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アクアポニックスでエビは飼えるのか|掃除役と収穫用で、選ぶ種が変わる

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アクアポニックスでエビは飼えるのかの記事のアイキャッチ。栽培槽の下が魚の水槽になった設備を背景にしている アクアポニックス

水槽にエビを入れると、コケが減って景色が締まります。だからアクアポニックスでも入れたくなる。実際、私も飼っています。

ただ、始める前にひとつ決めておくことがあります。掃除役として入れるのか、食べるために育てるのか。ここで選ぶ種も、設備も、注意する点も変わります。

この記事では、その判断だけを書きます。種ごとの具体的な飼い方はオニテナガエビの記事に、メダカ水槽での比率は別の記事にまとめました。

アクアポニックスでエビを入れる目的を、藻と食べ残しを片づける掃除役と、半年で食べられる大きさになる収穫用で比べたグラレコ(グラフィックレコーディング)
掃除役か収穫用か。目的で種が変わる。
この記事の結論(要点)
  • 飼えます。ただし入れる目的を先に決めてください。掃除役と収穫用では、選ぶ種が変わります。
  • エビは魚の代わりになりません。小さいエビを何匹入れても、野菜の栄養はほとんど増えません。
  • 収穫を狙うならオニテナガエビ。半年で食べられる大きさになりますが、共食い対策が要ります。
  • 銅にはとくに弱い。肥料も薬も、魚より先にエビに効きます。成分表示は必ず見てください。
  • ザリガニには法の規制があるものがあります。飼う前に、最新の情報を確認してください。
エビを入れた日と数を残しておくと、減ったのがいつからか分かります。残すなら → メダカ台帳(無料)
アクアポニックスにエビを入れる目的と選び方。掃除役ならミナミヌマエビで狙いは藻と食べ残し、肥料の足しにはならない。食べる目的ならオニテナガエビで半年で食べられる大きさになるが餌が多く要り共食い対策が成否を決める。銅を含む肥料や薬と外来のザリガニは入れてはいけない
目的を先に決めると、種が決まります。

アクアポニックスでエビを飼う前に決めること

目的が違えば、正解が変わります。まず自分がどちらなのかを決めてください。

掃除役として入れる場合。狙いは藻と食べ残しです。栽培槽の下や容器の壁を歩き回って、細かいものを食べてくれます。小型のヌマエビの仲間が候補になります。

食べるために育てる場合。狙いは収穫です。大きくなる種を選び、餌をしっかり与えて育てます。私が扱ってきたオニテナガエビが、この用途にあたります。

この2つは、同じ「エビを入れる」でも別の話です。掃除役に収穫を期待しても穫れませんし、収穫用を掃除役として入れると、小さい魚が食べられます。

アクアポニックスの水槽で泳ぐたくさんの錦鯉。オレンジと白の体色が水面に重なっている
栄養の量を決めるのは体の大きさ。小さいエビでは、ここは埋まりません。

エビは、魚の代わりにはならない

いちばん誤解されやすいところを先に書きます。エビを入れても、野菜の栄養はほとんど増えません。

理由は単純で、体が小さいからです。この装置で野菜が受け取る栄養は、入れた餌の量で決まります。小型のエビが食べる量は、魚に比べればごくわずかです。

メダカでさえ葉物1株に届かないという計算をしましたが、ヌマエビはそれよりさらに小さい。数十匹入れても、栽培槽の側で違いを感じることはないでしょう。

だから「魚を減らしてエビを増やす」という置き換えは成り立ちません。エビは足し算であって、掛け算ではない。景色と掃除のために入れるものだと考えてください。

逆にオニテナガエビのように大きくなる種なら、餌の量も相応に増えるので、栄養の側にも効いてきます。ここでも、大きさがすべてです。

掃除役として入れるなら

小型のヌマエビの仲間が定番です。私のメダカの容器にも入れています。

期待していいのは、柔らかい藻と、底に落ちた食べ残しの処理です。ガラス面や容器の壁についた薄い膜状のものは、よく食べます。

期待してはいけないのが、頑固なコケと、大量の食べ残しの後始末です。藻は場所によって放っていいものと取るべきものが分かれますが、エビに任せて解決する範囲は限られます。

