アクアポニックスの培地には、2つの役割があります。種をまくためのものと、栽培槽に敷いて株を育てるためのものです。
スポンジとロックウールが前者、ハイドロボールと軽石が後者。役割が違うので、4つを並べて「どれがいいか」と比べても答えは出ません。苗を育てるポットと、畑の土を比べるようなものです。
鷲林寺アクアファームでは、スポンジで発芽させてハイドロボールへ、スポンジから軽石へ、ハイドロボールに直播き、軽石に直播きと、4通りを試しました。その結果も書きます。
培地には、2つの役割がある
この点は国連食糧農業機関の技術報告(2014年)でも扱われています。種をまく培地と、育てる培地を分ける考え方が示されています。


よく見かけるのは、こういう並べ方です。4つを横に並べて、どれがいいかを比べる。ただ、この見方だと選べません。スポンジと軽石は、そもそも比べるものではないからです。

種をまくための培地は、小さな塊です。スポンジやロックウールの立方体に切れ込みが入っていて、そこへ種を落とします。芽が出たら、その塊ごと栽培槽へ移します。使うのは、芽が出るまでの数週間だけです。
育てるための培地は、栽培槽に敷きつめるものです。ハイドロボールや軽石のような粒を入れて、その隙間に根を張らせて株を支えます。収穫までずっとそこにあり、洗えば次の作にも使えます。
つまり、選ぶときは2回選ぶことになります。「種をまくのに何を使うか」と、「栽培槽に何を敷くか」。この2つは別々に決めてかまいません。
種は、直にまかないほうがよい

栽培槽に種を直にまくと、粒のあいだの隙間に落ちます。ハイドロボールでも軽石でも同じでした。一度奥に入ってしまうと、光も届かず、そのまま出てきません。
やっかいなのは、それが分からないことです。芽が出てこないとき、隙間に落ちたのか、まだ出ていないだけなのか、見ただけでは判じられません。まき直すかどうかも決められないまま、日が過ぎていきます。
スポンジにまけば、そこが解決します。切れ込みに種を入れるだけで、芽が出たかどうかが目で見えます。出なかった塊は、そのまま取り替えられます。
実際、発芽する数もスポンジのほうが多かったです。一株ずつ移す手間はかかりますが、まいた種が無駄にならないぶん、結果としては早い。面倒なほうを選んだほうがいい場面が、ここです。
移すとき、根は傷まないのか
一部ちぎれることはありました。スポンジから根が外へ出ている状態で運ぶので、当たれば切れます。
ただ、そのあと枯れたということはありませんでした。大きな問題にはならなかった、というのが実感です。学術的に確かめたわけではないので、あくまで使ってみての感触として読んでください。
気になるなら、根が伸びすぎる前に移すのが確実です。スポンジの底から白い根が2〜3cm出たあたりが、扱いやすい大きさです。伸ばしすぎると絡まって、外すときに必ず切ることになります。
栽培槽には、何を敷くか


ハイドロボールは、粒が丸くて株を支えやすい培地です。洗えば何年も使えますし、洗浄済みのものが売られているので、買ってきてそのまま敷けます。欠点は値段が高いことです。
軽石は安いです。広い面積を埋めるとき、値段の差は大きく効きます。ただし、安いのは値段だけでした。
軽石が、思ったより安く済まない理由

いちばん効いたのは、設置の前に洗う時間です。濁らなくなるまで水を替えて洗うのですが、これがとにかく長い。量が多いほど比例して延びるので、「安く広く埋められる」という利点が、そのまま手間になって返ってきます。
使いはじめてからも粉が出ます。角が欠けて、少しずつ削れていくためです。土で育てているなら雨で流れて終わる話ですが、アクアポニックスは同じ水を回すので、出た粉は配管とポンプに回ります。水が入れ替わらない仕組みの弱点が、ここにも出ます。
減っていくので、足し足しにもなります。触るたびに削れるので、植え替えのたびに少しずつ量が減っている。長く使うなら、この目減りも数に入れてください。
それでも軽石が向く場面はあります。広い面積を最初に埋めるとき、あるいは試しに作ってみて、続けるか分からない段階のときです。洗う時間を先に見積もったうえでなら、選ぶ理由はあります。
ロックウールについて
うちでは使っていません。だから、良いとも悪いとも書けません。
一般には、水を含みやすく発芽が揃いやすいとされます。水耕栽培では広く使われている培地です。ただ、うちで比べたわけではないので、スポンジとどちらが良いかについては何も言えません。
気になるなら、少量を買って両方まいてみるのがいちばん早いです。発芽するまでの数週間で答えが出ます。培地は、記事を読むより試したほうが早い部類のものです。
結局、どう組み合わせるか

種はスポンジにまく。芽が出たら栽培槽へ移す。栽培槽はハイドロボール。4通り試した結論は、これです。
直播きは、種が隙間に落ちるので割に合いません。手間を惜しんだつもりが、まき直しと待ち時間で結局よけいに時間を使います。
軽石は、面積と予算しだいです。洗う時間を数えて、それでも安いと思えるなら選んでください。立ち上げの手順はアクアポニックスの立ち上げ手順、育てる野菜の選び方はおすすめの葉物と実物にまとめてあります。
よくある質問
スポンジとロックウール、どちらがいいですか。
うちではスポンジを使っていました。ロックウールは使ったことがないので、比べた話はできません。どちらも種をまくための培地で、芽が出たらそのまま栽培槽へ移す、という使い方は同じです。
種を栽培槽に直にまいてもいいですか。
すすめません。粒のあいだの隙間に落ちてしまいます。ハイドロボールでも軽石でも同じでした。落ちたのか、まだ芽が出ていないのかも分からなくなります。スポンジにまいたほうが、実際に発芽する数も多かったです。
ハイドロボールと軽石、どちらがいいですか。
手間まで数えるならハイドロボールです。軽石は安いのですが、設置の前に洗うのがとにかく長く、使っているあいだも粉が出ます。広い面積を安く埋めたいときには軽石も選択肢になりますが、洗う時間を先に見積もってから決めてください。
軽石の粉は、何が困るのですか。
同じ水を回すので、流れて消えないことです。土で育てているなら雨で流れて終わりますが、アクアポニックスでは配管とポンプに回ります。設置前によく洗っておけば減りますが、使っているあいだも角が欠けて出続けます。
スポンジから移すとき、根は傷みませんか。
一部ちぎれることはありました。ただ、そのあと枯れたということはなく、大きな問題にはならなかったというのが実感です。学術的に確かめたわけではないので、あくまで使ってみての感触として読んでください。
培地は使い回せますか。
ハイドロボールは洗えば何年も使えます。軽石も使えますが、角が欠けて減っていくので足し足しになります。スポンジは使い捨てです。根が絡んでいるので、外すと株を傷めます。
まとめ
培地は2種類あります。種をまくもの(スポンジ・ロックウール)と、栽培槽に敷いて育てるもの(ハイドロボール・軽石)。役割が違うので、同じ土俵で比べないでください。
種は直にまかない。粒の隙間に落ちます。スポンジにまいたほうが、発芽する数も多く、出たかどうかも目で分かります。移すとき根が少しちぎれても、大きな問題にはなりませんでした。
栽培槽はハイドロボールが扱いやすいです。軽石は安いのですが、洗う時間と、出続ける粉のぶんを引いて考えてください。安いのは値段だけ、ということがあります。
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