水耕栽培で葉が枯れてきたとき、多くの人がまず肥料を足します。そして、たいてい直りません。
枯れるという言葉はひとつでも、中身はまったく違うものが混ざっています。足りないから枯れることもあれば、多すぎて枯れることもある。水が足りないのではなく、水がありすぎて枯れることもあります。
だから最初にやるのは、足すことではありません。どこから枯れたかを見ることです。場所と枯れ方で、原因はかなり絞れます。
- 枯れ方は症状であって、原因ではありません。足す前に、どこから枯れたかを見ます。
- 下の葉から黄色いなら窒素、新しい葉からなら鉄。移動できる養分かどうかで出る場所が変わります。
- 茎だけ伸びて色が薄いのは光不足。肥料では埋まりません。
- 根が茶色くぬめるのは酸素不足。菌より先に、酸欠が起きています。
- 全体が急にしおれたら、まず水の流れを見てください。ポンプが止まっていることがあります。
水耕栽培は、枯れはじめると早い
先に、この栽培の性質を書いておきます。土で育てるより、崩れるのが速い。これは弱点であると同時に、対処が早ければ戻せるという意味でもあります。
理由は土という緩衝が無いことです。土は養分を抱え込み、多すぎれば吸着し、少なければ少しずつ出します。水温も、土の中のほうがゆっくり動く。その緩衝を、水耕栽培は持っていません。
だから濃くしすぎればすぐ効き、薄すぎればすぐ足りなくなります。良くも悪くも、やったことが数日で出ます。
もうひとつ、根が全部同じ水に浸かっていることも効きます。土なら、根の一部が悪い場所にあっても、別の根が働きます。水耕栽培では、水が悪くなれば全部の根が同時に悪くなります。
だからこそ、気づいた時点で手を打てば戻ります。速く崩れるということは、速く戻るということでもある。枯れはじめを見つけられるかどうかが、そのまま結果になります。

どこから枯れたかで、原因が分かれる
先に全体を出します。症状と、まず疑うものの対応です。
下の葉から黄色くなるなら、窒素が足りていません。新しい葉が黄色い・白っぽいなら、鉄のほうです。同じ黄色でも、出る場所が逆になります。
葉の縁が茶色く枯れるなら、養液が濃すぎるか、カルシウムが届いていません。茎だけ伸びて色が薄いなら、光です。
根が茶色くぬめる・臭うなら酸素不足。全体が急にしおれたなら、水が止まっています。
この6つを順に見ていきます。当てはまるところから読んでください。どれにも当てはまらないと感じたら、複数が同時に起きていることを疑ってください。光が足りない株は根も弱りやすく、根が弱れば養分も吸えません。原因はひとつとは限りません。順番に潰していくほうが、結局は早く終わります。

下の葉から黄色くなる|窒素が足りない
古い葉、つまり株の下のほうから順に黄色くなっていくなら、窒素不足です。
なぜ下から出るのか。窒素は株の中を移動できる養分だからです。足りなくなると、植物は古い葉から窒素を引き抜いて、新しい葉へ回します。下の葉は、犠牲にされている側です。
だから「下から順に」というのが、そのまま診断の材料になります。全体が一様に薄くなるのではなく、下から上へ順番に進むかどうかを見てください。
水耕栽培なら、養液を足せば戻ります。ただし、うちのように魚がいる装置では話が変わります。窒素は魚の餌から来るので、増やすには餌を増やすしかない。それは水を汚すことと同じです。
新しい葉が黄色い・白っぽい|鉄が足りない
逆に、伸びてくる新しい葉のほうが色が薄いなら、鉄です。葉脈だけ緑が残って、あいだが黄色くなるのが典型です。
こちらが上から出るのも、同じ理屈です。鉄は株の中をほとんど移動できません。古い葉に入った鉄を、新しい葉へ回せない。だから新しく作る葉のほうが先に足りなくなります。
「下から黄色」と「上から黄色」で原因が逆になる——ここを取り違えると、足すものを間違えます。
魚と一緒に育てている場合、足りなくなるのはカリウム・カルシウム・鉄で、窒素はむしろ余りがちです。土耕の常識とは、不足する養分の順番が違います。
葉の縁が茶色く枯れる|濃すぎるか、届いていないか
葉の外側、とくに先端や縁だけが茶色くなって、そこから内側へ進むなら、2つの可能性があります。
ひとつは、養液が濃すぎること。濃い液に根がさらされると、水を吸うどころか奪われます。結果、いちばん遠い葉の先から枯れます。足したあとに出たのなら、まずこれを疑ってください。
