採卵を始めようと思って、ふと手が止まる。親は何匹いればいいのか。オスは何匹、メスは何匹。そもそも、いつ選べばいいのか。
この記事は、その3つに順番に答えます。親を選ぶ話です。生まれた子の中から残す子を選ぶ話は、メダカの選別の記事に書きました。
先に断っておきます。親の年齢で卵の数がどう変わるか、同じ親から採り続けると何が起きるかは、私が探した公的な資料と論文では、はっきりした結果が見つかりませんでした。そこは分からないと書き、分かった部分だけを数字で書きます。

- 種親はオス1匹にメス2匹を1組とし、1〜3組から始める。
- 匹数は水2リットルに1匹。15Lなら6匹ほど。
- オスは1日に平均19回交尾できる。卵の数を決めるのはメスの体重だけ。
- 選ぶのは水温が20℃を超える春。寿命は1年半ほど、2年目の秋に入れ替える。
- 卵は、親を動かさず産卵床ごと別容器へ移す。
メダカの種親は何匹から始める?|メス2匹にオス1匹を1組にして、15Lなら6匹
答えを先に書きます。オス1匹にメス2匹を1組とし、容器の大きさに合わせて1〜3組入れるのが、始めやすい形です。
匹数は、水量を2で割って考えます。メダカは水2リットルに1匹が目安です。15リットルの容器なら7匹ほどが上限で、余裕を持って6匹。オス2匹とメス4匹です。6リットルの容器なら3匹、つまり1組だけになります。
迷ったら、1組から始めます。理由は、数が少ないほうが、誰が卵を産んだかを目で追えるからです。初めての採卵では「何匹生き残るか分からないので採卵しまくったら50匹になった」という声がよくあります。15リットルに50匹は、明らかに過密です。増えすぎた後の対処はメダカが増えすぎる記事に書きました。最初は少なく始めるほうが、あとが楽です。
私がメダカの繁殖を回していたときは、オス1・メス2のトリオを3組入れた形で安定しました。これは私のやり方で、実験で比べたわけではありません。

オスは1匹で足りるのか|1日19回交尾できるという研究
オスの数は、メスより少なくて足ります。根拠は、大阪公立大などの研究です(Kondo, Kohda & Awata 2025、Royal Society Open Science)。
この研究は、オス1匹に新しいメスを次々に会わせ、断られるまで交尾させました。結果は次のとおりです。
- 交尾の回数:オス1匹が1日に平均19回(4〜27回)。
- 受精の確率:1〜3回目はほぼ100%。10回目以降は大きくばらつき、下がる。最後の回は平均46.5%。
- 翌日:受精率は94.1%まで戻る。
1日に19回は、昼休みなしで窓口に並ぶ客を次々にさばく受付のようなものです。つまり、オスは1日のあいだに何度も交尾できて、続けるほど精子が減って受精しにくくなり、1日休めば戻る、ということです。ふつうの容器では、1匹のオスが1日に会うメスは2〜3匹ですから、この限界には届きません。
ただし、この数字を「オス1匹でメス◯匹まで」と読み替えるのは避けてください。実験は、強制的に連続で会わせた特別な条件です。容器の中で起きることとは違います。
オスを増やしすぎた容器の問題は、受精ではなく、追いかけ回しです。オスが多いと、メスが休めなくなります。その見分け方はメダカが追いかけ回す記事に書きました。
メスはなぜ多めにするのか|卵の数を決めるのはメスの体の大きさだけ
卵の数を決めるのはメスです。同じ研究で、メスが一度に産む卵の数は、交尾を繰り返しても減りませんでした。そして卵の数と関係していたのは、メスの体重だけでした。
ここから分かることが2つあります。1つは、オスを増やしても卵は増えないこと。もう1つは、卵を増やしたいなら、オスよりメスの数と、メスの体の大きさのほうが効くことです。
メスを選ぶとき、お腹がしっかりして体の大きいメスを残すのは、理にかなっています。ただし、大きいメスを選ぶと次の世代の卵も多い、という根拠は見つかっていません。今シーズンの採卵数を増やす選び方、と考えてください。

メダカのオスとメスは、どこで見分けるのか

見分ける場所は、ひれです。大阪府立環境農林水産総合研究所の図鑑では、オスの背びれと尻びれは、メスより長く大きいとされています(メダカ(ミナミメダカ))。
見るのは次の2か所です。
- 尻びれ:オスは大きく、平行四辺形に近い形。メスは小さく、前が短い。
- 背びれ:オスは大きく、切れ込みが入ることがある。メスは小さく、切れ込みがない。
