容器をのぞくと、1匹が別の1匹をずっと追い回している。逃げるほうは端に寄せられて、餌の時間にも出てこない。
止めたほうがいいのか、放っておいていいのか。まずそこから決めます。見るところは1つで、追われているのがオスかメスかです。それだけで、意味がほぼ決まります。

- 追われているのがメスなら、たいてい求愛です。止める必要はありません。産卵はこの行動の先にあります。
- 追われているのがオスなら、争いです。メダカの攻撃はオスにかたよっていて、メスはほとんど攻撃しません。
- 手を出す目安は、逃げ切れているかどうか。追いかけが続いても、逃げ場があって餌を食べているなら放っておいて構いません。
- 効くのは、オスを減らすことと隠れ家を増やすこと。容器を広くするより、この2つのほうが早く収まります。

まず、追われているのはオスかメスか
同じ「追いかける」に見えても、中身は2つに分かれます。メスを追っているなら求愛、オスを追っているなら争いです。


これは見た目の解釈ではなく、体の仕組みとして分かれています。メダカのオスを調べた研究で、相手の性別を見分けたあと、求愛と攻撃はそれぞれ別の経路で決まっていることが示されました。片方の働きを止めたオスは、他のオスを攻撃せずに求愛しはじめ、もう片方を止めたオスは、メスに求愛せず攻撃するようになったと報告されています(NishiikeとOkubo、PNAS、2024年)。
つまりメダカ自身が、相手の性別で行動を切り替えています。飼っている側が「求愛かいじめか」で迷うとき、答えはたいてい追われている個体のほうに出ています。
そこで要るのが、オスとメスの見分けです。産卵期でなくても年中つきます。見るのは背びれと尻びれの2か所だけで、慣れれば一目で分かります。

オスは背びれが長く伸びて、後ろに深い切れ込みが入ります。尻びれは大きな平行四辺形で、角張って見えます。体つきもすらりとしています。
メスは背びれが短く、先が丸い。切れ込みはありません。尻びれは小さな三角形で、体つきはふっくらしています。卵を持っている時期はなおさら分かりやすくなります。
迷ったら尻びれを見てください。大きく角張っていればオス、小さく丸ければメスです。背びれより差がはっきり出るので、上から見下ろす角度でも判断できます。
メスを追っているなら、止めなくていい
オスがメスを追うのは、産卵の手前にある行動です。研究では、オスがメスの後ろについて泳ぎ、体を寄せる動きを何度も重ねたあとに産卵へ至ると記録されています。追いかけは、その手順の一部だということです。
ここで引き離すと、卵は採れません。春から秋にかけて容器の中が慌ただしいのは、うまくいっている証拠のほうです。
ただし度が過ぎることはあります。オスの数が多いと、1匹のメスに何匹も付くからです。追われ続けたメスは体力を使い、産卵そのものが鈍ります。卵が詰まったまま出せなくなることもあります。その状態についてはメダカのお腹が大きい・パンパンに書いています。
目安はオス1匹に対してメス3匹前後です。オスを減らすだけで、追いかけの量は目に見えて減ります。
オスを追っているなら、争いです
相手がオスなら話が変わります。こちらは餌や場所やメスをめぐる争いで、放っておくと弱いほうが少しずつ削られていきます。求愛と違って、終わりが来ません。
ここで知っておく価値があるのが、攻撃はオスにかたよっているということです。メダカの攻撃行動を調べた研究では、メスは攻撃をまったく、あるいはごくわずかしか示しませんでした(Yamashitaほか、eLife、2020年)。
つまり激しい追い回しが続いているなら、追っている側はほぼオスです。「メスがいじめている」と見えるときは、性別の見立てを確かめ直したほうが早い。
攻撃のときの動きも、求愛とは違います。研究で数えられているのは、追いかけること、ひれを広げて見せること、相手のまわりを回ること、体当たり、噛みつきです。体当たりや噛みつきが混じっていたら、求愛ではありません。
放っておいていい場合と、そうでない場合
追いかけがあること自体は、止める理由になりません。求愛でも争いでも、線引きは同じところにあります。見るのは、追われている個体が生活できているかどうかです。

