針子が、朝より少ない。エビを入れたのは先週だった。
容器をのぞいて数え直しても、数が合わない。ヤマトヌマエビの顔を見ると、犯人に見えてくる。この疑いが正しいのかどうかを、条件で分けて書いたのがこの記事です。結論は、食べる場合と食べない場合があり、分かれ目は針子の弱り方と、隠れ場所と、エビの数にあります。
先に、はっきりさせておくことがあります。エビが針子を食べるかどうかを、実験で調べた研究は、私が探した範囲では見つかりませんでした。ここに書くのは、エビと針子の体の大きさ、公開されている飼育の観察、そこから考えられる条件です。私の設備でも、メダカとミナミヌマエビを一緒にしている容器があります。ただ、針子の数を比べたことはないので、実験の結果のようには書きません。

- 元気に泳ぐ針子を追って食べる報告は見つからず、弱った針子・死んだ針子は片づけられる。
- 食べられやすい条件は、動けない・隠れ場所が無い・エビが多いの3つ。
- 特に危ないのは、孵化から3日の針子。全長約5mmで泳ぎも弱い。
- 針子を残したい容器には、エビを入れない。産卵床はエビのいない容器へ。
- 犯人探しは、エビあり・なしに半分ずつ分けて1週間数える。
ヤマトヌマエビはメダカの針子を食べるのか|答えは条件で分かれる
答えを先に書きます。元気に泳げる針子を、エビが追いかけて捕まえる、という報告は見つかりませんでした。一方で、弱った針子や死んだ針子は、エビが片づけます。そして、孵化して間もない針子が、隠れ場所のない底でエビと出会えば、食べられる可能性は残ります。
理由は、エビが雑食の掃除役だからです。ヤマトヌマエビの食性について、ウィキペディアは「藻類、小動物、生物の死骸やデトリタス」と書いています(ヤマトヌマエビ)。ミナミヌマエビは、同じ項目で「生きた小動物を襲うことはない」とされています(ミナミヌマエビ)。ただし、これは百科事典の記述で、針子を使った確認ではありません。
道端の掃除をする人に、落ちているものを拾う習慣があるのと同じです。拾うのは落ちている物で、走っている物を追いかけるわけではない。ただ、落ちている物と、動けなくなった物の見分けは、エビにはつきません。針子が動けなくなった時点で、エビにとっては落ちている物になります。
では、どんな条件のとき、針子が食べられやすくなるのか。次の章から、大きさ、日齢、隠れ場所、数の順に見ていきます。
ヤマトヌマエビとミナミヌマエビは、針子に対して同じなのか
同じではありません。まず体の大きさが違います。ウィキペディアの記述では、ヤマトヌマエビは雄が約35mm、雌が約45mmで、50mmを超えることもあります。ミナミヌマエビは雄が約20mm、雌でも30mm未満です。
針子は、孵化した直後で全長が約5mmです。メダカの発生を調べた研究では、孵化直後の全長が4.95〜5.10mm(平均5.01mm)でした(Egg Development and Morphology of Larva and Juvenile of the Oryzias latipes)。ヤマトヌマエビの雌の体長の約9分の1です。体の大きさだけで見れば、ヤマトヌマエビは、針子を掴める大きさです。
もう1つ、増え方が違います。ミナミヌマエビは、卵の中で幼生の時期を過ごし、体長2mmほどの稚エビで孵化します。淡水の容器の中で、勝手に増えます。ヤマトヌマエビは、幼生の成長に塩分が要るので、淡水の容器では増えません。
この違いは、針子にとって次のように働きます。ヤマトヌマエビは、入れた数のまま変わりません。大きくて力があるぶん、1匹ずつの影響は大きい、と考えられます。ミナミヌマエビは、1匹ずつは小さく、針子を襲うことは考えにくい種類ですが、数が増えます。増えて餌が足りなくなれば、容器の中の動けない物を拾う回数が増えます。
どちらの種類でも、「大きさ」より先に「針子が動けるか、動けないか」で見たほうが、判断がぶれません。
孵化から何日の針子が、食べられやすいのか
針子の日齢で、食べられやすさは変わると考えられます。根拠は、泳ぎの強さと、栄養の袋です。
前述の研究では、孵化直後の針子は、卵黄を3日以内に使い切ります。この時期の針子は体が小さく、泳ぎもまだ弱いので、底や水草のそばでじっとしていることがあります。じっとしている針子と、死んだ針子は、エビから見れば区別がつきにくい。この3日間が、いちばん気をつけたい時期です。
