アクアポニックスを始めると、たいてい藻が出ます。水槽の壁が緑になり、配管の内側がぬるつく。そのほとんどは放っておいて大丈夫です。鷲林寺アクアファームでも掃除していません。
ただし1か所だけ、放っておけないところがあります。ポンプの吸込口です。ここに藻が生えると、水流が落ちます。その順に書きます。
壁の藻は、放っておいていい
この点は国連食糧農業機関の技術報告(2014年)でも扱われています。藻は光と養分があれば必ず出るもので、遮光が基本の対処になると書かれています。


水槽の壁に付いた藻は、見た目の問題です。それ自体で魚が弱ったり、野菜が枯れたりすることは、まずありません。見えているところが緑になると気になりますが、緑になったこと自体は不調のしるしではありません。
むしろ掃除するほうが水を動かします。こすれば濁りが出ますし、剥がれた藻が沈んで、それが分解されるぶんの負担も増えます。見た目のために水質を揺らすのは、割に合いません。
うちでやっていたのは、貯水槽に出た大きいかたまりを取り除くことだけです。壁はそのままにしていました。それで困ったことは、ありませんでした。

ポンプの吸込口だけは、別
実害が出たのは、ここだけでした。吸込口に藻が生えて、水流が弱くなったのです。藻そのものが悪さをしたわけではなく、水の通り道が狭くなったのが原因です。
水流が落ちると、困るのは1つではありません。ろ材に水が回らなくなるのでろ過が落ち(硝化サイクル)、水面が動かなくなるので酸素の取り込みも落ちます(夏の酸欠)。1か所詰まると、2つが同時に落ちるということです。
しかも、じわじわ落ちるので気づきにくい。止まれば分かりますが、弱くなっただけだと、見た目には回り続けています。気づいたときには、ろ過も酸素もしばらく落ちたままだった、ということになります。
見張り方は簡単です。戻り口から落ちてくる水の勢いを、たまに見る。先週より細くなっていたら、吸込口を見てください。壁の藻を毎日眺めるより、こちらのほうがずっと役に立ちます。
藻は、野菜と同じものを食べている

藻が出る条件は2つだけです。栄養と、光。やっかいなのは、その栄養をこちらがわざと入れていることです。魚の出したものを野菜に届けるのがアクアポニックスなので、水に栄養があるのは当たり前で、減らすわけにいきません。
だから藻は「汚れ」ではありません。野菜と同じものを食べている競争相手です。藻がよく育っているということは、その栄養が野菜に届かず余っている、とも読めます(野菜が育たない)。そして、こちらで減らせるのは、もう一方の光だけです。
光を切るのは、水面だけにする


覆っていいのは、貯水槽、配管、ポンプのまわり、そして株のあいだから見えている水面です。培地を敷いた栽培槽で藻が出にくいのは、培地が水面のふたになっているからです。
気をつけたいのは、覆いすぎることです。うちでは初年度、遮光率の高いネットをハウスの上から掛けました。結果は野菜の生育が落ちました。藻より先に、野菜のほうが光を失ったのです。
切るのは水面。葉に当たる光は切らない。この線引きさえ守れば、遮光は効きます。貯水槽にふたを掛けるだけでも、藻の出方はずいぶん変わります。
ふたは、光を通さないものなら何でもかまいません。コンテナのふた、板、黒いシート。掛けたあとも、中が見られるようにしておくことだけ気をつけてください。ふたをすると、魚も水位もそのぶん見えなくなります。
市販の遮光ネットを使うなら、遮光率は高いほう(80〜90%)を選んで大丈夫です。葉に掛けるものなら高い遮光率は害になりますが、ここで掛ける相手は水面です。光を奪う相手が藻しかいないので、遮るほど効きます。
同じネットでも、掛ける場所で正解が逆になる、ということです。水面に掛けるなら濃いほうがよく、葉の上に掛けるなら初年度のうちと同じことが起きます。買ったあとで掛ける場所を間違えないでください。
生き物に食べさせるのは、どこまで効くか


