メダカの水換えをしていて、バケツを運びながら思ったことがあります。この水、そんなに汚れているだろうか。緑がかってはいるけれど、匂いはしない。捨てるのがもったいない気がする——実際、もったいないのです。
あの水は、植物にとっては肥料です。だから植物に吸わせれば、捨てなくてよくなります。うちで組んだ設備は、そのために作りました。作り方を最初から書きます。
- NVボックス22を2つ、上下に重ねるだけです。上が野菜の槽、下がメダカの水槽になります。枠はイレクターパイプで組みます。
- 水中ポンプで下から上へ送り、栽培槽の底に挿した立管から、真下に落として戻します。この立管の高さが、水位を決めます。
- ハイドロボールの上5センチは、水に浸けません。ここが乾いていると、藻が出ず、蚊もわきません。
- うちはこの容器に、メダカを20〜25匹入れていました。同じ箱を普通の屋外容器として使うなら7〜9匹です。粒がろ過装置として働くぶん、詰められます。
- そして水換えをしていません。減った分の足し水だけです。ラディッシュ、リーフレタス、空芯菜、バジルが穫れました。
メダカの水は、そのまま肥料になる
捨てていたあの水で、野菜が育ちます。理由はフンの行き先にあります。メダカのフンや食べ残しは、水の中でまずアンモニアになります。これは魚にとって毒です。それを細菌が亜硝酸に変え、別の細菌が硝酸に変えます。硝酸は毒性がぐっと低いので、たまっても魚はすぐには参りません。
ふつうの容器では、この硝酸がたまり続けます。だから水を換えるのです。水換えの正体は、硝酸を捨てる作業でした。
ところが硝酸は、植物にとっては窒素肥料そのものです。捨てる代わりに植物へ回せば、水換えの理由がひとつ消えます。やることは、水を植物の根元へ通して、また戻すだけ。それだけの装置を作ります。
作るのはこれ|NVボックス22を2つ重ねるだけ

うちが最初に組んだ形です。同じ箱を2つ買って、上下に重ねます。上の箱にハイドロボールを敷いて野菜を植え、下の箱がそのままメダカの水槽になります。

水は下から上へポンプで送り、上の箱の底に挿した立管から、真下に落ちて戻ります。ぐるぐる回り続けるだけの、単純な仕組みです。
用意するもの
先に全部を一覧にします。ホームセンターとネットでそろいます。
| 材料 | 数量・サイズの目安 | 用途 |
|---|---|---|
| NVボックス22 | 2個 | 上が栽培槽、下が水槽 |
| ハイドロボール | 15リットル前後 | 培地=ろ材。軽石でも可 |
| イレクターパイプ+ジョイント | 組む棚の寸法に合わせて | 2段の棚(枠) |
| 水中ポンプ | 毎時250〜600リットル級 | 下から上へ水を送る |
| 塩ビパイプ(細) | 内径13〜16ミリ | 立管と、ポンプからの配管 |
| 塩ビパイプ(太) | 立管よりひとまわり太いもの | 穴を開けて、立管にかぶせるカバー |
| エルボ・継手・Oリング | 配管の曲がりの数だけ | 接続と水漏れ防止 |
寸法はどの製品を選ぶかで変わるので、目安として読んでください。決め方は、あとの手順のところでそのつど書きます。
容器はNVボックス22を2つ。#13でも作れますが、水が少ないぶん水温も水質も振れやすくなります。置き場所が許すなら#22のほうが扱いは楽です。サイズごとの水量と飼える数は別記事にまとめました。
培地はハイドロボール。粘土を焼いて発泡させた粒で、中に細かい穴が無数に開いています。ここに硝化細菌が住みつきます。軽石でも同じ働きをします。
水中ポンプもここで選んでおきます。見るのは、1時間あたりに送れる水の量と、何センチ上まで持ち上げられるか。この大きさなら、毎時250〜600リットルの小型で足ります。力の強すぎるものを選ぶと、水が跳ねて栽培槽からあふれます。
気をつけたいのは周波数です。同じ製品が東日本用(50ヘルツ)と西日本用(60ヘルツ)に分かれています。電気の周波数が違うためで、間違えて買うと、書いてある水量が出ません。境目は、静岡県の富士川と新潟県の糸魚川を結んだ線のあたり。迷ったら、契約している電力会社の名前で調べるのが確実です。
工具は4つです。インパクトドライバー(電動ドライバーでも可)、穴を円形に切り抜くホールソー(箱の底用に立管の外径サイズ、カバーの穴用に8ミリ前後)、塩ビパイプカッター、バリを落とすヤスリ。刃物はホールソーとカッターの2つだけで足ります。
穴あけ用のホールソーは、内径13ミリの塩ビパイプと継手の組み合わせなら20ミリです。超硬の刃はよく切れますが、打撃に弱いので、インパクトの打撃が出る使い方は禁止されています。ドリルドライバーで使うか、インパクトで使いたい方は「インパクト対応」と書かれた刃を選んでください。カバーに開けるたくさんの穴は、8ミリ前後のふつうのドリル刃で足ります。
塩ビパイプはノコギリでも切れますが、切り口が斜めになりがちです。立管は切り口の高さがそのまま水位になるので、まっすぐ切れるパイプカッターが安心です。ポンプと工具の購入先は、記事の最後にまとめて置きました。
あとから買い足すと寸法が合わなくなりがちです。先に全部そろえてから始めるほうが、結局は早く済みます。
赤玉土は使わないでください。崩れて泥になり、ポンプと配管を詰まらせます。
作り方|順番はこのとおりに

