アクアポニックスで足りない栄養は3つ|症状の見分け方と補い方
アクアポニックス
2025.03.13
アクアポニックスは、魚のフンが野菜の栄養になる循環型のしくみです。ところが実際に育ててみると、葉が黄ばんだり、実がつかなかったり、思ったように育たないことがあります。
結論から言うと、魚のフンだけでは足りない栄養素があります。ただし全部が足りないわけではありません。足りないのはカリウム・カルシウム・鉄の3つで、逆に窒素は十分に供給されます。
そしてもうひとつ大事なことがあります。症状が出たときにいきなり肥料を足すのは正解ではありません。水の中に栄養があっても、根が吸えない状態になっていることがあるからです。
- 魚のフンだけで足りないのは「カリウム・カルシウム・鉄」の3つ。窒素は十分に供給される
- 症状の出る場所で見分けられる。古い葉からならカリウム、新芽からなら鉄、成長点や実の尻ならカルシウム
- 症状が出てもすぐ肥料を足さない。まずpHを測る。pHが高いと鉄は水に溶けていられず吸収できない
- 補い方は「単肥で狙い撃ち」か「複合肥料でまとめて」の2通り。どちらも少量から数日かけて
- 園芸用の肥料をそのまま使わない。魚に有害な成分が含まれることがあり、濃度も濃すぎる
なぜ足りない栄養が出るのか
古い葉から出るならカリウム、新しい葉からなら鉄、実のお尻や成長点ならカルシウム。足す前にpHを測る。
理由はシンプルで、水に入る栄養は魚のエサに由来するものだけだからです。魚が食べたものが体を通り、フンとして出て、バクテリアが分解して植物が使える形になります。この経路に乗らない栄養素は、いつまで経っても増えません。
魚のエサはタンパク質と脂質が中心なので、そこから生まれる窒素は豊富に供給されます。一方でカリウムやカルシウム、鉄はエサに含まれる量がもともと少ないため、植物が使う速度に供給が追いつきません。
魚のエサに由来する栄養しか水に入らないため、供給に偏りが出ます。足りない3つを覚えておけば十分です。
葉物野菜が主に窒素で育つのに対し、実物野菜は着果の段階でカリウムとカルシウムを多く必要とします。葉物が育てやすく実物野菜が難しいと言われるのは、この供給の偏りが理由です。
植物の成長は、いちばん足りない栄養素の量で頭打ちになります。この考え方はリービッヒの最小律として知られていて、他の栄養をいくら足しても、不足している1つを補わないかぎり成長は伸びません。
症状から、どれが足りないか見分ける
幸い、不足している栄養素によって症状の出方が違います。どこから症状が出るかを見れば、専門的な測定をしなくてもおおよその見当がつきます。
どこから症状が出るかで見分けられます。古い葉からならカリウム、新しい葉からなら鉄が目安です。
| 症状 |
疑う栄養素 |
出る場所 |
| 葉先が枯れて茶色くなる |
カリウム |
古い葉から |
| 成長点が枯れる・実の尻が黒く腐る |
カルシウム |
新しい部分 |
| 葉が黄色く、葉脈だけ緑が残る |
鉄 |
新芽から |
見分けの手がかりは古い葉から出るか、新しい葉から出るかです。カリウムのように植物の体内を移動できる栄養素は、不足すると古い葉から新しい葉へ送られるため、症状は古い葉に先に出ます。逆に鉄やカルシウムは移動しにくいので、新しく作られる部分から異常が出ます。
それぞれの詳しい対処は、カリウム不足、カルシウム不足と尻腐れ病、鉄不足と葉の黄化の各記事にまとめています。
新芽が黄色く葉脈だけ緑が残るのは鉄不足の典型。古い葉から出るカリウム不足とは出方が違う。
肥料を足す前に、pHを疑う
ここが多くの解説で抜けているところです。症状が出ていても、水の中には栄養が足りているケースがあります。足りないのではなく、吸えていないという状態です。
水に栄養があっても、pHが合わないと根が吸えません。肥料を足すのは、これを確かめてからです。
植物が栄養を吸収できるかどうかは、水のpHに左右されます。とくに鉄は影響が大きく、pHが高い(アルカリ寄り)と水に溶けていられなくなり、根から吸えない形に変わってしまいます。この状態では、鉄をいくら足しても症状は改善しません。
アクアポニックスの適正pHは6.8前後です。ここから大きく外れているなら、まずpHを戻すことが先決です。測らずに肥料を足すと、効かないうえに水質だけが乱れます。
pHを直しても改善しない場合に、はじめて補給を検討してください。鉄については、pHが高めでも植物が吸収できる形に加工された「キレート鉄」という選択肢があります。普通の鉄剤を入れても効かなかった環境では、こちらに替えるだけで解決することがあります。
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補い方は2通りある
不足が確認できたら、補い方は大きく2つに分かれます。どちらが正しいというものではなく、症状を特定できているかどうかで選び分けます。
