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アクアポニックスのリン酸不足|疑うのは、いちばん最後でいい

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アクアポニックスのリン酸不足。疑うのはいちばん最後でいい アクアポニックス

アクアポニックスでリン酸を疑うのは、いちばん最後でいいです。葉物が中心なら、まず問題になりません。

正直に書きます。鷲林寺アクアファームでは、リン酸で困った経験がありません。というより、リン酸が原因だと分かる場面が無かった、というほうが近いです。

実ものを続けて育てていなかったこともありますが、それ以上に、リン酸不足の症状が他の原因と重なりすぎていて、見ただけでは決められないのです。

だからこの記事は、症状を並べて「足しましょう」と言うものにはしません。どういう順番で疑えば、リン酸にたどり着けるのか。そこを渡します。

実がつかないとき、疑う順番

この点は国連食糧農業機関の技術報告(2014年)でも扱われています。実ものを育てるときに要る養分が、葉物より多いという点は共通しています。

アクアポニックスで実がつかないときに疑う順番。光・pHと水の数値・魚と野菜の釣り合い・窒素や鉄やカリウムやカルシウム・最後にリン酸
光、pHと水の数値、魚と野菜の釣り合い、ほかの養分。ここまで潰して、残ったらリン酸。
アクアポニックスで実がつかないときに潰す順番。光・pHと水の数値・魚と野菜の釣り合い・ほかの養分・最後にリン酸
上から順に、確かめやすいものから潰していく。

最初に見るのは光です。実ものは、光の量がそのまま収穫量になります。葉物なら弱い光でも形になりますが、トマトやピーマンは光が足りないと花が落ち、実が止まります。遮光を掛けすぎていないか、まずそこを見てください。

次が水の数値です。pHが6.0から7.0に入っているか。アンモニアと亜硝酸が出ていないか。ここが崩れていると、どの養分も吸えません(硝化サイクル)。足す前に測る、というのはこの段階の話です。

魚と野菜の釣り合いも見ます。魚が少なければ、リン酸だけでなく全部が足りません。実ものは葉物より養分を使うので、同じ魚の数でも、実ものに切り替えた途端に足りなくなることがあります。

そのあとが、窒素・鉄・カリウム・カルシウムです。この4つは症状の出る場所で見分けがつきます。

古い葉から黄色くなるなら窒素、新しい葉が白っぽくなるなら鉄、葉のふちが枯れるならカリウム、実の尻が黒くなるならカルシウム(足りない栄養は3つ)。目で判じられるのは、ここまでです。

リン酸の症状は、なぜ特定しにくいのか

リン酸不足の症状は他の原因と重なる。下葉の赤紫・花が少ない・実が小さい・根の張りが弱い
どれも「リン酸だけ」の症状ではない。だから見ただけでは決められない。

よく挙げられるのは、下の葉が赤紫になることです。たしかにリン酸が足りないと出ます。ただし、気温が低いときにも同じ色になりますし、根が傷んで吸えていないときにも出ます。春先の寒い時期なら、まず気温を疑うほうが当たります。

花が少ない、実が付かない。これも光不足で起きますし、窒素が多すぎて葉ばかり茂っているときにも起きます。そもそも受粉していないだけ、ということもあります。室内やハウスで虫が入らない環境なら、揺すってやるだけで結果が変わることがあります。

実が小さいまま止まるのはカリウム不足でも起きますし(カリウム不足)、根の張りが弱いのは根腐れや酸素不足と見分けがつきません。つまり、リン酸だけに出る症状というものが無い。これが特定しにくい理由です。

測っても分からないことがある

その前に知っておくことがあります。リン酸は、水の中にあっても吸えないことがあります。pHが上がるとカルシウムと結びついて沈み、根が取り込める形ではなくなるからです。吸いやすいのはpHが6から7のあたりで、この範囲を外れると、入っているのに足りていないように見えます。

だから足す前に見るのはpHです。pHが高いまま足しても、沈んで底にたまるだけで野菜には届きません。先にpHを下げるという順番にしています。これは測っていなくても言えることです。

