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アクアポニックスは電気なしでできるか|ポンプを止めた瞬間に失われるもの

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アクアポニックスは電気なしでできるかの記事のアイキャッチ。太陽光パネル付きの小型装置を背景にしている アクアポニックス

電源の取れない庭の隅に置きたい。停電のときも回っていてほしい。あるいは単純に、電気代を1円も掛けたくない。「アクアポニックス ポンプなし」と調べる理由は、だいたいこの3つのどれかです。

先に結論を書きます。植物を育てるだけなら電気なしでもできます。ただしその瞬間から、それはアクアポニックスではなくなります。何が失われるのかを、順に見ていきます。

この記事の結論(要点)
  • 電気を完全に無くすと、残るのは「水槽の上に載せた植木鉢」です。魚の水はきれいになりません。
  • 水を止めると、細菌の働きと根の呼吸も同時に止まります。止まるのは循環だけではありません。
  • 毛細管現象で吸い上げる方式は水耕栽培なら成立しますが、魚の水を戻せないので浄化は起きません。
  • 現実的な答えは太陽光です。うちのハウスにも、パネルを付けた小型の装置があります。
  • 100円ショップでそろうのは容器と小物まで。ポンプと培地は、そこだけお金をかける価値があります。
アクアポニックスでポンプが止まると何が止まるかの図。水が動かなくなると、魚の水がきれいにならず、細菌が働けなくなり、根が呼吸できなくなる
止まるのは水の流れだけではありません。

ポンプが止まると、3つが同時に止まる

この装置の心臓は水の流れです。魚の水を栽培槽へ持ち上げて、培地を通して戻す。その一周が止まると、失われるのは「水の移動」だけではありません。

1つめは、魚の水がきれいにならないことです。汚れた水を植物のところへ運べなければ、魚の側には汚れが残ります。水換えの要らない装置が、水換えの必要な水槽に戻ります。

2つめは、細菌が働けなくなることです。培地に住みついてアンモニアを処理している細菌は、流れてくる水と、そこに溶けた酸素で生きています。硝化が止まれば、数時間で水質は動きはじめます

3つめは、根の側です。止まった水は酸素が減ります。根腐れの原因が酸素不足である以上、水が動かない環境は根にとって危険側です。

うちが夜も冬もポンプを止めないのは、この3つを止めたくないからです。電気を惜しむ場所として、ここはいちばん割に合いません。

「ポンプなし」を名乗る方式の正体

検索するとポンプを使わない作例が出てきます。だいたい2つの型に分かれます。

1つめは、根を直接水に浸ける型です。魚の水に植物の根をそのまま垂らします。水は動きませんが、植物はある程度育ちます。ただし培地を通らないので細菌の住む場所が少なく、根に酸素も届きにくい。小さな水槽にポトスを1株、くらいが現実的な限界です。

2つめが、毛細管現象を使う型です。布やひもを芯にして、下の水を上の培地へ吸い上げます。水耕栽培では実際に使われている方式で、電気は要りません。

ただし、吸い上げた水は下へ戻りません。アクアポニックスに必要なのは往復であって片道ではないので、魚の水はきれいにならないままです。植物は育つ、魚の水は汚れる。それぞれ別のことが起きているだけになります。

電気を減らす方向なら、答えはある

「無くす」ではなく「減らす」なら、現実的な手はいくつもあります。効く順に書きます。

いちばん効くのは、水を持ち上げる高さを下げることです。ポンプが食う電気は、送る水の量と持ち上げる高さでおおよそ決まります。栽培槽を魚の水槽のすぐ上に置けば、数十センチの持ち上げで済みます。棚の上段に置きたくなる気持ちは分かりますが、その高さのぶんを毎日払い続けることになります。

次が間欠運転です。タイマーで15分動かして45分止めれば、電気は単純に4分の1になります。ただし止めているあいだは、さきほどの3つも止まっています。培地が湿り気を保てる範囲でしか使えないので、培地を敷いた方式なら耐えますが、根を水に浮かべる方式では危険です

検討して見送ったのが、泡の力で水を持ち上げる方法です。管の中で空気を上らせて水を引き上げる仕組みで、水槽のろ過装置では広く使われています。電気の消費は小さいのですが、持ち上げられる高さがごくわずかで、栽培槽まで水を運ぶ用途には届きません。この装置で使うなら、水を回す役ではなく酸素を足す役です。

手で汲む案も一度は考えます。ただ、1日2回バケツで往復しても循環としては足りません。細菌は水が流れ続けている前提で働いているので、1日2回はゼロに近いのです。旅行のあいだだけ手で回す、という使い方も同じ理由で成り立ちません。

