栽培槽のレタスが、それらしい大きさになってきた。もう少し大きくしてからのほうが得な気がして、1週間待つ。さらにもう1週間。そうしているうちに、中心から茎が立ち上がってきて、葉は厚く、噛むと苦い。
これが、家庭のアクアポニックスでいちばんもったいない終わり方です。穫りどきは「大きくなったとき」ではなく、こちらが決めるものです。しかも葉物なら、正しく穫れば1株から何度も穫れます。その穫り方を書きます。
- 葉物は外側の大きい葉から穫ります。中心を残せば、同じ株から何度も穫れます。
- 待つほど得はしません。大きくなるのを待つと硬くなり、薹が立って終わります。
- ハーブは節の上で切ると、そこから枝が2本に増えます。摘むほど茂ります。
- 穫るのは朝です。水を含んでいるので、しゃきっとしていて日持ちします。
- 一度に全部穫らないこと。野菜が減ると、水の栄養を吸う口も減ります。

収穫には2つの型しかない
作物ごとに覚えることはありません。外葉から穫るか、株ごと穫るか。この2つの型に、うちで育てているものは全部収まります。
使い分けの基準も1つです。中心に新しい葉が出てくる作物なら外葉から。中心ごと食べる作物と、根を食べる作物は株ごと。それだけです。

外葉から穫る|1株を長く使う
リーフレタス、スイスチャード、小松菜、ルッコラ。この手の葉物は、外側の大きい葉を根元から手で折り取ります。中心の小さい葉を残しておけば、そこから次の葉が出てきます。
1回に穫るのは、1株あたり外側の2〜3枚まで。全部むしると光合成をする葉が無くなって、次が出てくるまで時間がかかります。数株から少しずつ穫るほうが、結果的に長く食べられます。
この穫り方には、もう1つ利点があります。株を植えすぎて全部が細くなるのが家庭サイズの定番の失敗ですが、外葉を穫るのはそのまま間引きにもなります。穫るほど、残った株に栄養が回ります。
株ごと穫る|終わらせて次を植える
ベビーリーフや豆苗のように若いうちにまとめて刈るもの、ラディッシュのように根を食べるものは、株ごと穫ります。
抜いたあとに残るのが、培地に食い込んだ根です。ここで根はできるだけ取り除いてください。そのまま埋まっていると腐って、よどみと臭いのもとになります。太い根が抜けないときは、無理に引かず地際で切って、次の植え付けは別の穴にします。
薹が立ちはじめた株も、この型で終わらせます。花に向かい始めた株は葉に戻りません。待っても硬くなるだけなので、見つけたらその週のうちに片づけて、空いた穴に次の苗を入れます。

