メダカの鱗が松ぼっくりのように逆立っている。お腹が張って、目が飛び出してきた。
松かさ病を調べると「不治の病」という言葉が並び、検索結果の1位には「克服できませんでした」という記録が出てきます。それを読んで、もう手遅れかと不安になっている方が多いのではないでしょうか。
先に答えを書きます。松かさ病は治る個体と治らない個体がはっきり分かれます。そして分かれ目は、日数ではなく「まだ餌を食べるか」です。
松かさ病は体の中で起きている病気なので、薬を届ける道が餌しかありません。この記事では、その分かれ目の見方、初期に気づくための見る角度、手当ての順番、そしてどこで区切りをつけるかまでを整理します。
この記事の薬浴や塩水浴は、必ず別の容器で行ってください。そして薬を使った魚と水は、システムに戻せません。ろ過を担う菌が減ること、野菜が根から吸うこと、植物に害が出ることが理由です。塩水も植物を枯らすので戻せません。判断の分かれ目はアクアポニックスの魚が病気に|治療した魚は戻していいのかにまとめました。
松かさ病とは|鱗の下に体液がたまっている

松かさ病は立鱗病とも呼ばれ、鱗が松ぼっくりのように逆立って見える病気です。ただし鱗そのものが変形しているわけではありません。鱗の下に体液がたまって、内側から鱗を押し上げているのです。
なぜ体液がたまるのかというと、内臓のはたらきが落ちているからです。もともと飼育水の中にいるエロモナス菌が体の中で増え、腎臓が水分をうまく排出できなくなります。だから松かさ病は「鱗の病気」ではなく「内臓の病気」で、見えているのは結果のほうです。
ここが大事なところで、原因が体の中にあるということは、体表に効く薬では届かないということです。水が汚れて抵抗力が落ちたときに出る病気なので、水の中で何が起きているかを知っておくと予防に直結します(硝化サイクルの記事)。
治るか、治らないかの分かれ目
松かさ病が「不治の病」と言われるのは、進んだ状態から手をつけた例が目立つからだと思います。実際には、鱗の逆立ちが体の一部だけで、お腹がまだ張っておらず、餌を食べている段階なら回復した例が多く報告されています。
逆に、全身の鱗が立って輪郭がギザギザになり、腹水で体が張り、目が飛び出して餌を口に入れなくなった段階からの回復例は少ないです。内臓のはたらきがすでに落ちてしまっているためです。
そして実務的にいちばん重要な線が、餌を食べるかどうかです。松かさ病は体の中の菌が相手なので、薬を体の中へ届けるには餌に混ぜるしかありません。食べなくなった時点で、その道が閉じます。だから「何日たったか」ではなく「まだ食べるか」で判断してください。
初期に気づくには、上から見る

松かさ病の初期は、横から見ても分かりません。鱗のわずかな浮きは体の陰に隠れてしまい、「少し太ったかな」で見過ごされます。気づくのは全身に広がってからで、そのときにはもう進んでいます。
早く気づくコツは、容器の上から覗くことです。上から見ると体の輪郭がギザギザに見え、左右の張り出しの差も分かります。光を当てると立った鱗が影を作るので、さらに見やすくなります。毎日の餌やりのときに、上から一度眺めるだけで十分です。
進み方の段階
松かさ病は、いきなり鱗が立つわけではありません。先に引き金が重なり、体力と抵抗力が落ち、そのあとで菌が体の中で増えていきます。鱗が立つのは、その過程のかなり後ろのほうです。
つまり目に見えた時点で、体の中ではすでに進んでいます。これが「気づいたら手遅れ」と言われる理由です。逆に言えば、餌の食いが落ちた、動きが鈍くなったという見た目以前の変化に気づけると、間に合う可能性が上がります。
ここから手当てに入ります。始めた日と、使った薬の名前と量を、どこかに控えておいてください。数日たつと必ず分からなくなりますし、うまくいかなかったときに何を変えればいいのかの手がかりは、その記録しかありません。メダカ台帳を使うと、水温が急に動く日の知らせと一緒に残せます。
手当ての順番
まず別の容器に移します。本水槽に薬を入れるとろ過を担う菌が減り、水質が崩れて別の問題を招きます。弱った個体を静かな場所に置くという意味でも、隔離は有効です。