1. 枠を組む
先に置き場所を決めます。見るのは野菜の側の日当たりで、栽培槽に6時間くらい日が当たる場所を選んでください。下の水槽は上の箱の影に入るので、直射日光でコケだらけになる心配は減ります。
場所が決まったら、イレクターパイプで2段の棚を組みます。上の段に栽培槽、下に水槽が入る高さにします。先に容器を置いてみて、寸法を決めてください。組んでから容器が入らないと、やり直しになります。
2. 上の箱の底に、穴を開ける
栽培槽になる箱の底に、排水用の穴を1つ開けます。刃は、円を切り抜くホールソーを電動工具に付けるのが楽です。うちはインパクトドライバーで開けました。位置は、真ん中より少し端寄りがおすすめです。真ん中だと、あとで野菜を植える場所がひとつ潰れます。

開けるときは、力を入れすぎないでください。プラスチックの箱は、押しつけると亀裂が入ります。表面を少しずつ削るつもりで回して、開いたら縁のバリ(削りかす)をヤスリで落とします。バリが残っていると、あとで水漏れの原因になります。
穴の大きさは、使う塩ビパイプの外径に合わせます。パイプの固定は、両側からゴムの輪(Oリング)を挟んだ継手でつなぐと確実です。差し込んだあとに水を少し張って、漏れないかここで一度見ておきましょう。

3. 立管を切る|ここで水位が決まります
この手順が、この装置でいちばん大事なところです。穴に挿した塩ビパイプを、上へまっすぐ立てます。水はこの管の高さを越えた分だけ落ちていくので、管の上端が、そのまま水位になります。
切る長さはこう決めます。ハイドロボールは、箱の縁から5センチ下まで入れます(入れるのは手順6です)。その粒の表面から、さらに5センチ下が水位です。そこに立管の上端が来るように切ってください。
なぜ5センチ空けるのか。上の層を乾いたままにしておくためです。表面まで水で濡れていると、藻が生えて、蚊がわきます。乾いた層があるだけで、どちらも起きません。この5センチを、乾燥ゾーンと呼びます。
4. 排出パイプカバーを作る
立管をそのまま立てておくと、ハイドロボールが管の中に落ちて詰まります。だから立管より少し太い塩ビパイプに、たくさん穴を開けて、上からかぶせます。
水は穴から入って立管へ流れ、粒は入れません。穴は全面に開けなくても大丈夫で、下のほうの5センチは残しても水はちゃんと流れます。開けた穴の縁は、ここでもヤスリでなめらかにしておきます。
うちのものは、写真に写っている灰色の筒がそれです。掃除のときに引き抜けるよう、接着せずにかぶせておくと後が楽です。

