容器をのぞいたら、1匹が底に沈んだまま動かない。指を近づけても逃げない。息をしているのかどうかも、遠目には分かりません。
このとき最初に確かめることは、原因ではありません。いま生きているかどうかです。生きていれば、そのまま放っておくのが正解という場合がかなりあります。動かないこと自体は、異常のサインとは限らないからです。

- まずエラを見てください。ごくゆっくりでも開閉していれば生きています。1分近く見て一度も動かなければ、死んでいる可能性が高いです。
- 水温が10℃を下回っていれば、底でじっとしているのは正常です。冬眠なので、手を出さないほうが残ります。
- 夜のはじめ(21〜23時ごろ)に動かないのも正常です。メダカが活発になるのは深夜で、野外の観察では1時以降に動きが増えます。
- 目が白く濁る、体が白っぽくなるなら死んでいます。体が傾く・横倒しになるのは、死んでいるか、かなり弱っているサインです。

底で動かないメダカが、生きているかを確かめる

見るところは3つです。順番があります。エラ、姿勢、反応の順で、刺激の弱いものから確かめてください。弱った個体をいきなり触ると、それだけで体力を削ります。


ひとつめはエラです。これがいちばん確かです。水温が低くて動けない状態でも、エラぶたはごくゆっくり開閉しています。私は、1分近く見て一度も動かなければ、死んでいる可能性が高いと判断しています。冬の個体は開閉の間隔が長いので、数秒見て判断しないでください。
ふたつめは姿勢です。生きている個体は、動いていなくても体が水平に保たれています。死んでいると、傾く、横倒しになる、腹を上に向ける、体が弓なりに反る、といった形の崩れが出ます。姿勢の崩れは、動かないことよりも確かなサインです。
みっつめは反応です。影を落とす、水面をゆらす、といった弱い刺激から試します。生きていればヒレをわずかに動かしたり、ゆっくり離れたりします。それでも分からないときだけ、網でそっとすくって抵抗があるかを見ます。
時間がたっていれば、見た目でも分かります。目が白く濁る、体の透明感が失われて全体が白っぽくなる、鱗が剥がれる、水カビが付く。これらが出ていれば、判断に迷う段階ではありません。
逆に言えば、これらが1つも出ていないなら、まだ結論を出さないでください。低水温では判断がつきにくく、生きている個体を処分してしまう事故が起きます。
生きている。ではなぜ底にいるのか
生きていると分かったら、次は理由です。底でじっとする理由は、大きく5つに分かれます。このうち3つは、手を出さないほうがいいものです。

水温が低い。いちばん多い理由です。15℃前後から動きが鈍りはじめ、10℃を下回ると底でじっとするようになります。これは異常ではなく、体力を使わないための正常な反応です。
夜だから。これも正常です。ただし「夜はずっと寝ている」わけではないことが、あとで書くように分かっています。
来たばかりだから。買ってきた直後や、容器を移したあとは、水の違いに慣れるまで底で動かないことがあります。私のところでは、たいてい数時間から半日で戻ります。戻らないなら水合わせが急すぎた可能性があるので、メダカの水合わせと立ち上げを見てください。
酸素が足りない。これは手を出す側です。ただし酸欠のときは底ではなく水面で口をパクパクさせることが多いので、底にいるなら可能性は下がります。見分け方はメダカのエラ病に書いています。
病気。これも手を出す側です。ただし病気なら、動かないこと以外にも症状が出ます。体表の白い点、ヒレの傷み、腹の張り。何も無くて動かないだけなら、まず水温を疑ってください。症状から絞るならメダカの病気の見分け方が早いです。
夜に底でじっとしているのは、むしろ正常です

