アクアポニックスの魚の選び方|初心者向け3種と中級者向け4種を比較
アクアポニックス
2025.03.08
アクアポニックスを始めるとき、最初に迷うのが「どの魚を選ぶか」です。観賞用なのか、食用なのか、加温できる環境があるのか——条件によって最適解は変わります。
結論から言うと、初めてなら錦鯉・金魚・メダカの3種が安全です。いずれも日本の気候にそのまま適応でき、加温設備が不要。慣れてから、ティラピアやチョウザメといった加温が必要な中級者向けの魚種に挑戦するのが失敗の少ない順番です。
- 初心者向けは錦鯉・金魚・メダカ。日本の気候に適応し加温不要。
- 中級者向けはティラピア・チョウザメ・オニテナガエビ・ナマズ。いずれも加温が前提。
- 熱帯魚は積極的にはおすすめしない。体が小さく養分供給が不足しがちで、水質の揺らぎにも弱い。
そして観賞用か食用かで、同じ初心者向けでも選ぶ魚は変わります。野菜を育てる力にも、魚種ではっきり差があります。
初めてなら加温不要な錦鯉・金魚・メダカから選ぶのが安全です。
初心者向け|ヒーター不要の3種
この考え方は国連食糧農業機関の技術報告(2014年)にもまとめられています。魚を選ぶときは、まずその土地の気候で加温なしに飼えるかを見る、という順番が示されています。
まずは、加温設備なしで始められる魚種です。
この3種は日本の気候にそのまま適応でき、通年で加温不要です。初めてのアクアポニックスはここから選べば失敗しにくくなります。
錦鯉は観賞価値が高く、丈夫で長寿命な魚です。ただし成長すると大きくなるため、広い水量を確保できる環境が前提になります。水槽での飼い方は錦鯉は水槽で飼えるのか|締め飼いと適正匹数で詳しく解説しています。
金魚は入手しやすく、飼育のハードルも低い定番の魚です。ただしよく食べてよく汚すため、ろ過能力に余裕を持たせる必要があります。水温や餌の管理については金魚の水温は何度までも参考にしてください。
メダカは日本の気候に最も適応しており、家庭規模のアクアポニックスで最も扱いやすい魚です。丈夫で情報も豊富、価格も手頃なので、迷ったらまずメダカという選び方で問題ありません。始め方はメダカで野菜を育てるアクアポニックスにまとめています。
金魚は、体型で向き不向きが分かれる
ひとくちに金魚と言っても、体つきで二つに分かれます。
細長い和金型と、背中が丸く盛り上がった丸物です。
アクアポニックスは水をポンプで回し続ける仕組みなので、この差が効いてきます。
向いているのは和金型です。体が流線形で泳ぎが得意なので、
水の流れに押されても平気で、餌もきちんと追いかけて食べます。
更紗和金とコメットが、その代表です。
リンク
リンク
丸物は、琉金・オランダ獅子頭・出目金など。見ていて楽しい体つきですが、
その体型のぶん泳ぎが得意ではありません。
流れの強いところに置くと、泳ぎ疲れて片隅にとどまるようになります。
飼えないわけではありません。水の流れが直接当たらない場所を作る、
餌を取りきれているか確かめる。この二つを見ておけば問題は出にくくなります。
体型と転覆しやすさの関係は金魚の転覆病で、
屋外の置き場所は金魚の屋外飼育で詳しく書いています。
リンク
リンク
出目金だけは、もう一段の注意が要ります。目が飛び出しているぶん傷つきやすく、
視野も広くありません。ろ材や配管の角で目をこすらないようにし、
餌の取り合いになる組み合わせは避けてください。
リンク
アクアポニックスは資本がある人のものだと思われがちですが、個人でも始められます。設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。鷲林寺アクアファームの実践の記録を
noteに書いています。見学に来られた方はのべ100人を超えました。
→ 個人で始めたアクアポニックスの費用と失敗をnoteで読む
中級者向け|加温が必要な4種
仕組みに慣れてきたら、加温が必要な魚種にも挑戦できます。
中級者向けの魚種は魅力的ですが、加温という固定コストと管理の手間が増えます。まず初心者向けで仕組みに慣れてから挑戦するのが安全です。
ティラピアは成長が非常に速く、食用としての魅力が大きい魚です。適水温25〜30℃を通年維持する必要があり、冬は加温が必須になります。詳しくはアクアポニックスでのティラピア飼育法で解説しています。