ビニールハウスの中で太陽光パネルを付けて動いている小型のアクアポニックス装置。上の栽培槽でスイスチャードとレタスが茂っている
うちのハウスにある太陽光パネル付きの小型装置。電源の位置に縛られません。

それでもやるなら、太陽光がいちばん現実的

「電源が取れない」が理由なら、答えは電気を無くすことではなく、電気を自分で作ることです。

うちのハウスにも、太陽光パネルを付けた小型の装置があります。写真のとおり、上の栽培槽ではスイスチャードやレタスが普通に育っています。コンセントの位置に縛られないので、置き場所の自由度はかなり上がります。

注意点は1つだけです。日が落ちればパネルは発電しません。夜も回し続けたいなら、蓄電池を挟む必要があります。曇りの日が続く時期も同じです。パネル1枚で完結する話ではない、とだけ覚えておいてください。

太陽光でやるなら、選ぶ順番がある

パネルを買ってからポンプを選ぶと、たいてい合いません。逆にしてください。

先に決めるのは水の量です。栽培槽と魚の水槽の大きさが決まれば、1時間に何回ぶん回したいかが決まり、必要なポンプの能力が決まります。ポンプが決まって初めて、必要な電気の大きさが決まる。パネルはその最後です。

そのうえで、パネルはポンプが必要とする電気より余裕のあるものを選びます。曇りの日は晴天の何分の一しか発電しないので、晴れの日にちょうど足りる大きさでは、曇るたびに止まります。

夜も回すなら蓄電池が要ります。ここまで足すと値段はそれなりになるので、コンセントが引ける場所なら、素直に引いたほうが安く済みます。太陽光が向いているのは、電源が無い場所に置きたい場合と、装置ごと動かしたい場合です。

なお、日なたにパネルを置くということは、装置も日なたにあるということです。夏はそのぶん水温が上がるので、遮光をセットで考えてください。パネルだけ日なたに出して、装置は日陰に置くのが理想です。

100円ショップでどこまでそろうか

費用を抑えたい場合、100円ショップは十分に戦力になります。ただし線引きははっきりしています。

そろうのは、器と小物です。浅い収納ケース、洗いかご、網、園芸用の鉢底ネット、スポンジ、結束バンド、ホース。このあたりは100円ショップの品でまったく問題ありません。種まきに使うスポンジも、台所用で足ります。

そろわないのは、ポンプと培地です。ポンプは水の量に合った能力のものを選ばないと、そもそも水が上がりません。培地も、ハイドロボールは必要な量が意外に多く、100円ショップの小袋では足りません。安いからと赤玉土で代用すると、崩れて詰まります

つまり「安く済ませる場所」と「お金をかける場所」を分ければ、全体としてはかなり安く作れます。うちの家庭サイズの装置も、そういう配分で組んでいます。

太陽光パネルを付けた小型のアクアポニックス装置。栽培槽には白い培地と小さな苗
同じ装置の、苗を植えたばかりのころ。パネルは日が落ちれば発電しません。

ペットボトルで作る場合

いちばん小さい形として、ペットボトルを使った作例もよく見かけます。仕組みを理解するには良い教材ですし、豆苗のように種の養分だけで伸びるものなら形にもなります。

ただ、続けるには水が少なすぎます。メダカでも1匹に2リットルは見ておきたいところで、ペットボトル1本では魚を入れる余地がほとんどありません。水が少ないほど水温も水質も一日のうちで大きく振れるので、失敗が失敗として見える前に終わります。

自由研究のように「1か月だけ動かす」目的なら十分ですが、育て続ける装置としては別物だと考えてください。

停電したときに、何時間もつのか

電気なしを考える人の多くは、停電のことも気にしています。実際に止まったとき、何がどの順で起きるのかを書いておきます。

最初に苦しくなるのは魚です。水が動かないと空気に触れる面が減り、水に溶ける酸素が入ってこなくなります。とくに夏は水温が高いほど水が酸素を抱えられないので、暑い日ほど余裕が短くなります。魚の数が多い容器ほど、この時間は短くなります。

次に、培地の細菌です。こちらは水が引いても急には死にません。ただし培地が乾ききると失われるので、培地の湿り気が残っているうちに復旧できるかが分かれ目になります。逆に言えば、数時間で戻せる停電なら、細菌の側はほとんど無傷です。

