秋の栽培槽に、小松菜とレタスのどちらを播くか。
小松菜は、冬に強い葉物として名前がよく挙がります。でも、アクアポニックスや水耕栽培で、小松菜を主力にしている人は、そう多くありません。私の冬の主力は、リーフレタスとスイスチャードです。小松菜は主力ではなく、播いたことが一度あるだけです。だから、この記事に小松菜の収穫量や、何日で穫れたかの記録は書けません。
代わりに、公表されている栽培の目安と、私が毎日見ている栽培槽の事情を照らして、秋冬に小松菜を播くかどうかを決める3つの分かれ目を書きます。収穫の型、日数、虫。この3つです。

- 小松菜は育つ。ただし秋まきは収穫まで40〜80日。夏の20〜25日の2〜4倍。
- 収穫の型が違う。小松菜は一度に刈る。レタスやスイスチャードは外葉から何度も摘める。
- アブラナ科で虫がつきやすい。薬は使えないので、播いた日から防虫ネット。
- 私の冬の主力はリーフレタスとスイスチャード。小松菜は一度播いたことがあるだけで、収穫の記録は無い。
- 迷ったら、少ない面積に小松菜を試し、残りはレタス。
アクアポニックス・水耕栽培で、小松菜は育つのか
答えを先に書きます。小松菜は育ちます。寒さにも暑さにも強い葉物で、種まきの時期の幅が広い野菜です。
温度の目安を見ます。種苗や園芸の解説では、発芽の適温は20〜30℃、生育の適温は15〜25℃とされています(ハイポネックスの栽培解説)。JAの家庭菜園の解説では、発芽は15〜35℃の幅で進み、耐寒・耐暑性に富むと書かれています(JAはれおかの家庭菜園の解説)。
この数字は、土で育てる場合の目安です。水耕栽培やアクアポニックスで育つのは、土を使わないぶん、根が養分と水に直接触れるからです。温度の考え方は同じです。小松菜は、涼しい時期に育つ野菜なので、真夏と真冬の両端を外せば、育ちます。
では、なぜ迷うのか。育つことと、秋冬に播く価値があることは、別の話だからです。
秋冬は、収穫までの日数がどれだけ延びるのか
1つ目の分かれ目は、日数です。同じ小松菜でも、播く季節で、穫れるまでの日数が大きく変わります。
JAの解説では、収穫までの日数の目安は次のとおりです。春まき(3〜5月)は30〜40日、夏まき(6〜8月)は20〜25日、秋まき(9〜11月)は40〜80日。秋まきで保温をした場合は90〜100日と書かれています(JAはれおか)。別の解説でも、5〜9月まきは21〜24日ほど、秋冬まきはその2〜4倍の日数がかかると書かれています(みんなの農業広場)。
夏と秋を比べると、同じ小松菜が、倍かそれ以上かかります。これも土で育てた場合の数字で、アクアポニックスで同じとは限りません。ただ、日数が延びる理由は、水耕でも同じです。気温と日の長さが下がると、葉を作る速さが落ちるからです。
この延び方を、車の渋滞にたとえます。道は同じでも、渋滞の時間帯は、同じ距離に倍の時間がかかります。冬の小松菜は、止まりはしませんが、渋滞の道を進んでいます。播いてから最短で穫りたい人には、向きません。
ここで、秋の播き時を考えます。9月に播けば40日前後、11月に播けば80日に近づく、という読み方になります。遅く播くほど、日数が延びる幅は大きくなります。収穫を急ぐなら、涼しくなりはじめに播くほうが、効率はよくなります。
小松菜は、一度に刈るのか、外葉から何度も穫るのか

2つ目の分かれ目は、収穫の型です。ここが、レタスとの一番大きな違いです。
小松菜は、密に播いて、間引きながら小さいうちから穫り、残りを大きくして、まとめて穫る、というのが基本の使い方です。収穫の目安は、本葉が8枚、草丈が20〜25cmほどになったころとされています(JAはれおか)。収穫すると、その株は終わりです。
一方、リーフレタスやスイスチャードは、外側の葉から摘んで、株を残します。残した株は、また葉を出します。一度植えれば、何度も穫れるのです。収穫の型の違いは、収穫の記事(アクアポニックスの収穫)にまとめました。
この違いが、暮らしに響きます。次の2つの場面を考えてください。
- 毎週、サラダや付け合わせで少しずつ使う:外葉から摘む型が向きます。必要な分だけ、必要なときに穫れます。
- 鍋や味噌汁で、まとめて使う:一度に刈る型が向きます。小松菜は、まとまった量が穫れると使い道が広がります。
私の冬の栽培槽は、前者です。リーフレタスとスイスチャードを、外葉から少しずつ摘んでいます。これは、小松菜より優れているからではなく、私の使い方に合っているからです。台所での使い方が違えば、答えも変わります。