数の目安は、魚とほぼ同数から。入れすぎると、今度はエビ自身の餌が足りなくなります。藻を食べ尽くしたあと、痩せて減っていくという結末になりがちです。

そしてもうひとつ。エビは水質の急変に、魚より弱い。魚が平気な変化で落ちることがあります。導入するときの水合わせは、魚より時間をかけてください。

食べるために育てるなら

ここからは収穫の話です。私が扱ってきたのはオニテナガエビで、飼い方は別の記事に詳しく書きました。

魅力は成長の速さです。おおよそ半年で、食べられる大きさに達します。魚を育てるより回転が速く、「飼う」というより「育てて収穫する」感覚に近い。

そのぶん課題もはっきりしています。共食いです。脱皮の直後は体が柔らかく、その状態の個体が狙われます。隠れ家を十分に用意できるかどうかで、残る数がまるで変わります。

収穫用ならオニテナガエビの稚エビから。隠れ家を個体数より多く入れてから迎える。

水温も条件になります。熱帯の生き物なので、日本の冬を屋外で越すことはできません。加温なしで越冬させる前提の設備とは、そもそも設計が違います。

入手先も限られます。どこで買えるかは調べて記事にしましたが、地域の店で見かけることはまずありません。

エビが食べるものと、食べないもの

掃除役に期待しすぎて失望する人が多いので、線を引いておきます。

よく食べるのは、柔らかいものです。壁につく薄い膜のような藻、底に落ちた餌の粉、枯れはじめた葉のかけら。この手のものは、置いておけば片づきます。

食べないのが、硬い藻と、糸のように伸びるタイプの藻です。ガラス面にこびりついて爪で削るような固さになったものは、エビでは落ちません。こういうものは、そもそも取るべき場所かどうかを先に判断してください。

そして、緑色に濁った水も食べません。あれは水中に漂う植物プランクトンで、壁に付いた藻とは別物です。エビを入れても透明にはなりません。

もうひとつ知っておきたいのが、エビは食べ残しを消すが、汚れを消すわけではないということです。食べたものは、そのままフンとして水に戻ります。装置の中の総量は変わりません。減らしたいなら、入れる餌の量を見直すほうが本筋です。

エビが増えすぎたときは

小型のヌマエビは、条件が合うと増えます。うまくいっているサインではありますが、放っておくと窮屈になります。

増えすぎたときにいちばん起きやすいのが、エビ自身の餌不足です。藻を食べ尽くしたあと、痩せて減っていく。増えて、減って、また増えるという波を繰り返します。

手を打つなら、間引くか、餌を足すかの二択です。ただし餌を足すと水も汚れますので、装置の余裕を見てから決めてください。

もうひとつの選択肢が、増えた分を別の容器へ移すことです。メダカの容器にも入れられるので、行き先はあります。

逆に増えないなら、水質か水温か、隠れ家の不足を疑います。増えるかどうかは、その水が落ち着いているかの指標にもなります。

エビが先に落ちるとき、原因はほぼ3つ

同じ水の中で魚は元気なままエビだけが弱る様子を断面で描き、銅を含む肥料・魚の治療薬・夏の酸欠の3つが入り口になることを示した精密図解
エビは、水の異変を先に教える。

魚は平気なのにエビだけ減る。この形は、原因がかなり絞れます。

1つめが銅です。植物には微量要素として必要な成分ですが、エビには少量で強く効きます。園芸用の肥料や、一部の魚病薬に含まれます。成分表示に銅の名前があるなら、その水にエビは入れられません。

2つめが薬です。魚の治療に使う薬の多くは、エビにも効きます。治療は別の容器で行い、その水はシステムに戻さない。これはエビがいるなら、なおさら厳格に守る必要があります。

3つめが酸素です。エビは魚より酸欠に弱い傾向があります。夏に水温が上がって水に溶ける酸素が減ると、魚が平気な段階でエビが先に苦しくなります。

つまり、エビは装置の状態を先に教えてくれる存在でもあります。エビが減りはじめたら、魚がまだ元気でも水を疑ってください。

ザリガニは、飼う前に確認が要る

検索されることが多いので触れておきます。ザリガニのなかには、法律で飼育や移動が規制されているものがあります。

制度は変わりますし、種によって扱いも違います。だから、この記事で「この種なら飼える」と断定することはしません。飼う前に、環境省など公的な情報で最新の扱いを確認してください。

