葉物が急に伸びてきた。真ん中から茎が立ち上がって、上のほうの葉が小さい。徒長だと思って、ライトを近づけた。止まらない。
止まらないはずです。それは徒長ではなく、とう立ちだからです。
2つは見た目が似ていて、手当てが逆です。片方は光を足して直り、もう片方は光を足すと進みます。先に見分けます。
- 伸びていても、徒長ととう立ちは別物です。手当てが逆になります。
- 徒長は光が足りないので、光を足せば止まります。とう立ちは止まりません。
- とう立ちの引き金は暑さの積み上がりです。一日の暑さではなく、溜まった分で決まります。
- 見分けは先端。株の中心から1本だけ立ち上がり、その先につぼみができていたら、とう立ちです。
- 止まらないので、穫ります。待っても甘くはなりません。
水耕栽培のとう立ちは、なぜ起きるか
とう立ちというのは、株が種を作るほうへ切り替わった状態です。葉を増やすのをやめて、花を咲かせに行きます。
引き金は暑さです。タキイ種苗の説明では、高温によって花芽分化が誘起されるとされています。
ここで大事なのは、一日の暑さではないということです。同じ資料では、結球レタスのグレートレークスという品種で、花芽分化の有効積算温度(5℃以上)はおよそ1,700℃とされています。日々の温度が積み上がって、ある線を越えたところで切り替わります。
つまり暑さの記憶です。涼しくなったから戻る、というものではありません。すでに溜まったぶんは消えません。
もうひとつ、日の長さが効きます。同じ資料に抽苔は長日条件でさらに助長されるとあります。暑さで決まった方向を、長い日照が押します。
数字はいずれも結球レタスの1品種のものです。リーフレタスや水菜、ほうれん草にそのまま当てはめないでください。ただし「高温と長日で進む」という向きは、葉物に共通します。

徒長ととう立ちの見分け
ここが実用の要です。どちらも「伸びる」ので、名前だけでは分かれません。
徒長は、茎ぜんたいが伸びます。葉と葉のあいだが空いて、全体が細く長くなります。下から上まで、間延びした形です。
とう立ちは、株の中心から1本だけ立ち上がります。下の葉はそのままで、真ん中から太い茎が上へ伸びる。上に付く葉は、小さく間隔が詰まっています。
いちばん確かなのは先端です。伸びた茎の先に、つぼみのふくらみができていれば、とう立ちで確定します。徒長では、先端はふつうの葉のままです。
そして原因が逆向きです。徒長は光が足りないから伸びます。とう立ちは、光と暑さが十分だから進みます。
だから手当ても逆になります。徒長なら光を足す。とう立ちなら、光を足しても止まりません。むしろ長日は進めるほうに働きます。
数字で見る|25℃で10日、15℃なら間に合う
どれくらいの速さで進むのか、目安があります。
タキイ種苗の同じ資料に、花芽ができてから、とうが立つまでの日数が載っています。気温25℃くらいで10日、20℃で20日、15℃ではおよそ30日。
そして注目したいのが次の一文です。15℃以下では、抽苔までに玉の収穫ができ、実用上問題とならない。
つまりとう立ちは「起きるかどうか」ではなく「収穫に間に合うかどうか」の話だということです。涼しければ、進む前に穫り終えられます。
ここから逆算できます。暑い時期に播けば、追いかけられます。涼しい時期に播けば、余裕があります。秋から冬にかけてが葉物の本番なのは、このためです。
くり返しますが、これは結球レタスの1品種の数字です。速さの感覚をつかむために使ってください。

室内のライトが、日を長くしている
水耕栽培には、畑にはない事情があります。光の時間を、人が決めていることです。
長日で進むのだから、ライトを長く点けるほど、とう立ちの側を押していることになります。よく育てようとして時間を延ばすと、逆に働きます。
ここが厄介なところで、同じ「光を増やす」が、徒長には効き、とう立ちには逆効果です。だから見分けが先なのです。
あわせて熱もあります。植物育成ライトは光と一緒に熱を出すので、近すぎると温度を押し上げます。暑さで進むものを、こちらでも押しています。
もう伸びはじめているなら、時間を延ばさないでください。そして水温のほうも見てください。養液が22℃を超えているなら、そちらも重なっています。
とう立ちすると、どうなるか
味と食感が変わります。まず、苦くなります。
株が種を作るほうへ切り替わると、葉に回っていた養分が茎と花に向かいます。残った葉は硬くなり、繊維が目立ちます。
そして伸びた茎は戻りません。徒長で伸びた節が縮まないのと同じで、こちらも元には戻りません。
ときどき「切り戻せば葉が出る」と言われますが、いったん切り替わった株は、葉のほうへ戻りにくいと考えてください。出てくる葉も小さくなります。
だから期待して待つ時間が、いちばんもったいないところです。待つほど硬く、苦くなります。
とう立ちした株は、食べられるのか
結論から言うと、食べられます。害があるわけではありません。
ただしそのままサラダにするのは、あまりすすめません。苦みと硬さが出ているので、生では食べにくくなります。
火を通すと、だいぶ扱えます。炒める、汁物に入れる。苦みは加熱で和らぎます。
柔らかいところだけを選ぶ手もあります。下のほうの古い葉より、伸びた茎に付いている若い葉のほうが柔らかいことがあります。かじってみて決めてください。
そして花を咲かせて種を採るという道もあります。ただし交配して同じものが穫れるとは限らないので、そこは期待しないでください。