最後に根です。水が止まって酸素が減った状態が続くと、根から傷みはじめます。植物は魚より粘りますが、夏の高水温と重なると数時間でも影響が出ます。

やることは単純です。止まっていると気づいたら、まず餌を止めます。餌を入れなければアンモニアは増えません。そのうえで、電池式の空気ポンプがあれば入れる。無ければ、コップで水を汲んで高いところから細く落とすだけでも酸素は入ります。復旧してから餌を戻す順番だけ、間違えないでください。

それでも電気なしでやりたい人へ|正しい「もどき」の作り方

ここまで読んでも電気を使いたくない、という人はいると思います。その場合は、アクアポニックスを名乗るのをやめて、うまくいく形に寄せるのが得策です。うまくいかない形と、いく形がはっきり分かれるからです。

うまくいかないのは、深い容器に水をためて、その上に培地を厚く敷く形です。水が動かないので培地の底まで酸素が届かず、根が傷みます。見た目はアクアポニックスに近いのに、いちばん失敗しやすい組み方です。

うまくいくのは、根の一部だけを水に浸ける形です。水面から出ている根が空気に触れられるので、酸素の問題が起きません。空き瓶にメダカを数匹、口のところに水を好む観葉植物を1株。この形なら電気は要らず、それなりに長く保ちます。

ただし、これで魚の水がきれいになると期待しないでください。植物が吸える量はごくわずかで、水換えは普通に必要です。水換えが要らなくなるのは、培地を水が通り続けている場合だけです。役割が違うものだと割り切れば、これはこれで気持ちのいい飼い方です。

電気代は、実際いくらか

最後に、そもそもの前提を確かめておきます。家庭サイズの装置で回るポンプは小型で、かかる電気代は月に数百円という水準です。加温しなければ、そこが上限になります。

その数百円で、魚の水がきれいになり、細菌が生き、根が呼吸します。電気なしにこだわって循環を捨てるのは、この装置に関してはいちばん高くつく節約です。

電源が無い場所なら太陽光。電気代が心配なら、まず月額を確かめる。そのうえで「それでも電気を使いたくない」なら、それは水耕栽培か、ビオトープに近い別の遊びとして楽しむのが正直なところです。

ポンプが止まっていた日、水温が跳ねた日。あとから原因を探すとき、頼りになるのは記録だけです。「メダカ台帳」は容器ごとの記録が1タップ。気象警報や冷え込みの通知も届きます。
→ 容器ごとの記録を、次に迷ったときに引き出せる
どんなアプリか見てみる(登録はメールアドレスだけ・30秒。記録と通知はずっと無料です)

まとめ

電気を無くすと、水の流れと一緒に、浄化と細菌と根の酸素まで消えます。残るのは水槽の上の植木鉢です。

置き場所に電源が無いなら太陽光。安く作りたいなら、容器と小物を100円ショップで、ポンプと培地にだけお金をかける。その配分で、この装置はじゅうぶん安く回ります。

よくある質問(FAQ)

Q. アクアポニックスはポンプなしでもできますか。

A. 植物を育てるだけならできますが、魚の水はきれいになりません。水が動かないと細菌の働きと根の呼吸も止まるため、アクアポニックスとしては成立しません。

Q. 毛細管現象で水を吸い上げる方式はどうですか。

A. 水耕栽培では実際に使われている方式です。ただし吸い上げた水が下へ戻らないので、魚の水を浄化する往復が起きません。植物は育ちますが、魚の側は汚れたままです。

Q. 電源が取れない場所でもできますか。

A. 太陽光パネルを使えばできます。うちのハウスにもパネル付きの小型装置があり、葉物が育っています。ただし夜は発電しないので、回し続けたいなら蓄電池が必要です。

Q. 100円ショップの材料だけで作れますか。

A. 容器・網・スポンジ・結束バンド・ホースはそろいます。ポンプと培地は別で用意してください。とくに赤玉土での代用は、崩れて詰まるので避けます。

Q. ペットボトルのアクアポニックスは続けられますか。

A. 仕組みを学ぶには良い教材ですが、水が少なすぎて魚を飼う余地がありません。水温も水質も一日で大きく振れるため、続ける装置としては別物と考えてください。

Q. 停電したら何時間もちますか。

A. 最初に苦しくなるのは魚で、夏の高水温ほど余裕は短くなります。気づいたらまず餌を止めてください。電池式の空気ポンプがあれば入れ、無ければコップの水を高いところから細く落とすだけでも酸素は入ります。

Q. 電気代を減らす方法はありますか。

A. 栽培槽を魚の水槽のすぐ上に置いて、水を持ち上げる高さを下げるのがいちばん効きます。タイマーでの間欠運転も有効ですが、培地が湿り気を保てる範囲に限ります。

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