腰痛持ちです。それでも、ハウスの中で腰にくる作業は、いまのところありません。姿勢に気をつけているからではありません。作業する高さを900mmにしたからです。


- 腰痛が減ったのは、姿勢に気をつけたからではありません。作業する高さを900mmにしたからです。
- 「背筋を伸ばす」ではかがむ回数そのものが減りません。
- 900mmという高さには裏づけがあります。思いつきで決めた数字ではありません。
- 足場の資材で組めば高さを自分で決められます。既製の台に合わせなくて済みます。
- 高さを上げると消える作業があります。しゃがむ前提だった手順が、そのまま無くなります。
アクアポニックスの作業で「背筋を伸ばす」では、かがむ回数は減らない
畑仕事の腰痛を扱う記事はたくさんあります。読んでみると、書いてあることはだいたい同じです。背筋を伸ばす。膝を曲げる。こまめに立ち上がって腰を伸ばす。どれも正しいのですが、ひとつ抜けています。
畝は地面にあります。地面にあるものを手で触るかぎり、かがむ動作そのものは消えません。姿勢を意識してできるのは、一回あたりの負担をいくらか減らすことだけです。回数のほうは、気をつけていても減りません。
厚生労働省の職場における腰痛予防対策指針も、中腰の姿勢を長く続けさせないこと、同じ姿勢を続けさせないことを求めています。裏を返せば、そもそも中腰にならずに済むなら、それがいちばん確かだということです。
かがむ回数を減らす方法は、ひとつしかありません。土のほうを、腰の高さまで持ち上げることです。
90cmという高さには、裏づけがある
では何cmにすればいいのか。ここは感覚で決めなくても、すでに調べられている話です。
『インテリアの人間工学』には、立ったまま皿を洗ってもらい、そのときの筋肉の働きを筋電図で測った結果が載っています。いちばん働きが小さかったのは、体の前方20cm・高さ90cmの位置でした。女性はこれより5cm低いとみなしてよい、とも添えられています(京都府立図書館がレファレンス協同データベースで紹介している事例より)。
別の資料では、手をよく使い目はそれほど使わない作業の場合、作業する面は肘の高さから下方0〜30cmが目安とされています。畑や栽培槽の作業は、まさにこれに当たります。肘との差を10cm前後に取るのがよい、という研究もあります。さきほどの腰痛予防対策指針も、作業台の高さは肘の曲げ角度がおよそ90度になる高さにすること、と書いています。
私の栽培槽は、天板まで900mmです。これらの数字とほぼ重なります。狙って合わせたわけではなく、立って楽なところを探したら、たまたまそこになりました。
自分に合う高さの出し方

まっすぐ立って、腕を体の横に下ろします。そこから肘だけを直角に曲げて、手のひらの高さを床から測ります。これが自分の肘の高さです。体格で変わるので、人の数字ではなく自分の数字を使ってください。
そこから10cmほど下げた高さが、力を入れやすい作業面になります。手先の細かい作業が多いなら少し高めに、力を使う作業が多いなら少し低めに寄せる。それだけで、一日の終わりの腰の残り方が変わってきます。
足場の資材で組むと、高さを自分で決められる

売られている栽培棚は、高さが決まっています。自分の肘に合わせたいなら、組んだほうが早い。私のところでは建築の足場に使う資材で枠を作り、その上に栽培槽を載せています。
使ったのは、支柱、ブラケット、手すり、足場板、そして脚の下に入れるジャッキです。支柱を立ててブラケットを差し込み、その受けに足場板を渡す。手すりは横のつなぎに回しています。足場を組む手順と、ほとんど同じです。
高さを追い込めるのはジャッキのおかげです。ねじを回した分だけ脚が伸び縮みするので、地面が多少傾いていても、天板だけは水平に出せます。コンクリートを打っていない土の上でも、ここで帳尻が合います。
木で組むより歪みません。水を張った栽培槽は重く、土を入れた同じ大きさの箱より重いこともあります。何年も置きっぱなしにするものなので、たわまないことは思っているより効いてきます。
高さを変えたくなったら、組み直せば済みます。作ったあとで「あと5cm高いほうがよかった」と気づいても、やり直しがきく。最初から完璧を狙わなくていいのは、決め打ちで買うより気が楽です。
高さを上げると、消える作業がある
まず、耕す作業がなくなります。土を使わないので、掘り返す必要がありません。培地は何年かに一度、洗うか入れ替えるだけです。クワを持つ日が年に何日あったかを思い返すと、ここだけでもかなり違います。
草取りもほとんどありません。土がなく、栽培槽の表面は板やスポンジで覆われています。雑草の種が根を下ろす場所がない。中腰がいちばん集中するのは草取りなので、これは大きい。
ただし、まったくのゼロではありません。培地のすき間から芽が出ることはありますし、栽培槽のふちには藻がつきます。無くなるのではなく、量が変わると考えてください。
収穫と間引きは、立ったままできます。葉物なら、手を伸ばして摘むだけです。しゃがんで、立って、また移動してしゃがむ。あの繰り返しが無くなります。