お腹がふくらんだ個体は、見分けがつきにくくなります。卵を抱えたメスは丸くなるので、オスの病気と見間違えることがあります。ふくらんだお腹の見分けは、お腹が大きい・パンパンの記事で、オス・メス別に書きました。
迷ったときは、ひれを見てから、体を見ます。順番を逆にすると、迷います。
種親はいつ選ぶのか|前年生まれを、水温が20℃を超える春に
選ぶ時期は、2回あります。
1回目は春です。水温が20℃を超えると、メダカは産卵を始めます。前の年に生まれた親を、この時期に、ひれの形で雌雄を確かめて、組にします。産卵が続く期間はメダカの産卵はいつまでに書きました。
春の組み方は、前年生まれの中から、体の大きい元気なメスを2匹、ひれが大きく傷みのないオスを1匹選び、同じ容器に入れる、という手順です。入れたら、産卵床を浮かべて、毎日ようすを見ます。産卵が始まれば、組み合わせは合っています。
2回目は秋です。メダカの寿命は、ふつう1年半ほどです。図鑑にもそう書かれ、飼育下の中央値は22か月前後という報告もあります。つまり、今年の親は、来年の秋にはもう残っていないかもしれません。世代をつなぐなら、今年の秋に生まれた子から、来年の親の候補を残します。冬の産卵はメダカを冬に産卵させる記事に書いたとおり、加温するか春まで待つかで分かれます。
春に生まれた子は、孵化から数か月で卵を産める大きさになります。その年の初夏には、もう次の親になれます。ただ、早く親にするほど、無理が出るおそれがあります。急がせない、が基本です。
来年の親の候補は、秋にどう残すのか
秋に残すのは、親ではなく、親の候補です。今年の春から夏に生まれた子の中から、来年の親にしたい子を、数匹だけ別の容器に分けておきます。
数は、オスとメスをそれぞれ数匹ずつで足ります。1組から3組で始めるなら、候補は組の数の2倍ほどあれば、冬のあいだに減っても組めます。
選ぶ基準は、体型が整っていて、ひれが傷んでいないことです。どこを見て選ぶかは、メダカの選別の記事に、見る順番まで書きました。選別は子を選ぶ作業ですが、候補を残すときは、同じ見方で親の候補を選べます。
候補を分けた容器は、水量に余裕を持たせます。冬を越えて春になれば、そのまま種親の組み直しに使えます。
卵は、親と別の容器へ移すのか
卵を採るときは、親を動かさず、産卵床のほうを動かします。
親を動かさない理由は、環境が変わると産卵が止まる個体がいる、という声を見かけるからです。ただ、これが本当に起きるかどうかを確かめた資料は見つかっていません。実際のところは分かりませんが、私は親を動かさず、産卵床ごと卵を別の容器へ移しています。親を動かす手間もなく、卵だけを守れるからです。
卵を付けた産卵床をそのまま取り出せる形のものなら、親を動かさずに卵だけを守れます。
卵が見つからない、というときは、メダカが卵を産まない記事に書いたように、産んでいないのではなく、見つけていないだけのことがあります。
容器の大きさから、種親の匹数を計算する
匹数は、水量から先に決めます。メダカは水2リットルに1匹が目安です。1リットルに1匹は上限で、適正な数ではありません。ろ過のためだけでなく、泳ぐ広さが要るからです。
- 6リットル前後:3匹。オス1・メス2の1組。
- 15リットル前後:6匹。2組(オス2・メス4)。
- 30リットル前後:12匹ほど。3組なら9匹で、余裕が残る。
水量は、容器いっぱいの量ではなく、実際に入れた水の量で数えます。タライや睡蓮鉢は、満水にしないので、見た目より少ない数になります。
親が産んだ子が育つと、同じ容器の匹数はすぐに増えます。親の匹数を控えめにするのは、子の分の余白を残すためでもあります。
初めての採卵で、卵が少ない。親を買い足すべきか
卵の数が思ったより少なくても、すぐに買い足す必要はありません。初めての採卵で数が少なくて追加で買ったものの、買わなくてもよかった、という声がありました。
まず見るのは、メスの数と体の大きさです。卵の数を決めるのはメスの体重でした。オスをいくら足しても卵は増えないので、買い足しにオスは向きません。足すなら、体の大きいメスです。
次に見るのは、水温です。水温が20℃を下回る時期は、産卵が始まる前の時期です。水温が足りているのに産まないときの調べ方は、メダカが卵を産まない記事にまとめました。
そして、産卵床を入れてから数日は待ちます。1組で1週間ほど見て、まったく卵が付かなければ、親を足すかどうかを考える順番です。
違う品種の親を、同じ容器に入れてもいいのか
品種を保ちたいなら、容器は品種ごとに分けます。1つの容器に1品種、が基本です。