チョウザメは「自宅でキャビア」というロマンがある古代魚ですが、低水温を好む点が独特で、日本の夏は逆に冷却が必要になります。キャビアを採るまでには長い年月がかかる長期戦の魚です。詳しくはチョウザメの飼育法を参照してください。
オニテナガエビは最大30cmに育つ大型のエビで、半年ほどで収穫サイズに達します。壁は加温と共食い対策の2つ。詳しくはオニテナガエビの飼育方法で解説しています。
ナマズは底に沈んだ餌や有機物を処理してくれる掃除役としての側面もあり、食用にもなります。夜行性で物陰を好むため、隠れ家を用意した環境づくりが必要です。
目的別の選び方
魚種で迷ったら、まず自分の目的をひとつに絞ってください。
魚選びに正解はありません。目的をひとつ決めれば、選択肢は自然と絞られます。
目的が複数あっても構いません。ただし最初の1種は、いちばん優先したい目的に沿って選ぶのがコツです。あれもこれもと欲張ると、加温設備や水量の要求が重なり、管理の難易度が急に上がります。
中級者向けの魚種は魅力的ですが、加温という固定コストが増えます。
熱帯魚(グッピー・エンゼルフィッシュ・ネオンテトラ)はどうか
観賞魚として人気の高い熱帯魚も、アクアポニックスに導入すること自体は可能です。ただし正直に言うと、積極的にはおすすめできません。
理由は体が小さく、排泄量も少ないことです。アクアポニックスは魚のフンを養分源にする仕組みなので、体格の小さい熱帯魚だけでは栽培ベッドを支える養分が不足しがちです。また、水質や水温の変動に敏感な種類が多く、アクアポニックス特有の水質の揺らぎに弱いという側面もあります。
それでも導入したい場合は、水量に対してごく少数にとどめ、メダカや金魚など主力の魚と併用する形が現実的です。
リンク
リンク
リンク
まとめ|最初の1種はどう選ぶか
迷ったら、メダカから始めて、慣れたら広げるのが最も失敗しにくい順番です。加温不要で情報も豊富、万が一のトラブルにも対処しやすいという点で、初めてのアクアポニックスに最適な魚です。
仕組み自体に慣れてきたら、目的に応じてティラピアやチョウザメといった中級者向けの魚種に挑戦してみてください。それぞれの飼育法は、この記事内のリンク先で詳しく解説しています。
あわせて読みたい:アクアポニックス
よくある質問(FAQ)
Q. アクアポニックス初心者におすすめの魚は?
A. 錦鯉・金魚・メダカの3種です。いずれも日本の気候にそのまま適応でき、加温設備が不要です。とくにメダカは丈夫で情報も豊富なため、最初の1種として最も扱いやすい魚です。
Q. ティラピアやチョウザメは初心者には難しいですか?
A. いずれも通年の加温が必要なため、初めての1種としてはやや難易度が上がります。仕組みに慣れてから挑戦するのが失敗の少ない順番です。ティラピアは成長が速く食用向き、チョウザメは低水温を好む長期戦の魚です。
Q. 熱帯魚をアクアポニックスに入れてもよいですか?
A. 導入自体は可能ですが積極的にはおすすめしません。体が小さく排泄量も少ないため養分供給が不足しがちで、水質の変動にも弱い種類が多いためです。導入するなら少数にとどめ、メダカなど主力の魚と併用してください。
Q. 食用を目指すならどの魚がよいですか?
A. ティラピアが最有力です。成長が非常に速く、半年ほどで食べられるサイズに育ちます。チョウザメやオニテナガエビも食用になりますが、成熟までの期間や管理の難易度はティラピアより高くなります。
Q. 複数の魚種を一緒に飼えますか?
A. 組み合わせによっては可能ですが、加温要件や水量の要求が重なると管理が難しくなります。最初の1種は目的をひとつに絞って選び、慣れてから他の種類を足していくのが安全です。
Q. 魚選びで失敗しないコツは?
A. 加温設備の有無を最初に確認することです。加温できないなら錦鯉・金魚・メダカの3種に絞られます。加温できるなら選択肢は広がりますが、それぞれの適水温と管理の手間を事前に調べてから導入してください。
この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)
植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。
農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。