高さでは解決しないこと

正直に書いておきます。高さを変えても、腰にくる場面は残ります。
ひとつは、重いものを持ち上げるときです。培地の袋、水の入った容器、ポンプ。これは作業面の高さと関係なく腰にきます。膝を使って持ち上げる、二回に分ける、台車に載せる。ここだけは昔ながらの話になります。
腰を固定する道具を使う手もあります。毎日締めるものではなく、持ち上げる作業がまとまってある日――培地を入れ替える日や、設備を組み直す日――に締めておくと、無理が効きにくくなります。
もうひとつは、立ちっぱなしそのものです。かがまない代わりに、同じ姿勢で立ち続けることになります。先ほどの指針が言う「同じ姿勢を長く続けない」は、こちらにも当てはまります。途中で歩く、座る、別の作業を挟む。それだけでも違います。
それと、高くしすぎた場合です。肘より上に作業面があると、腕を上げたまま作業することになり、今度は肩と首にきます。低すぎればすぐ腰に出るので気づきますが、高すぎるほうは気づくのが遅い。迷ったら、肘の高さより下に取ってください。
まとめ
畑仕事の腰痛は、姿勢の話にされがちです。しかし畝が地面にあるかぎり、かがむ回数は意識では減りません。減らせるのは、土のほうを持ち上げたときだけです。
高さの目安は、自分の肘から10cm下。私のところでは900mmで、腰痛持ちのまま、いまのところ腰にくる作業はありません。残るのは、持ち上げる作業と立ちっぱなしの負担。そこは道具と休みでしのぐ、という切り分けになります。
よくある質問
Q. 栽培槽の高さは何cmにすればいいですか。
A. まっすぐ立って肘を直角に曲げ、手のひらの高さを測ってください。それが肘の高さです。そこから10cmほど下げたところが、力を入れやすい作業面になります。私のところでは900mmで、収穫も間引きも立ったままできています。手先の細かい作業が多いなら少し高めに、力を使う作業が多いなら少し低めに寄せてください。
Q. 高さを上げれば、腰痛は治りますか。
A. 治すためのものではなく、かがむ回数を減らすためのものです。かがむ動作が減れば、腰にかかる場面そのものが減ります。ただし重いものを持ち上げる場面と、立ちっぱなしの負担は残ります。痛みが続いているなら、まず医療機関で診てもらってください。
Q. 土を使わなければ、草取りはゼロになりますか。
A. ゼロにはなりませんが、量が大きく違います。土がなく、栽培槽の表面も覆われているので、雑草の種が根を下ろせる場所がほとんどありません。培地のすき間から芽が出ることはあり、ふちには藻もつきます。中腰が集中するのは草取りなので、ここが減るのは大きいです。
Q. 腰を固定するベルトは必要ですか。
A. 高さを合わせてあるなら、日々の作業で締める場面はほとんどありません。効いてくるのは、培地の袋や水の入った容器を持ち上げる日です。持ち上げる作業がまとまってある日だけ締める、という使い方が現実的です。
Q. 高くしすぎると、どうなりますか。
A. 肘より上に作業面があると、腕を上げたまま作業することになり、今度は肩と首にきます。低すぎる場合はすぐ腰に出るので気づきますが、高すぎる場合は気づくのが遅れます。迷ったら、肘の高さより下に取ってください。
Q. 座って作業したい場合はどうすればいいですか。
A. 座って作業するなら、作業面はもっと低くなります。椅子に座って肘を直角に曲げたときの手のひらの高さが基準になるので、立ったときより20cm以上低い位置です。立ちと座りを両方したいなら、高さを変えられる椅子のほうで合わせるほうが楽です。
次に見るのは、ここ
あとから変えられないことを先に知りたいなら始める前に決める4つへ。方式を決めるなら3方式の比較へ。水を換えなくていいのか迷っているなら水換え不要が成り立つ条件へ。いくら掛かるか知りたいなら初期費用とランニングコストへ。