そのうえで、規制の有無にかかわらず守るべきことがあります。飼っている生き物を、野外に放してはいけないという一点です。逃げ出さない構造にすることも、装置を作る側の責任に含まれます。

もうひとつ、アクアポニックス側の事情もあります。ザリガニは力が強く、植えた苗を掘り返したり、配管に入り込んだりします。飼えるかどうかとは別に、この装置と相性がいいとは言いにくい生き物です。

メダカのアクアポニックスの設備全体。ハイドロボールを敷いた栽培槽の下が魚の水槽になっている
エビを入れるのは、この水が落ち着いてからです。

エビと魚と野菜を、同じ水で回すときの順番

最後に、実際に入れるときの手順を書きます。順番を守ると、失敗がかなり減ります。

まず魚を入れずに装置を立ち上げる。次に魚を入れて、餌の量を決めて、水質が安定するのを待つ。エビはいちばん最後です。

理由は、エビが水質の急変に弱いからです。立ち上げ中の不安定な水に入れると、魚が耐える段階で落ちます。数値が落ち着いてから迎えるほうが、結果的に残ります。

入れる日は、水合わせに時間をかけてください。袋の水と装置の水を、少しずつ何度も混ぜる。魚の水合わせより、さらに慎重にという感覚で構いません。

そして入れたあとは、しばらく数を数えてください。減っているなら、水に何かが起きています。エビは、最初に声を上げる住人です。

エビは水の異変を先に教えてくれます。いつ何匹入れて、いつから減りはじめたか。「メダカ台帳」は容器ごとの記録が1タップ。数の推移が残っていると、原因にたどり着けます。
→ 容器ごとの記録を、次に迷ったときに引き出せる
台帳でできることを、もう少し詳しく

まとめ

飼えます。ただし目的を先に決めてください。掃除役なら小型のヌマエビ、収穫ならオニテナガエビ。同じ「エビを入れる」でも別の話です。

そして期待の掛けどころを間違えないこと。小さいエビは、野菜の栄養をほとんど増やしません。エビは足し算であって、掛け算ではありません。

入れるのはいちばん最後。そして減りはじめたら、魚が元気でも水を疑う。エビは、最初に声を上げる住人です。

よくある質問(FAQ)

Q. アクアポニックスでエビは飼えますか。

A. 飼えます。ただし入れる目的を先に決めてください。藻や食べ残しの掃除役なら小型のヌマエビ、収穫を狙うならオニテナガエビのように大きくなる種になります。

Q. エビを入れると野菜の栄養は増えますか。

A. 小型のエビではほとんど増えません。野菜が受け取る栄養は入れた餌の量で決まりますが、小さいエビが食べる量は魚に比べてごくわずかだからです。エビは掃除と景色のために入れるものと考えてください。

Q. 魚は元気なのにエビだけ減ります。なぜですか。

A. 原因はほぼ3つです。銅を含む肥料や薬、魚の治療薬、そして酸欠。いずれもエビのほうが魚より先に効きます。エビが減りはじめたら、魚が元気でも水を疑ってください。

Q. アクアポニックスでザリガニは飼えますか。

A. 種によっては法律で飼育や移動が規制されています。制度は変わるので、飼う前に環境省など公的な情報で最新の扱いを確認してください。また力が強く苗を掘り返すため、この装置との相性は良いとは言えません。

Q. エビはいつ入れればいいですか。

A. いちばん最後です。装置を立ち上げ、魚を入れて餌の量を決め、水質が安定してから迎えてください。エビは水質の急変に魚より弱いため、立ち上げ中の水に入れると落ちます。

設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。個人で始めたアクアポニックスの記録をnoteに書いています。
→ 費用と失敗の記録をnoteで読む

次に見るのは、ここ

魚を決めるなら魚の選び方へ。オニテナガエビを飼うならオニテナガエビの飼い方へ。オニテナガエビを買うならオニテナガエビはどこで買えるへ。エビを何匹入れるか決めるならメダカとエビの比率へ。

この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)

植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。

農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。
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