ハーブは、摘むほど増える
バジルやミントは、他の葉物と考え方が違います。茎を節の上で切ると、その節の左右から新しい枝が2本出てきます。つまり、切った回数だけ枝が増えていきます。
だから収穫と剪定が同じ作業になります。うちのバジルがよく茂るのは、丁寧に育てているからではなく、単に頻繁に切っているからです。
逆に切らずに置くと、先端に花が付きます。花が咲くと葉が硬くなって香りも落ちるので、つぼみが見えたら花ごと摘んでください。
品目ごとの、穫りどきと穫り方
型が2つでも、実際の手つきは品目で少しずつ違います。うちで穫っているものを中心に、具体的に書きます。
リーフレタス。株の直径が20センチくらいになったら始めます。外側の葉を、株元をつまんで横へ倒すように折ると、きれいに外れます。ハサミより手のほうが切り口が小さく、傷みにくい。中心に若い葉が5〜6枚残っていれば、そこからまた育ちます。
スイスチャード。茎の根元を持って、外側へ引きながらねじると外れます。1株から外葉を2〜3枚ずつ、1〜2週間おきに穫れます。茎が太いので、切るなら地際できれいに。中途半端に残すと、そこが腐ります。
バジル。先端から数えて2組目の葉の、すぐ上で切ります。切った位置のすぐ下の節から、新しい枝が左右に出ます。1株が大きくなってきたら、上から3分の1くらいをまとめて刈っても平気です。
小松菜・水菜。草丈が20〜25センチになったら株ごと抜くか、外葉から穫るか、どちらでも使えます。密にまいた場合は、混んでいるところから抜いていくと、残りが大きくなります。
ミント。茎の途中で切れば、そこから枝が増えるのはバジルと同じです。ただし増えすぎるので、収穫というより剪定のつもりで刈ってください。
ルッコラ・ベビーリーフ。若いうちが香りも歯ざわりもいちばん良い品目です。大きくすると辛みや苦みが強くなります。草丈10〜15センチで、ハサミで根元から刈ります。
薹が立ったかどうかの見分け方
「薹が立つ」は、株が葉ではなく花に向かうことです。この切り替えが起きると葉は元に戻らないので、早く気づくほど無駄がありません。
いちばん分かりやすいのは、株の中心から太い茎がまっすぐ立ち上がってくることです。それまで平らに広がっていた株の真ん中が、急に盛り上がってきたら合図です。
葉の変化も出ます。新しく出る葉が細長くなり、色が濃くなって、噛むと苦い。レタスなら切り口から白い液が多く出るようになります。
引き金は、暑さと日の長さです。だから初夏にまとめて起こります。春まきの葉物が6月に終わるのはこのためで、これは装置の問題ではありません。
見つけたら、その週のうちに株ごと片づけます。待っても良くなりません。空いた穴に次の苗を入れれば、収穫の切れ目も作らずに済みます。
穫るのは朝がいい
1日のうちで葉がいちばん水を含んでいるのは朝です。日中に穫った葉は、その時点ですでに少ししおれていて、冷蔵庫に入れても戻りが悪い。
特に夏は、昼の栽培槽は暑くなっています。水温が上がる時間帯に手を入れるのは根にも良くないので、涼しいうちに済ませてしまうほうが、野菜にも装置にも親切です。
一度に全部穫らない
収穫は気持ちのいい作業なので、つい全部いきたくなります。けれど野菜は、魚が出した栄養を吸ってくれる装置の一部でもあります。全部抜けば、吸う口が一度に無くなります。
とくに餌の量を変えていない場合、栄養は水に残ります。硝酸塩が上がりはじめたら、それは水質の数値としてすぐ出てきます。
だから植えるときから、時期をずらしておきます。2週間おきに数株ずつまく。そうすれば穫るのも数株ずつになり、水の側も揺れません。1年カレンダーで秋と春に2回まく話をしているのは、この分散のためでもあります。
穫ったあとの、次の一手
収穫は終わりではなく、次の周回の始まりです。穫ったその日にやっておくと、切れ目が出ません。
株ごと抜いた穴には、その日のうちに次の苗を入れます。そのためには、常に苗を控えさせておく必要があります。スポンジに種をまいて別の場所で育てておけば、空いた穴にすぐ差し込めます。この段取りができると、栽培槽が空っぽになる期間が消えます。
抜いたあとの培地は、指で探って根の残りを取り除きます。細かい根は残っても分解されますが、太い根は残さないほうが安全です。腐って、よどみと臭いのもとになります。
穫った量が多かったときは、餌の量も少し見直します。野菜が減った直後は栄養を吸う口が減っているので、いつもどおり入れていると水に残ります。次の苗が根を張るまでの数日だけ、餌を控えめにする。これだけで数値が振れません。
穫ったあとの、洗い方と保存
魚の水で育った野菜、と聞くと洗い方が気になると思います。結論から言うと、普通の野菜と同じでかまいません。
葉の表面に着くのは、培地の粉や小さな虫です。流水でさっと洗えば落ちます。根の側は水に浸かっていましたが、食べるのは葉なので、そこを気にする必要はありません。硝酸塩の安全性についてはこちらにまとめました。
保存は、洗ってから水気をよく切るのが要点です。濡れたまま袋に入れると、そこから傷みます。ペーパーで包んで袋に入れ、立てて冷蔵庫へ。葉物は横に寝かせるより、育っていた向きのまま立てるほうが長持ちします。
バジルだけは冷蔵庫に弱く、低温で黒くなります。コップに水を張って挿し、常温で置くのが正解です。そのまま根が出ることもあります。
穫ってすぐ食べられるのが、家庭でやるいちばんの利点です。買ってきた葉物との違いがはっきり出るのは、水分の残り方と香りです。
穫れる量は、餌の量で決まっている
最後に、量の話をしておきます。収穫量を増やしたいときに株を増やしても、たいてい全部が細くなります。
この装置で穫れる量の上限を決めているのは、植えた株数ではなく毎日入れている餌の量だからです。魚が小さければ、穫れる葉も少ない。逆に言えば、餌を増やせるだけの魚がいれば、収穫は自然に増えます。
家庭サイズなら、まずは「食卓に1回ぶんのサラダ」を安定して穫れる状態を目標にしてください。それができれば、装置としては完成しています。
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まとめ
外葉から穫る。待たない。ハーブは節の上で切る。朝に穫る。全部いっぺんに穫らない。収穫の作法は、この5つで足ります。
大きく育てることより、穫り続けることのほうが難しく、そして楽しい。1株を長く使えるようになると、装置の見え方が変わります。
よくある質問(FAQ)
Q. アクアポニックスの野菜はいつ穫ればいいですか。
A. リーフレタスなら植えてから6〜8週間が目安ですが、大きさより早めが正解です。待つと葉が硬くなり、薹が立って終わります。外葉から少しずつ穫りはじめてください。
Q. 1株から何度も穫れますか。
A. 穫れます。外側の大きい葉を根元から折り取り、中心の若い葉を残せば、そこから次の葉が出ます。1回に穫るのは1株あたり2〜3枚までにしてください。
Q. バジルはどこで切ればいいですか。
A. 節の上で切ります。切った節の左右から枝が2本出るので、切るほど茂ります。つぼみが見えたら、花ごと摘んでください。葉が硬くなり香りが落ちます。
Q. 収穫は朝と夕方どちらがいいですか。
A. 朝です。葉がいちばん水を含んでいる時間帯なので、しゃきっとしていて日持ちします。夏は昼の栽培槽が暑くなるため、根のためにも涼しいうちに済ませるほうがよいです。
Q. 一度に全部収穫してもいいですか。
A. おすすめしません。野菜は魚の出した栄養を吸う役目も持っているので、全部抜くと水に栄養が残ります。2週間おきにまいて、穫るのも少しずつに分けてください。
Q. 薹が立ったかどうかは、どう見分けますか。
A. 株の中心から太い茎がまっすぐ立ち上がってきたら合図です。新しい葉が細長く濃い色になり、噛むと苦くなります。こうなると葉には戻らないので、その週のうちに株ごと片づけて、次の苗を植えてください。
Q. 魚の水で育った野菜は、洗い方に気をつけますか。
A. 普通の野菜と同じで問題ありません。葉に着くのは培地の粉や小さな虫なので、流水でさっと洗えば落ちます。洗ったあとは水気をよく切って、立てて冷蔵庫へ入れてください。
Q. 収穫量を増やすにはどうすればいいですか。
A. 株を増やすのではなく、餌を増やせるだけの魚を入れることです。この装置で穫れる量の上限は、植えた株数ではなく毎日入れている餌の量で決まっています。