孵化から2週間たつと、針子は5〜7mmほどになり、餌を探して水中を動き回ります(メダカの稚魚はいつまで別容器かに書いたとおりです)。動き回る針子は、じっとしている針子よりずっと捕まりにくくなります。そして、体が1cmを超えるころには、エビが拾う対象から外れていきます。
卵はどうか。有精卵は、受精した瞬間から膜が硬くなります。メダカの卵を押し潰して測った研究では、受精から3時間で約118グラムに耐えました(Fuほか 2023)。一方、受精しなかった卵は、柔らかいまま白く濁り、水カビが付きます。個人の飼育記録では、ミナミヌマエビが水カビの付いた無精卵をきれいにして、有精卵は残した、と書かれています(大丈夫だよblog)。別の飼育サイトには、ヤマトヌマエビに見つかれば卵も食べられる、という記述もあります(水草水槽)。2つの記述は食い違っています。どちらも、実験の結果ではありません。
卵についての私の結論は、「食べるかどうか分からないものを、わざわざ賭けにしない」です。採卵した産卵床は、エビのいない容器に移します。卵と針子に共通する日齢の目安は、孵化直後から3日、卵から孵化までのあいだです。

隠れ場所があると、針子は残るのか
隠れ場所があれば、残る数は増えると考えられます。ただしこれも、エビについての実験は見つかっていません。メダカの針子が親メダカから逃げ込む場所として、水草が効くことは、針子の育て方の記事に書いたとおりです。エビに対しても、同じ仕組みが働く、という推定です。
理由を、場面で書きます。底にエビが歩いている容器で、針子が水面近くに浮かんでいれば、エビと針子は同じ場所にいません。メダカの成魚は水面近く、エビは底。この住み分けは、メダカとエビの比率の記事に書きました。針子が危なくなるのは、この住み分けが崩れる場所です。底に沈んだ針子、産卵床の根元、容器の隅のよどみ。この3つに、針子が逃げ込める細かい葉の水草があれば、エビと針子の間に、葉が1枚入ります。
水草の候補は、マツモのような細かい葉が茂るものです。葉のすき間は、5mmの針子が入れて、エビの体では入りにくい大きさになります。屋外の容器では、水草が溶けることがあるので、入れっぱなしにせず、様子を見て足します。
細かい葉のマツモなら、5mmの針子が入れる隠れ場所と、卵を付ける産卵床を兼ねてくれます。
もう1つ、隠れ場所が無い容器の欠点があります。針子が、水の中で逃げ場を持てない。水草が無い容器は、卵を産ませる分には問題ありません(産卵床だけで足ります)が、針子を残す目的には向きません。

エビは何匹までなら、針子を残せるのか
匹数の目安は、実験では確かめられていません。そこで、考え方だけを書きます。
エビが増えると、起きることは2つあります。1つは、容器の底の餌が足りなくなる。もう1つは、容器の中の死骸や弱った個体が、すぐ片づく。餌が足りなければ、エビは動く物にも反応しやすくなる、というのは、飼育者の間でよく言われる説ですが、私が開いた範囲では、裏づけとなる出典は見つかりませんでした。数字ではなく、方向だけを覚えてください。エビが多すぎる容器は、針子にとって不利になる側へ動きます。
メダカとエビの数の目安は、メダカとエビの比率の記事に、メダカ2リットルに1匹、エビもほぼ同数、と書きました。これは成魚が主役の容器の数です。針子を残したい容器では、この数より、エビを減らします。
ミナミヌマエビは、勝手に増えます。針子を残したい容器では、数えて、増えたぶんを別の容器へ移すのが、続けやすい方法です。ヤマトヌマエビは増えないので、入れた数がそのまま上限になります。
針子の数が減った。エビのせいなのか、そうでないのか
針子が減ったとき、エビを疑う前に、確かめることがあります。エビがいなくても、針子は減ります。
親メダカが食べる、餌が足りない、水が急に変わる。こうした原因は、針子が溶ける・消える原因の記事に、消え方別に書きました。エビを入れたのと同じ時期に起きたことが、そのまま原因とは限りません。
針子の消え方を、次のように分けて見ると、エビの関与を絞れます。
- 死骸が残る:エビ以外の原因が先です。死んだ針子は、1日たたずにエビが片づけます。
- 死骸が残らず、日ごとに少しずつ減る:弱った針子が死んで、エビが片づけた可能性があります。
- 一晩でごっそり減る:親メダカやヤゴなど、別の捕食者を疑います。
1つ注意があります。針子が死んだ時点で、エビが片づけてしまえば、「エビに食べられた」のか「死んでから片づけられた」のか、後からは区別がつきません。個人の観察記録でも、エビがメダカを食べていたのは、水草の細い隙間に挟まって動けなくなり、数時間後に死んだメダカでした(ミナミヌマエビはメダカを捕食する)。元気に動いていた間は、襲われていません。