もうひとつ、一度に刈る型の弱点があります。一度に刈ると、その槽の穴の分だけ、植え替えが必要です。種まきの時期をずらして播くと、収穫の時期もずれます。毎週少しずつ使いたいなら、播く時期を1〜2週間ずつずらす手間が要ります。
虫は、小松菜でどれだけ手間になるのか
3つ目の分かれ目は、虫です。
小松菜は、アブラナ科の野菜です。アブラナ科の葉物は、虫がつきやすい野菜として知られています。私が書いた作物一覧の記事でも、小松菜は「虫が付きやすい」と注意を書きました(アクアポニックスの作物一覧)。
アクアポニックスで、虫が手間になる理由は、薬が使えないからです。魚のいる水に、薬が入ると、魚に害が出るおそれがあります。だから、虫は、見つけ次第、手で取る。または、先に入れないようにする、のどちらかになります。虫の見分け方と対処は、虫の記事(水耕栽培の虫)に書きました。
先に入れない手として、一番手軽なのは、防虫ネットです。目の細かいネットで、栽培槽をおおうと、成虫が来ても、卵を産みにくくなります。小松菜を秋に播くなら、種を播いた日から、防虫ネットをかけておくほうが、手間は少なくなります。虫がついてからネットをかけても、中に入った虫は出ていかないからです。
目の細かい防虫ネットなら、薬を使わずに、成虫が卵を産みに来るのを防げます。
ここは、手間の話です。虫が付かない野菜は、ありません。ただ、薬を使わない設備では、「手間が増える野菜」と「増えない野菜」の違いが、そのまま日々の世話に出ます。

小松菜を播くか、レタスにするか|3つの分かれ目で決める
3つの分かれ目を、まとめます。
- 日数:急ぐなら、涼しくなりはじめに播く。11月まで待つと、80日に近づく。
- 収穫の型:まとめて使うなら小松菜。少しずつ使うなら、外葉から摘むレタスやスイスチャード。
- 虫:防虫ネットをかける手間を、受け入れられるなら小松菜。
迷ったら、少ない面積に小松菜を試し、残りはレタスにします。いきなり全部を小松菜にすると、虫にやられたとき、槽の全部が空になります。分けて播けば、失敗しても、半分は残ります。
もうひとつ、小松菜が向く人の条件を書きます。秋の栽培槽を、早めに空けたい人です。小松菜は、日数が短く、収穫が終わったら、すぐ次の作物に替えられます。冬は、レタスやスイスチャードを長く置く槽と、小松菜で回転させる槽を、分けておく、という考え方もできます。
種まきのやり方は、スポンジか直播きか
小松菜の種は小さく、土でなくても、水耕のスポンジに播けます。スポンジで苗にしてから植えるやり方は、私が毎回使っています。手順は、スポンジ種まきの記事(スポンジで種まき)に書きました。
発芽の目安は、適温なら播いてから2〜3日、低温だとその2〜3倍かかるとされています。涼しくなりはじめは、発芽に日数がかかります。この時期は、スポンジを明るく暖かい場所に置いて、芽が出てから栽培槽に移すほうが、揃いやすくなります。
密に播いて間引く場合は、土耕の目安として、畝間15cm、株間5cm程度という数字が示されています(みんなの農業広場)。水耕のパネルの穴では、1穴に複数の苗を入れて、成長に合わせて間引きます。何本入れるかは、パネルの穴の大きさで変わるので、数字は書きません。
レタスと同じ槽に、混ぜて植えてよいのか
混ぜて植えること自体は、できます。水を共有するだけで、根が互いを邪魔するわけではないからです。ただ、私は混ぜずに、品目ごとにパネルの列を分けるほうをすすめます。理由は、収穫の型が違うからです。
小松菜は、刈ったあとに穴が空きます。外葉から摘むレタスの列に、小松菜が混ざっていると、刈ったあとの穴だけが目立って、残った苗の日当たりも変わります。列を分けておけば、刈った列だけ次の苗に入れ替えられます。世話の手順も、列ごとに決まります。
もうひとつ、虫の防ぎ方も分かれます。小松菜の列にだけ防虫ネットをかけたいとき、列が分かれていれば、ネットも小さく済みます。
魚の量と肥料分は、小松菜でどう考えるのか
アクアポニックスの野菜は、魚のフンから出る養分で育ちます。葉物は、実がなる野菜より、少ない養分で育つので、魚が少なめの槽でも、葉物は向く、と考えます。小松菜も葉物なので、この考え方に入ります。
ただし、葉の色が薄くなってきたら、養分が足りていない合図のことがあります。魚を急に増やすと水が傷むので、まず播く株数を減らして、1株あたりの養分を増やします。魚を増やすより、植える数を減らすほうが、早くて安全です。この考え方は、間引きの記事(間引き)の流れと同じです。
秋冬は、気温が下がって魚の食べる量が減り、フンも減ります。だから、夏と同じ株数を植えると、養分が足りなくなりがちです。秋冬に小松菜を播くときは、夏より少なめの株数で始めます。
