メダカを買ってきた、あるいは通販で届いた。袋を開けて容器に放したら、数日のうちに次々と死んでしまった。メダカ飼育でもっとも多い失敗のひとつが、この「導入の失敗」です。
原因はたいてい2つに絞られます。水合わせをしなかったことと、まだ立ち上がっていない水に入れてしまったことです。どちらもメダカが弱かったわけではなく、迎え方の問題です。
逆に言えば、この2つさえ押さえれば導入直後の事故はほぼ防げます。手順はどちらもシンプルで、必要なのは少しの時間だけです。
- 導入直後にメダカが死ぬ原因は「水合わせをしなかった」「まだ立ち上がっていない水に入れた」のほぼ2つ
- 水合わせは①袋ごと30分浮かべる②10分おきに容器の水を5回ほど足す③魚だけをすくって移す
- 袋の水は絶対に容器へ入れない。輸送中にアンモニアがたまり酸素も減っている
- ろ過バクテリアが働くまで約4週間。1〜3週目は不安定なので2〜3日に1回、3分の1の水換えを
- 立ち上げには時間がかかるので、メダカを買う前に容器と水を用意しておくのが正解
- 迎えた当日はエサを与えない。食欲が落ちていて食べないうえ、残せば水を汚すだけになる
なぜ、いきなり放すと死ぬのか
お店や通販業者の水と、あなたの容器の水は別物です。水温はもちろん、pHや硬度といった水質も違います。人間でいえば、真夏に急に冷水へ飛び込むようなもので、体力のある個体でも大きな負担がかかります。
とくに危険なのがpHの急変です。急激にpHが変わると魚は強いショックを受け、その場では平気に見えても数日かけて弱っていきます。「買ってきた翌日は元気だったのに、3日後に死んだ」という場合、たいていこれが原因です。
同じ仕組みは水換えのときにも起こります。詳しくは水換え後にメダカが弱る5つの理由で解説しています。
水合わせの手順
袋の水は最後まで容器に入れません。魚だけを網ですくって移すのが、いちばん大事なところです。
① 袋ごと30分ほど浮かべる
まずは水温を合わせます。袋を開けずにそのまま容器へ浮かべ、30分から1時間ほど置いてください。これで袋の中と容器の水温がほぼ同じになります。
夏場に届いた場合は、袋の中がかなり高温になっていることがあります。その場合は直射日光の当たらない場所で少し休ませてから浮かべると、温度差がやわらいで負担が減ります。
② 10分おきに容器の水を足す
次が水質合わせです。袋の口を開け、容器の水をコップ1杯ほど袋に入れます。10分ほど待って、また1杯。これを5回ほど繰り返すと、袋の中の水が少しずつ容器の水に近づいていきます。
目安としては、もとの水が3分の1、足した水が3分の2くらいになれば十分です。通販で長時間かけて届いた個体や、動きが鈍く弱っている個体は、ここをさらにゆっくり、2〜3時間かけて進めてください。
コップで足すのが面倒なら、細いチューブで少しずつ水を落とす「点滴法」の道具もあります。手を離していても一定のペースで進むので、時間をかけたいときに便利です。
③ 魚だけをすくって移す
最後は網でメダカだけをすくい、容器へ移します。ここでやってしまいがちなのが、袋の水ごとザバッと入れてしまうことです。急いでいるとつい一緒に流し込みたくなりますが、これが最後の関門になります。
せっかく整えた飼育水に、汚れた輸送水を混ぜてしまうと台無しです。魚だけを網ですくって移します。
輸送中の袋の中は、フンによってアンモニアがたまり、酸素も減った状態になっています。せっかく整えた飼育水にこれを混ぜてしまうと、水質を悪化させるだけです。袋の水は流しに捨てて、魚だけを移してください。
このときのネットは、目が細かくやわらかいものを選んでください。硬いネットはヒレを傷つけたり、体表の粘膜をこすり取ってしまうことがあります。輸送で弱っている個体ほど、この差が効いてきます。

急ぐべき場面もある
ここまでが基本の手順ですが、時間をかけることが正解にならない場面もあります。袋の中の状態が悪いときです。
このサインが出ているときは、時間をかけること自体がリスクになります。原則より優先してください。
袋の中は密閉された小さな水たまりで、時間が経つほど酸素が減り、フンから出るアンモニアが濃くなっていきます。つまり浮かべている1時間のあいだにも、袋の中の環境は悪化し続けているのです。
元気な個体なら1時間くらいは十分もちますが、すでに弱っている個体にとっては話が変わります。丁寧に手順を踏んでいるあいだに間に合わなくなる、ということが実際に起こります。
まず袋を開ける
到着した袋の中でメダカが水面をパクパクしていたら、迷わず袋の口を開けてください。それだけで空気に触れて酸素が入ります。開けたまま容器に浮かべておけば、温度合わせを続けながら酸欠だけを先に解消できます。
さらに余裕があれば、洗面器のような口の広い容器に袋の水ごと移してください。水面が広がるぶん酸素を取り込みやすくなり、そのまま水合わせの作業台としても使えます。
短縮するのは水質合わせのほう
急ぐ場合でも温度合わせだけは省かないでください。水温差は最も直接的にショックを起こす要因で、ここを飛ばすと助かるはずの個体まで落とします。
削るなら水質合わせのほうです。10分おきに5回のところを、5分おきに3回に縮める。それでも、何もせずいきなり放すのとは結果がまったく違います。完璧にできないならやらない、ではなく、できる範囲でやると考えてください。
夏の高温便で届いたとき
夏場は袋の中が30℃を超えていることがあります。このとき急に冷やすのは禁物です。氷水につけるような冷やし方は、酸欠に加えて温度ショックまで与えることになります。
