根腐れの原因は酸素不足|水耕栽培より強い理由と対策4つ
アクアポニックス
2024.02.21
アクアポニックスは水と養分がずっと循環しているシステムです。「循環しているのだから水は綺麗なはず」と思いがちですが、実際には根が茶色くぬめり、悪臭を放つ「根腐れ」に悩まされる人が少なくありません。
根腐れの直接の引き金は病原菌そのものではなく酸素不足です。そして、アクアポニックスは正しく管理すれば、水耕栽培単体よりも根腐れに強いシステムであることが学術研究でも確認されています。
- 根腐れの引き金は病原菌そのものより先に起きる「酸素不足」
- アクアポニックスは水耕栽培単体より根腐れに強いことが学術研究で確認されている(魚由来の微生物が病原菌を抑制)
- 対策の核は「溶存酸素を上げる」「水温を18〜20℃に保つ」「培地に乾いた層を作る」「詰め込みすぎない」の4つ
- 早期発見のサインは根の変色・悪臭・ぬめり・葉の萎れ
根腐れが起きるメカニズム
傷んでいない根は、この白さのまま水の中に垂れている。
根腐れと聞くと「病原菌に感染した」というイメージが先に来ますが、実際の順序は逆です。まず酸素不足が起き、その結果として根が病原菌に弱くなります。
根腐れの直接の引き金は病原菌そのものより先に起きる「酸欠」です。酸素を保てば、病原菌に感染しにくい根になります。
植物の根は水中に溶けた酸素(溶存酸素)を使って呼吸しています。溶存酸素がおおむね4〜5mg/Lを下回ると、根は酸素を使わない「嫌気呼吸」に切り替わり、その過程で発生する物質が根の細胞壁を弱らせます。ピシウムのような水中のカビの一種は、まさにこの酸欠状態を好んで繁殖し、弱った根から侵入します。
つまり、根腐れ対策の本質は「病原菌をゼロにすること」ではなく、「病原菌が繁殖できない酸素環境を保つこと」です。
アクアポニックスは根腐れに強い(学術研究より)
ここが多くの解説記事が触れていない、アクアポニックス最大の強みです。ベルギー・リエージュ大学の研究チームが、ピシウムを人為的に感染させたレタスで水耕栽培単体とアクアポニックスを比較したところ、アクアポニックスの水で育てた根のほうが明らかに被害が少ないという結果が出ています。
ピシウム(根腐れ病原菌)を接種したレタスの比較実験。アクアポニックスの水に含まれる微生物群が、水耕栽培単体より根を守ることが確認されています。(海外の学術誌に掲載された2020年の研究より)
研究では、水を0.2μmのフィルターで濾過して微生物を除去すると、この防御効果が消えることも確認されています。つまり効果の正体は水質そのものではなく、魚由来の水に棲みつく微生物群です。アクアポニックスを続けているだけで、根を守る土台はすでにできているということになります。
出典:ベルギー・リエージュ大学の研究チームによる論文(2020年発表、海外の学術誌掲載・原文は英語)
健康な根は白〜クリーム色でハリがある。茶色や黒に変色していないか、定期的に確認したい。
ただし、これは「何もしなくても根腐れが起きない」という意味ではありません。酸素不足が続けば、この防御力があっても根はダメージを受けます。研究チームも、微生物による防御と並行して水質・酸素の管理が必要だとしています。
今日からできる対策4つ
この4つは独立ではなく連動しています。特に②の水温管理は①の溶存酸素量にも直結します。
① 溶存酸素を上げる
もっとも効果が大きいのがこの対策です。エアーポンプとエアストーンで水中に酸素を送り込み続けることで、根が酸欠になる時間そのものをなくします。水質チェックも合わせて行うと、酸素以外の要因(pHやアンモニア)も同時に把握できて安心です。
◆テトラ 6in1(試験紙タイプ)
飼育水に浸けるだけで6項目をチェックでき、根腐れの背景にある水質悪化を早期に見つけられます。
リンク
◆安永 AP-30P(中〜大規模向け)
複数の栽培槽に分岐して使えるため、栽培規模を広げても酸素不足に悩まされにくくなります。
リンク
◆水作 水心 SSPP-2S(家庭用・小規模向け)
2〜3分岐程度の小さめのシステムなら、置き場所を選ばないこのサイズで十分な酸素供給ができます。
リンク
分岐を増やしたい場合はエアーチューブ用の三又分岐、気泡を細かくして酸素の溶け込みを良くしたい場合はエアストーンを追加すると、既存のポンプの効果をそのまま引き上げられます。
リンク
リンク
② 水温を18〜20℃に保つ
水温が上がるほど水に溶ける酸素の量は減り、同時にピシウムのような病原菌も活動しやすくなります。目安として22℃を超えたあたりから根腐れのリスクが上がり始めるため、夏場は特に注意が必要です。
水温計で数値として把握しておくと、「なんとなく暑い」ではなく「もう危険域に入っている」と具体的に判断できます。
リンク
