穫れたてのレタスをちぎって口に入れて、顔をしかめる。苦い。買ったものより、はっきり苦い。
調べると「硝酸態窒素のせい」「肥料が濃い」と出てきます。それで肥料を薄めても、翌週のレタスは同じ味です。
苦い理由は1つではありません。3つあって、どれかで打つ手が逆になります。だから先に、どれかを決めます。
- まず先端。中心から茎が立っていたら、とう立ちの苦さです。戻りません。今日穫ります。
- 先端が平らなら、養液の温度。22℃を超えていれば暑さの苦さで、遮光すれば次の葉から戻ります。
- 水温も低いなら、葉が古い。内葉を食べて苦くなければ、穫り遅れです。
- 硝酸態窒素の話は最後です。出るのは苦さではなく、えぐみ。肥料は上の3つを潰してから。
- いま付いている苦い葉は戻りません。戻るのは、直したあとに出てくる葉です。
水耕栽培のレタスが苦いとき、まず先端を見る
答えを先に書きます。株の中心を見て、茎が1本立ち上がっていたら、とう立ちの苦さです。
レタスの苦味は、切り口から出る白い乳液に含まれています。この乳液は、株が花に向かう段階で増えます。中心から茎が伸び、その先につぼみができていれば、株はもう花の準備に入っています。
この苦さは、待っても戻りません。光を足しても止まらないのと同じで、いったん始まった株は、日を追うごとに苦くなります。
だから先端に茎が立っていたら、その株は今すぐ穫ります。まだ食べられる葉を、苦くなりきる前に取る。それが唯一の手です。
先端が平らで、中心から新しい葉が出ているだけなら、とう立ちではありません。次の章へ進みます。
ここで順番を守ってください。とう立ちの株に遮光や肥料の調整をしても、意味がありません。

先端が平らなら、次は水温
とう立ちしていないのに苦い。このとき疑うのは、養液の温度です。
レタスは涼しい季節の野菜です。養液が22℃を超えたあたりから、根の側に無理が出はじめます。無理が出た株は、守るための成分を葉に増やします。その中に、あの苦味も入っています。
だから真夏のレタスは、とう立ちしていなくても苦くなります。しかも、暑さが続けばとう立ちも始まるので、放っておくと両方が重なります。
この苦さは、戻ります。水温を下げれば、そのあと出てくる葉は苦くなくなります。効くのは日射を切ることで、遮光ネットが一番です。
いま付いている葉は、戻りません。すでに苦い葉はそのままなので、穫って、涼しくなってから出た葉を待ちます。
水温計を差して、22℃を超えているか見てください。超えていなければ、次の章です。
水温も低いなら、穫り遅れ
とう立ちもしていない。水温も高くない。それでも苦いなら、葉が古いのです。
レタスの苦味は、葉の年齢でも変わります。外側の大きな葉ほど、日を浴びた時間が長く、苦味が溜まっています。内側の若い葉は、まだ少ない。
だから同じ株でも、外葉と内葉で味が違います。外葉を食べて苦いと感じたなら、内葉を食べてみてください。
外葉から穫っていく方式なら、いつも外側の葉を食べることになります。それ自体は正しいやり方ですが、穫るのが遅れて葉が大きくなりすぎると、苦さが先に来ます。
手は2つです。穫る頻度を上げて、葉が大きくなる前に取る。もうひとつは、株ごと抜いて、新しい株に入れ替える。別に播いておいた苗があれば、その日に差し込めます。
穫り遅れの苦さは、株の側の問題ではなく、こちらの手の遅さです。ここは仕組みで直せます。

