ヒメタニシはメダカの卵を食べない|口の作りと、本当に減る原因
めだか
2024.08.18
ヒメタニシは、メダカの卵も稚魚も食べません。理由は口の作りです。ヒメタニシの口は、やすりのような歯で面をこすって削り取るようにできています。
ガラスや石に貼り付いたコケを剥がすには向いていますが、丸くて弾力のある卵の殻には歯が立ちません。泳いでいる稚魚を追いかけて捕らえる手段も持っていません。
それでも卵や稚魚が減っているなら、原因は貝ではなく別のところにあります。
なぜヒメタニシは、卵を食べられないのか
こそげ取る口なので、卵の殻は破れない。やすりのような歯は面を削るのに向いていて、丸い卵の表面はすべる。
ヒメタニシの口の中には、細かい歯が帯のように並んでいます。この帯を手前へ動かして、面に付いているものを削り取るのが、この貝の食べ方です。水槽の壁を這ったあとにコケの筋が残るのは、そのためです。
この作り方は、平らな面には強く、丸いものには弱い。メダカの卵は直径1mmほどの球で、殻には弾力があります。削ろうとしても歯が表面をすべってしまい、傷ひとつ付きません。指でつまんでも潰れない硬さなので、貝の力ではどうにもならないということです。
稚魚のほうは、もっと単純です。ヒメタニシは底や壁を這って移動する生き物で、泳ぐ相手を追いかけることができません。針子は動きこそゆっくりですが、それでも貝よりはるかに速い。捕まえようがないのです。
では、ヒメタニシは何を食べているのか
コケ、水中のプランクトン、底にたまった汚れ。死んだ卵は、腐る前に片づけてくれている。
3通りの食べ方を使い分けます。壁や石のコケを削り取る、水中に漂う植物性のプランクトンをえらで濾し取る、底にたまったフンや食べ残しを食べる。この3つ目まで持っているのが、ほかの貝と違うところです。
とくに濾し取るほうは、石巻貝などにはない働きです。緑水が濃くなりすぎたときに薄めてくれるのは、この食べ方があるからです。屋外の容器で緑水が濃くなりすぎて中が見えない、というときに効きます。
白く濁った卵は食べます。ただしこれは「殺して食べる」のではなく、死んだものを腐る前に片づけているだけです。白い卵を放っておくと水カビの発生源になり、そこから隣の育つ卵へ広がります。卵の見分け方はメダカの卵|透きとおれば育つ、白は抜く。25℃なら10日で孵るに書きました。
「卵が減った気がする」と感じたとき、その卵はもともと無精卵だったということが少なくありません。育つ卵は透きとおっていて、数日で黒い目が2つ現れます。減ったぶんが白い卵だったなら、貝は仕事をしただけです。
それでも卵や稚魚が減るのは、なぜか
貝を疑う前に、この4つを見る。貝が原因だったことはまず無い。
いちばん大きいのは親メダカです。メダカに子を守る習性はなく、自分が産んだ卵も、孵ったばかりの針子も、口に入れば食べます。同じ容器に親がいる限り、これはどうしようもありません。
次が餌不足です。針子は体が小さく、蓄えがほとんどありません。一日餌が無いだけで目に見えて弱り、数日で消えます。
「溶けるようにいなくなる」と言われるのはこれで、死骸が残らないので気づきにくい。詳しくはメダカの稚魚が「消える・溶ける」のは何故?原因と対策を見てください。
水の急な変化も効きます。水温が一日で5℃動く、水換えで水質が変わる。成魚なら耐える程度でも、針子は落ちます。屋外の小さい容器ほど起きやすい失敗です。
屋外なら、ヤゴも疑ってください。トンボが容器に卵を産みつけると、孵ったヤゴがメダカを捕らえて体液を吸います。死骸がまったく残らないのに数だけ減るのが特徴です。見分け方はメダカのヤゴ・ボウフラ対策にまとめました。
この4つを潰さないまま貝を取り出しても、減り方は変わりません。むしろ死んだ卵を片づける役がいなくなるぶん、水カビが広がって残る数が減ることもあります。
稚魚を確実に守るには、どうするのか
貝を出すより、この4つのほうがずっと効く。
親と分けるのがいちばん効きます。産卵床ごと別の浅い容器へ移すだけで、減る原因のいちばん大きいものが消えます。水は水道水のままでかまいません。卵はカルキに強く、むしろカビが付きにくくなります。
孵ったら、餌を切らさないでください。2日ほどはお腹の栄養で持ちますが、そのあとは毎日要ります。粉の餌か、ゾウリムシのような生きた餌を与えます。育て方はメダカの稚魚(針子)の育て方にまとめてあります。
親と一緒にするのは、体長が1.5cmを超えてからです。メダカの口はおよそ1cmで、そこを明らかに超えれば食べられません。合流の目安はメダカの稚魚はいつまで別容器?を見てください。
ヒメタニシは、何匹入れればよいのか
多く入れるほど掃除が進むわけではない。餌が尽きると先に貝が痩せる。
20リットルで3〜4匹、40リットルで5〜8匹が目安です。多く入れるほど掃除が進む、というものではありません。コケの出る量に対して貝が多すぎると餌が尽きて、先に貝のほうが痩せて落ちていきます。
入れるときは、水合わせをしてください。袋のまま容器に30分ほど浮かべて水温を合わせ、それから容器の水を少しずつ袋へ足していきます。貝はゆっくりに見えますが、水質の急な変化には魚と同じくらい弱いです。
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入れたあと、ひっくり返ったまま動かない個体がいたら戻してやってください。ヒメタニシは自力で起き上がれないことがあり、そのまま弱ります。数日たっても口を閉じたまま動かず、殻から出てこないなら落ちています。
コケが足りなくなったら、餌を足してもかまいません。沈む形の餌を少しだけ落としておくと、貝が集まってきます。
ただし入れすぎれば水が傷むので、数を減らすほうが根本の解決です。増えすぎたときの扱いはヒメタニシが増えすぎる原因と対策にまとめました。