次に0.5%(水1Lに塩5g)の塩水浴です。浸透圧の負担を下げるので、体液が漏れ出て張っている個体には意味があります。ただし塩だけでは治りません。濃度と期間はメダカの塩浴|0.5%の作り方と3〜7日の手順にまとめています。
薬の選び方
薬を選ぶときは、承認された効能を確かめてください。魚病薬は病気ごとに効能が決まっていて、適応外の薬を使うと、規定量を守っても効きません。以下は動物用医薬品等データベース(農林水産省 動物医薬品検査所)の記載に沿って整理したものです。
松かさ病に適応がいちばん明確なのはエルバージュエースです。効能に「エロモナス感染症(穴あき病・スレ症・立鱗病)」と明記されています。立鱗病は松かさ病の別名です。ただし水草には使えません。
グリーンFゴールド顆粒は「観賞魚の細菌性感染症」で承認されていて、細菌性の病気に幅広く使えます。手に入りやすいのも利点です。
観パラDは「エロモナス属による穴あき病」で承認されています。松かさ病と同じエロモナス属が相手ですが、承認されている病名は穴あき病です。穴あき病を併発しているなら選択肢になります。
用法と用量は必ず製品の指示に従い、規定量を守ってください。濃くすればよく効くというものではなく、濃すぎると弱った個体ほど薬負けします。
なお承認の対象魚として挙げられているのは金魚や錦鯉で、メダカを明記していない製品もあります。実際には広く使われていますが、量は必ず守ってください。
薬エサで腸まで届ける
松かさ病でいちばん大事なのがここです。原因の菌は体の中にいるので、水に溶かした薬だけでは届きにくい。餌に薬を混ぜて食べさせ、腸から吸収させる薬エサを併せて使います。
そして薬エサは、食べてくれなければ成立しません。「まだ食べるうちに始める」のが要点です。餌の食いが落ちてきた段階で手をつけるかどうかが、結果を分けます。水温は28℃を超えないようにして、上げるときは1日1〜2℃ずつにしてください。
メチレンブルーは効きません
松かさ病にメチレンブルーを使うという話を見かけますが、これは効きません。メチレンブルーの承認された効能は「白点病、尾ぐされ症状、水カビ病」で、いずれも体の表面に出る病気です(白点病/水カビ病)。内臓のはたらきが落ちて体液がたまっている状態には届きようがありません。
どこで区切りをつけるか
ここは書きにくいところですが、書いておきます。松かさ病は治らないこともある病気です。餌を口に入れなくなり、腹水で体が張って動けなくなり、2週間続けて悪化しているなら、薬を替えても期間を延ばしても変わりません。
そのときにできることは2つあります。1つは、静かな浅い容器に移して水を清潔に保つこと。もう1つは、元の容器の水質を立て直して、ほかの個体を守ることです。松かさ病は環境が悪化したときに出る病気なので、1匹に出たということは、次が控えているということです。
認めるのは辛いのですが、認めたほうが残りの群れを守れます。「治せなかった」ことと「何もできなかった」ことは違います。
起こさないための、日々のこと
松かさ病は、菌をもらう病気ではありません。もともと水の中にいる菌が、抵抗力の落ちたときに増える病気です。だから予防は、抵抗力を落とさないことに尽きます。
ろ過材を清潔に保ち、エサは開封後3か月以内に交換し、水温を20〜25℃で安定させて、過密にしない。この4つを続けているだけで、発症はかなり減ります。特に古いエサは見落とされがちですが、酸化した餌は内臓に負担をかけます。
似た症状と間違えないために
お腹が張っていても、鱗が寝ているなら松かさ病ではありません。メスで繁殖期なら卵をもっている過抱卵、体の中ほどから全体がずんぐりしているなら便秘の可能性があります。見分け方はメダカのお腹が大きい・パンパン|卵か病気かの見分け方で図解つきで整理しています。
水を換えた直後に鱗が立った場合は、pHショックのことがあります。これは水質を戻せば数日で落ち着きます。
体やひれに赤い充血の斑点が出ているなら赤斑病で、同じエロモナス菌が原因なので併発することもあります。えらが白っぽく褪せて呼吸が荒いならエラ病、ひれが溶けているなら尾ぐされ病も見てください。
よくある質問(FAQ)