そのうえで数値で確かめたいなら、リンの試薬を別に用意することになります。アンモニア・亜硝酸・硝酸塩・pHの4つは試験紙で読めますが、リンは含まれていません。

測らないなら、順番に潰していくしかありません。光・水の数値・魚の数・ほかの養分。ここまで全部やって、それでも実が付かない。そのときに初めて、リン酸を足して様子を見ます。

足すときは少量からです。入れすぎると藻が増えます。水が緑になる、栽培槽の壁がぬるぬるしてくる。こうなると今度は別の手間が増えますし、ほかの養分の吸収も妨げます。足りないか分からないまま入れるのが、いちばんやってはいけないことです。

アクアポニックスの栽培槽で育つ葉物野菜
葉物が中心なら、リン酸で困ることはまず無い。見えてくるのは、実ものを続けたときから。

葉物と実もので、話が変わる

葉物中心なら、リン酸はまず問題になりません。魚の餌にはリンが含まれていて、排泄物と食べ残しからある程度は供給されます。レタスや小松菜が育っているなら、その水でリン酸が枯渇していることは考えにくいです。

変わるのは実ものに手を出したときです。トマトやピーマンは、花を咲かせて実を太らせるぶん、葉物より多くの養分を使います。同じ魚の数のまま実ものに切り替えると、そこで足りなくなることがあります。

うちで実ものを続けなかったのは、難しかったからでもあります。葉物は水と光さえ整えば形になりますが、実ものは光の量、養分の総量、受粉、温度と、揃えるものが増えます。

そのぶん、うまくいかなかったときに何が原因だったのかも分かりにくくなります。育てる野菜の選び方はおすすめの葉物と実物にまとめました。

よくある質問

アクアポニックスでリン酸は不足しますか。

葉物が中心なら、まず問題になりません。魚の餌にはリンが含まれていて、排泄物と食べ残しからある程度は供給されるからです。不足が問題になるのは、トマトのような実ものを続けて育てたときです。

下の葉が赤紫になったら、リン酸不足ですか。

断定はできません。リン酸不足で出る症状ですが、気温が低いときにも、根が傷んでいるときにも同じ色になります。ほかの原因を先に潰してから考えてください。

リン酸不足は、どうすれば確かめられますか。

試薬で測るのが確実です。ただし家庭の規模でリンの試薬まで持っている人は多くありません。測らないなら、光・pH・魚の数・ほかの養分を先に潰して、それでも実が付かないときに少量から足して様子を見る、という進め方になります。

リン酸を足しすぎるとどうなりますか。

藻が増えます。水が緑になったり、栽培槽の壁がぬるぬるしてきたりします。ほかの養分の吸収を妨げることもあります。足りないかどうか分からないまま入れるのは、いちばんやってはいけないことです。先にpHを6から7に入れて、それから光・魚の数・ほかの養分を順に潰してください。

実が付かないとき、最初に何を見ればいいですか。

光です。実ものは、光の量がそのまま収穫量になります。次にpHと水の数値、それから魚と野菜の釣り合い。そのあとで窒素・鉄・カリウム・カルシウムを見て、残ったらリン酸、という順番が現実的です。

まとめ

リン酸を疑うのは、いちばん最後でいいです。葉物中心なら、まず問題になりません。魚の餌からある程度は供給されるからです。

リン酸だけに出る症状というものがありません。下葉の赤紫も、花が少ないのも、実が小さいのも、根が弱いのも、全部ほかの原因で起こります。だから見ただけでは決められません。

順番に潰してください。光、pHと水の数値、魚と野菜の釣り合い、そして窒素・鉄・カリウム・カルシウム。ここまでやって残ったら、そこで初めて少量から足す。分からないまま入れると、今度は藻に悩むことになります。

設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。個人で始めたアクアポニックスの記録をnoteに書いています。
→ 費用と失敗の記録をnoteで読む

あわせて読みたい:アクアポニックスの栽培

育たない原因の全体は野菜が育たない、足りない養分は足りない栄養は3つ、実の尻が黒くなるときはトマトの尻腐れへ。

この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)

植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。

農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。
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