夏にアクアポニックスや水耕栽培を始めて、レタスが苦くなり、根が茶色くなり、藻だらけになった。もうやめようかと思ったところで、9月になった。
調べると「秋は水耕栽培のベストシーズン」「秋におすすめの野菜はこれ」と出てきます。野菜のリストは分かった。でも、なぜ秋がいいのか、いつまでに播けば間に合うのかは、書いてありません。
夏に困ったことの4つが、秋に同時に楽になります。そこから書きます。
- 秋が楽なのは、水温・とう立ち・藻・虫の4つが同時に楽になるから。夏に手を打っていたことが、要らなくなる。
- 播く締切は冬に止まる前に、収穫サイズに届くか。葉物はひと月半〜2か月。9月のうちに。
- 播くのは葉物とレタス類。実ものとバジルは春の分。
- 初秋の落とし穴は徒長。播くのは早く、定植は水温が22℃を切ってから。
- 室内は日が短くなるぶんライトの時間を足す。明るさより時間。
水耕栽培は秋から始めるのがいちばん楽|夏の困りごと4つが同時に消える
答えを先に書きます。秋が楽なのは、水温・とう立ち・藻・虫の4つが、同時に楽になるからです。どれかひとつではなく、4つ全部です。
水温。葉物は水温が22℃を超えると育ちが鈍り、根に無理が出ます。夏はこれを下げるために遮光やら水量やらと手を打ちましたが、秋は放っておいても22℃を切ってきます。根腐れが減り、水の臭いも減ります。
とう立ち。葉物がとう立ちするのは、暑さが積み上がって線を越えたときです。秋に播けば、積み上がる前に穫れます。夏に苦かったレタスが、秋は甘い。
藻。藻は光と栄養で増えます。日が短くなり、日射が弱くなると、増え方が目に見えて落ちます。
虫。土が無くても虫は来ますが、気温が下がると、来る数そのものが減ります。
夏に手を打っていた4つが、秋は手を打たなくても楽になる。だから秋が本番です。始めるなら、いまです。

いつまでに播くか|冬に止まる前に、収穫サイズに届くか
秋がいいのは分かった。では、いつまでに播けば間に合うのか。
線はひとつです。冬に成長が止まる前に、収穫できる大きさに届くかどうか。
屋外の水耕栽培は、冬は止まります。水温と日の長さの両方が下がるからです。止まる時期は地域で違いますが、水温が10℃を切るころと考えてください。そこまでに、葉物なら食べられる大きさになっていれば、間に合っています。
逆算すると、葉物は播いてから穫れるまでにひと月半から2か月ほど見ておきます。秋は日ごとに気温が下がるので、夏より長くかかります。播く時期を早めて、収穫までの日数を長く見ておけば穫れます。
だから、月で言うなら「9月のうちに」。10月に入ってからでも播けますが、穫れるのが冬にかかり、小さいまま止まることがあります。止まった株は、枯れなければ春に動きますが、それは秋の収穫ではありません。
この記事を9月に読んでいるなら、今週播いてください。来週でも間に合います。来月は、間に合うかどうかが地域しだいになります。
間に合うかどうかを自分の場所で確かめるなら、朝の水温です。朝に一度測って、15℃を保っているうちは、まだ育ちます。10℃に近づいてきたら、その年は終わりが近い。暦より、朝の水温のほうが正直です。

秋に播く野菜|葉物とレタス類。実ものは待つ
何を播くか。答えは、冬に動く野菜と同じです。葉物とレタス類。
リーフレタス、水菜、小松菜、ほうれん草、チンゲンサイ、ルッコラ、スイスチャード。このあたりが、秋に播いて冬までに穫れ、冬も動きます。うちが秋に播いているのは、ルッコラと春菊です。冬の栽培槽にあったのは、リーフレタスとスイスチャード。
ルッコラは、秋に播くと辛みが穏やかで、葉が厚くなります。夏は辛くて硬い。春菊は、暑いとすぐとう立ちするので、秋にしか向きません。どちらも、秋の涼しさがそのまま味に出る品目です。
実もの(トマト・ナス・キュウリ)は、秋に播いても間に合いません。葉物、ハーブ、実ものの順に難しくなり、実ものは日数も温度も要ります。秋は葉物に絞って、実ものは春の分として計画します。
ハーブは、バジルは寒さに弱いので秋は向きません。パセリ、イタリアンパセリ、ミツバは動きます。夏にバジルを楽しんだ穴には、秋はパセリを入れる、と覚えておくと迷いません。
品目を選んだら、種まきの光の向きを確かめてください。レタス、シュンギク、ミツバは光が要る。ダイコン、ネギ、タマネギは光が無いほうが発芽します。秋は日が弱いので、光が要る種は明るい場所に置きます。
初秋の落とし穴|まだ暑いうちに播くと、徒長する
「9月のうちに」と書きましたが、9月の前半は、まだ夏です。ここに落とし穴があります。