ヒメタニシと同居させても、卵は襲われない。
ヒメタニシを入れると、何が変わるのか
いちばん分かりやすいのは、緑水が薄くなることです。屋外の容器は日が当たるので、放っておくと水が濃い緑になって中がまったく見えなくなります。
ヒメタニシはその原因である植物性のプランクトンをえらで濾し取って食べるので、少しずつ透明に戻していきます。
稚魚を育てているあいだは、薄い緑水のほうがむしろ都合が良いので、入れるのは針子の時期を過ぎてからでもかまいません。濃くなりすぎて中が見えない、朝に酸素が足りなくなる、という段階になってからで十分です。
底の掃除も効きます。フンや食べ残しは、放っておくと分解されてアンモニアになります。ヒメタニシがそれを先に食べてしまうので、水が傷むまでの時間が延びます。水換えの回数が減るのは、この働きのおかげです。
壁のコケも取ってくれますが、これは見た目の話で、メダカの調子にはあまり関係がありません。掃除役として入れるなら、期待すべきは緑水と底のほうです。
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ヒメタニシが死ぬと、どうなるのか
水が一気に悪くなります。貝は体積があるので、落ちたまま気づかずにいると、分解の過程で出るアンモニアでメダカのほうが先に落ちることがあります。この記事でいちばん実害があるのは、実はここかもしれません。
見分け方は2つです。ふたが開いたまま、身がだらりと出ている。そして、持ち上げると腐った匂いがする。生きている個体は、触れるとふたを閉じます。閉じないなら取り出してください。
ひっくり返ったまま動かない個体は、まだ生きていることが多いです。ヒメタニシは自力で起き上がれないことがあり、そのまま体力を使い果たします。見つけたら戻してやってください。数日で殻の口を上に向けて這い出します。
落ちる原因でいちばん多いのは、餌不足です。コケの出る量に対して数が多すぎると、食べるものが無くなって順に痩せていきます。入れた直後に落ちるときは、水合わせが足りていないか、水草に付いていた農薬を疑ってください。
メダカやエビと、一緒に飼えるのか
飼えます。ヒメタニシはほかの生き物を襲いません。メダカにもエビにも無関心で、底と壁を這いながら自分の仕事をしているだけです。
ミナミヌマエビとも棲み分けます。エビは水草や流木の表面、貝は壁と底を担当するので、掃除する場所が重なりすぎません。ただし両方たくさん入れると、同じコケを取り合って両方が痩せます。エビとの比率はメダカとエビの最適な比率を見てください。
水草も食べられません。柔らかい新芽をかじることはありますが、株ごと食い荒らすような食べ方はしません。枯れかけた葉を片づけてくれるほうが多いです。
注意が要るのは、水質を変える薬を使うときです。銅を含む薬は貝に強く効きます。メダカの薬浴をするときは、別の容器で行うか、貝を先に移してください。
よくある質問
ヒメタニシは、メダカの卵を食べますか。
食べません。ヒメタニシの口は、面をこすって削り取るようにできています。やすりのような歯が帯になって並んでいて、ガラスや石についたコケを剥がすには向いていますが、丸くて弾力のある卵の殻には歯が立たず、表面をすべります。
生まれたばかりの稚魚は、食べられませんか。
食べられません。ヒメタニシは追いかけて捕らえる生き物ではなく、底や壁を這いながら、そこに付いているものを削り取って食べます。泳いでいる針子を捕まえる手段を持っていません。
卵が減っているのですが、貝のせいではないですか。
まず親メダカを疑ってください。メダカは自分が産んだ卵も、孵った針子も食べます。次に餌不足、水の急変、屋外ならヤゴです。ヒメタニシが食べているのは、すでに白く濁って死んだ卵のほうで、これは腐る前に片づけてくれているだけです。
白く濁った卵が減るのは、ヒメタニシのせいですか。
そうですが、困ることではありません。白く濁った卵はもう育たず、放っておくと水カビの発生源になります。そこから隣の育つ卵へカビが広がるので、片づけてもらえるのはむしろ助かります。
何匹くらい入れればいいですか。
20リットルで3〜4匹、40リットルで5〜8匹が目安です。多く入れるほど掃除が進むわけではありません。コケの出る量に対して貝が多すぎると、餌が尽きて先に貝のほうが痩せていきます。
メダカやエビと一緒に飼えますか。
飼えます。ヒメタニシはほかの生き物を襲いません。ミナミヌマエビとも棲み分けます。ただし貝もエビも同じコケを食べるので、両方たくさん入れると餌の取り合いになります。
冬はどうすればいいですか。
屋外ならそのままで越冬します。水温が下がると底の泥に潜って動かなくなり、春に出てきます。冬に姿が見えなくなっても、死んだと決めつけないでください。掘り返すほうが体力を削ります。
まとめ
ヒメタニシは、メダカの卵も稚魚も食べません。口が面を削り取る作りになっていて、丸くて弾力のある卵の殻には歯が立たないからです。泳ぐ稚魚を追いかける手段も持っていません。
卵や稚魚が減っているなら、親メダカ、餌不足、水の急変、ヤゴ。この4つを見てください。貝が食べているのは、白く濁って死んだ卵のほうで、これは腐る前に片づけてくれているだけです。
確実に守りたいなら、産卵床ごと別の容器へ移す。それがいちばん効きます。貝を取り出すより先に、そちらをやってください。
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この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)
植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。
農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。