いろいろな改良メダカを1つのタライに入れたら、ヒレの長いタイプだけが見当たらなくなった、という声もありました。理由は書かれていませんが、混ざった容器では、どの親からどの子が生まれたか、後から分からなくなります。分からないものは、選別でも選べません。
反対に、品種にこだわらず、数を増やして楽しむ容器なら、混ぜても構いません。目的で分けます。目的が決まっていない最初の1シーズンは、1品種を1容器から始めるのが、いちばん迷いません。
オスかメスか分からない個体は、どうするのか
お腹がふくらんだ個体がオスかメスか分からず、病気のオスだと思って別の水槽を買いに行っている間に、産卵が起きて、卵が他のメダカに食べられた、という話があります。
分からない個体は、焦って動かさなくて大丈夫です。産卵床を入れておけば、産んだ卵は産卵床に付きます。卵は親が食べることがあるので、卵が付いた産卵床は、早めに別の容器へ移します。水槽を買いに行く前に、まず産卵床を入れる。これが順番です。
どこで見切るか|終わりの判断
種親にも、入れ替える時期があります。線は3つです。
産卵が止まったら、その年の採卵を終えます。秋に水温が下がり、日が短くなると止まります。それ以上、追いかける必要はありません。
2年目の秋に、親を入れ替えます。寿命が1年半ほどなので、2年目の秋は、世代を交代する目安です。入れ替えの親は、その年の春から初夏に生まれた子から選びます。
そして、最初の1シーズンは、1組から3組までで十分です。数を増やすのは、1シーズン育てて、自分の容器と手間を分かってからで遅くありません。
この記事で、実験で確かめたことは1つもありません。書いたのは、公開されている研究と図鑑の数字と、私のやり方です。容器ごとに、親の組と産卵の始まった日を残しておくと、翌年の入れ替えが楽になります。
まとめ
種親は、オス1匹にメス2匹を1組として、1〜3組から始めます。匹数は水2リットルに1匹。15リットルなら6匹ほどです。
オスは1日に平均19回交尾できるので、少なくて足ります。卵の数を決めるのはメスの体重だけです。選ぶのは水温が20℃を超える春で、寿命は1年半ほど。2年目の秋に入れ替えます。
卵は、親を動かさず、産卵床ごと別の容器へ移します。
よくある質問(FAQ)
Q. メダカの種親は何匹から始めればいいですか。
A. オス1匹にメス2匹を1組として、1〜3組が始めやすい形です。匹数は水2リットルに1匹が目安で、15リットルなら6匹ほど、6リットルなら1組です。
Q. オスとメスの比率は、どのくらいがいいですか。
A. オス1にメス2が始めやすい比率です。オスは1日に平均19回交尾できるという研究があるので、オスは少なくて足ります。オスが多いと、メスが追い回されやすくなります。
Q. オス1匹でメス何匹まで大丈夫ですか。
A. 「何匹まで」と言える数字は、見つかっていません。研究は、強制的に連続で会わせた特別な条件です。ふつうの容器では1匹のオスが2〜3匹のメスと組む形が始めやすいです。
Q. 種親はいつ選べばいいですか。
A. 水温が20℃を超える春に、前の年に生まれた親を、ひれの形で雌雄を確かめて組にします。秋には、来年の親の候補を残します。
Q. メダカのオスとメスの見分け方を教えてください。
A. 背びれと尻びれを見ます。オスは尻びれが大きく平行四辺形に近い形で、背びれも大きく切れ込みが入ることがあります。メスはどちらも小さめです。
Q. 種親は何歳まで使えますか。
A. メダカの寿命は、ふつう1年半ほどです。年齢で卵の数がどう変わるかは、私が探した資料ではっきりした結果が見つかりませんでした。2年目の秋に入れ替えるのが、考えやすい目安です。
Q. 卵を産ませるために、親を別の容器へ移したほうがいいですか。
A. 親を動かさず、卵が付いた産卵床だけを別の容器へ移す方法が手間の少ない方法です。親を移すと産卵が止まる、という声もありますが、確かめた資料は見つかっていません。
Q. メスは、お腹の大きいほうを選ぶべきですか。
A. 同じ研究で、メスの卵の数と関係していたのは、メスの体重だけでした。体の大きいメスを選ぶと、今シーズンの卵が多くなると考えられます。次の世代への影響は、確かめられていません。
→ 容器ごとの親の組と採卵日を、スマホに
台帳でできることを、もう少し詳しく
次に見るのは、ここ
生まれた子から残す子を選ぶならメダカの選別のやり方へ。オスが多すぎないかを確かめるならメダカが追いかけ回すへ。卵が見つからないならメダカが卵を産まないへ。採卵を終える時期を知るならメダカの産卵はいつまでへ。
