メダカを冬眠させずに、加温して冬も育てる。そう考えたときに必ず出てくるのが「寿命が縮む」という話です。
調べたのですが、それを数字で示した資料を見つけられませんでした。分かっているのは、別のことでした。
何が分かっていて何が分かっていないのかを分けたうえで、加温で本当にやっかいになるところを書きます。結論を先に言うと、迷っているなら最初の冬は加温しないほうが失敗が少ないです。
「寿命が縮む」の根拠を探した結果

27℃で通年飼った実験では、寿命の平均が16.8か月、中央値がおよそ22か月でした。20か月あたりから、急に数が減りはじめます(2010年に報告された飼育実験より)。飼っていたのは実験室の水槽で、餌も光の当て方も一定にそろえてあります。
この数字は、集団を最後まで追って死んだ数を数えたものです。平均のほうが中央値より小さいのは、早く死んだ個体が平均を引き下げているからで、つまり早死にもちゃんと数に入っています。生き残ったものだけを見た数字ではありません。
ただし、これは「27℃で飼ったらこうだった」という数字でしかありません。無加温で飼った群と比べたものではないので、これ単体では加温の良し悪しを言えません。
よく「野生のメダカは1年ほど」と比べられますが、あれは比べてはいけない数字です。野生の1年は、老いて死ぬまでの長さではなく、食べられる・干上がる・冬に落ちる、を全部含んだ数字だからです。飼育下の寿命と並べても、意味のある比較になりません。
結局のところ、加温した群と加温しない群で寿命を比べた実験を、見つけられませんでした。「加温は寿命を縮めない」と言いたいわけではありません。縮むとも縮まないとも、確かめられなかった、というのが正確なところです。
分かっているのは「早く大人になる」こと

こちらは測られています。24℃から30℃に上げると成熟が早まるという研究があります(2004年、米国の魚類学の学術誌より)。同じだけ大きくなっても、早く卵を産みはじめる、という結果です。
注目したいのは、体の成長の速さが同じでも、そうなるところです。大きくなる速さが変わるのではなく、大人になる時期のほうが前へずれる。結果として、小さいうちに卵を産みはじめます。
この研究にも限界はあります。測っているのは「成熟した個体」の年齢と体長なので、成熟する前に死んだ個体は数に入っていません。24℃から30℃はメダカにとって厳しい温度ではないので影響は小さいと思いますが、そこは差し引いて読んでください。
ただし上げるほど早まるわけではありません。同じ研究で、30℃から33℃へさらに上げると、成熟の年齢も体の大きさも逆に上がっています。耐えられる上限に近づくと、卵巣の育ちのほうが乱れるからだ、と説明されています。
つまり加温でやっていることは、「寿命を削る」というより「一年を早回しする」ことに近い。冬という止まる時期を無くして、そのぶん先へ進めているわけです。そして早回しには、上限があります(メダカの産卵数と寿命)。
加温で本当にやっかいなのは、この4つ

ひとつめは、止められなくなることです。一度上げたら春まで下げられません。途中でやめると、その落差のほうが体にこたえます。冬のあいだずっと付き合う、と決めてから入れてください。
ふたつめは停電です。加温している水ほど、止まったときの落ち方が速くなります。冬眠させている水なら、ポンプもヒーターも止まったところで何も起きません。加温は、電気が来ていることが前提の飼い方です。
みっつめは、産卵が止まらないことです。これは値打ちでもあるのですが、卵を採り続けるか、放って共食いさせるかのどちらかになります。冬に増えた稚魚をどこで育てるかまで決めておかないと、容器が足りなくなります。
よっつめが電気代です。ヒーターは寒い日ほど長く動きますし、水量が多いほど上げるのに要る力も大きくなります。屋外の容器を加温しようとすると、ふたをしても外気に持っていかれます(ヒーターの選び方)。
いちばんよくないのは、中途半端に暖かい水

室内に置いていると、暖房のせいで水温が下がりきらないことがあります。10℃から15℃くらいで止まってしまう状態です。
これがいちばんよくないと考えています。冬眠するには暖かすぎ、動くには寒すぎる。メダカは活動しているのに餌をあまり食べず、水温は部屋の使い方しだいで日々動きます。
加温するなら加温する、しないならしない。どちらかに寄せてください。室内で無加温にするなら、暖房の当たらない玄関や廊下のほうが安定します(室内飼育に必要なもの)。
冬眠させる場合に、起きること
比べるために、しない側も書いておきます。水温が10℃を下回るとメダカはほとんど動かなくなり、5℃を下回るころには底でじっとしています。死んでいるように見えますが、えらは動いています。
餌はやりません。食べないからです。水換えもしません。やることが無くなるのが、冬眠させる側のいちばんの利点です。氷が張っても、たいていはそのままで大丈夫です(メダカの氷は割らない)。
そのかわり、春まで増えませんし、姿もほとんど見えません。見て楽しむ飼い方をしたいなら、そこは物足りないと思います。
どちらを選ぶか

