メダカの様子がおかしい。ヒレが傷んでいる、動きが鈍い——そんなとき、最初に試せる応急処置が塩浴(塩水浴)です。薬を使わず、家にある塩でできて、メダカの体力の消耗を抑えられます。体に白い点がある(白点病)なら、薬と加温が基本で、塩浴はそれを支える補助です。
ただしやり方を間違えると逆効果になります。特に多いのが「濃すぎる」「短時間で終わらせてしまう」という失敗です。そして塩浴は万能ではありません。効く症状と、効かないまま時間だけが過ぎる症状があります。まずは正しい濃度と手順からです。
この記事の薬浴や塩水浴は、必ず別の容器で行ってください。そして薬を使った魚と水は、システムに戻せません。ろ過を担うバクテリアが減ること、野菜が根から吸うこと、植物に害が出ることが理由です。塩水も植物を枯らすので戻せません。判断の分かれ目はアクアポニックスの魚が病気に|治療した魚は戻していいのかにまとめました。

- 塩浴は0.5%(水1Lに塩5g)を別の容器で。期間は、私のところでは3〜7日を目安にしています。本水槽に塩を入れない。
- 効くのはヒレの傷み・動きの鈍さ・体力の消耗。白点・水カビ・松かさには薬が要る。
- 戻すときは1〜2日かけて真水へ。いきなり戻さない。
- 針子と小さな稚魚にはしない。予防のための定期的な塩浴も要らない。
- 迷ったら、0.5%を別容器で。濃くしない、長くしない。
メダカの塩浴とは|なぜ効くのか

塩浴とは、薄い塩水にメダカを数日間入れて回復を助ける方法です。「浴」という字から短時間つけるイメージを持たれがちですが、実際は塩水の容器でしばらく生活させるケアだと考えてください。
効くしくみ:浸透圧の負担を減らす
淡水魚であるメダカの体液には、わずかに塩分が含まれています。真水の中では、体内の塩分が外へ逃げ、逆に水が体内へ入り込もうとするため、メダカは常に体液の濃度を保つためにエネルギーを使っています。
水に少し塩を入れて体液との差を縮めてやると、この調整にかかる負担が減ります。浮いたエネルギーを回復や免疫に回せる——これが塩浴の一番の効果です。あわせて、塩に弱い一部の細菌や寄生虫の活動を抑える働きも期待できます。

メダカの塩水の作り方|濃度は0.5%、期間は3〜7日

ここで2つの誤解を解いておきます。まず、0.5%の塩水に10〜30分つけるだけでは、体力の回復には足りません。短時間でつける方法は濃い塩水を使う別のやり方で、弱ったメダカには向きません。0.5%の塩浴は、数日かけてじっくり効かせるものです。期間は、私のところでは3〜7日を目安にしています。
もう1つ、「1%にすればもっと効く」も誤りです。濃すぎるとメダカ自身が脱水状態になり、弱っている個体ほど負担が大きくなります。0.5%を超えないのが原則です。
弱り方が軽い場合や、稚魚・小さな個体には0.3%から始めても構いません。「濃く短く」ではなく「薄く長く」が塩浴の基本です。弱っている個体は、濃度そのものに耐える力が落ちています。効かせようと濃くするほど、助けたい相手の負担が増えるという逆の関係になります。
水量別・塩の量 早見表
計算式は「水の量(L)× 5 = 塩のグラム数(0.5%の場合)」です。よく使う水量をまとめました。計量スプーンを使うなら、小さじ1杯がおよそ5〜6gです。きっちり量れなくても、少なめに寄せておけば大きな失敗にはなりません。

使う塩の選び方
特別なものは必要ありません。添加物の入っていない塩であれば、スーパーの塩で十分です。見るところは1点だけで、袋の裏を見て塩以外に何も入っていないかを確かめます。うま味調味料や香辛料が入ったものは避けます。

