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夏の酸欠対策|アクアポニックスの溶存酸素が減る仕組みとエアレーションの正解

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夏の酸欠対策のアイキャッチ アクアポニックス

真夏のアクアポニックスで、魚が水面近くで口をパクパクさせていたり、植物の葉がしおれてきたり、水質検査をしてもアンモニア値がなかなか下がらなかったりすることはありませんか。

これらは別々の問題ではなく、多くの場合ひとつの原因から起きています。それが「高温による酸素不足」です。

その酸素不足は、夏に二重で進みます。水に溶ける酸素が減ることと、魚やバクテリアが使う酸素が増えることが、同じ時期に重なるからです。そして酸素がいちばん減るのは、日中ではなく夜です。昼間の見回りだけでは、いちばん減る時間を見ていないことになります。

  • 夏場の酸欠は「水に溶ける酸素の減少」と「魚・バクテリアの消費増加」が同時に起きる季節特有の現象
  • 水温が15℃→30℃に上がると溶存酸素はおよそ3割減る(20℃:9.1mg/L→30℃:7.6mg/L)
  • アンモニアを分解する好気性バクテリアも酸素を消費するため、酸欠は水質悪化にも直結する
  • 対策の核は「エアレーション強化」を軸に、遮光・水位管理・冷却・モニタリングを組み合わせること

なぜ夏になると酸欠が起きるのか

夏の酸欠の仕組み。水温が上がると溶ける酸素が減り、明け方がいちばん薄くなる
水温が上がると溶けられる量が減り、同時に魚も細菌も使う量が増える。いちばん薄いのは明け方。

水中には空気から溶け込んだ酸素(溶存酸素)が存在し、魚やバクテリアはこれを使って呼吸しています。ところが水温が上がると、物理的に水に溶け込める酸素の量そのものが減っていきます。

水温 飽和溶存酸素量の目安
15℃ 約10.1 mg/L
20℃ 約9.1 mg/L
25℃ 約8.3 mg/L
30℃ 約7.6 mg/L

水温が15℃から30℃に上がるだけで、溶け込める酸素の量は3割近く減ってしまいます(数値は米国地質調査所の溶存酸素飽和データによる)。しかも夏場はここに、もう一つの要因が重なります。水温が上がると魚もバクテリアも代謝が活発になり、消費する酸素の量そのものが増えるのです。

夏の酸欠対策|夏は「供給」が減り「需要」が増える。供給が減るのに需要は増える。この「ダブルパンチ」が夏場の酸欠の正体です。(米国地質調査所の溶存酸素飽和データより)
供給が減るのに需要は増える。この「ダブルパンチ」が夏場の酸欠の正体です。(米国地質調査所の溶存酸素飽和データより)

「溶ける量は減り、使う量は増える」。この需給のミスマッチこそが、夏場のアクアポニックスで酸欠が起きやすい理由です。

夏の酸欠対策|夏に酸欠が進むメカニズム。病原菌や設備の故障がなくても、この3段階だけで酸欠は進行します
病原菌や設備の故障がなくても、この3段階だけで酸欠は進行します。

見落とされがちな「もう一人の酸素消費者」

酸欠というと魚のことばかり注目されがちですが、実はアクアポニックスの水質を支える好気性バクテリアも大量の酸素を使っています。魚のフンや残餌から生まれるアンモニアを、バクテリアが亜硝酸・硝酸塩へと分解する過程(硝化)には酸素が不可欠で、目安としてアンモニア1mgの分解に約4.6mgの酸素が必要とされています。

酸欠が続くとこのバクテリアの働きが鈍り、分解しきれなかったアンモニアや亜硝酸が水中に蓄積します。魚のエラがダメージを受けるだけでなく、根が酸素不足になれば植物の生育も止まってしまいます。実はこの「酸欠→バクテリア停滞→水質悪化」という流れは、根腐れが起きる仕組みともまったく同じ構造です。魚と植物、両方の土台が同じ一つの要因でぐらつくのです。

水中を泳ぐ金魚
魚はエラで水中の溶存酸素を取り込んでいる。酸欠になると水面付近で口をパクパクさせる行動が増える。

夜間はさらに酸欠になりやすい

昼間は植物の光合成によって酸素が作られるため、多少は酸欠が緩和されます。ところが夜間は光合成が止まり、魚・バクテリア・植物のすべてが酸素を消費するだけの状態になります。

そのため、酸欠の症状がもっとも出やすいのは明け方です。「昼間は元気なのに朝だけ様子がおかしい」という場合は、夜間のエアレーションが足りていない可能性を疑ってください。