決め手は「どちらが良いか」ではなく「何がしたいか」です。同じ容器、同じメダカでも、目的が違えば正しい答えが逆になります。
冬も増やしたい、早く大きくしたいなら加温します。品種を殖やしている方が冬に加温するのは、一年を早回しして世代を進めるためです。
手をかけずに越したいなら、加温しません。止まっても何も起きない、というのは思っているよりずっと大きな安心です。
迷ったら、最初の冬は加温しないほうが失敗が少ないです。冬は、手を出さないほうが越せます(メダカの冬越し)。
加温すると決めたら

入れる前に決めておくことが3つあります。何度に保つか、いつ止めるか、止まったらどうするかです。
温度は20℃から23℃くらいで足ります。25℃まで上げると産卵は増えますが、そのぶん餌も水の汚れも増えます。止めるのは、外の水温が設定に近づく春です。外と同じになってから切れば、落差が出ません(冬眠からの起こし方)。
そして止まったときのことです。停電で半日止まると、水温はかなり下がります。毛布をかける、発泡スチロールで囲うなど、電気が要らない手を1つ用意しておいてください。
そして水温は必ず測ります。ヒーターの目盛りと、実際の水温はずれます。設定どおりだと思って冬を越したら、2度低いまま回していた、ということが起こります。
浮かべておくだけのものなら、毎日わざわざ測りに行かなくて済みます。いつ何℃だったかを残しておくと、翌年の判断がずいぶん楽になります(メダカ台帳)。
よくある質問
冬眠させないと、寿命は縮みますか。
よくそう書かれていますが、加温した群と加温しない群で寿命を比べた実験を見つけられませんでした。27℃で通年飼った実験では平均16.8か月・中央値22か月という数字がありますが、これは無加温と比べたものではないので、それ単体では良し悪しを言えません。
よく引かれる「野生は1年ほど」との比較も、あちらは食べられたり干上がったりを含む数字なので、並べる意味がありません。
では、加温すると何が起きますか。
分かっているのは「早く大人になる」ことです。24℃から30℃に上げると、成熟する年齢も、成熟したときの体の大きさも下がります。体の成長の速さが同じでも、そうなります。ただし30℃から33℃へさらに上げると逆になるので、上げるほど早まるわけではありません。
加温のいちばんのデメリットは何ですか。
止められなくなることです。一度上げたら春まで下げられません。途中でやめると、その落差のほうが体にこたえます。それと停電です。加温している水ほど、止まったときの落ち方が速くなります。
室内なら、放っておいても冬眠しませんか。
暖房の入った部屋なら、水温が下がりきらずに冬眠しないことがあります。これは中途半端でいちばんよくない状態です。動いているのに餌をあまり食べず、水温も日によって動きます。加温するなら加温する、しないならしない、と決めてください。
冬眠させないと、冬も卵を産みますか。
産みます。そこが加温の値打ちでもあり、面倒なところでもあります。卵を採り続けるか、放って共食いさせるかのどちらかになります。冬に増えた稚魚を、どこで育てるかまで決めてから始めてください。
メダカは何度まで耐えられますか。
0℃から40℃まで耐えられる広温性の魚とされています。最適はおよそ25℃です。ただし耐えられることと、元気でいられることは別です。危ないのは温度そのものより、急に動くことのほうです。
最初の冬は、どちらがいいですか。
加温しないほうが失敗が少ないです。冬眠させれば、止まっても何も起きません。手を出さないほうが越せる、というのが冬の基本です。
まとめ
「冬眠させないと寿命が縮む」は、根拠を確かめられませんでした。加温した群としない群を比べた実験が見つからないからです。分かっているのは、水温が高いほど早く大人になることです。一年を早回しする飼い方だと考えてください。
加温で本当にやっかいなのは、止められないこと、停電に弱いこと、産卵が止まらないこと、電気代です。いちばんよくないのは、暖房で中途半端に暖かい水にしてしまうことです。
迷ったら、最初の冬は加温しないでください。止まっても何も起きない、というのは大きな安心です。