とう立ちは、秋冬の小松菜で起きるのか
とう立ちとは、花を咲かせるための茎が伸びる現象で、伸びた株は葉が硬くなり、味が落ちます。小松菜では、低温で花芽ができる性質があり、春まきや高温の時期に起こりやすい、と説明されています(ハイポネックス)。
秋に播いて、冬を越す株は、春にとう立ちが近づきます。穫りきらずに残すと、春に花が上がります。とう立ちの仕組みと、対処は、別の記事(とう立ち)に書きました。小松菜は、残さず穫りきるほうが、とう立ちを気にしなくて済みます。
小松菜をやめる線|いつ見切るのか
小松菜を播いたあとの線も、先に決めておきます。
播き直す線は、発芽が7日以上遅いときです。適温なら2〜3日、低温でもその2〜3倍とされているので、1週間を超えて芽が出ないなら、種か温度に問題があります。播き直したほうが早いです。
虫を見切る線は、葉の半分以上に食害が出たときです。取っても追いつかないなら、その槽はやり直して、防虫ネットをかけて播き直します。
収穫を見切る線は、土耕の目安の上限を超えたときです。秋まきで80日を超えても、草丈が20cmに届かないなら、小松菜の育ちに合わない条件(光が足りない、水温が低い)が続いています。その場合、次の年は、播く時期を早めるか、レタスに替えます。
最後に、はっきり書いておきます。この記事の数字は、土で育てた場合の公表された目安と、私の栽培槽での他の葉物の経験から組んだ考え方です。アクアポニックスで小松菜を育てて、何日で穫れたかの記録は、私は持っていません。ここまでの判断の軸を、自分の栽培槽で一度試して、数字を足していってください。
まとめ
アクアポニックス・水耕栽培でも、小松菜は育ちます。ただ、秋まきは収穫まで40〜80日と、夏の2〜4倍かかります。
小松菜は一度に刈る型、レタスやスイスチャードは外葉から何度も摘める型です。まとめて使うなら小松菜、少しずつ使うならレタス類が向きます。
アブラナ科で虫がつきやすいので、薬が使えない設備では、播いた日から防虫ネットをかけます。迷ったら、少ない面積に小松菜を試して、残りはレタスにします。
よくある質問(FAQ)
Q. アクアポニックスで小松菜は育ちますか。
A. 育ちます。小松菜は寒さにも暑さにも強い葉物で、生育の適温は15〜25℃とされています。ただ、秋冬は収穫までの日数が夏の2〜4倍に延びます。
Q. 小松菜は何日で収穫できますか。
A. JAの解説では、夏まきは20〜25日、春まきは30〜40日、秋まきは40〜80日とされています。土で育てた場合の目安で、アクアポニックスでは変わることがあります。
Q. 秋冬は小松菜とレタスのどちらを播くのがよいですか。
A. まとめて使うなら小松菜、少しずつ使うなら外葉から摘めるレタスやスイスチャードです。迷ったら、少ない面積に小松菜を試して、残りはレタスにします。
Q. 小松菜の収穫の目安は何ですか。
A. 本葉が8枚、草丈が20〜25cmほどになったころです。収穫した株は終わりなので、一度に刈る型になります。
Q. 小松菜は虫がつきますか。
A. アブラナ科なので、つきやすい野菜です。アクアポニックスでは魚のために薬が使えないので、播いた日から防虫ネットをかけると手間が少なくなります。
Q. 小松菜の発芽は、何日でそろいますか。
A. 適温なら播いてから2〜3日、低温だとその2〜3倍かかるとされています。涼しくなりはじめは、スポンジを明るく暖かい場所に置くと揃いやすくなります。
Q. 小松菜は冬も育ちますか。
A. 止まりはしませんが、速度は落ちます。寒さに強い野菜ですが、冬は日数が延びるので、早めに播くほうが効率はよくなります。
Q. 小松菜のとう立ちは、いつ起きますか。
A. 低温で花芽ができる性質があり、春まきや高温の時期に起こりやすいとされています。秋に播いた株を穫りきらずに残すと、春に花が上がります。
Q. 小松菜を播き直す目安は何ですか。
A. 1週間を超えても芽が出ないときです。適温なら2〜3日で発芽するので、遅いなら種か温度に問題があります。
Q. 小松菜とほうれん草や水菜は、同じ扱いでよいですか。
A. 作物一覧の記事では、小松菜と近い扱いでよい葉物としてチンゲンサイを挙げています。ほうれん草は暑さに弱く、水菜は早いなど、癖が違います。
→ 費用と失敗の記録をnoteで読む
次に見るのは、ここ
秋に播く品目をまとめて見るならアクアポニックス・水耕栽培は秋からへ。外葉から摘むレタスを選ぶならアクアポニックスのリーフレタスへ。虫がついたときの対処は水耕栽培の虫へ。冬に動く野菜と止まる野菜を知るならアクアポニックス・水耕栽培の冬へ。