直射日光の当たらない涼しい場所に置き、袋を開けて酸素を入れながら、自然に下がるのを待ってください。水温と酸素の関係についてはエアレーションの記事で詳しく解説しています。
死着していた個体がいたら
複数匹のうち何匹かが死んでいた場合、その袋の水は通常よりも傷んでいます。生きている個体だけを早めに救い出すことを優先してください。
なお通販店の多くは死着保証を設けています。開封時の状態を写真に撮っておくと、あとの連絡がスムーズです。
そもそも、水は立ち上がっていますか
水合わせを丁寧にやっても、受け入れる側の水ができていなければ意味がありません。ここが初心者にとってもう一つの落とし穴です。
飼育容器の水は、ただの水では機能しません。メダカのフンから出るアンモニアを、バクテリアが亜硝酸から硝酸塩へと分解してくれることで、はじめて水は安定します。この状態を「立ち上がった」と表現します。
ろ過バクテリアが働きだすまで、およそ4週間かかります。この間は2〜3日に1回、3分の1の水換えを。
このバクテリアが十分に働きだすまで、およそ4週間かかります。とくに1週目から3週目にかけては有害物質が出やすい不安定な時期なので、この間は2〜3日に1回、3分の1ほどの水換えをして数値を薄めてやります。
「水を張ったその日にメダカを入れる」のが危険なのは、この分解の仕組みがまだ動いていないからです。最低でも2〜3日は置いてから、それも少ない数から入れてください。
立ち上げを早めたいとき
どうしても待てない場合は、市販の硝化バクテリア剤を使う方法があります。ゼロから自然に増えるのを待つより、立ち上がりが早くなります。
もっと確実なのは、すでに安定している容器から水やろ材を少し分けてもらうことです。バクテリアがそのまま引っ越してくるので、立ち上げの時間を大きく短縮できます。身近に飼っている人がいれば頼んでみてください。
立ち上がったかを確かめる
見た目では判断できないので、確かめたいなら試験紙を使います。アンモニアと亜硝酸がどちらも検出されず、硝酸塩だけが出ている状態なら、分解の流れができています。
導入後の1週間で見るところ
無事に移せたら、しばらくは観察に徹してください。迎えた当日はエサを与えないでください。
輸送と水合わせを終えたばかりのメダカは、強いストレスを受けた状態にあります。この段階では食欲そのものが落ちているため、与えても食べません。残ったエサはそのまま腐り、立ち上げ途中の不安定な水をさらに汚すことになります。
丸一日おいて、翌日から様子を見ながらごく少量ずつ再開します。全部食べきるようなら、そこから通常の量に戻していってください。1日食べなくてもメダカは弱りません。成魚なら数日の絶食は問題ないので、焦って与えるより待つほうが安全です。
翌日から、ごく少量ずつ与えはじめます。あわせて、次のような様子が出ていないかを見てください。ひとつでも当てはまれば、水質か水温に原因がある可能性があります。
- 水面近くで口をパクパクさせている
- 底でじっとして動かない
- ヒレをたたんだままにしている
- 体をこすりつけるような動きをする
導入直後に複数が同時に弱る場合は、個体の問題ではなく環境側に原因があります。メダカが次々死ぬ原因と対策もあわせて確認してください。
買う前に済ませておくこと
ここまで読んで気づかれたと思いますが、立ち上げには時間がかかるので、メダカを買う前に始めておくのが正解です。容器と水を先に用意し、数日置いてからメダカを迎えにいく。この順番にするだけで、導入の失敗はぐっと減ります。

これから始める方は、メダカ飼育の始め方で必要なものを確認してから進めると迷いません。
まとめ:時間をかけた分だけ、生存率が上がる
メダカの導入でやることは2つだけです。受け入れる水を先に用意しておくことと、袋から移すときに時間をかけること。どちらも道具より手間の問題です。
水温を合わせて30分、水質を合わせて1時間。この1時間半をかけるかどうかで、その後の数ヶ月が決まります。せっかく迎えたメダカです、最初だけはゆっくり進めてください。
よくある質問(FAQ)
Q. メダカの水合わせはどのくらい時間をかければいいですか?
A. 水温合わせに30分〜1時間、水質合わせに30分〜1時間が目安です。通販で長時間かけて届いた個体や弱っている個体は、水質合わせを2〜3時間かけるとより安全です。
Q. 買ってきた袋の水は容器に入れてもいいですか?
A. 入れないでください。輸送中の袋の中はフンによってアンモニアがたまり、酸素も減った状態です。袋の水は捨てて、網でメダカだけをすくって移してください。
Q. 水合わせをしないとどうなりますか?
A. 水温やpHの急変でショックを受けます。その場では平気に見えても数日かけて弱り、「翌日は元気だったのに3日後に死んだ」という結果になりがちです。
Q. 水槽の立ち上げには何日かかりますか?
A. ろ過バクテリアが十分に働きだすまで、およそ4週間かかります。とくに1週目から3週目は有害物質が出やすいため、2〜3日に1回、3分の1程度の水換えをして薄めてください。
Q. 水が立ち上がったかどうか、どう確認しますか?
A. 試験紙で測ります。アンモニアと亜硝酸がどちらも検出されず、硝酸塩だけが出ている状態なら、分解の流れができています。
Q. メダカを迎えた当日にエサは与えたほうがいいですか?
A. 当日は与えないでください。輸送と水合わせの直後は強いストレスで食欲が落ちており、与えても食べません。残ったエサが腐って、立ち上げ途中の水をさらに汚すことになります。翌日から様子を見ながらごく少量ずつ再開してください。

