菜だけ増やしたので、栄養が足りなくなったのです。「魚のフンで育つ」と聞いていたぶん、魚の量が効いてくるとは思っていませんでした。

逆に魚だけ増やすと、今度は水が悪くなります。吸ってくれる野菜が足りないので硝酸塩がたまり、藻が出て、ろ過も追いつかなくなります。どちらか一方だけを増やすと、必ずどちらかが崩れます。

近づけ方としては、野菜を増やす前に魚を増やし、魚を増やす前にろ過を増やす、という順番が安全です。ろ過が先で、魚が次で、野菜が最後。

逆の順番でやると、必ず亜硝酸で足を取られます。魚の選び方はアクアポニックスの魚の選び方、野菜の選び方はおすすめの葉物と実物へ。

育つけれど、小さい・味が薄いとき

枯れはしないが大きくならない、というのもよくある止まり方です。これはたいてい、栄養が「足りない」のではなく「薄い」状態です。魚の数に対して野菜が多いと、こうなります。

味が薄いと感じるときも同じで、養分の総量が足りていません。葉物なら食べられますが、実をつける野菜は実が小さいまま止まります。魚を増やすか、株を減らすか、どちらかです。

もうひとつ、収穫が遅れると味は落ちます。レタスもバジルも、花芽が上がりはじめると葉が硬く苦くなります。大きく育てようとして待ちすぎるより、早めに採って次を植えるほうが、結果として量も味も取れます。

ほかに、育たない原因はあるか

立ち上げてすぐに植えた、というのがよくある失敗です。硝化バクテリアが増えるまで、アンモニアは野菜が吸える形になりません。水を回してから3週間ほど置いて、亜硝酸が下がってから植えてください。

根腐れも止まる原因になります。常に水に浸かったままで、根に酸素が届いていない状態です。茶色くなって、触ると崩れます。見分け方と直し方は根腐れの原因は酸素不足だったにまとめました。

季節が合っていないこともあります。冬に夏野菜を植えても育ちません。アクアポニックスは水温が安定するぶん露地より粘りますが、日照までは変えられません。

虫にやられている場合もあります。アブラムシやハダニは葉の裏に付くので、上から見ているだけでは気づきません。育ちが止まったときは、一度葉の裏を見てください(アクアポニックスの害虫対策)。

よくある質問

魚は元気なのに、野菜だけ育ちません。

水と光を別々に見てください。魚が元気なのは、魚にとって水が耐えられる状態だというだけで、野菜に栄養が足りているかとは別の話です。

光が足りない、窒素以外の養分が足りない、ろ過が追いつかずに水が酸性に傾いている。このどれかであることがほとんどです。

魚のフンだけで野菜は育ちますか。

窒素は足りますが、それ以外が足りません。鉄・カリウム・カルシウムは、魚の排泄物からはほとんど出てきません。葉物なら窒素中心でもある程度は育ちますが、実をつける野菜になると、途中で止まります。

pHが下がっていきます。どうすればいいですか。

カキ殻を入れると下支えになります。炭酸カルシウムなので、pHが下がったときだけ溶けて、アルカリ分を戻してくれます。同時にカルシウムも供給されます。酸に溶けるものなので、pHが上がって溶けにくくなればそこで止まります。入れすぎて際限なく上がることはありません。

葉が黄色くなるのは、何が足りないのですか。

どこから黄色くなるかで分かれます。古い葉から黄色くなるなら窒素、新しい葉が白っぽくなって葉脈だけ緑に残るなら鉄です。葉のふちが枯れてくるならカリウム。実の尻が黒くへこむならカルシウムです。

室内でひょろひょろに伸びてしまいます。

光が足りません。徒長といいます。窓際でも屋内の光は屋外の何分の一しかないので、育成用の照明を足してください。1日12時間から16時間、株の上30cmほどの高さから当てるのが目安です。

立ち上げてすぐに植えても大丈夫ですか。

すすめません。硝化バクテリアが増えるまで、アンモニアは硝酸塩に変わりません。変わらないうちは、野菜が吸える形の窒素がほとんど無い状態です。水を回してから3週間ほど置いて、亜硝酸が下がってから植えてください。

まとめ

野菜が育たない原因は、光・ろ過・栄養の3つです。魚が元気でも野菜は止まります。魚にとって耐えられる水と、野菜が育つ水は別物だからです。

症状の出る場所で分かれます。茎だけ伸びるなら光。古い葉から黄色くなるなら窒素。新しい葉が白っぽくなるなら鉄。葉のふちが枯れるならカリウム。実の尻が黒くなるならカルシウム。

ろ過が追いつかないとpHが下がり、下がるとさらに硝化が鈍ります。カキ殻を入れておくと、下がったときだけ溶けて支えてくれます。カルシウムも一緒に入るので、一石二鳥の手当てになります。

設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。個人で始めたアクアポニックスの記録をnoteに書いています。
→ 費用と失敗の記録をnoteで読む

あわせて読みたい:アクアポニックスの栽培

足りない養分はアクアポニックスで足りない栄養は3つ、水の数値は硝化サイクル、虫は害虫対策へ。

この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)

植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。

農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。
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