塩浴の正しい手順

- 別容器を用意する…バケツ、発泡スチロール、プラケースなど何でも構いません。本水槽に直接塩を入れてはいけません(理由は後述)。
- カルキを抜いた水を入れる…水道水をそのまま使う場合はカルキ抜きを。汲み置きした水や、飼育容器の水を使ってもかまいません。
- 先に塩を溶かす…メダカを入れる前に、塩を完全に溶かしきります。溶け残った塩の粒に触れると体を傷めます。
- 水温を合わせてから移す…元の容器と水温を揃え、網ですくわずコップなどで水ごと移すと、体表を傷つけずにすみます。
- 弱いエアレーションをかける…塩水は酸素が溶けにくくなります。強い水流は弱った個体に負担なので、ごく弱くで十分です。
- 餌は控えめ、または与えない…消化に体力を使わせない方が回復が早く、水も汚れません。数日食べなくてもメダカは平気です。
- 3〜7日ようすを見る…毎日観察し、水が汚れたら塩水を換えます(次項)。
塩浴容器はどんなものを、どのくらいの大きさで?
専用のものを買う必要はありません。バケツ、発泡スチロール箱、プラケース、使っていない飼育容器——手元にあるもので十分です。ただし、洗剤で洗ったものは避けてください。成分が残っているとメダカに有害です。
水量は1匹あたり2Lを目安に、少なくとも2〜3Lは確保しましょう。水が少ないと水質も水温も急変しやすく、弱った個体にはかえって過酷になります。逆に大きすぎても塩が大量に必要になるので、扱いやすいサイズが実用的です。
置き場所は直射日光の当たらない、水温が安定するところ。屋外なら日陰、屋内なら窓際を避けます。飛び出し防止に、ゆるく蓋や網をかけておくと安心です。
塩浴中の毎日の観察ポイント

変化が見えるまでの日数には幅があります。3〜4日たっても変化がなければ、塩浴では対処できない症状かもしれません。そのときは塩を足したり期間を延ばしたりせず、症状を見直して薬に切り替えるか、原因が水質や水温のほうにないかを確かめてください。
水換えするときは「塩を足す」のを忘れずに
意外と見落とされるポイントです。塩浴中に水を換えると、抜いた水と一緒に塩も出ていきます。新しく足す水にも、その分の塩を溶かしてから入れてください。
たとえば5Lの塩浴容器で1L交換するなら、新しい1Lの水に塩5gを溶かしてから加えます。真水だけを足すと濃度が下がり、効果が薄れてしまいます。なお交換のたびに全部を入れ替える必要はありません。濁ってきたぶんだけを、同じ濃度の塩水と入れ替えるのがいちばん負担が軽い方法です。
元の容器への戻し方

回復したら真水に戻しますが、いきなり戻さないでください。急に濃度が変わると、それ自体がストレスになります。1〜2日かけて塩水を少しずつ真水に置き換えてください。
おすすめは1〜2日かけて薄めていく方法です。塩浴容器の水を1/3ほど捨て、同じ量の真水を足す。これを半日〜1日おきに数回繰り返せば、自然に濃度が下がります。十分薄まったら、水温を合わせて元の容器へ戻しましょう。
塩浴で治るもの・治らないもの
ここが最も大切なところです。塩浴は万能薬ではありません。効果が期待できる症状と、薬が必要な症状を見極めてください。塩は体の負担を軽くするケアです。効く寄生虫は一部だけで、病気を治す薬の代わりにはなりません。この違いを押さえておくと、塩浴で粘るべき場面と、早く薬に移るべき場面の判断がつきます。

・ヒレを畳んでいる、底でじっとしている
・尾ぐされ病の初期
・体表の軽い傷、外敵から逃げた後
・水質悪化や移動で弱っているとき
・購入直後のトリートメント、水換えの直後
・水カビ病(メチレンブルー等が必要)
・白点病(補助にはなるが薬+加温が基本)
・松かさ病(薬浴が必要)
・過抱卵・お腹の膨れ(塩では改善しません)
・内臓の疾患、転覆症状
3〜4日たっても改善しない、あるいは悪化している場合は、塩浴を続けず薬浴に切り替えてください。尾ぐされ病やエラ病のように進みの速い病気は、私は2〜3日で見切ります。塩浴を漫然と続けている間に手遅れになるのが、最も避けたい展開です。尾ぐされ病が疑われるときは進みが速いので、2〜3日で見切ります(尾ぐされ病の記事と同じ線です)。
症状別の詳しい対処は、それぞれの記事にまとめています。
→ 無料でメダカ台帳をひらいてみる
台帳でできることを、もう少し詳しく
絶対にやってはいけないこと

稚魚・針子に塩浴してもいい?
針子や小さな稚魚への塩浴はおすすめしません。体力が少ないぶん、濃度変化そのものが大きな負担になるからです。針子は体長4〜5mmしかなく、体が小さいぶん、濃度の変化の影響を受けやすいと考えられます。弱っているなら、まず水温と餌を整えるほうが確実です。

稚魚の調子が悪いときは、まず水質・水温・餌という基本を見直してください。針子が減る原因の多くは病気ではなく、餓死や水の急変です。針子を残すために毎日やることは、メダカの針子の育て方|最初の2週間、餌を切らさないだけで残る数が変わるにまとめました。
どうしても行う場合は0.3%以下にとどめ、短期間で様子を見ます。容器も小さくして、水温を合わせてから移してください。針子の場合は塩浴そのものより、水を清潔に保つことのほうが生存率に効きます。
予防としての塩浴は必要?
「病気予防のために定期的に塩浴を」と言われることがありますが、健康な個体に繰り返し行う必要はありません。塩浴自体が環境の変化であり、それ自体がストレスになるためです。