防ぐには|播く時期を選ぶ
起きてから止める手が無い以上、手を打つのは播く前です。
いちばん効くのが時期です。暑い時期に播けば、育つあいだじゅう積み上がります。涼しくなってから播けば、そのぶん余裕が出ます。
次が品種です。タキイ種苗の資料には、晩抽性にすぐれる品種が育成されているとあります。とう立ちしにくい性質を選べます。種の袋に書いてあります。
そしてライトの時間を欲張らないこと。長くすれば育つ、という単純な話ではありません。
あわせて養液の温度です。22℃を超えたら、日射を切る・水量を増やす・風を当てる。積み上がる速さそのものを落とせます。
最後に早く穫る。葉物なら外葉から穫れるので、大きくなるのを待たずに使い始められます。間に合わせるという意味では、これがいちばん確実です。
秋に播くなら、追い風になる
この記事を9月に読んでいるなら、条件はこれから良くなります。
とう立ちは暑さが積み上がって進むので、これから涼しくなる時期に播くのは、いちばん有利な向きです。育つあいだじゅう、積み上がる速さが落ちていきます。
先ほどの数字をもう一度置きます。花芽ができてからとうが立つまで、15℃で約30日。そして15℃以下なら収穫が間に合うとされています。秋から冬が葉物の本番なのは、この余裕があるからです。
逆に厳しいのが春です。播いたあとに気温が上がっていくので、育つほど追いかけられます。春播きで「大きくなる前にとうが立った」というのは、順番として自然に起きます。
だから同じ品目でも、春と秋では「いつ穫るか」の考え方が変わります。春は小さいうちから穫りはじめる。秋は大きくしてから穫れる。
室内で年じゅう同じ条件にしている場合は、季節の追い風が来ません。そのぶん、ライトの時間と養液の温度を自分で決める必要があります。
いつ抜くか|終わりの判断
どこで見切るかを決めておきます。
つぼみが見えたら、そこで終わりです。そこから先は、待っても状態が良くなりません。使えるうちに穫ってください。
迷うのは、茎が伸びているけれど、つぼみがまだ見えないときです。ここは徒長の可能性が残っています。光の当て方を見直して、数日待ってください。
数日で止まれば徒長でした。止まらずに伸び続け、上の葉が小さくなっていくなら、とう立ちです。
そして抜いたあとが大事です。穴を空けたままにしないでください。別に播いておいたスポンジを差し込めば、そこから次が続きます。
とう立ちは失敗ではありません。植物が季節に合わせて切り替えただけです。こちらが合わせる番だと考えてください。
まとめ
伸びていても、徒長ととう立ちは別物です。とう立ちは株の中心から1本だけ立ち上がり、先端につぼみができます。
引き金は暑さの積み上がりで、一日の暑さではありません。だから涼しくなっても戻らず、光を足しても止まりません。長い日照はむしろ進めます。
タキイ種苗の資料では、花芽ができてからとうが立つまで25℃で10日、20℃で20日、15℃で約30日。15℃以下なら収穫が間に合うとされています。結球レタスの1品種の数値です。
つぼみが見えたら、そこで終わりです。待っても良くならないので、使えるうちに穫ってください。防ぐ手は、播く時期と品種と、養液の温度です。
参考にした資料
タキイ種苗「レタスのトウ立ち(抽苔)はなぜ起きるか?」(野菜なんでも百科)。
高温による花芽分化、グレートレークスでの有効積算温度およそ1,700℃、
分化から抽苔までの日数、長日条件で助長されること、晩抽性品種について。
よくある質問(FAQ)
Q. とう立ちの原因は何ですか。
A. 高温です。タキイ種苗の説明では、高温によって花芽分化が誘起されるとされています。一日の暑さではなく、日々の温度が積み上がって決まります。長い日照はさらに進めます。
Q. 徒長ととう立ちは、どう見分けますか。
A. 先端を見てください。とう立ちは株の中心から1本だけ立ち上がり、その先につぼみができます。徒長は茎ぜんたいが間延びし、先端はふつうの葉のままです。
Q. とう立ちは止められますか。
A. 止まりません。徒長なら光を足せば止まりますが、とう立ちは逆で、長い日照はむしろ進めるほうに働きます。見つけたら穫ってください。
Q. どれくらいの速さで進みますか。
A. タキイ種苗の資料では、花芽ができてからとうが立つまで、気温25℃くらいで10日、20℃で20日、15℃で約30日とされています。結球レタスの1品種の数値なので、速さの感覚をつかむために使ってください。
Q. とう立ちした葉物は食べられますか。
A. 食べられます。ただし苦みと硬さが出るので、生より火を通すほうが扱えます。炒めるか、汁物に入れてください。
Q. 切り戻せば、また葉が出ますか。
A. いったん種を作るほうへ切り替わった株は、葉のほうへ戻りにくいと考えてください。出てくる葉も小さくなります。待つほど硬く苦くなるので、使えるうちに穫るほうが得です。
Q. 室内のライトは、とう立ちに関係しますか。
A. します。とう立ちは長い日照で進むので、ライトを長く点けるほど押していることになります。ライトの熱で温度も上がります。伸びはじめているなら、時間を延ばさないでください。
Q. 防ぐには、どうすればいいですか。
A. 播く時期を選ぶのがいちばんです。涼しくなってから播けば余裕が出ます。あわせて、とう立ちしにくい品種を選び、養液の温度を上げすぎないようにしてください。
次に見るのは、ここ
先端につぼみが無いなら水耕栽培で徒長する|光だけが原因ではないへ。積み上がる速さを落とすなら水耕栽培の夏の水温|22℃で線を引くへ。播く時期から決め直すならアクアポニックスの1年カレンダー|月ごとのやることへ。早めに穫りはじめるならアクアポニックスの収穫|外葉から穫れば、1株から何度でもへ。抜いた穴を埋めるなら水耕栽培のスポンジで種まき|水位は半分へ。
