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アクアポニックスは農地でできるのか|農地法の条文から読む、確認すべき3点

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アクアポニックスと農地法の記事のアイキャッチ。ハウス内の栽培槽と魚の水槽の写真を背景にしている アクアポニックス

祖母の農地でアクアポニックスをやろうと決めたとき、いちばん時間がかかったのは設備でも魚でもありませんでした。この土地で、それをやっていいのかどうかです。

調べても、はっきりした答えは出てきません。「良いですよ」と言われたことが、あとからひっくり返ることもありました。うちは行政と何度もやり取りして、最終的に念書を書くところまでいきました。

だからこの記事では、条文にあたって整理します。年号や運用の細かい話は書きません。読んだあとに、自分の土地の農業委員会へ何を聞きに行けばいいのかが分かる。そこまでを目標にします。

なお、以下は農地法の条文を読んで整理したものです。個別の可否を判断するものではありませんし、私は法律の専門家でもありません。最後は必ず、その土地の農業委員会に確認してください。

この記事の結論(要点)
  • 農地法でいう「農地」は耕作の目的に供される土地。この一文が、すべての出発点です。
  • 農地を農地以外にするには、原則として許可が要ります。底をコンクリートで覆うのも、そのままなら転用です。
  • ただし特例があります。届け出て要件を満たせば、その施設での栽培を「耕作」とみなすという条文です。
  • アクアポニックスの論点は「魚」の側にあります。特例が想定しているのは、農作物の栽培だからです。
  • 最終的な判断はその土地の農業委員会です。始める前に、図面を持って聞きに行ってください。

「農地」の定義は、たった一文

農地法の第2条は、農地をこう定めています。耕作の目的に供される土地。これだけです。

登記の地目が畑になっているかどうか、ではありません。実際にその土地が耕作に使われているかどうかで決まります。だから、登記が宅地でも実態が畑なら農地として扱われることがありますし、その逆もあります。

この定義がすべての入口です。あなたが使おうとしている土地が農地なら、以降の話が全部かかってきます。農地でないなら、少なくとも農地法の問題は起きません。まず確かめるべきは、設備の話ではなくこの一点です。

ビニールハウスの中に置かれた小型のアクアポニックス装置。上の栽培槽で葉物が育ち、下が魚の水槽
置くだけの装置か、床を固める工事か。そこで適用される条文が変わります。

原則|農地を農地以外にするには、許可が要る

第4条が転用の制限です。農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない。これが原則です。

ここでアクアポニックスがぶつかります。水槽と栽培槽を置き、配管を通し、水平を出すために床を整える。規模が大きくなれば、底をコンクリートで固めたくなります。

その工事は、素直に読めば「農地を農地以外のものにする」行為です。土で覆われていた地面が、作物の根が入れない面に変わるからです。

例外もあります。市街化区域の中にある農地なら、あらかじめ農業委員会に届け出れば足りる、と条文にあります。ただし市街化区域かどうかは土地ごとに違うので、これも確認が要ります。

特例|届け出れば「耕作」とみなす条文がある

ここからが本題です。農地法には第43条という特例があります。「農作物栽培高度化施設に関する特例」という名前です。

条文の骨子はこうです。農業委員会に届け出て、農作物栽培高度化施設の底面とするために農地をコンクリートその他これに類するもので覆う場合、その施設で行われる農作物の栽培を「耕作」に該当するものとみなして農地法を適用する。

つまり、底をコンクリートにしても農地のまま扱える道がある、ということです。転用の許可ではなく、届け出で進める形になります。

ただし条件があります。第43条の2項は、農作物栽培高度化施設を「農作物の栽培の用に供する施設であって、栽培の効率化または高度化を図るためのもの」のうち、「周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないもの」として農林水産省令で定めるもの、と定義しています。

大事なのは後半です。まわりの農地の営農に迷惑をかけないこと。日照、排水、農道。隣で普通に農業をしている人の条件を悪くしないことが、この特例の前提になっています。

アクアポニックスを農地でやるときの道すじの図。その土地は農地か、底をコンクリートで覆うか、特例の届け出で耕作とみなせるか、最終判断は農業委員会
条文で分かるのはここまで。最後は農業委員会の判断です。

アクアポニックスがぶつかる、いちばんの論点

条文を読み込むと、この技術に特有の問題が見えてきます。特例が想定しているのは「農作物の栽培」だということです。

アクアポニックスは、栽培槽で野菜を育てます。ここは農作物の栽培です。しかし同時に、水槽で魚を飼っています。魚を育てる部分が「農作物の栽培」に当たるのかは、条文を読んだだけでは決まりません。

この装置は、魚と野菜を切り離せません。魚のフンを細菌が変えて、それを野菜が吸うという一本の流れがあるからこそ成り立っています。だから「野菜の部分だけが栽培です」という説明にも無理があります。

ここが、うちが行政と何度もやり取りすることになった場所です。制度の側に、この技術を正面から想定した枠がまだありません。だから担当者によって答えが揺れますし、一度もらった答えが後から変わることもあります。

結論を言えば、ここは条文だけでは決着しません。その土地の農業委員会と、都道府県の判断になります。だからこそ、始める前に聞きに行く価値があります。

「栽培していない」と勧告される

もう一つ、知っておくべき条文があります。第44条です。

特例の届け出をして施設を建てたのに、その施設で農作物の栽培が行われていない場合、農業委員会は栽培を行うべきことを勧告できると定めています。

当然といえば当然です。この特例は「農地のまま使い続ける」ための仕組みなので、作物を作らないなら前提が崩れます。建てて終わりではなく、作り続けることまで含めた制度です。

