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トマトの尻腐れは病気ではない|カルシウムは、あっても実に届かない

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トマトの尻腐れは病気ではない。カルシウムはあっても実に届かない アクアポニックス

トマトの尻腐れは、病気ではありません。菌が原因ではないので、うつりませんし、薬も効きません。実の先端にカルシウムが届かず、そこの細胞が壊れて黒くへこむ、生理障害です。

やっかいなのは、カルシウムを入れても出ることがあることです。カルシウムは植物の中を移動できず、蒸散でできる水の流れに乗って運ばれます。蒸散の多い葉には届きますが、実は後回しになります。

だから、足す量より届く道のほうが効きます。

カルシウムは、あっても実には届かない

トマトの尻腐れとカルシウム。水にカルシウムがあっても実には届きにくい。菌の病気ではないので薬は効かない
水にカルシウムがあっても、実に届くとは限らない。蒸散の多い葉が先で、実は後回しになる。
カルシウムがトマトの実に届かない4つの理由。移動できない・実は蒸散が少ない・pHが高いと吸えない・水の量が急に変わる
「入れる量」より「届く道」。ここを外すと、足しても出る。

カルシウムは、一度どこかへ届いたら、そこから動きません。窒素なら足りなくなったとき古い葉から新しい葉へ回されますが、カルシウムはそれができません。だから足りなくなると、これから作られる場所から症状が出ます。

運ぶのは、蒸散でできる水の流れです。葉は水をたくさん蒸発させるので、その流れに乗ってカルシウムがよく届きます。実は蒸散が少ないので、同じ株の中でも後回しになります。葉が茂っているほど、実の取り分は減ります。

pHが高いと、そもそも根から入りません。水の中にカルシウムがあっても、吸える形になっていない状態です。足し水の硬度が高くてpHが下がらないときにも起こります(アクアポニックスで野菜が育たないでも触れました)。

もうひとつが水の量の変化です。乾いたり濡れたりを繰り返すと、運ぶ流れそのものが途切れます。実が急に大きくなる時期に、この途切れがいちばん効きます。循環を止める時間が長い設計だと、ここでつまずきます。

病気と、どう見分けるのか

トマトの尻腐れと菌による病気の違い。尻腐れは実の先だけ、うつらない、葉に出ない、薬が効かない
うつらない、広がらない、葉に出ない。この3つなら尻腐れ。

見分けるのは3つです。実の先端だけに出ているか。隣の株にうつっていないか。葉には何も出ていないか。この3つが揃っていれば、まず尻腐れです。

菌による病気なら、出る場所が決まっていません。葉や茎にも出ますし、放っておくと広がります。尻腐れは広がりません。その実だけで完結して、隣には移りません。

ここを間違えると、効かない薬を撒くことになります。アクアポニックスなら、効かないうえに魚とバクテリアに障る可能性まで背負うことになります。黒くへこんでいるのを見たら、まず場所を確かめてください。

アクアポニックスで、なぜ足りなくなるのか

魚のフンには、カルシウムがほとんど含まれていないからです。出てくるのはほとんどが窒素で、カリウムもカルシウムも別に足す必要があります。「魚のフンで育つ」という言い方が、ここで実態と食い違ってきます。

土で育てているなら、土そのものがカルシウムを持っています。石灰をまく習慣があるのも、そのためです。アクアポニックスには土がないので、入れなければゼロから増えません。

足りない養分はカルシウムだけではありません。鉄とカリウムも同じように不足します(アクアポニックスで足りない栄養は3つ)。葉が黄色いなら鉄(鉄不足)、葉のふちが枯れるならカリウム(カリウム不足)です。

出てしまったら、どうするか

トマトの尻腐れが出たときの手当て。出た実は摘む・pHを戻す・水の流れを一定に・カルシウムを足す
順番が大事。足すのは最後で、その前に届く道を整える。

まず、出た実は摘んでください。戻りません。置いておくと株の力を使うだけです。守るのは次の実です。

次にpHを測ります。6.0から7.0に入っていなければ、そこを戻すのが先です。高すぎるとカルシウムが吸えず、低すぎると硝化バクテリアの働きが鈍ります(硝化サイクル)。測らずに足すと、外したときに気づけません。

水の流れも見ます。循環を止めている時間が長いなら短くする。乾湿の差が大きいなら、その差を小さくする。実が急に大きくなる時期は、ここを一定に保てるかどうかで結果が変わります。