「夜は寝ているから底にいる」とよく言われます。半分は当たっていますが、時間帯まで含めると実際とはずれています。
野生のメダカを野外で観察した研究があります。岐阜の小川で、2023年の7月下旬から8月上旬にかけて調べたものです。それによると、じっとしている行動は21時ごろから深夜1時にかけて減っていき、1時から5時のあいだは少ないままでした。泳ぐ量は逆に21時から増えて、1時以降は高いまま保たれています(2025年の研究(米国の科学誌に掲載))。
産卵が始まるのも深夜でした。オスが求愛する行動は0時から4時にかけて増えています。つまり、メダカにとっての活動の山は深夜です。
ここから言えることは単純です。夜のはじめに底でじっとしているのは、いちばん普通の姿です。その時間にのぞいて動かないからといって、何かあったと考える必要はありません。
ただし条件は見ておいてください。夏の、野外の、流れのある小川での観察です。水槽の中や、冬の容器にそのまま当てはまるとは限りません。それでも「夜だから動かない」を一段くわしくするには十分な材料です。
冬に底でじっとしているのは、冬眠です

水温が下がると、メダカは順を追って動かなくなります。15℃前後から鈍りはじめ、10℃を下回ると底でじっとするようになり、5℃前後ではほとんど動きません。この状態は放っておくのが正解です。
心配になるのは、水面に氷が張ったときです。ただし、水は4℃でいちばん重くなる性質があるので、冷えた水は上に、深さがあれば4℃前後の水が下に溜まります。水面が凍っても、底まで凍ることは容器に深さがあれば起こりません。メダカは底のその層にいます。
私のところでは、90cmの水槽で水面が凍った状態のまま越冬しています。凍ったこと自体は問題になりませんでした。むしろ危ないのは、氷を割ろうとして衝撃を与えることです。氷が張った朝に、割らずにどうするかはメダカの氷は割らないへ。
冬にやることは、ほとんどありません。餌は15℃を下回ったら減らして10℃以下は与えない、水を換えない、水位を見る。この3つだけです。メダカの冬の水換えとメダカの冬越しにまとめてあります。
ひとつ足すなら、隠れ家です。落ち葉が沈んでいると、そこに潜って冬を越します。
一匹だけ動かないとき
ここが判断の分かれ目です。全員が底にいるのか、1匹だけなのかで、意味がまったく変わります。

冬に全員が底でじっとしているなら、それが普通の状態です。心配は要りません。ところが冬なのに1匹だけ姿勢が崩れている、あるいは冬でもないのに1匹だけ動かないなら、その個体に何か起きています。
疑う順番があります。まず追われていないか。ほかの個体に追い回されると、体力を使って底に退避します。次に病気。体表とヒレを見てください。次に年齢。寿命は飼育下で2〜3年(屋外で冬に休ませれば3〜4年)で、年を取った個体は、動きが落ちてくることがあります(メダカは何個産んで何年生きる?)。
最後に泳げなくなっていないか。背が曲がっている、浮き袋の調子が悪いといった理由で、泳ぎたくても泳げないことがあります。この場合は治すより、水深を浅くして暮らしやすくするほうが現実的です。
手を出すなら、まず別の容器に移して落ち着かせます。塩水浴が効くのは体力の消耗を抑えたいときで、原因そのものを治す手段ではありません。手順はメダカの塩浴にあります。