5. ポンプと配管をつなぐ
下の箱に水中ポンプを沈めます。そこから塩ビパイプで、棚の外側を回して上へ上げ、栽培槽の上から水を落とします。
栽培槽の中に直接パイプを引き込むより、上から落とすほうが簡単で、詰まりも起きにくくなります。ポンプは24時間、回しっぱなしです。止めると硝化細菌が酸素不足で弱ります。
6. ハイドロボールを入れる
洗ってから入れます。買ったままだと細かい粉がついていて、水が濁ります。入れる高さは箱の縁から5センチ下まで。あふれる手前で止める、という意味です。量は箱の大きさで変わるので、実際に入れながら決めてください。

7. 水を回して、漏れを見る
魚も野菜も入れずに、水だけで回します。入れる順番は、先に下の水槽へ8分目まで、それから上の栽培槽へゆっくり。立管から下へ水が落ちはじめたら、そこで止めます。
そのまま丸一日は見てください。底の穴から漏れていないか、立管の高さで水が止まっているか、ポンプの音がおかしくないか。ここで見つかる不具合は、あとから直すよりずっと楽です。水道水のカルキは、屋外なら日なたに1日置けば抜けます。

立ち上げ|魚を入れるのは、最後です
組み上がってすぐメダカを入れると、たいてい死なせます。硝化細菌がまだ住んでいないからです。アンモニアを分解する相手がいないまま、魚だけが毒を出し続けることになります。
だから先に、細菌を増やす期間を置きます。方法はいくつかありますが、魚を入れずに立ち上げるやり方を別記事に書きました。アンモニアの元だけを入れて、数値を見ながら待つ形です。
始める時期は、4月から6月がいちばん楽です。細菌は水温が高いほど早く増えるので、寒い時期に始めると立ち上がりに倍の時間がかかります。
メダカは何匹入れられるのか
ここが、この装置の面白いところです。うちはNVボックス22に、メダカを20〜25匹入れていました。同じ箱を普通の屋外容器として使うなら、7〜9匹が目安です(1匹に2リットル)。3倍近く入っていたことになります。
詰められた理由は、水が多いからではありません。ハイドロボールそのものが、ろ過装置になっているからです。粒の表面と内側の穴に硝化細菌が住み、そこを水が何度も通ります。栽培槽をひとつ載せるのは、容器いっぱいのろ材を足すのと同じことです。
どれだけ受けられるかには、目安の数字があります。国連食糧農業機関の手引きでは、1日にやる餌1グラムあたり、火山礫のようなろ材で1リットルとされています。NVボックス22に入るハイドロボールは15リットル前後なので、計算上は1日15グラムの餌まで受けられることになります。
メダカ20〜25匹が1日に食べる量は、これをはるかに下回ります。詰めすぎているように見えて、ろ過の側はずっと余っていました。
だから逆も言えます。栽培槽の無い容器に20匹入れたら、死にます。この数字は、上に植物とハイドロボールが載っているときだけ成り立ちます。
水換えは、しなくなりました
いちばん変わったのは収穫ではなく、水のほうでした。うちはこの設備で、水換えをしていません。減った分の足し水だけです。
成り立っている条件を書いておきます。ひとつ、上に栽培槽があること。硝酸の行き先が無ければ、詰めた分だけ水が悪くなります。ふたつ、屋外に置いていること。日が当たるから植物が吸い、風があるから酸素が入ります。みっつ、足し水を続けていること。夏はほとんど毎日で、これだけはさぼれません。
ただし足し水だけを続けると、水に溶けているミネラル分は少しずつ濃くなります。水換えが要らなくなる条件と、必要になるときにその線を書きました。
何が穫れたか
ラディッシュ、リーフレタス、空芯菜、バジル。葉物とハーブが中心です。
正直に書くと、量は多くありません。スーパーの袋いっぱい、という話にはならない。サラダに一皿足すくらいです。それでも、水換えをしなくてよくなったぶんを考えれば、じゅうぶん割に合いました。
穫れる量を決めているのは、餌の量です。魚が食べた分しか、植物の栄養にはなりません。どこまで穫れるのかを数字で出した記事もあるので、株数で迷ったらそちらを見てください。
よくある失敗
うちがやったものも含めて、先に書いておきます。
水漏れ。自作でいちばん多いつまずきです。原因はたいてい3つで、パイプのはめ込みが浅い、穴のバリが残っている、ゴムの輪がねじれて挟まっている。どれも組み直せば直るので、水だけで回す1日のうちに見つけてしまいましょう。
種を直に播いて、株が多くなりすぎる。これはうちの失敗です。芽が出そろった時点では小さいので込み合って見えず、気づくのは葉が触れ合うころ。そのときには全部が薄い黄緑色になっています。育ちきる前に間引いてください。抜いた芽は、そのままベビーリーフとして食べられます。