そのうえでカルシウムを足します。急いでいるなら、葉面散布のほうが早く効きます。根から入れると、実に届くまでに時間がかかるからです。

うちでは、出ませんでした

鷲林寺アクアファームではミニトマトを育てていましたが、尻腐れは出ませんでした。

思い当たるのは、トマトを植えるより先にカキ殻を入れていたことです。

pHが下がるのを抑える目的で入れていたのですが、カキ殻は炭酸カルシウムなので、溶けるときにカルシウムも一緒に出ます。結果として、実がつく前からカルシウムがある状態になっていました。

ただし、これは比べたわけではありません。カキ殻を入れなかった年と入れた年で試したのではないので、「カキ殻のおかげで出なかった」と言い切ることはできません。ミニトマトは大玉より尻腐れが出にくいとも言われるので、そちらの理由かもしれません。

確かなのは、実がつく前から入れておくほうが理にかなっているということです。出てから足しても、その実は戻りません。カキ殻はゆっくり溶けるので、先に入れておく使い方に向いています。pHの下支えも同時にできます。

入れすぎると、今度は別の症状が出る

カルシウムの肥料を入れすぎると、pHが上がります。pHが上がると、鉄が吸えなくなります。カキ殻は酸に溶ける性質なので、上がって溶けにくくなればそこで止まりますが、肥料のほうは入れた分だけ効きます。新しい葉が白っぽくなって葉脈だけ緑に残るようになったら、鉄が足りないのではなく、pHが高すぎるのかもしれません。

カリウムやマグネシウムとも競合します。カルシウムだけが多い状態になると、今度はそちらが吸えなくなります。一つの養分だけを追いかけると、たいてい別のところが崩れます。

だから、少しずつ足して測る。これに尽きます。尻腐れが怖いからと一度に入れると、次は葉が白くなって悩むことになります。

アクアポニックスは資本がある人のものだと思われがちですが、個人でも始められます。設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。鷲林寺アクアファームの実践の記録をnoteに書いています。見学に来られた方はのべ100人を超えました。
→ 個人で始めたアクアポニックスの費用と失敗をnoteで読む

よくある質問

トマトの尻腐れは病気ですか。

病気ではありません。生理障害です。菌が原因ではないので、うつりませんし、薬も効きません。実の先端にカルシウムが届かず、その部分の細胞が壊れて黒くへこみます。

カルシウムを入れているのに、なぜ出るのですか。

カルシウムは植物の中を移動できないからです。蒸散でできる水の流れに乗って運ばれるので、蒸散の多い葉には届きますが、蒸散の少ない実には後回しになります。水にあっても、実まで届いていないことがあります。

出てしまった実は治りますか。

治りません。摘み取ってください。置いておいても株の力を使うだけです。大事なのは次の実で、pHと水の流れを整えれば、そこから先は防げることが多いです。

pHはどれくらいがいいですか。

6.0から7.0のあいだです。高すぎるとカルシウムが吸えなくなり、低すぎると硝化バクテリアの働きが鈍ります。高いまま下がらないときは、カキ殻より先に足し水の硬度を疑ってください。

カキ殻とカルシウム肥料、どちらがいいですか。

目的が違います。カキ殻はゆっくり溶けるので、実がつく前から入れておく予防向きです。いま出ていて急ぐなら、葉面散布のほうが早く効きます。根から入れても、実に届くまでに時間がかかります。

ミニトマトでも起きますか。

起きます。ただし大玉より出にくいとされます。実が小さいぶん肥大が急でなく、必要なカルシウムの量も少ないためです。同じ株でも、大きく育てた実のほうが出やすくなります。

まとめ

トマトの尻腐れは病気ではありません。うつらず、広がらず、葉には出ない。薬も効きません。カルシウムが実の先端に届かなかった結果です。

カルシウムは植物の中を移動できず、蒸散の水流に乗って運ばれます。実は蒸散が少ないので後回しになる。だから足す量より、届く道のほうが効きます。pHを6.0〜7.0に保ち、水の流れを一定にしてください。

出た実は戻りません。摘んで、次の実を守ります。そして次の株からは、実がつく前に入れておく。カキ殻はゆっくり溶けるので、その使い方に向いています。

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この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)

植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。

農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。
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