放っておいて構わないのは、追われても逃げ切れていて、餌の時間には出てくるとき。多少追われても、食べていれば体力は保てます。
手を出すのは、次のどれかが出たときです。餌の時間に出てこない。いつも同じ個体だけが追われている。ひれが裂けている。底でじっとして動かない。
ひれの傷はそこから病気に進むことがあります。裂けた縁が白くにごってきたらメダカの尾ぐされ病を見てください。底でじっとしている場合の切り分けはメダカが底で動かないにまとめています。
収めるには、何をするか
効く順があります。上から順に試してください。下のほうほど手間がかかるわりに、効きは鈍くなります。

ひとつめは、オスを減らすことです。いちばん確実で、いちばん早い。オスが多いほど、求愛も争いも増えます。抜いたオスは別の容器へ移します。
ふたつめは、隠れ家を増やすことです。水草でも、浮き草でも、沈めた鉢でも構いません。効くのは、追う側の視線を切ることです。姿が見えなくなれば、追いかけはそこで終わります。広さを足すより、遮るもののほうが早く効きます。
みっつめは、匹数を見直すことです。狭いところに詰めるほど、逃げ場が消えて追いかけが増えます。容器あたりの適正な数はNVボックス13・22でメダカ飼育に書いています。
最後が、隔離です。追われている個体を別容器へ移すか、追っている個体を抜きます。抜くなら追っている側のほうが確実です。弱った個体を動かすと、移動そのものが負担になります。

季節で変わります
追いかけが増えるのは、水温が上がって産卵が始まる時期です。春から夏にかけて急に慌ただしくなるのは、正常な変化です。去年の秋は静かだったのに、と思う必要はありません。
逆に水温が下がると、追いかけはほとんど止まります。冬に静かになったからといって、弱ったわけではありません。その時期の見方はメダカの冬越しにあります。
ひとつ断っておくと、ここで挙げた研究はどちらも実験室の水槽で観察されたものです。屋外の容器は広さも水草の量も違うので、そのまま当てはまるとは限りません。それでも「オスかメスか」で見る筋は、そのまま使えます。
よくある質問(FAQ)
Q. メダカが追いかけ回すのは、放っておいていいですか?
A. 追われているのがメスなら、たいてい求愛なので止める必要はありません。産卵はこの行動の先にあります。追われているのがオスなら争いです。どちらの場合も、追われている個体が逃げ切れていて餌の時間に出てくるなら放っておいて構いません。餌に出てこない、同じ個体だけが追われる、ひれが裂けている、底でじっとしている。このどれかが出たら手を出してください。
Q. 求愛といじめは、どう見分けますか?
A. 追われている相手の性別で分かれます。メスを追っているなら求愛、オスを追っているなら争いです。メダカのオスを調べた研究では、相手の性別を見分けたあと、求愛と攻撃がそれぞれ別の経路で決まっていることが示されています。あわせて動きも見てください。体当たりや噛みつきが混じっていたら、求愛ではありません。
Q. メスがオスを追いかけることはありますか?
A. ほとんどありません。メダカの攻撃行動を調べた研究では、メスは攻撃をまったく、あるいはごくわずかしか示しませんでした。激しい追い回しが続いているなら、追っている側はほぼオスです。メスがいじめているように見えるときは、性別の見立てを確かめ直すほうが早いです。
Q. 追いかけを減らすには、何がいちばん効きますか?
A. オスを減らすことです。オス1匹に対してメス3匹前後を目安にしてください。次に効くのが隠れ家を増やすことで、水草でも浮き草でも構いません。追う側の視線を切ると、追いかけはそこで終わります。容器を広くするより、遮るもののほうが早く効きます。
Q. 隔離するなら、追われている側と追っている側のどちらを移しますか?
A. 追っている側を抜くほうが確実です。弱っている個体を動かすと、移動そのものが負担になります。追っているオスを別の容器へ移せば、残った個体はその場で落ち着きます。
Q. 季節によって追いかけの量は変わりますか?
A. 変わります。水温が上がって産卵が始まる春から夏に増え、水温が下がると止まります。冬に静かになるのは弱ったからではなく、正常な変化です。
まとめ
メダカが追いかけ回しているとき、最初に見るのは追われている個体の性別です。メスなら求愛で、止める必要はありません。オスなら争いです。
どちらの場合も、判断の目安は同じです。逃げ切れていて、餌の時間に出てくるなら放っておく。餌に出てこない、いつも同じ個体だけが追われる、ひれが裂けている。そこから先が手を出す場面です。
収めるなら、オスを減らすことと隠れ家を増やすこと。容器を広くするより、視線を遮るほうが早く効きます。
