「いつ始めるのがいいですか」という質問に、季節ごとの良い点と悪い点を並べても答えになりません。どの季節にも良い点と悪い点があるので、読んでも結局どれを選べばいいのか決まらないからです。
決め方は別のところにあります。始める日ではなく、立ち上がる日から逆算することです。アクアポニックスには、組み上げてから数週間、待つしかない期間があります。そこを勘定に入れると、答えは自然に絞られます。
始める日ではなく、立ち上がる日から引く
この点は国連食糧農業機関の技術報告(2014年)でも扱われています。立ち上げにかかる期間が水温で変わることが、数字とともに整理されています。

組み上げた日から野菜が育つわけではありません。水をきれいにする細菌が増えるまで、魚を入れずに始める方法で1〜3週間、魚を先に入れる方法で4〜6週間かかります(立ち上げ手順)。
しかもこの日数は、水温で動きます。25〜30℃なら目安どおりですが、17℃を下回ると細菌の増え方が鈍りはじめ、10℃を下回るとほぼ止まります(硝化サイクルに出典つきで書きました)。
つまり寒い時期に始めると、日数の目安そのものが当てにならなくなります。3週間で終わるはずのものが、2か月たっても終わらない。これが、始める時期を考える本当の理由です。
季節ごとに、何が最初の山になるか

春(4〜5月)がいちばん動きやすいです。水温が上がっていく途中なので、立ち上げがそのまま進みます。そして最初の山になる夏の高温まで、備える時間が取れます。
真夏は、立ち上げ自体は速く進みます。水温が高いぶん細菌もすぐ増える。ただし酸欠と高温が同時に来ます。慣れる前にいちばん難しい季節に当たるので、待てるなら翌春のほうが楽です(夏の酸欠対策)。
秋(9月以降)は、途中で止まります。立ち上げの最中に水温が落ちていって、そのまま春まで終わらないことがある。何も起きない数か月を「失敗した」と思ってしまうのが、いちばんもったいないところです。
冬は、屋外では進みません。ただし屋内で加温するなら季節は関係なくなります。組むのを冬にして、外へ出すのを春にする、という手もあります。屋内で立ち上げておけば、春にはもう働く水になっています。
本当に効くのは、経験する順番


春に始めると、立ち上げ、梅雨の蒸れ、夏の高温、そして冬、という順で来ます。難しい季節が、少し慣れたころに来る並びです。しかも冬までに、一年分を一度は見られます。
秋に始めると、立ち上げの途中で冬に入ります。数か月、数値も景色も動きません。本当の始まりは翌春になるので、半年ぶん、経験が後ろにずれることになります。
どちらでも最終的にはたどり着きます。ただ途中でやめてしまう確率は、秋に始めたほうが高いと思います。手応えの無い期間が長いですし、何が原因で進まないのかも見えにくいからです。
春に始めるなら、夏の準備を同時にする

春の利点は「夏まで時間がある」ことなので、その時間を使わないと利点になりません。立ち上げのあいだは、水を眺めて待つだけになります。そこで夏の手を打っておいてください。
うちは初年度、ここで失敗しました。夏の温度を下げるつもりで、遮光率の高いネットをハウスの上に掛けたのですが、結果として野菜の生育が目に見えて落ちました。覆うのは水面だけでよかったのです(藻・コケの記事に書きました)。
やっておくといいのは3つです。水面に日が入らないようにすること、空気を動かす手を用意しておくこと、そしてろ過を先に増やしておくこと。夏は魚がよく食べるので、春に足りていたろ過が夏に足りなくなります(始める前に)。
梅雨は、間に必ず入る

春に始めると、夏の前に梅雨が来ます。立ち上がったばかりのところに長雨が来るので、ここで慌てる方が多いのですが、梅雨に出るのは水ではなく空気の側です。
うちで困ったのは、湿気で蒸れることと病害虫でした。魚のほうは特に変わりません。見るのは水槽ではなく、葉と葉のあいだです(梅雨の対策)。
立ち上げたばかりの時期と重なるので、数値が動かないのを梅雨のせいだと思わないでください。立ち上げの途中なら、動かないのが普通です。
最初の冬は、そのまま越せることが多い

春に始めて秋まで来たら、冬は身構えなくて大丈夫です。うちでは加温していません。ハウスの中の気温が氷点下2℃まで下がった朝も、外の水たまりには薄氷が張っていましたが、中の水は凍りませんでした。
冬にやることは2つだけです。水温が安定して15℃を切ったら餌を止めることと、野菜に寒冷紗をかけること。それ以外は手を出しません(冬越し)。
ただしこれは魚が錦鯉だからです。ティラピアを選ぶと、冬は加温が要ります。始める時期より、魚の選び方のほうが冬を決めます。
待っているあいだに、できること
「春まで待つ」と決めたなら、そのあいだにやれることがあります。むしろ、ここで差がつきます。春に思いついて動き出すより、支度が終わっているほうが速い。
置き場所を決めるのは、寒いうちにできます。電源・水源・水平・日当たりの4つは、水を張ったあとでは直せません(始める前に)。
道具をそろえる順番も決められます(最初にそろえる4つ)。方式を選び(3方式の選び方)、何を育てるかを決めておく(おすすめの野菜)。春に動き出したとき、迷う時間が消えます。
よくある質問
アクアポニックスを始めるなら、いつがいいですか。
4月から5月です。水温が上がっていく途中なので立ち上げが進みますし、最初の山になる夏の高温まで、備える時間が取れます。
なぜ立ち上げの時期を考える必要があるのですか。
組み上げたその日から使えるわけではないからです。水をきれいにする細菌が増えるまで、魚を入れずに始める方法で1〜3週間、魚を先に入れる方法で4〜6週間かかります。始める日ではなく、立ち上がる日から逆算してください。
秋に始めるとどうなりますか。
立ち上げの途中で水温が落ちていきます。10℃を下回ると細菌はほぼ増えないので、そのまま春まで終わらないことがあります。何も起きない数か月を「失敗した」と思ってしまうのが、いちばんもったいない。
真夏に始めるのはどうですか。
立ち上げ自体は速く進みます。ただし酸欠と高温が同時に来ます。慣れる前にいちばん難しい季節に当たるので、待てるなら翌春まで待つほうが楽です。
冬に始めることはできますか。
屋外では進みません。10℃を下回ると、細菌がほとんど増えないからです。ただし屋内で加温するなら、季節は関係なくなります。組むのは冬にして、外へ出すのを春にする、という手もあります。
始める季節で、そんなに変わりますか。
結果より、経験する順番が変わります。春に始めれば、梅雨、夏、冬の順に来ます。慣れたころに難しい季節が来る形です。秋に始めると、覚える前に止まる季節が来ます。
準備はいつから始めればいいですか。
置き場所を決めるところからなら、いつでもかまいません。電源・水源・水平・日当たりは、水を張る前にしか直せないので、寒いうちに見ておくと春がすぐ動けます。
まとめ
始めるなら4月から5月です。ただし理由は「春が良い季節だから」ではありません。立ち上げに数週間かかり、そのあいだ水温が要るからです。
秋に始めると、立ち上げの途中で水温が落ちて、春まで終わらないことがあります。真夏は立ち上げこそ速いものの、慣れる前に酸欠と高温が同時に来ます。
そして始める季節で本当に変わるのは、最初の1年でどの季節を先に経験するかです。春に始めれば、難しい季節が慣れたころに来ます。
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