裏を返せば、この技術との相性は悪くありません。この装置は年間を通して動き続けますし、冬でも寒冷紗の下で葉物が育ちます。栽培の実態を示すという意味では、むしろ説明しやすい部類でしょう。

ビニールハウスの中の栽培槽に整然と並んだ赤いリーフレタス
栽培の実態を示せるかどうか。この技術は年間を通して動くので、そこは説明しやすい部類です。

農業委員会に聞きに行くとき、何を持っていくか

ここまでの整理を、実際の行動に落とします。聞きに行く前にそろえるものは3つです。

1つめは、土地の情報です。所在地、地目、面積、市街化区域かどうか。登記事項証明書があれば話が早く進みます。借りる予定なら、誰の土地かも必要になります。

2つめは、設備の図面と工事の内容です。どこに何を置くのか。底面をコンクリートにするのか、しないのか。ここが変われば適用される条文が変わります。手描きでも、寸法が入っていれば十分です。

3つめは、何を作るのかという説明です。栽培する作物、魚の種類と量、年間の栽培計画。餌の量から収穫量が決まるこの技術は、数字で説明しやすいという利点があります。

そして聞き方です。「アクアポニックスをやりたいのですが、できますか」ではなく、「この土地に、この設備を置いて、この作物を育てたい。農地法上どの手続きになりますか」と聞いてください。前者だと言葉の説明から始まって、答えにたどり着きません。

農地を借りる・買う場合は、また別の手続き

ここまでは「すでに使える農地がある」前提でした。土地から手に入れる場合は、別の入口があります。

農地の所有権を得たり、借りたりするときにも農地法の許可が要ります。誰でも自由に農地を買えるわけではない、というのが日本の制度の基本です。耕作放棄地が目の前にあっても、買って好きに使えるわけではありません。

新しく農業を始める人向けの制度もあります。市町村の窓口や、都道府県の就農相談の窓口が入口です。うちも会社を辞めてこの道に入ったので、順番としてはここから始まりました。

これらは自治体によって運用も窓口も違うので、この記事で断定的に書くことはしません。制度の名前だけ覚えて、地元の窓口で聞くのがいちばん確実です。

うちの場合|「良いですよ」がひっくり返るまで

最後に、実際にどうだったかを書きます。ただし、詳細はここには書ききれません。

やり取りは一度では終わりませんでした。担当が変わり、解釈が変わり、書類が増え、最後には念書を書くところまでいきました。当時は理不尽に感じましたが、いま振り返ると、制度の側にこの技術の居場所がまだ無かったということだと思います。

その一部始終は、行政とのやり取りの記録として別にまとめました。前半は無料で読めます。同じ場所で足踏みしている人には、時間の節約になるはずです。

ひとつだけ、いま同じ立場の人に言えることがあります。口頭の「大丈夫ですよ」を根拠に工事を始めないでください。誰が、いつ、どの条文に基づいて、何を認めたのか。この4つが残る形で進めるだけで、あとの苦労はかなり減ります。

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まとめ

農地とは耕作の目的に供される土地。農地を農地以外にするには許可が要る。ただし届け出て要件を満たせば、施設での栽培を耕作とみなす特例がある。骨格はこの3つです。

そしてアクアポニックスの論点は、魚の側にあります。制度がこの技術を正面から想定していないぶん、判断はその土地の農業委員会に委ねられます。

だから、始める前に聞きに行ってください。土地の情報と、図面と、育てるものの計画を持って。条文そのものは誰でも読めます。読んでから行くと、話が早く進みます。

よくある質問(FAQ)

Q. アクアポニックスは農地でできますか。

A. 条文だけでは決まりません。農地法には、届け出て要件を満たせば施設での栽培を「耕作」とみなす特例がありますが、想定されているのは農作物の栽培です。魚を飼う部分をどう扱うかは、その土地の農業委員会と都道府県の判断になります。

Q. 農地にコンクリートを打つと転用になりますか。

A. 原則としては、農地を農地以外のものにする行為にあたり許可が必要です。ただし農地法第43条の特例により、農業委員会に届け出て要件を満たす施設の底面とする場合は、その施設での栽培を耕作とみなす扱いがあります。

Q. 特例を使うための条件は何ですか。

A. 条文では、農作物の栽培の用に供し、栽培の効率化または高度化を図る施設であること、そして周辺の農地の営農条件に支障を生ずるおそれがないことが挙げられています。具体的な基準は農林水産省令で定められています。

Q. 農業委員会には何を持っていけばいいですか。

A. 土地の情報(所在地・地目・面積・市街化区域かどうか)、設備の図面と工事内容、育てる作物と魚の計画の3つです。「できますか」ではなく「この設備でこれを育てたい。どの手続きになりますか」と聞くと話が進みます。

Q. 耕作放棄地を買ってアクアポニックスを始められますか。

A. 農地の売買や賃借にも農地法の許可が必要で、誰でも自由に買えるわけではありません。新規に就農する人向けの制度もありますが、運用は自治体ごとに違うので市町村や都道府県の就農相談の窓口で確認してください。

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