酸欠を防ぐ4つの対策

夏の酸欠対策|酸欠を防ぐ4つの対策。①が最優先ですが、②〜④を組み合わせるほど酸欠のリスクは下がります
①が最優先ですが、②〜④を組み合わせるほど酸欠のリスクは下がります。

① エアレーションを強化する

もっとも効果が大きく、最優先で取り組みたい対策です。エアストーンで気泡を細かくすると、水と空気の接触面積が増え、酸素が溶け込みやすくなります。

栽培槽の下で泳ぐ金魚と葉物野菜
魚・植物・バクテリアが同じ水を共有するアクアポニックスでは、酸素不足の影響が全体に波及しやすい。

水中の酸素量を数値で把握しておくと、「なんとなく調子が悪い」ではなく「もう危険域だ」と具体的に判断できます。

② 遮光で水温そのものの上昇を抑える

直射日光は水温を急激に押し上げる主な原因です。遮光率50〜70%程度のネットを使うと、光合成に必要な光を保ちながら水温の上昇を抑えられます。

③ 水位と足し水を管理する

高温期は蒸発が早く、水位が想像以上に下がります。水位が下がるとポンプが空気を吸い込み、酸素供給が不安定になることがあるため、朝夕の目視確認とこまめな足し水を習慣にしてください。

④ 冷却アイテムも選択肢に入れる

水温が30℃を超えるようなら、冷却の手段を用意しておくと安心です。まず現実的なのが冷却ファンで、水面に風を当てて気化熱で水温を下げます。数千円から導入できるうえ、電気代も抑えられるため、家庭の水槽ならこれで足りることがほとんどです。

凍らせたペットボトルを浮かべる方法も、急に暑くなった日の応急処置として使えます。ただし水温が急激に下がると魚に負担がかかるため、入れっぱなしにせず様子を見ながら使ってください。

大規模な設備で水量が多く、ファンでは追いつかない場合は、循環式の水槽用クーラーという選択肢もあります。設置には相応の電源と費用が必要になるため、業務用に近い規模を想定した手段だと考えてください。

水温の変化はこまめに記録しておくと、翌年以降の対策にも活かせます。梅雨から夏にかけての管理全体についてはアクアポニックスの梅雨対策でも解説しています。

まとめ:夏の酸欠は「供給と消費」を両方見る

夏場のアクアポニックスで起きる酸欠は、病気でも設備の故障でもなく、水温の上昇による「溶ける酸素の減少」と「消費される酸素の増加」が重なって起きる、季節特有の現象です。

エアレーションの強化を軸に、遮光・水位管理・冷却・モニタリングを組み合わせれば、真夏でも魚と植物の両方を落ち着いて育てられます。魚が水面でパクパクしている様子に気づいたら、まずは酸素供給を見直すところから始めてください。

よくある質問(FAQ)

Q. アクアポニックスで魚が水面でパクパクしているのはなぜですか?

A. 溶存酸素が不足しているサインです。水温が上がると水に溶ける酸素の量そのものが減り、同時に魚の酸素消費も増えるため、真夏にこの行動が増えます。

Q. 水温と溶存酸素にはどんな関係がありますか?

A. 水温が上がるほど水に溶ける酸素の量は減ります。目安として20℃で約9.1mg/L、25℃で約8.3mg/L、30℃で約7.6mg/Lと、水温が上がるにつれて着実に減っていきます。

Q. バクテリアも酸素不足の原因になりますか?

A. はい。好気性バクテリアはアンモニアを分解する際に酸素を消費し、アンモニア1mgの分解に約4.6mgの酸素が必要とされています。酸欠になるとこの分解が滞り、水質悪化につながります。

Q. 酸欠は夜間の方が起きやすいですか?

A. はい。昼間は植物の光合成で酸素が作られますが、夜間はその供給が止まり消費だけが続くため、明け方にもっとも酸素濃度が下がりやすくなります。

Q. 酸欠を防ぐには何をすればいいですか?

A. エアレーションの強化が最優先です。あわせて遮光による水温上昇の抑制、こまめな足し水、必要に応じた冷却アイテムの活用を組み合わせてください。

Q. 溶存酸素の目安はどのくらいですか?

A. 6.0mg/L以上を保つのが理想とされています。これを下回ると魚の呼吸が苦しくなり、バクテリアの働きも鈍くなります。

アクアポニックスは資本がある人のものだと思われがちですが、個人でも始められます。設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。鷲林寺アクアファームの実践の記録をnoteに書いています。見学に来られた方はのべ100人を超えました。
→ 個人で始めたアクアポニックスの費用と失敗をnoteで読む

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この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)

植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。

農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。
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