水槽にエビを入れると、コケが減って景色が締まります。だからアクアポニックスでも入れたくなる。実際、うちも飼っています。
ただ、始める前にひとつ決めておくことがあります。掃除役として入れるのか、食べるために育てるのか。ここで選ぶ種も、設備も、注意する点も変わります。
この記事では、その判断だけを書きます。種ごとの具体的な飼い方はオニテナガエビの記事に、メダカ水槽での比率は別の記事にまとめました。
- 飼えます。ただし入れる目的を先に決めてください。掃除役と収穫用では、選ぶ種が変わります。
- エビは魚の代わりになりません。小さいエビを何匹入れても、野菜の栄養はほとんど増えません。
- 収穫を狙うならオニテナガエビ。半年で食べられる大きさになりますが、共食い対策が要ります。
- 銅にはとくに弱い。肥料も薬も、魚より先にエビに効きます。成分表示は必ず見てください。
- ザリガニには法の規制があるものがあります。飼う前に、最新の情報を確認してください。

アクアポニックスでエビを飼う前に決めること
目的が違えば、正解が変わります。まず自分がどちらなのかを決めてください。
掃除役として入れる場合。狙いは藻と食べ残しです。栽培槽の下や容器の壁を歩き回って、細かいものを食べてくれます。小型のヌマエビの仲間が候補になります。
食べるために育てる場合。狙いは収穫です。大きくなる種を選び、餌をしっかり与えて育てます。うちが扱ってきたオニテナガエビが、この用途にあたります。
この2つは、同じ「エビを入れる」でも別の話です。掃除役に収穫を期待しても穫れませんし、収穫用を掃除役として入れると、小さい魚が食べられます。

エビは、魚の代わりにはならない
いちばん誤解されやすいところを先に書きます。エビを入れても、野菜の栄養はほとんど増えません。
理由は単純で、体が小さいからです。この装置で野菜が受け取る栄養は、入れた餌の量で決まります。小型のエビが食べる量は、魚に比べればごくわずかです。
メダカでさえ葉物1株に届かないという計算をしましたが、ヌマエビはそれよりさらに小さい。数十匹入れても、栽培槽の側で違いを感じることはないでしょう。
だから「魚を減らしてエビを増やす」という置き換えは成り立ちません。エビは足し算であって、掛け算ではない。景色と掃除のために入れるものだと考えてください。
逆にオニテナガエビのように大きくなる種なら、餌の量も相応に増えるので、栄養の側にも効いてきます。ここでも、大きさがすべてです。
掃除役として入れるなら
小型のヌマエビの仲間が定番です。うちのメダカの容器にも入れています。
期待していいのは、柔らかい藻と、底に落ちた食べ残しの処理です。ガラス面や容器の壁についた薄い膜状のものは、よく食べます。
期待してはいけないのが、頑固なコケと、大量の食べ残しの後始末です。藻は場所によって放っていいものと取るべきものが分かれますが、エビに任せて解決する範囲は限られます。
数の目安は、魚とほぼ同数から。入れすぎると、今度はエビ自身の餌が足りなくなります。藻を食べ尽くしたあと、痩せて減っていくという結末になりがちです。
そしてもうひとつ。エビは水質の急変に、魚より弱い。魚が平気な変化で落ちることがあります。導入するときの水合わせは、魚より時間をかけてください。
食べるために育てるなら
ここからは収穫の話です。うちが扱ってきたのはオニテナガエビで、飼い方は別の記事に詳しく書きました。
魅力は成長の速さです。おおよそ半年で、食べられる大きさに達します。魚を育てるより回転が速く、「飼う」というより「育てて収穫する」感覚に近い。
そのぶん課題もはっきりしています。共食いです。脱皮の直後は体が柔らかく、その状態の個体が狙われます。隠れ家を十分に用意できるかどうかで、残る数がまるで変わります。
水温も条件になります。熱帯の生き物なので、日本の冬を屋外で越すことはできません。加温なしで越冬させる前提の設備とは、そもそも設計が違います。
入手先も限られます。どこで買えるかは調べて記事にしましたが、地域の店で見かけることはまずありません。
エビが食べるものと、食べないもの
掃除役に期待しすぎて失望する人が多いので、線を引いておきます。
よく食べるのは、柔らかいものです。壁につく薄い膜のような藻、底に落ちた餌の粉、枯れはじめた葉のかけら。この手のものは、置いておけば片づきます。
食べないのが、硬い藻と、糸のように伸びるタイプの藻です。ガラス面にこびりついて爪で削るような固さになったものは、エビでは落ちません。こういうものは、そもそも取るべき場所かどうかを先に判断してください。
そして、緑色に濁った水も食べません。あれは水中に漂う植物プランクトンで、壁に付いた藻とは別物です。エビを入れても透明にはなりません。
もうひとつ知っておきたいのが、エビは食べ残しを消すが、汚れを消すわけではないということです。食べたものは、そのままフンとして水に戻ります。装置の中の総量は変わりません。減らしたいなら、入れる餌の量を見直すほうが本筋です。
エビが増えすぎたときは
小型のヌマエビは、条件が合うと増えます。うまくいっているサインではありますが、放っておくと窮屈になります。
増えすぎたときにいちばん起きやすいのが、エビ自身の餌不足です。藻を食べ尽くしたあと、痩せて減っていく。増えて、減って、また増えるという波を繰り返します。
手を打つなら、間引くか、餌を足すかの二択です。ただし餌を足すと水も汚れますので、装置の余裕を見てから決めてください。
もうひとつの選択肢が、増えた分を別の容器へ移すことです。メダカの容器にも入れられるので、行き先はあります。
逆に増えないなら、水質か水温か、隠れ家の不足を疑います。増えるかどうかは、その水が落ち着いているかの指標にもなります。
エビが先に落ちるとき、原因はほぼ3つ
魚は平気なのにエビだけ減る。この形は、原因がかなり絞れます。
1つめが銅です。植物には微量要素として必要な成分ですが、エビには少量で強く効きます。園芸用の肥料や、一部の魚病薬に含まれます。成分表示に銅の名前があるなら、その水にエビは入れられません。
2つめが薬です。魚の治療に使う薬の多くは、エビにも効きます。治療は別の容器で行い、その水はシステムに戻さない。これはエビがいるなら、なおさら厳格に守る必要があります。
3つめが酸素です。エビは魚より酸欠に弱い傾向があります。夏に水温が上がって水に溶ける酸素が減ると、魚が平気な段階でエビが先に苦しくなります。
つまり、エビは装置の状態を先に教えてくれる存在でもあります。エビが減りはじめたら、魚がまだ元気でも水を疑ってください。
ザリガニは、飼う前に確認が要る
検索されることが多いので触れておきます。ザリガニのなかには、法律で飼育や移動が規制されているものがあります。
制度は変わりますし、種によって扱いも違います。だから、この記事で「この種なら飼える」と断定することはしません。飼う前に、環境省など公的な情報で最新の扱いを確認してください。
そのうえで、規制の有無にかかわらず守るべきことがあります。飼っている生き物を、野外に放してはいけないという一点です。逃げ出さない構造にすることも、装置を作る側の責任に含まれます。
もうひとつ、アクアポニックス側の事情もあります。ザリガニは力が強く、植えた苗を掘り返したり、配管に入り込んだりします。飼えるかどうかとは別に、この装置と相性がいいとは言いにくい生き物です。