暑いうちに播いた葉物は、茎ばかり伸びて葉が薄い、徒長した株になりやすい。気温が高くて成長は速いのに、日射は夏より弱い。速く伸びる力と、葉を作る光の釣り合いが崩れます。赤くなるはずのサニーレタスが緑のまま、というのもこれです。
対策は2つ。播く場所を、最初は日の当たる場所にする。夏は遮光していた場所を、秋は開けます。もうひとつ、水温が22℃を切ってから定植する。定植は日数ではなく根が出たかで決めますが、初秋は、根が出ていても水温を見て、暑ければスポンジのまま数日待ちます。
播くのは早く、装置に入れるのは涼しくなってから。この2段で、初秋の徒長は避けられます。
もし徒長してしまったら、光を足せば止まります。とう立ちと違って、戻ります。
日が短くなる|室内なら、ライトの時間を足す
秋のもうひとつの変化は、日の短さです。屋外と室内で、効き方が違います。
屋外は、日が短くなるぶん、成長がゆっくりになります。これは避けられません。夏の感覚で「遅い」と感じますが、止まっているのではなく、遅いだけです。収穫までの日数を長く見る、というのはこのためです。
室内は、窓からの光が、秋は足りなくなります。夏は窓辺で足りていた株が、秋に徒長しはじめたら、光です。室内はライトが要る、と書いてきましたが、秋はその境目です。
ライトを使うなら、時間を足します。夏に12時間だったなら、秋は14時間。日が短くなったぶんを、ライトで補う。明るさを上げるより、時間を延ばすほうが、葉物には効きます。
自分の置き場所が秋にどれだけ暗くなったかは、道具なしでも見られます。午前中に日が当たる時間を、夏と秋で比べてみてください。
夏から続けている株は、秋にどうするか
これから始める人の話が続きましたが、夏から株を持っている人は、秋に別の判断があります。
とう立ちした株は、抜きます。先端につぼみがあれば、涼しくなっても戻りません。その株を置いておくより、抜いて、秋の株を播いたほうが、冬までに穫れます。
徒長しただけの株は、残せます。秋になって日が当たれば、葉が締まってきます。夏に苦かったレタスも、先端を見て、まだつぼみでなければ戻ります。
根が茶色い株は、切って様子を見ます。茶色い部分だけ切り、水温が下がれば、新しい白い根が出てきます。秋は根腐れが自然に減る季節なので、夏に諦めかけた株が戻ることがあります。
夏の装置は、一度水を全部換えて、底の沈殿を捨ててから秋の株を入れてください。夏のあいだに溜まったものを、秋に持ち越さない。
秋は、新しく播く季節であると同時に、夏の整理をする季節です。抜く株を決めて、空いた穴に秋の株を入れる。それで装置が一巡します。
秋の水換えと液肥|夏より減らしていい
秋に入って、世話の量も変わります。減る方向です。
水換えの頻度は、水量と根の量で決まります。夏は水温が高くて水が傷みやすく、根も水を多く吸うので、頻度が上がっていました。秋は、どちらも落ち着きます。夏に週1回だったなら、秋は間隔を延ばして様子を見てください。
液肥も同じです。夏の感覚で足すと、秋は濃くなります。葉物が吸う量が減っているのに、足す量が同じだと、葉の縁から枯れます。足すのは、葉の色が淡くなってから。大きくならないからといって、先に液肥を足さない。
ひとつだけ増えるのは、水位の確認です。秋は水の減りが遅いので、つい見なくなります。見なくなると、根が水面から離れていることに気づくのが遅れる。減りが遅いぶん、見る間隔は空けて構いませんが、見ないのは別です。
秋の世話は、夏の半分でいい。減らすのを忘れると、濃すぎて枯らします。
魚がいる装置の秋|魚の餌が減ると、養液も減る
アクアポニックスのように、魚がいる装置では、秋にもうひとつ動くものがあります。魚の餌です。
水温が下がると、魚の食べる量が減り、餌を減らします。餌が減れば、魚が出すフンが減り、野菜に回る養分も減ります。魚無しの水耕なら液肥を足せばいいですが、魚がいる装置では、養分は魚の餌の量で決まります。
だから、秋の魚がいる装置では、株を減らして、残った株に養分を集めます。夏と同じ株数を植えると、全部が薄くなる。
ただ、秋は葉物が要る養分も少なくて済みます。夏ほど水を吸わず、夏ほど速く伸びない。魚の餌が減っても、葉物なら釣り合うことが多い。それでも薄いなら、株を減らす。液肥を足すのは、最後です。
冬に向けて、魚も野菜も、ゆっくりになります。同じ速さで下がっていくぶん、夏より釣り合いは取りやすい。

秋に始めるなら、そろえるものは少ない
これから始める方へ。秋は、そろえるものが少なくて済みます。