梅雨から夏にかけての水温管理については、アクアポニックスの梅雨対策でも詳しく解説しています。
③ 培地の上部に「乾いた層」を作る
メディアベッド(培地栽培)の場合、培地全体が常に水没していると、根が呼吸できる時間がなくなります。培地の上のほうを常に水に浸けず、空気に触れる乾いた層にしておくことで、根が定期的に酸素を取り込める環境になります。
粒状のハイドロボールは隙間ができやすく、培地上部を「乾いた層」にしやすい。
ハイドロボールのような粒状の培地は粒の間に隙間ができやすく、この「乾いた層」を作りやすい点でも根腐れ対策に向いています。
④ 植え付けを詰め込みすぎない
1つの栽培槽に株を詰め込みすぎると、根同士が酸素を奪い合い、部分的に酸欠が起きやすくなります。野菜ごとの育てやすさを参考に、株間を確保してください。
早期発見のサイン
次のサインが出ていたら、対策を見直すころ合いです。根腐れは、ある日いきなり始まるものではありません。前ぶれが順番に出てくるので、早いうちに気づけば、まだ取り返しがつきます。
- 根が白色〜クリーム色ではなく、茶色〜黒色に変色している
- 根や水槽から生ぐさい、または腐敗臭がする
- 根の表面がぬめり、触るとドロッと崩れる
- 葉が萎れたり黄色くなったりと、地上部にも変化が出ている
これらのサインが1つでもあれば、まず溶存酸素と水温を確認し、必要であればエアレーションを強化してください。
まとめ:酸素を制する者が根腐れを制する
根腐れの本当の原因は病原菌そのものより先に起きる「酸素不足」であり、アクアポニックスはその防御に有利な微生物環境をすでに持っています。溶存酸素・水温・培地の乾いた層・株間の4点を意識するだけで、根腐れのリスクは大きく下げられます。
特別な薬剤や高価な設備がなくても、今日から見直せる対策ばかりです。まずはエアレーションと水温の2つから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. アクアポニックスでも根腐れは起きますか?循環しているのに変ですよね?
A. はい、起きます。水が循環していても、酸素不足になれば根腐れは発生します。ただしアクアポニックスは水耕栽培単体より根腐れに強いことが学術研究で確認されています。
Q. 根腐れの直接の原因は何ですか?
A. 病原菌よりも先に、酸素の不足があります。根は水にとけた酸素で呼吸していて、それが足りなくなると呼吸のしかたを切り替え、力が落ちます。弱った根には菌がとりつきやすく、そこから傷みが広がっていきます。菌を減らすことより、酸素を切らさないことのほうが先です。
Q. 溶存酸素はどのくらいあれば安全ですか?
A. 目安は4〜5mg/L以上です。これを下回ると、根は酸素の要らない呼吸に切り替わります。そうなると伸びが止まり、傷みやすくなります。やっかいなのは、水温が上がるほど水にとけられる酸素の量そのものが減ることです。同じ設備でも、夏は下がりやすくなります。
Q. 水温は何度に保てばいいですか?
A. 18〜20℃が目安です。22℃を超えると、水にとける酸素の量が減ります。それと同時に、根を傷める菌のほうは動きやすくなります。減るものと増えるものが重なるので、22℃はただの通過点ではなく、線を引いておく場所だと考えてください。
Q. メディアベッド(培地栽培)特有の注意点はありますか?
A. 培地全体を常に水没させず、上部に空気の触れる乾いた層を作ることが有効です。ハイドロボールのような粒状の培地は隙間ができやすく、この層を作りやすい点でも根腐れ対策に向いています。
Q. 根腐れに気づいたらどう対処すればいいですか?
A. まず溶存酸素と水温を測ります。原因を確かめないまま根を切っても、また同じことが起きるからです。空気を送る量を増やし、水温が高ければ下げる。そのうえで、茶色く崩れた根だけを取り除きます。白い根はできるだけ残してください。新しい根が出るまでは、収穫を急がずに様子を見ます。
アクアポニックスは資本がある人のものだと思われがちですが、個人でも始められます。設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。鷲林寺アクアファームの実践の記録を
noteに書いています。見学に来られた方はのべ100人を超えました。
→ 個人で始めたアクアポニックスの費用と失敗をnoteで読む
あわせて読みたい:アクアポニックス
この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)
植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。
農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。