犯人を見つけたいなら、割り切って、自分で比べます。針子を半分ずつ、エビのいる容器と、いない容器に分けて、1週間後に数えます。条件を揃えるために、容器の大きさ、水草、餌の量は同じにします。これは、私が実際にやった実験ではなく、確かめるための方法の提案です。数の差が大きければ、エビが関係している可能性が高い。差が小さければ、別の原因を探します。

川で採ったエビは、スジエビかもしれない
ヤマトヌマエビだと思って川で採ってきたエビが、別の種類だったという話があります。Xの飼育者の投稿にも、川で採ったヤマトが実はスジエビで、水槽のメダカを食べた、という注意がありました。この記事で話しているのは、ヤマトヌマエビとミナミヌマエビです。スジエビはテナガエビの仲間で、別のエビです。
見分けるなら、体の模様です。スジエビは、透明な体に7本の黒いしま模様があります(国土交通省の生き物図鑑による)。採ってきたエビにこのしま模様があれば、ヤマトヌマエビではありません。
スジエビの食べ物を、国土交通省の資料で調べました。「雑食性で、水草や小型水生動物の死がいなどを食べる」と書かれていて、生きた魚を襲うとは書いてありません。一方で、肉食寄りと説明する飼育の解説もあり、公的な資料だけでは、生きたメダカを襲うかどうかを言い切れません。だから、種類が分からないエビは、針子のいる容器に入れない。これだけは、確かめられないぶん、安全側に決めておきます。
エビがメダカを追いかける・いじめるのは、食べようとしているのか
「エビがメダカを追いかける」「いじめる」という悩みも、よく見かけます。この記事の主題である針子とは別の話ですが、混ぜて疑う人が多いので、触れておきます。
追いかけて見える場面で、いちばん考えやすいのは、餌の取り合いです。餌が落ちた瞬間に、エビが底から勢いよく動き、メダカが食べている餌に向かいます。そのとき、エビの進路にメダカがいれば、追われているように見えます。ヤマトヌマエビのような活発な種類は、餌をめぐってメダカを追い回すことがあると、メダカとエビの比率の記事にも書きました。
食べようとしているのか、餌の取り合いなのかを分けるには、時間帯を見ます。餌をやった直後だけなら、取り合いです。餌の無い時間にも追い続けていて、メダカに傷が増えていくなら、容器が狭いか、エビが多すぎます。エビを減らすか、メダカとエビを分けます。
もう1つ、成魚でも注意したい場面があります。病気や傷で弱って動けなくなったメダカは、ヤマトヌマエビでも食べる可能性があります。ただ、元気な成魚をエビが襲って食べたという報告は、私が探した範囲では見つかりませんでした。弱った成魚をエビが食べるかどうかを調べた実験も、見つかっていません。弱っている個体は、エビのいない容器へ早めに移すのが無難です。
反対向きの心配もあります。生まれたばかりの稚エビは、体が2mmほどです。メダカの口に入るので、メダカが餌と間違えて食べます。針子とは逆に、稚エビを残したいなら、エビの側に隠れ場所が必要になります。
針子を残したいなら、エビは入れるのか、入れないのか
迷ったら、針子を残したい容器にはエビを入れない、が基本です。理由は、エビが針子を食べるかどうかが、はっきりしないからです。はっきりしないものを、育てたい稚魚の容器に入れる必要はありません。
容器を用途で分けると、次のようになります。
- 成魚が主役の容器:エビを入れて大丈夫です。泳げるメダカを、エビは襲いません。底の餌の食べ残しとコケを片づけてくれます。
- 採卵の容器・針子の容器:エビを入れません。エビが掃除をするのは、うれしい働きですが、針子が小さい間は、掃除は水換えで代えられます。
- 針子を育てながら、エビも入れたい容器:細かい葉の水草を多めに入れ、エビを少なめにします。針子が1cmを超えたら、エビがいる容器へ合流させる、という順番もあります。
採卵の仕方は、卵をほったらかしにしたときの記事に書きました。産卵床ごと別の容器へ移すだけで、エビがいる容器の卵は守れます。
産卵床を取り出して移すには、容器から外せる形の産卵床が扱いやすくなります。
エビを入れるなら、掃除役としての数はごく少なくて足ります。容器にエビを足すのは、針子が育ってからでも遅くありません。逆に、エビを入れたあとで針子の様子が心配になったら、エビを抜くより、針子のほうを、水草の茂った別容器へ移すほうが、手間が少なく済みます。
どこで見切るか|終わりの判断
エビの扱いに、終わりを決めておきます。線は3つです。