単肥:足りないものだけを足す
症状から不足している栄養素を特定できているなら、それだけを補うほうが確実です。余計なものを入れずに済むぶん、水質への影響も最小限に抑えられます。
カリウム不足なら炭酸カリウムを使います。ただし一度に大量に入れないでください。少量から始めて数日かけて様子を見るのが鉄則です。
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カリウムはpHを上げる働きもあるため、入れすぎると今度は鉄が吸えなくなるという別の問題を引き起こします。何を足すにしても、少量ずつが原則です。
複合肥料:まとめて補う
どれが不足しているか特定しきれない場合や、複数が同時に不足していそうな場合は、微量元素をまとめて含む液肥のほうが向いています。
単肥のように狙い撃ちはできませんが、「何が足りないか分からないまま個別に試す」よりは早く安定します。魚がいる環境で使える製品かどうかだけは、必ず確認してください。
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入れすぎのほうが危ない
足りない状態は成長が止まるだけですが、入れすぎは魚に影響します。アクアポニックスが普通の水耕栽培と違うのは、同じ水で魚が生きているという一点です。
とくに注意したいのが、園芸用の肥料をそのまま使うことです。植物向けに作られた製品には魚に有害な成分が含まれることがあり、濃度も水槽用には濃すぎます。
迷ったら少なく入れて、1週間ほど様子を見てください。足りなければあとから足せますが、入れすぎた分は水換えでしか抜けません。取り返しのつきやすい方向に倒しておくのが安全です。
葉物野菜は主に窒素で育つため、追加の肥料なしでも育つことが多い。
そもそも足りているかを測る
症状は出ていないけれど不安、という段階なら、測ってしまうのが早道です。試験紙を水に浸すだけで、pHと硝酸塩の値をその場で確認できます。
硝酸塩が十分にあるのに育ちが悪いなら、窒素以外が不足しているサインです。逆に硝酸塩が低いなら、魚の数やエサの量そのものを見直す必要があります。
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まとめ:足りないのは3つだけ
魚のフンだけで足りないのは、カリウム・カルシウム・鉄の3つです。窒素は十分に供給されるので、葉物野菜であれば追加の肥料なしでも育つことがほとんどです。
症状が出たら、まずpHを測って6.8前後から外れていないかを確認する。それから、症状に合う栄養素を少量ずつ補う。この順番を守れば、水質を乱さずに立て直せます。
よくある質問(FAQ)
Q. アクアポニックスは魚のフンだけで野菜が育ちますか?
A. 葉物野菜なら育つことが多いです。窒素は魚のエサ由来で十分に供給されるためです。ただしカリウム・カルシウム・鉄は不足しやすく、実物野菜を育てる場合は補給が必要になります。
Q. どの栄養素が足りないか、どう見分けますか?
A. 症状が出る場所で判断できます。古い葉から葉先が枯れるならカリウム、成長点が枯れたり実の尻が黒くなるならカルシウム、新芽が黄色く葉脈だけ緑が残るなら鉄を疑ってください。
Q. 症状が出たらすぐ肥料を足していいですか?
A. まずpHを測ってください。水に栄養があっても、pHが高いと鉄などは吸収できない形に変わってしまいます。この状態で肥料を足しても効かず、水質だけが乱れます。適正は6.8前後です。
Q. カリウムを補うときの注意点はありますか?
A. 一度に大量に入れないでください。少量から始めて数日かけて様子を見ます。カリウムにはpHを上げる働きもあるため、入れすぎると今度は鉄が吸えなくなります。
Q. 園芸用の肥料を使ってもいいですか?
A. おすすめしません。植物向けに作られた製品には魚に有害な成分が含まれることがあり、濃度も水槽用には濃すぎます。魚がいる環境で使えると明記された製品を選んでください。
Q. 単肥と複合肥料はどちらがいいですか?
A. 症状から不足している栄養素を特定できているなら単肥のほうが確実で、水質への影響も抑えられます。特定しきれない場合や複数が不足している場合は、微量元素をまとめて含む複合肥料が向いています。
アクアポニックスは資本がある人のものだと思われがちですが、個人でも始められます。設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。鷲林寺アクアファームの実践の記録を
noteに書いています。見学に来られた方はのべ100人を超えました。
→ 個人で始めたアクアポニックスの費用と失敗をnoteで読む
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