エビと魚と野菜を、同じ水で回すときの順番
最後に、実際に入れるときの手順を書きます。順番を守ると、失敗がかなり減ります。
まず魚を入れずに装置を立ち上げる。次に魚を入れて、餌の量を決めて、水質が安定するのを待つ。エビはいちばん最後です。
理由は、エビが水質の急変に弱いからです。立ち上げ中の不安定な水に入れると、魚が耐える段階で落ちます。数値が落ち着いてから迎えるほうが、結果的に残ります。
入れる日は、水合わせに時間をかけてください。袋の水と装置の水を、少しずつ何度も混ぜる。魚の水合わせより、さらに慎重にという感覚で構いません。
そして入れたあとは、しばらく数を数えてください。減っているなら、水に何かが起きています。エビは、最初に声を上げる住人です。
→ 容器ごとの記録を、次に迷ったときに引き出せる
どんなアプリか見てみる(登録はメールアドレスだけ・30秒。記録と通知はずっと無料です)
まとめ
飼えます。ただし目的を先に決めてください。掃除役なら小型のヌマエビ、収穫ならオニテナガエビ。同じ「エビを入れる」でも別の話です。
そして期待の掛けどころを間違えないこと。小さいエビは、野菜の栄養をほとんど増やしません。エビは足し算であって、掛け算ではありません。
入れるのはいちばん最後。そして減りはじめたら、魚が元気でも水を疑う。エビは、最初に声を上げる住人です。
よくある質問(FAQ)
Q. アクアポニックスでエビは飼えますか。
A. 飼えます。ただし入れる目的を先に決めてください。藻や食べ残しの掃除役なら小型のヌマエビ、収穫を狙うならオニテナガエビのように大きくなる種になります。
Q. エビを入れると野菜の栄養は増えますか。
A. 小型のエビではほとんど増えません。野菜が受け取る栄養は入れた餌の量で決まりますが、小さいエビが食べる量は魚に比べてごくわずかだからです。エビは掃除と景色のために入れるものと考えてください。
Q. 魚は元気なのにエビだけ減ります。なぜですか。
A. 原因はほぼ3つです。銅を含む肥料や薬、魚の治療薬、そして酸欠。いずれもエビのほうが魚より先に効きます。エビが減りはじめたら、魚が元気でも水を疑ってください。
Q. アクアポニックスでザリガニは飼えますか。
A. 種によっては法律で飼育や移動が規制されています。制度は変わるので、飼う前に環境省など公的な情報で最新の扱いを確認してください。また力が強く苗を掘り返すため、この装置との相性は良いとは言えません。
Q. エビはいつ入れればいいですか。
A. いちばん最後です。装置を立ち上げ、魚を入れて餌の量を決め、水質が安定してから迎えてください。エビは水質の急変に魚より弱いため、立ち上げ中の水に入れると落ちます。