乾燥ゾーンを作らない。水位を上げすぎて表面まで濡れていると、藻が出て、蚊がわきます。立管を切り直せば直ります。
赤玉土を使う。崩れて泥になり、ポンプと配管が詰まります。安いのですが、結局は作り直しになります。
栽培槽が無い容器で、匹数だけ真似する。この記事でいちばん危ない読み違えです。20匹という数字は、ろ材と植物が載っているから成り立ちます。
ポンプを夜だけ止める。電気代を惜しんで止めると、硝化細菌が弱ります。24時間回してください。
→ 容器ごとの記録を、次に迷ったときに引き出せる
どんなアプリか見てみる(登録はメールアドレスだけ・30秒。記録と通知はずっと無料です)
まとめ
NVボックス22を2つ重ねて、上にハイドロボール、下にメダカ。ポンプで回して、立管の高さで水位を決める。上5センチは乾かす。作るのはそれだけです。
そのかわり、水換えをしなくなりました。メダカは3倍入り、サラダに一皿ぶんの葉物が穫れます。捨てていた水が、食べられる物に変わった。それがこの装置のいちばん面白いところだと思っています。
この記事で使った材料と道具
本文で説明した順に並べます。容器(NVボックス22)とハイドロボールのカードは「用意するもの」の章にあります。
水中ポンプ。東日本(50ヘルツ)はこちらです。
西日本(60ヘルツ)はこちら。
インパクトドライバー。棚の組み立てから穴あけまで使います。
箱の底用のホールソー20ミリ。この刃はドリルドライバー用です(インパクトで使う方は「インパクト対応」の刃を)。
丸軸のドリル刃を使うためのドリルチャック。
立管をまっすぐ切るパイプカッター。
よくある質問(FAQ)
Q. メダカのアクアポニックスは、何から作ればいいですか。
A. NVボックス22を2つ買って、上下に重ねるのがいちばん簡単です。上にハイドロボールを敷いて栽培槽にし、下がそのまま水槽になります。枠はイレクターパイプで組みます。
Q. 立管の長さは、どう決めますか。
A. ハイドロボールの表面から5センチ下が水位になるように切ります。立管の上端を越えた水が落ちていくので、管の高さがそのまま水位です。
Q. なぜハイドロボールの上5センチを乾かすのですか。
A. 表面まで濡れていると藻が生え、蚊がわくからです。乾いた層があるだけで、どちらも起きません。
Q. ポンプは24時間回すのですか。
A. 回してください。止めると水の流れが止まり、硝化細菌が酸素不足で弱ります。電気代を惜しんで夜だけ止めるのは、よくある失敗です。
Q. メダカは何匹入れられますか。
A. うちはNVボックス22に20〜25匹入れていました。同じ箱を普通の屋外容器として使うなら7〜9匹が目安なので、3倍近くになります。ハイドロボールがろ過装置として働くためです。ただし栽培槽の無い容器で同じ数を入れると死にます。
Q. 本当に水換えをしなくてよくなりますか。
A. うちはしていません。足し水だけです。ただし上に栽培槽があること、屋外に置いていること、足し水を続けていることが条件です。足し水だけを続けるとミネラル分は濃くなっていくので、いずれ換える場面はあります。
Q. 何が穫れますか。
A. ラディッシュ、リーフレタス、空芯菜、バジルが穫れました。葉物とハーブが中心です。量は多くなく、サラダに一皿足すくらいと考えてください。
Q. エアポンプ(ぶくぶく)は要りますか。
A. ポンプで水が落ちて水面が動いていれば、ふだんは足ります。ただし夏は水温が上がると水に溶ける酸素が減るので、小型のエアレーションを足すと安心です。
Q. 赤玉土ではだめですか。
A. だめです。崩れて泥になり、ポンプと配管を詰まらせます。ハイドロボールか軽石を使ってください。