まず、よくすすめられるコケ取りの魚は使えません。オトシンクルスもサイアミーズフライングフォックスも熱帯の魚で、屋外で冬を越せないからです。加温するなら、その電気代のほうが藻より高くつきます。
オトシンネグロは屋外で越冬したという話もあります。ただ、すすめはしません。越せる年と越せない年があるものを、藻のために入れる理由が弱いからです。
そして、錦鯉を飼っているなら、エビも貝もおやつになります。入れた瞬間に食べられて終わりです。入れるなら、魚のいない貯水槽に限ります。
うちでは、貯水槽にヒメタニシとミナミヌマエビを入れていました。ただ、効いたかどうかは分かりませんでした。
藻が増える速さと、食べる速さのつり合いなので、数が足りなければ追いつきません。もっと大量に入れれば違ったのかもしれませんが、そこまでは試していません。
ヒメタニシは水の中の細かい濁りも吸ってくれる貝です。増えすぎたときの間引き方はヒメタニシが増えすぎる原因と対策にまとめました。
グリーンウォーターは、あまり起きない

水が緑色に濁るグリーンウォーターは、アクアポニックスではあまり起きません。うちでも、なったことはありません。理由は2つあると考えています。水が止まらずに流れ続けていること。そして、藻の材料になる栄養を野菜が引き取っていることです。
止まった容器で起きるグリーンウォーターとは、話が別です。メダカを飼っている方がよく見るあれについてはメダカにグリーンウォーターは必要?を見てください。あちらは、むしろ役に立つ場面があります。
どうしても取りたいときは
来客があるときなど、どうしても取りたい場面はあります。そのときも、全部いっぺんにやらないでください。一度に広い面をこすると、剥がれた藻がまとめて沈み、それが分解されるぶんの負担が一気に乗ります。
とくにろ材は洗わないこと。ろ材に付いているのは藻だけではなく、水をきれいにしている細菌そのものです。一度に全部洗うと、汚れではなく住民を流すことになります(硝化サイクル)。
壁をこするなら、その日は餌を控えめにします。濁りが落ち着くまで一日ほどかかりますし、そこへ餌が乗ると水が動きます。水質の見方は水質管理へ。
水を換えて藻を薄めよう、というのは筋が悪いです。藻は水の中だけでなく壁に付いているので、換えても残ります(水換えは要らない)。水を減らすぶん、水質のほうが動きます。
よくある質問
水槽の壁に付いた藻は、掃除したほうがいいですか。
急いで取らなくて大丈夫です。見た目の問題であって、それ自体で魚や野菜が弱ることはほとんどありません。うちでは掃除していません。こすると濁りが出ますし、水の中を動かすほうが負担になると考えたからです。
では、どこを見ればいいですか。
ポンプの吸込口です。ここに藻が生えると水流が弱くなります。実際に、それで流れが落ちたことがありました。流れが落ちると、ろ過も酸素の取り込みも同時に落ちます。壁の藻より、こちらのほうがずっと大事です。
藻が出るのは、水が汚れているからですか。
汚れているというより、栄養が余っています。アクアポニックスの水は野菜を育てるためにわざと栄養を含ませてあるので、そこへ光が当たれば藻が出るのは自然なことです。藻が目立つときは、その栄養が野菜に届いていない可能性もあります。
遮光すれば止まりますか。
光を切れば減ります。ただし切る場所を選んでください。全体を覆うと、野菜のほうが育たなくなります。覆うのは貯水槽や配管、株のあいだから見えている水面までにします。
コケを食べる魚を入れれば解決しますか。
解決はしません。よくすすめられるオトシンクルスなどは熱帯の魚で、屋外の冬を越せません。また、錦鯉を飼っているなら、エビも貝も食べられてしまいます。入れるなら、魚のいない貯水槽です。
ヒメタニシやミナミヌマエビは効きますか。
うちでは貯水槽に入れていましたが、効いたかどうかは分かりませんでした。藻が増える速さと、食べる速さのつり合いの問題なので、数が足りなければ追いつきません。
グリーンウォーターになったらどうすればいいですか。
アクアポニックスでは、あまり起きません。水が流れ続けていて、栄養も野菜が引き取っているからです。うちでも緑になったことはありません。止まった容器で起きるグリーンウォーターとは、話が別だと考えてください。
まとめ
藻はほとんど放っておいて大丈夫です。掃除するほうが水を動かしますし、緑になったこと自体は不調のしるしではありません。
見るのは1か所だけ。ポンプの吸込口です。ここに藻が生えると水流が落ち、ろ過と酸素が同時に落ちます。戻り口から落ちる水の勢いを、たまに見てください。
減らしたいなら、光を切ります。ただし覆うのは水面だけ。全体を覆うと、藻より先に野菜が止まります。初年度にハウスごと遮光して、それを確かめました。
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