濃さを確かめたいなら、ECメーターを使います。ECは電気の通りやすさのことで、養分が多いほど水は電気を通します。つまり数字が高いほど濃い。数千円のものから手に入ります。目安の数値と、ほかに測る4つの数値はこちらにまとめました。
魚用の水質試験紙とは、まったく別の道具です。あちらはpHや亜硝酸を見るもので、養液の濃さは測れません。同じ「水を測る」でも、見ているものが違います。
もうひとつがカルシウムです。カルシウムは水の流れに乗って運ばれるので、蒸散の少ない部分——新しい葉の先や、実——には届きにくい。トマトの尻腐れと同じ仕組みです。
見分けは順番です。足したあとに出たなら濃さ。何も足していないのに出たならカルシウムを先に考えます。
茎だけ伸びて色が薄い|光が足りない
枯れる手前の状態ですが、放っておくとそのまま弱ります。茎だけがひょろひょろ伸びて、葉と葉の間隔が空き、葉が薄く小さくなる。徒長です。
これは光不足に固有のサインです。養分の問題ではありません。ここで肥料を足す人が多いのですが、窒素を入れても茎が伸びる勢いが増すだけです。
足りないのが光なら、足すべきは光です。室内なら照明を、屋外なら置き場所を動かします。
紛らわしいのは、最初の数日はふつうに育つこと。種や苗が持っている力で伸びるので、気づいたときには茎が伸びきっています。

根が茶色くぬめる・臭う|酸素が足りない
葉ではなく根を見てください。健康な根は白く、張りがあります。茶色くなって、触るとぬめり、匂いがするなら根腐れです。
ここで大事なのは、引き金が菌ではないことです。先に起きているのは酸素不足で、弱ったところに菌が入ります。だから殺菌より先に、酸素を入れるほうが効きます。
根が水に浸かりっぱなしでも、水が動いて酸素が届いていれば腐りません。止まった水に浸かっていることが問題です。
培地を敷いた方式なら、上のほうを水に浸けないこと。根が呼吸する時間を残します。
全体が急にしおれる|水が止まっている
昨日まで元気だったのに、今日は株全体がぐったりしている。この場合は養分ではありません。水が届いていないか、根が乾いています。
まず見るのはポンプです。音が変わっていないか、水が上がっているか。詰まりで流量が落ちていることがあります。うちで止まったのも詰まりでした。
次に水位です。減っていると、ポンプが空気を吸って送れなくなります。減ったぶんを足してください。
そして配管です。藻が糸状にからんで、水の落ち口をふさいでいることがあります。
復活するかどうかは、根が生きているかで決まります。水が戻って数時間で立ち上がるなら、間に合っています。丸一日戻らないなら、根が傷んでいます。
枯れた葉は、取ったほうがいいのか
症状が出た葉をどうするか。黄色くなった葉は、取ってください。
理由は2つあります。ひとつは、その葉はもう戻らないこと。黄色くなった葉が緑に戻ることはありません。付けたままにしておくと、株はそこへ養分を送り続けます。
もうひとつが、腐って水を汚すことです。落ちた葉が水に沈むと、そこから分解が始まります。コバエの餌にもなります。
ただし一度に取りすぎないでください。光合成をする面積が減るので、株が弱ります。目安は、明らかに黄色い葉だけ。緑が残っているものは置いておきます。
そして取ったあとに、同じことが起きるかを見ます。次の葉も同じように黄色くなるなら、原因が残っています。止まったなら、打った手が効いたということです。
戻るものと、戻らないもの
手を打つ前に、知っておいたほうがいいことがあります。枯れたものは、戻りません。戻るのは、これから出る葉のほうです。
黄色くなった葉が緑に戻ることはありませんし、茶色く枯れた縁が再生することもありません。だから「良くなったかどうか」は、いま出ている葉ではなく、次に出る葉で判断します。
いっぽうで、しおれは別です。しおれは、水が戻れば元に戻ります。細胞が水を失って張りを無くしているだけで、組織そのものは壊れていません。数時間で立ち上がるのは、そのためです。
ここが見分けの分かれ目になります。触ってみて、葉がぐったり柔らかいならしおれ。パリパリ、あるいは色が変わっているなら、そこはもう戻りません。