Q. 松かさ病の初期症状は?
A. 最初に出るのは、体の一部の鱗がわずかに浮くことです。ただし横から見ると体の陰に隠れて分かりにくいので、容器の上から覗いてください。上から見ると体の輪郭がギザギザに見えます。あわせて餌の食いが落ちる、動きが鈍くなるといった変化が先に出ることもあります。
Q. 松かさ病は完治する確率はどのくらいですか?
A. 信頼できる統計はないので、確率としては答えられません。ただし傾向は分かっていて、鱗の逆立ちが体の一部だけで、まだ餌を食べている段階なら回復した例が多く報告されています。
逆に全身の鱗が立って腹水で体が張り、餌を食べなくなった段階からの回復例は少ないです。分かれ目は日数ではなく、食べるかどうかです。
Q. 松かさ病に効く薬は?
A. 適応がいちばん明確なのはエルバージュエースです。効能に「立鱗病」と明記されていて、これは松かさ病の別名です。ほかにグリーンFゴールド顆粒(観賞魚の細菌性感染症)も使えます。
観パラDは「エロモナス属による穴あき病」での承認なので、第一選択にはしません。ただし松かさ病は体の中で起きている病気なので、薬浴だけでは届きにくいところがあります。餌に薬を混ぜる薬エサを併せて使うのが基本です。
Q. 松かさ病にメチレンブルーは効きますか?
A. 効きません。メチレンブルーの承認された効能は「白点病、尾ぐされ症状、水カビ病」で、いずれも体の表面に出る病気です。松かさ病は内臓のはたらきが落ちて体液がたまっている状態なので、体表に効く薬では届きようがありません。抗菌剤と薬エサを使ってください。
Q. 松かさ病は他のメダカにうつりますか?
A. 魚から魚へ直接うつる病気ではありません。原因になるエロモナス菌は、もともと飼育水の中にいる菌です。
ただし1匹が発症したということは、その容器の水質が悪化してメダカの抵抗力が落ちているということなので、ほかの個体も発症の一歩手前にいると考えて、水を立て直してください。
Q. 松かさ病は人間にうつりますか?
A. 健康な人が飼育水に触れて発症することは、まずありません。ただし原因になる菌はごくまれに人の傷口で感染を起こすことが知られています。
手に切り傷があるときは飼育水に手を入れない、作業のあとは石けんで手を洗う、この2つを守れば十分です。免疫を抑える治療を受けている方は、とくに手袋を使うと安心です。
まとめ|食べるうちに、薬エサまで進む
松かさ病は鱗の病気ではなく内臓の病気で、見えている鱗の逆立ちは結果のほうです。「不治の病」と言われますが、正確には治る個体と治らない個体が分かれます。
分かれ目は日数ではなく、まだ餌を食べるかどうかです。体の中の菌に薬を届ける道が餌しかないので、食欲がそのまま期限になります。手当ては、隔離して塩水浴、薬浴、そして薬エサまで進むこと。メチレンブルーは体表用なので効きません。
初期に気づくコツは、容器の上から覗くことです。横から見ると初期の鱗の浮きは分かりません。毎日の餌やりのときに上から一度眺める、それだけで間に合う可能性が上がります。
→ メダカ台帳の使い方を見る


