アクアポニックスは、始めてしまうと直しにくい農法です。水を張って魚を入れたあとで「置き場所を変えたい」「ろ過を増やしたい」と思っても、そのころには動かせなくなっています。
だからこの記事は、置く前に決めておくことだけを書きます。魚の選び方や野菜の選び方は、それぞれの記事に譲ります。ここで扱うのは、あとから変えられないところです。
- 置き場所をいちばん先に決めます。水を張ったあとでは動かせません。
- 確かめるのは4つ。電源・水源・床が水平か・日当たり。どれも後から直せません。
- ろ過は最初から多めに。うちは初年度に足りず、あとから増強しました。
- 魚・野菜・方式は、ここで決めなくて大丈夫です。あとから変えられます。
- 三つの適温が重なるところで組みます。魚・細菌・野菜のうち、先に決めたほうに残りが縛られます。
アクアポニックスを置く前に、4つ確かめる
この考え方は国連食糧農業機関の技術報告(2014年)にもまとめられています。始める前に置き場所と水量を決めておくべきだ、という点は共通しています。

ひとつめは電源です。ポンプは止められません。止まれば野菜への水が止まり、水面も動かなくなります。延長コードで引っ張ってくるのではなく、そこに電源がある場所を選んでください。屋外なら、雨のかからない差し込み口が要ります。
ふたつめは水源です。足し水は毎日のようにあります。バケツで運ぶ距離が10メートル違うだけで、半年後に続いているかどうかが変わります。ホースが届くところに置いてください(足し水と水換えの違い)。
みっつめは水平です。ここが見落とされます。傾いていると水位が片寄って、あふれる側と乾く側が同時にできます。栽培槽の中で、片方だけ根が乾くという形で出てきます。置く前に、水準器を1本当ててください。
よっつめは日当たりです。半日は当たるところが望ましい。足りなければ照明を足すことになりますが、そのぶん電気を使うものが1つ増えます。買う前に、動かせないかを先に考えてください(ベランダでできる家庭用)。
三つの適温が、重なるところで決める


アクアポニックスには、温度の好みが3つあります。魚、野菜、そして水をきれいにする微生物です。この3つは同じ水を共有しているので、どれか一つを最適にすると、残りが外れます。
魚は種類で幅が大きく違います。錦鯉は広い温度に耐えますが、ティラピアは高いほうへ寄り、チョウザメは低いほうへ寄る。ここで決めた幅が、そのまま設計の枠になります(魚の選び方)。
野菜も分かれます。葉物は低めが好きで、実ものは高めが要る。同じ栽培槽でレタスとトマトを両方いちばん良い状態にする、ということはできません(おすすめの野菜)。
そして忘れられやすいのが微生物です。17℃を下回ると働きが鈍りはじめ、10℃でほぼ止まります(硝化サイクルに出典つきで書きました)。ここが止まると、上の2つも止まります。冬に何も起きないように見えるのは、これが理由です(冬越し)。
決め方は単純です。先に魚を決めると、野菜のほうが決まります。逆でもかまいませんが、あとから片方だけ動かすことはできない、と思ってください。
あとから変えられないもの

買い足せるものと、作り直しになるもの。この2つを分けておくと、どこに時間をかけるべきかが決まります。
ポンプもエアレーションも水温計も、あとから買えます。足りなければ足せばいい。ところが置き場所・ろ過の量・培地・栽培槽の広さは、変えようとすると全部いったん止めることになります。
とくにろ過です。うちも初年度、ここが足りませんでした。硝酸塩と亜硝酸が増えていき、pHが下がっていきました。魚が出す量に、分解が追いついていなかったのです。
のちにろ過を増強して落ち着きましたが、先に入れておけば済んだ話でした。魚を増やす前に、ろ過を増やす。この順番だけは守ってください(硝化サイクル)。
ついでに書いておくと、同じ初年度に栄養のほうでもつまずいています。
魚の餌だけで野菜を育てようとしていたのですが、魚のフンから出るのはほとんどが窒素で、鉄・カリウム・カルシウムはあまり出てきません。ただしこれはろ過とは別の話です(野菜が育たない)。
培地も同じです。入れ替えるには全部出して洗うことになります。軽石は安いのですが、設置の前に洗う時間がとにかく長い。ハイドロボールは扱いやすい代わりに、大きくすると重さと入れ替えの労働が効いてきます(培地の選び方)。
方式・魚・野菜は、ここで決めなくていい