根も同じです。白い根は生きています。茶色くても、芯がしっかりしていれば残せます。指でつまんで、皮がずるりと剥けて中の筋だけになるなら、その根は終わっています。切ってください。
そして全部が終わっているとは限りません。一部の根が生きていれば、そこから立て直せます。株ごと捨てる前に、根を洗って見てください。
立て直すときは、葉も減らします。根が減ったぶん、支えられる葉の量も減っているからです。外側の大きい葉から落として、株を小さくしてやると、残った根で回せるようになります。外葉から穫るのと、やることは同じです。

足す前に、順番がある
最後に、手を動かす順番を書きます。肥料は最後です。
1つめ、水の流れ。止まっていないか。これは数秒で確かめられて、いちばん取り返しがつきません。
2つめ、光。足りているか。ここが足りないと、養分を足しても使われません。
3つめ、根。白いか、茶色いか。持ち上げて見るだけです。
4つめ、やっと養分。そして足す前に、どこから枯れたかで何を足すかを決めます。やみくもに足すと、濃すぎて別の枯れ方をします。
この順番には理由があります。上の3つは、足しても直らないものだからです。水も光も、肥料では代わりになりません。
魚がいると、打てる手が減る
うちはアクアポニックスなので、正直に書いておきます。水耕栽培より、できることが少ないです。
養液を作り直せません。魚が泳いでいる水だからです。濃さも上げられません。魚が先に耐えられなくなります。
そのかわり、薄めた資材を足すことはしています。うちで試したものではネガティブは起きませんでした。ただし規定より薄く、自己責任という前提です。
逆に言えば、水耕栽培は打てる手が多い。濃さを変えられるし、作り直せる。枯れたときに戻せる幅が広いのは、魚がいないことの利点です。
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まとめ
枯れ方は症状であって、原因ではありません。同じ「枯れる」でも、足りなくて枯れることも、多すぎて枯れることもあります。
下の葉から黄色いなら窒素、新しい葉からなら鉄。葉の縁が茶色いなら濃さかカルシウム。茎だけ伸びるなら光。根が茶色くぬめるなら酸素。全体が急にしおれたら、水が止まっています。
手を動かす順番は、水の流れ・光・根・そして養分です。上の3つは、肥料では代わりになりません。
よくある質問(FAQ)
Q. 水耕栽培が枯れる原因は何ですか。
A. 枯れ方によって違います。下の葉から黄色いなら窒素不足、新しい葉からなら鉄不足、葉の縁が茶色いなら養液が濃いかカルシウム、茎だけ伸びるなら光不足、根が茶色くぬめるなら酸素不足、全体が急にしおれたら水が止まっています。
Q. 葉っぱが枯れてきたら、どうしたらいいですか。
A. まず肥料を足さないでください。順番があります。水の流れ、光、根の色を先に確かめて、それから養分を考えます。上の3つは、肥料では代わりになりません。
Q. 下の葉と新しい葉、どちらが黄色いかで違いますか。
A. 違います。窒素は株の中を移動できるので、足りないと古い葉から引き抜かれて下から黄色くなります。鉄はほとんど移動できないので、新しい葉のほうが先に足りなくなります。
Q. 水耕栽培で根腐れしたら、どうすればいいですか。
A. 傷んだ根を切り、水が動くようにしてください。引き金は菌ではなく酸素不足なので、殺菌より先に酸素を入れるほうが効きます。培地を敷いた方式なら、上のほうを水に浸けないでください。
Q. しおれた株は復活しますか。
A. 根が生きていれば戻ります。水が届いて数時間で立ち上がるなら間に合っています。丸一日たっても戻らないなら、根が傷んでいます。
Q. 肥料を足したのに、かえって枯れました。
A. 濃すぎる可能性があります。濃い液に根がさらされると、水を吸うどころか奪われ、いちばん遠い葉の先から枯れます。足したあとに出た症状なら、まずこれを疑ってください。
枯れた原因ごとに、次はここへ
葉の色が変わっているなら足りない栄養は3つ|症状の見分け方へ。根が茶色くぬめるなら根腐れの原因は酸素不足へ。茎だけ伸びているなら光はどれだけ要るのかへ。水が止まっていたならポンプの選び方へ。足すかどうか迷っているなら肥料は足していいのかへ。茎だけ伸びているなら水耕栽培で徒長するへ。