予防としての塩浴が向いている場面は3つあります。新しく迎えたメダカを慣らすとき、持ち込みの病気を防ぎ輸送の疲れを回復させる目的で使えます。それから、はっきりした病気の前の「なんとなく変」という段階。そして移動や水換えで強いストレスがかかった直後です。
逆に、健康な群れに定期的に塩を入れる必要はありません。塩は薬ではなく体力を助けるケアなので、必要のないときに続けても意味がなく、長く続ければ負担になります。
日常の健康維持でいちばん効くのは、塩浴よりも安定した水質と適切な水温、栄養のある餌です。塩浴はあくまで、崩れかけたときに戻すための手段です。崩れない飼い方ができていれば、塩を出す機会そのものが減っていきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 塩浴の濃度はどのくらいですか?
A. 0.5%が基本です。水1Lに対して塩5g、10Lなら50gが目安です。弱り方が軽い場合や小さな個体には0.3%(1Lに3g)から始めても構いません。0.5%を超えないようにしてください。
Q. 塩浴はどのくらいの期間行いますか?
A. 3〜7日が目安です。0.5%で数分から数十分つけるだけでは足りません。塩水の容器で数日間生活させて回復を待ちます。3〜4日たっても改善しない場合は薬浴への切り替えを検討してください。
Q. 本水槽にそのまま塩を入れてもいいですか?
A. いけません。水草が傷み、エビや貝には負担が大きくなります。ろ過バクテリアにも影響が出ます。塩浴は必ずバケツなどの別容器で行ってください。
Q. 塩浴中に餌はあげますか?
A. 控えめにするか、与えなくてかまいません。消化に体力を使わせないほうが回復が早く、食べ残しで水が汚れるのも防げます。メダカは数日食べなくても問題ありません。
Q. 塩浴中に水換えするときはどうすればいいですか?
A. 新しく足す水にも、あらかじめ同じ濃度になるよう塩を溶かしてから加えてください。真水だけを足すと濃度が下がって効果が弱まります。
Q. 元の水槽に戻すときの注意点は?
A. いきなり戻さず、1〜2日かけて塩水を少しずつ真水で薄めてから戻します。水温も合わせてください。
Q. どんな塩を使えばいいですか?
A. 添加物の入っていない塩なら、スーパーの粗塩や食塩で十分です。うま味調味料などが入った味塩は使いません。
どこで見切るか|終わりの判断
線を決めておきます。
私の設備でも、塩浴で戻ったことも、戻らなかったこともあります。どちらもあるから、効く症状と効かない症状を分けて書いています。
ヒレの傷み、動きの鈍さ、体力の消耗なら、塩浴。0.5%、3〜7日、別の容器で。
白い点が増える、綿が付いている、鱗が立っている。そのときは塩浴で粘らない。薬が要る症状です。
3〜7日で動きが戻れば、1〜2日かけて真水へ。いきなり戻さない。
3〜4日たっても変わらない、または悪化するなら、塩浴の範囲ではない。病気の見分けの記事へ。
針子と小さな稚魚には、しない。濃度の変化そのものが負担になります。
予防のための定期的な塩浴は、要らない。健康な個体には、塩浴自体がストレスです。
塩浴は、風邪をひいたときに暖かくして寝るのと同じで、体を楽にはしますが、病気を治す薬の代わりにはなりません。
まとめ
塩浴は、薬に頼る前にできるもっとも手軽で体にやさしい応急処置です。ポイントは3つだけ。どれも難しい判断は要らず、量と日数と容器を守るだけです。迷ったときは、この記事の早見表に戻ってきてください。
覚えることは3つだけです。0.5%(水1Lに塩5g)で、濃くしない。3〜7日入れっぱなしにして、短時間で済ませない。そして必ず別の容器で行い、本水槽に塩を入れない。この3つを守れば、塩浴で失敗することはほとんどありません。
そして忘れてはいけないのが、塩浴で治らない病気があるということ。数日たっても改善しないなら、ためらわず薬浴に切り替えてください。判断が早いほど、助かる確率は上がります。
次に見るのは、ここ
症状から病名をたどるなら病気の見分け方の早見表へ。
鼻上げが続くならエラ病へ。
ひっくり返って泳ぐならメダカの転覆病へ。
ヒレがボロボロなら尾ぐされ病へ。
白い点が出たなら白点病とラメの違いへ。
白い綿のようなものが付いているなら水カビ病へ。
お腹が膨らんでいるならお腹がパンパンへ。

