アクアポニックスに赤玉土は使わない|崩れて詰まる理由と代わり
アクアポニックス
2024.07.04
アクアポニックスを始めようと準備していると、植物を植える培地に何を使うか迷う場面が出てきます。園芸店で手に入りやすい赤玉土を使えないか調べている方も多いはずです。
その赤玉土は、アクアポニックスには向きません。
ただし「赤玉土がダメだからハイドロボールにすればいい」という単純な話でもありません。
- 赤玉土がダメな理由は「常時水没で崩れやすい」の一点。土自体が悪いのではなく環境との相性の問題
- 培地に必要なのは4条件:pHに影響しない・水中で崩れない・多孔質・軽い
- 赤玉土以外の土系・軽量系(ボラ土/溶岩石/パーライト等)にもそれぞれ弱点があり、「赤玉土でなければ何でもいい」わけではない
- 4条件を安定して満たす定番の選択肢はハイドロボール。サイズ選びは別記事で詳しく解説
そもそも培地に求められる条件とは
この点は国連食糧農業機関の技術報告(2014年)でも扱われています。培地に求められるのは、崩れないこと・水を通すこと・空気が残ることの3つです。
赤玉土の是非を判断する前に、アクアポニックスの培地が満たすべき条件を先に押さえておきます。この基準に照らすと、どの培地が向いているかを自分でも判断できるようになります。
この4条件のうち1つでも欠けると、生物ろ過や水質管理に支障が出ます。まずこの基準で培地を評価します。
アクアポニックスの培地は、鉢植えの土のように「養分を含んでいること」は求められません。養分は魚の排泄物から供給されるため、培地の役割は物理的に植物を支え、ろ過バクテリアの住処になることに絞られます。
赤玉土がこの条件を満たさない理由
赤玉土は関東ローム層由来の火山灰土を乾燥・粒状にした園芸用土で、高温で焼き固めた素材ではありません。
盆栽や鉢植えでは、この「崩れやすさ」がむしろ長所になります。数年かけて少しずつ崩れることで通気性が変化し、根の張り方に良い影響を与えるためです。
盆栽や鉢植えでは長所の「水はけの良さ」も、常時水没するアクアポニックスでは崩壊の早さとして裏目に出ます。
多孔質で崩れにくいハイドロボール。粒の隙間から苗が育っています。
ところがアクアポニックスでは、培地は24時間365日水に浸かり続けます。鉢植えなら数年かけて起こる崩壊が、水没環境では数週間から数ヶ月というスピードで進みます。
崩れて出た微粒子は水中に漂い、フィルターの目を詰まらせ、生物ろ過を担うバクテリアの働き場所を奪ってしまいます。
結果として水が濁るだけでなく、ろ過能力そのものが落ちて水質全体が不安定になります。水質管理で失敗する原因の多くは、こうした培地由来のトラブルが引き金になっているケースも少なくありません。
「使う前によく洗えば大丈夫では」と考える方もいますが、これは根本的な対策になりません。赤玉土の粒は表面だけでなく内部まで同じ土質でできているため、洗浄で落とせるのは表面の粉塵だけで、水没を続ける限り内部からの崩壊は止まらないからです。
さらに赤玉土は粘土鉱物としての陽イオン交換容量(CEC)を持つため、水中のミネラル分を吸着・放出する性質があります。鉢植えでは肥料成分の保持に役立つこの性質も、魚の排泄物由来の栄養バランスで成り立つアクアポニックスでは、意図しない形で水質のミネラルバランスを変えてしまう要因になります。
赤玉土の代わりに検討されやすい培地
「赤玉土がダメなら何でもいいのか」というと、そうではありません。同じ土系・軽量系の資材でも、崩れやすさや扱いやすさには大きな差があります。
「赤玉土でなければ何でもよい」わけではありません。同じ土系・軽量系でも崩れやすさに差があります。
軽石の一種であるボラ土(日向土)は、硬質で焼成に近い性質を持つものであれば比較的長持ちしますが、産地や粒の品質にばらつきがあり、選定が難しいという弱点があります。
溶岩石は多孔質でバクテリアの住処には向くものの、角が欠けやすく、欠けた破片がポンプに入り込むトラブルが報告されています。
パーライトやバーミキュライトは軽さでは優れていますが、パーライトは水に浮きやすく、バーミキュライトは長期間の使用で層状に劣化しやすいという弱点があります。
こうして条件を1つずつ照らし合わせていくと、安定性・pH・通気性・軽さのすべてをバランスよく満たすハイドロボールが、消去法的にも有力な選択肢として残ります。
リンク
実際の栽培槽。培地の選び方はシステム全体の安定性を左右します。
ハイドロボールのサイズ選びや洗浄・使い方の詳しい手順はハイドロボールの選び方にまとめているので、購入前にあわせて確認してください。
まとめ:赤玉土を避ける理由は「崩れやすさ」に尽きる
赤玉土そのものが悪い資材というわけではなく、盆栽や鉢植えでは長年評価されてきた土です。問題は、常時水没するアクアポニックスという環境と相性が悪いという一点に尽きます。
培地選びに迷ったら、まず「pHに影響しないか」「水中で崩れないか」「多孔質か」「軽いか」の4条件で照らし合わせてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. アクアポニックスに赤玉土を使ってはいけない理由は何ですか?
A. 赤玉土は焼成していない天然の土で、常時水没する環境では数週間から数ヶ月というスピードで崩れます。崩れた微粒子がフィルターを詰まらせ、生物ろ過の働きを落としてしまうためです。
Q. 赤玉土以外なら何を使っても大丈夫ですか?
A. いいえ。ボラ土や溶岩石、パーライト、バーミキュライトにもそれぞれ弱点があります。産地によるばらつき、角の欠けやすさ、浮きやすさ、劣化の早さなど、素材ごとに確認すべき点が異なります。
Q. アクアポニックスの培地に養分は必要ないのですか?
A. 培地自体に養分を含ませる必要はありません。養分は魚の排泄物から供給されるため、培地の役割は植物を物理的に支え、ろ過バクテリアの住処になることに絞られます。
Q. 結局どの培地を選べばいいですか?
A. pHに影響しない・水中で崩れない・多孔質・軽いという4条件を安定して満たすハイドロボールが、消去法的にも有力な選択肢です。サイズごとの選び方は別記事で詳しく解説しています。
Q. 赤玉土を使うとすぐに魚に害が出ますか?
A. 即座に有害というより、微粒子の流出とろ過能力の低下がじわじわ進み、水質全体が不安定になることで間接的に魚や植物に負担をかけます。
Q. 盆栽で赤玉土がよく使われるのはなぜですか?
A. 盆栽や鉢植えでは、数年かけてゆっくり崩れることで通気性が変化し、根の張り方に良い影響を与えるためです。常時水没しない環境だからこそ活きる特性で、アクアポニックスの環境とは条件が異なります。
アクアポニックスは資本がある人のものだと思われがちですが、個人でも始められます。設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。鷲林寺アクアファームの実践の記録を
noteに書いています。見学に来られた方はのべ100人を超えました。
→ 個人で始めたアクアポニックスの費用と失敗をnoteで読む
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この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)
植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。
農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。