針子を残したい日は、エビを抜く日です。産卵床を取り出して、針子が出る容器から、エビのいない容器へ移します。移したあとは、エビのことは考えなくてかまいません。
針子が1cmを超えたら、エビの疑いは閉じます。1cmを超えた針子は、ミナミヌマエビにもヤマトヌマエビにも、拾われる大きさではないと考えられます。ここから先は、親メダカの口に入るかどうか(1.5cmが目安)の話です。
確かめるために数えるなら、1週間だけです。1週間数えて差が出なければ、エビを疑うのをやめます。毎日数え直しても、数え間違いで不安が増えるだけです。
この記事で、私が実験で確かめたことは1つもありません。書いたのは、出典と体の大きさから考えた条件です。エビがメダカの針子を食べる、と断言できる証拠も、食べない、と断言できる証拠も、見つけられませんでした。だから、数えて確かめる方法を書きました。容器ごとに、エビの有無と針子の数を、記録しておいてください。
まとめ
エビが針子を食べるかどうかを調べた実験は見つかりませんでした。元気に泳ぐ針子を追って食べる報告も見つからず、弱った針子や死んだ針子は片づけられます。
食べられやすい条件は、動けない・隠れ場所が無い・エビが多い。孵化から3日の針子は特に気をつけます。針子を残したい容器にはエビを入れず、産卵床はエビのいない容器へ移します。
犯人を探すなら、半分ずつ分けて1週間数えます。1cmを超えた針子は、エビの疑いから外れます。
よくある質問(FAQ)
Q. ヤマトヌマエビはメダカの針子を食べますか。
A. 元気に泳げる針子を追って捕まえる、という報告は見つかりませんでした。ただ、死んだ針子や弱った針子は片づけます。孵化直後の針子を食べる可能性は否定できません。針子に限らず、弱って動けない成魚も、食べられる可能性があります。針子や弱った個体がいる容器には入れないのが無難です。
Q. ミナミヌマエビはメダカの針子を食べますか。
A. ミナミヌマエビは小さく、生きた小動物を襲うことはないとされています。弱った針子や死んだ針子は片づけます。ただ、ミナミヌマエビは容器で増えるので、数が多くなりすぎないようにします。
Q. エビはメダカの卵を食べますか。
A. 水カビの付いた無精卵は片づけるという記録があります。有精卵は硬いので食べにくいと考えられますが、食べるという記述もあり、実験では確かめられていません。産卵床は別の容器へ移すと確実です。
Q. エビを入れてから針子が減りました。エビのせいですか。
A. エビだけが原因とは限りません。親メダカの捕食、餌不足、水質の急変でも減ります。針子を半分ずつ、エビのいる容器といない容器に分けて1週間数えると、関わりが分かります。
Q. 孵化から何日の針子が危ないですか。
A. 孵化直後から3日間は、卵黄で育ち、全長約5mmで泳ぎも弱いため、いちばん気をつけたい時期です。体が1cmを超えると、エビに拾われる大きさから外れていきます。
Q. エビがいる容器で針子を残すには、どうしますか。
A. マツモのような細かい葉の水草を多めに入れて、エビの数を減らします。エビを入れない別容器に針子を移すほうが、手間も少なく確実です。
Q. エビは何匹までなら大丈夫ですか。
A. 針子とエビの数の関係を調べた実験は見つかっていません。成魚の容器ではメダカ2リットルに1匹、エビもほぼ同数が目安です。針子を残す容器では、それより少なくします。
Q. ヤマトヌマエビがメダカを追いかけるのは、なぜですか。
A. 餌の取り合いの場面で、そう見えることが多いと考えられます。餌をやった直後だけなら取り合いです。餌のない時間にも追い、傷が増えるなら、容器が狭いかエビが多すぎます。
Q. メダカは稚エビを食べますか。
A. 食べます。生まれたばかりの稚エビは2mmほどで、メダカの口に入ります。稚エビを残したいなら、隠れ場所を足すか、親エビを別の容器へ移します。
Q. ヤマトヌマエビとミナミヌマエビでは、どちらが安全ですか。
A. 小さいミナミヌマエビのほうが、針子には脅威が小さいと考えられます。ただ、ミナミヌマエビは増えます。ヤマトヌマエビは淡水では増えませんが、体が大きく、力があります。
→ 容器ごとの針子の数を、スマホに
台帳でできることを、もう少し詳しく
次に見るのは、ここ
成魚の容器にエビを何匹入れるかならメダカとエビの比率へ。エビ以外の理由も疑うならメダカの針子が溶ける・消える原因へ。針子を別容器からいつ戻すかならメダカの稚魚はいつまで別容器かへ。エビ以外の相手も考えるならメダカと混泳できる魚・エビへ。