夏に要ったもの、遮光ネット、扇風機、水温対策、これが要りません。要るのは、発芽用のスポンジと、バットと、種。それから装置に移すときの容器と液肥。
エアポンプは、根が空気に触れる形にすれば要りません。秋は水温が低いぶん酸素も溶けやすく、夏より足りなくなりにくい。
室内なら、ライトが要るかどうかだけ。窓辺で徒長しはじめたら、そのときに考えれば足ります。
秋に始めて、冬を越して、春に一巡する。そのころには、夏の手の打ち方も分かっています。始めるのに、秋より楽な季節はありません。
どこで見切るか|終わりの判断
線を決めておきます。
9月のうちに播く。10月に入ったら、穫れるのは冬にかかると思って、それでも播くかを決める。
水温が22℃を切ってから定植する。それまでは、スポンジのまま待つ。初秋の徒長は、ここで防ぐ。
水温が10℃を切ったら、その年の収穫は終わり。小さいまま止まった株は、枯れなければ春に動く。冬のあいだは、春の分を播く季節です。
最後にひとつ。夏に困った4つは、秋に何もしなくても楽になります。夏でやめかけた人ほど、秋に始め直してください。
まとめ
水耕栽培は秋から始めるのがいちばん楽です。水温・とう立ち・藻・虫の4つが、同時に楽になります。夏に手を打っていたことが、秋は要りません。
播く締切は、冬に止まる前に収穫サイズに届くか。葉物はひと月半から2か月見て、9月のうちに播く。播くのは葉物とレタス類。実ものとバジルは春の分です。
初秋の落とし穴は徒長。播くのは早く、装置に入れるのは水温が22℃を切ってから。室内は日が短くなるぶん、ライトの時間を足します。
水温が10℃を切ったら、その年の収穫は終わり。冬は春の分を播く季節です。夏でやめかけた人ほど、秋に始め直してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 水耕栽培は秋から始めてもいいですか。
A. 秋がいちばん楽です。水温・とう立ち・藻・虫の4つが同時に楽になります。夏に手を打っていたことが、秋は手を打たなくても楽になる。始めるなら9月のうちに播いてください。
Q. いつまでに播けば間に合いますか。
A. 冬に成長が止まる前に、収穫できる大きさに届くかで決めます。屋外は水温が10℃を切るころに止まります。葉物は播いてからひと月半から2か月ほど見ておくので、9月のうちに。10月からは地域しだいです。
Q. 秋に播く野菜は何がいいですか。
A. 葉物とレタス類です。リーフレタス、水菜、小松菜、ほうれん草、チンゲンサイ、ルッコラ、スイスチャード。実もの(トマト・ナス・キュウリ)は日数も温度も要るので、秋は向きません。バジルも寒さに弱いので秋は向きません。
Q. 9月前半に播いたら徒長しました。
A. まだ暑いうちに播くと、速く伸びる力と葉を作る光の釣り合いが崩れて徒長します。播く場所を日の当たる場所にし、水温が22℃を切ってから定植してください。徒長は光を足せば止まります。
Q. 冬でも水耕栽培はできますか。
A. 屋外は止まります。室内で暖房とライトがあれば動きます。冬に動くのは葉物とレタス類で、秋に播いて冬までに穫るのが基本です。冬のあいだは春の分を播く季節です。
Q. 秋は日が短いですが大丈夫ですか。
A. 屋外は成長がゆっくりになりますが、止まってはいません。収穫までの日数を長く見ます。室内は窓の光が足りなくなる境目で、徒長しはじめたらライトの時間を足します。明るさを上げるより時間を延ばすほうが葉物には効きます。
Q. 魚がいる装置の秋はどうですか。
A. 水温が下がると魚の餌が減り、野菜に回る養分も減ります。株を減らして残った株に養分を集めます。秋の葉物は要る養分も少ないので、夏より釣り合いは取りやすい。液肥を足すのは最後です。
Q. 秋に始めるなら何をそろえればいいですか。
A. 発芽用のスポンジ、バット、種。装置に移すときの容器と液肥。夏に要った遮光ネットや扇風機は要りません。エアポンプは根が空気に触れる形にすれば要りません。
Q. 10月からでも間に合いますか。
A. 播けますが、穫れるのが冬にかかり、小さいまま止まることがあります。止まった株は枯れなければ春に動きますが、秋の収穫にはなりません。暖かい地方なら間に合うこともあるので、自分の容器の朝の水温で判断してください。
次に見るのは、ここ
冬に向けて水耕栽培の冬|止まる理由は屋外と室内で違うへ。秋に播くと有利な理由は水耕栽培のとう立ち|徒長と見分けるへ。播き方は水耕栽培のスポンジで種まき|水位は半分へ。装置に移すときは水耕栽培の定植|根が出たかで決めるへ。初秋に伸びすぎたら水耕栽培で徒長する|光を足しても直らないならへ。