よくある「始める前のチェックリスト」には、方式・魚・野菜の選び方まで詰め込まれています。ただ、これらは置き場所と温度の幅が決まってから選ぶほうが早いです。
方式は3つあります。実ものを作りたいならメディアベッド、葉物を量産したいならDWC、場所が狭いならNFT。決め手は「初心者向けかどうか」ではなく「何を育てたいか」でした(3方式の選び方)。
魚と野菜は、温度の幅が決まればほぼ絞れます。それぞれ魚の選び方とおすすめの野菜にまとめました。餌の量と栽培面積の釣り合いは水換えが要らない条件に数値で書いてあります。
小さく始めるのは正しい。ただし楽ではない

小さく始めたほうが、失敗が安く済みます。それは確かです。
ただし「小さい=簡単」ではありません。水が少ないほど、水温も水質も動きやすくなります。同じ日に同じ場所へ置いても、小さい容器のほうが朝と昼の差が大きく出る。夏の高温も、冬の冷え込みも、直に来ます(夏の酸欠対策)。
だから小さく始めるなら、置き場所を選ぶことのほうが、より大事になります。直射日光が一日中当たる場所に小さい容器を置くと、夏に一日で壊れます。
立ち上げには、時間がかかる

組み上げたその日から野菜が育つわけではありません。水をきれいにする細菌が増えるまで、魚を入れる方法で4〜6週間、入れない方法で1〜3週間かかります(立ち上げ手順)。
ここを飛ばすと、数日から2週間ほどで魚が落ちます。始める時期を決めるときは、この数週間を先に足しておいてください。秋に始めると、立ち上げの途中で水温が下がって、そのまま春まで終わらないことがあります。
先に、いくらかかるかを見ておく
道具は買い足せますが、買い足せるということは、増えるということでもあります。最初にそろえるものと、あとから足すものを分けておくと、予定が立ちます(最初にそろえる4つと買う順番)。
動かし続ける費用もあります。ポンプは止められないので、電気代は毎月かかります。照明を足せば、そこにもう1つ乗ります。実例で計算したものを初期費用とランニングコストにまとめました。
よくある質問
始める前に、まず何を決めればいいですか。
置き場所です。水を張ってしまうと動かせないので、いちばん先に決めるしかありません。電源が取れるか、水を足しやすいか、床が水平か、日が当たるか。この4つを、置く前に見てください。
魚と野菜、どちらから決めますか。
どちらでもかまいませんが、先に決めたほうに、もう一方が縛られます。適温が重なる範囲でしか組めないからです。錦鯉のように広い温度に耐える魚を選ぶと、野菜の選択肢が広がります。
あとから変えにくいのは、どこですか。
置き場所、ろ過の量、培地の種類、栽培槽の広さです。とくにろ過は足りないと後で効いてきます。うちも初年度に足りず、あとから増強しました。
ろ過が足りないと、どうなりますか。
硝酸塩と亜硝酸が増えて、pHが下がっていきます。魚が出す量に、分解が追いつかない状態です。うちで実際に起きました。魚を増やす前に、ろ過を増やしてください。
日当たりが足りないときは、照明でいいですか。
足せますが、電気を使うものが1つ増えます。ポンプは止められないので、そこへ照明が乗る形です。買う前に、半日でも日の当たる場所へ動かせないかを先に考えてください。
小さく始めたほうがいいですか。
そのほうが失敗が安く済みます。ただし小さいほど水温も水質も動きやすいので、管理は楽になりません。「小さい=簡単」ではない、というところだけ注意してください。
計画にどれくらい時間をかけるべきですか。
決まっていませんが、作り直しになるものと、買い足せるものを分けられるまでは、手を動かさないほうがいいです。ポンプは買い足せますが、置き場所は作り直しになります。
まとめ
置く前に決めるのは、置き場所の4つ。電源・水源・水平・日当たり。水を張ったあとでは、どれも直せません。
そして三つの適温が重なる範囲で組みます。魚・野菜・微生物。どれか一つを最適にすると、残りが外れます。
あとから変えられないのは、置き場所・ろ過の量・培地・栽培槽の広さです。とくにろ過は、うちも初年度に足りずに増強しました。魚を増やす前に、ろ過を増やす。
→ 費用と失敗の記録をnoteで読む
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仕組みはアクアポニックスとは、方式は3方式の選び方、手順は立ち上げ手順へ。