死んでいた場合、今日やること

やることは2つだけです。取り出すことと、水を3分の1だけ換えること。
取り出すのを急ぐのは、放っておくと分解が始まって水を傷めるからです。1匹の死骸が、残りの個体の環境を崩す引き金になります。
全部の水を換えないでください。硝化バクテリアは水の中にもいますが、ろ材や底床、容器の壁の表面にいるぶんのほうがずっと多い。ですから全部換えてもゼロにはなりませんが、水の中にいたぶんは減ります。処理できる量が落ちれば、アンモニアは溜まる。そこへ水温やpHの急変とカルキが重なります。3分の1が目安です。理由はメダカが次々死ぬにくわしく書いています。
死骸は可燃ごみとして出すか、土に埋めてください。川や池に流すのは避けます。病気を持っていた場合、自然界に広げることになるからです。
そのうえで、残った個体を見てください。1匹で終わるか、続くかは、このあと数日で分かります。続くなら環境のほうに原因があります。
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台帳でできることを、もう少し詳しく
どこで見切るか|終わりの判断
線を決めておきます。底で動かない個体を見つけたら、エラを1分近く見ます。冬の個体は開閉の間隔が長いので、数秒では決めません。目の白い濁り、体の白っぽさ、鱗の剥がれ、水カビ、姿勢の崩れが1つも出ていないうちは、まだ結論を出しません。低水温では、生きている個体を処分してしまう事故が起きます。
手を出さない側の線もあります。水温が10℃を下回っていて全員が底にいるなら冬眠で、餌を与えず、水を換えず、水位を見るだけにします。夜のはじめに動かないのも普通の姿です。買ってきた直後や容器を移したあとなら、私のところでは数時間から半日で戻ります。半日たっても戻らないなら、水合わせが急すぎた側を疑います。
冬でもないのに1匹だけ動かない、冬なのに1匹だけ姿勢が崩れているなら、その個体を見ます。追われていないか、病気の症状がないか、年齢、泳げなくなっていないかの順です。手を出すなら、まず別の容器に移して落ち着かせます。塩水浴は体力の消耗を抑える手段で、原因を治すものではありません。背が曲がっている、浮き袋の調子が悪いなら、治すより水深を浅くして暮らしやすくします。
死んでいたら、取り出して水を3分の1だけ換えます。全部は換えません。そのあと数日、残った個体を見ます。1匹で終わるか続くかは、ここで分かります。続くなら原因は環境のほうにあるので、メダカが次々死ぬの手順で容器を点検します。
よくある質問(FAQ)
Q. 底で動かないメダカは死んでいますか?
A. まずエラを見てください。ごくゆっくりでも開閉していれば生きています。水温が低いと動きは極端に鈍りますが、エラは止まりません。あわせて姿勢も見ます。体が水平なら生きている可能性が高く、傾く・横倒し・弓なりに反るなら、死んでいるか、かなり弱っています。目が白く濁る、体が白っぽくなるのも死んだあとのサインです。
Q. メダカは夜、底で寝ているのですか?
A. 夜のはじめに動きが少ないのは正常です。ただし一晩中寝ているわけではありません。野外で観察した研究では、じっとしている行動は21時から深夜1時にかけて減り、1時から5時は少ないままでした。産卵も深夜に始まります。メダカの活動の山は深夜です。
Q. 冬にメダカが底で動きません。何かしたほうがいいですか?
A. 何もしないのが正解です。15℃前後から動きが鈍り、10℃を下回ると底でじっとします。5℃前後ではほとんど動きません。餌は15℃を下回ったら量と回数を減らし(私は1日1回)、10℃以下は与えません。水は換えず、水位だけ見てください。水面に氷が張っても、深さがあれば底までは凍りません。氷は割らないでください。
Q. 一匹だけ底で動かないのですが、どう考えればいいですか?
A. 全員が底にいるなら水温の影響で、1匹だけなら個体の問題です。追い回されていないか、体表やヒレに症状が出ていないか、年齢が高くないかを順に見てください。冬でもないのに1匹だけ動かないなら、その個体の不調を疑ってください。
Q. 動かないメダカを突いて確かめてもいいですか?
A. 最後の手段にしてください。先に影を落とす、水面をゆらすといった弱い刺激で試します。弱った個体を触ると、それだけで体力を削ります。網でそっとすくって抵抗を見るのは、他で判断がつかないときだけにしてください。
まとめ
メダカが底で動かないとき、まず確かめるのは原因ではなく生死です。エラ、姿勢、反応の順に、弱い刺激から見てください。エラがごくゆっくりでも動いていれば生きています。
生きているなら、次は水温です。10℃を下回っていれば冬眠で、手を出さないほうが残ります。夜のはじめに動かないのも正常で、メダカが本当に動くのは深夜です。
気にするべきなのは、1匹だけ様子が違うときだけです。そこだけ拾えれば、残りは放っておいて構いません。
次に見るのは、ここ
1匹ではなく何匹も死んでいるならメダカが次々死ぬへ。
冬を越す準備なら冬越しへ。
水面が凍ったなら氷は割らないへ。
鼻上げが続くならエラ病へ。