硝酸態窒素の話は、最後でいい
「苦いのは硝酸態窒素」という説明は、よく見かけます。順番としては、最後に回してください。
硝酸態窒素が多いと出るのは、苦さというより、えぐみです。口に残る感じで、舌の先で来る苦さとは別のものです。しかも硝酸塩の量を決めているのは光と温度で、肥料の濃さだけでは動きません。
それでも肥料を疑うなら、見るのは濃さより、葉の色です。葉が濃い緑で厚く、茎が太いなら、養分は足りています。そこへさらに足しても、味は良くなりません。
魚がいるアクアポニックスなら、そもそも肥料は足していないはずです。足す前に試す3つのほうを先にしてください。
つまり、苦さで肥料をいじるのは、上の3つを潰したあとです。先に触ると、株の状態が変わって、何が効いたか分からなくなります。
順番を守れば、たいていは3つのどれかで決まります。
食べるときにできること
原因を直しても、いま手元にある苦い葉は変わりません。それをどうするかも書いておきます。
冷やすと、苦さは弱まります。穫ったあと、冷水に少し浸けてから冷蔵庫へ。時間はそれほど要りません。味の感じ方が変わります。
穫る時間帯も効きます。朝の涼しいうちに穫った葉のほうが、昼過ぎに穫った葉より苦さが穏やかです。日中に光を浴びるほど、乳液が増えるからです。
切り口から出る白い汁は、水で流してください。そこに苦味が集まっています。ちぎったまま盛ると、汁ごと口に入ります。
それでも苦いなら、生ではなく火を通します。炒めれば苦味は目立たなくなります。無理に生で食べ切る必要はありません。
これらは対症の話です。次の株を苦くしないのは、上の3つのほうです。
苦いレタスは、食べても大丈夫か
「体に悪いのでは」と心配する声もあるので、ここで答えておきます。苦いレタスは、食べて問題ありません。
苦味の元は、レタス自身が持っている乳液の成分です。虫に食べられにくくするために植物が作っているもので、人が食べて害になる量ではありません。市販のレタスにも同じ成分は入っていて、量が少ないだけです。
だから捨てる必要はありません。ただし、苦さがあまりに強い葉は、生で食べるのがつらいだけです。そういう葉は火を通すか、外して内葉だけを使ってください。
安全の話で気にするなら、苦さではなく硝酸塩のほうです。それも光と温度で決まるので、別にまとめています。苦さと安全は、切り離して考えてください。
もうひとつ、白い乳液が手や包丁に付いてベタつくことがありますが、それも同じ成分です。水で流れます。
次の株を苦くしないために|播く時期と穫る速さ
原因が分かったら、次の株で同じことを起こさないための手を打っておきます。
いちばん効くのは、播く時期です。レタスは涼しい季節の野菜なので、秋に播けば、育つあいだ気温が下がっていく側に乗れます。春に播くと、育つあいだに暑くなる側に乗るので、とう立ちと暑さの両方が待っています。
次に、穫る速さです。大きく育ててから一度に穫るのではなく、外葉が手のひらくらいになったら順に穫る。葉を老けさせない、というのがそのまま苦さを避ける手になります。
それから株数です。詰めて植えると、互いに影を作って徒長し、穫る手が回らずに葉が古くなります。少なく植えて、早く回すほうが、結果として苦くない葉が続きます。
この3つは、どれもレタスのためだけの手ではありません。夏の水温対策や間引きと、ほとんど重なります。苦さを避ける管理は、ふつうに育てる管理と同じです。
水菜や小松菜が苦いときも、同じか
レタスだけでなく、水菜や小松菜でも同じ質問があります。半分は同じで、半分は違います。
同じなのは、順番です。先端を見て、水温を見て、葉の年齢を見る。とう立ちの株は戻らない、暑さの株は次の葉から戻る、古い葉は穫り遅れ。この分け方は野菜が変わっても効きます。
違うのは、苦さの中身です。レタスの苦味は乳液の成分ですが、水菜や小松菜はアブラナ科で、あの辛みに近い刺激が「苦い」と感じられていることがあります。こちらは葉が大きく育つほど強く出るので、若いうちに穫るのがいちばん効きます。
それから、アブラナ科は虫が付きやすく、かじられた株は守るための成分を増やします。葉に穴が開いている株が苦いなら、虫の側も見てください。
どちらにしても、肥料を先にいじらないのは同じです。先端・水温・葉・虫の順で見て、それでも残るなら、そこで初めて養液の話になります。
レタスで身につけた順番は、そのまま他の葉物にも使えます。1つ覚えれば足ります。

魚がいると、打てる手が1つ減る
同じ水に魚がいるアクアポニックスでは、考えることが少し変わります。
水温を下げる手のうち、氷を入れる、冷たい水を足す、といった急な手は使えません。魚のほうが先に参ります。使えるのは遮光と、水量を増やすことです。
そのかわり、肥料を疑う必要が最初からありません。養分は魚の餌から来ているので、濃すぎることのほうが珍しい。苦さの原因は、ほぼ先端か水温か葉の位置に絞れます。
もうひとつ、株を抜いて入れ替えるときは、根の切れ端を水に落とさないでください。ポンプの吸込口に集まると、流れが止まります。
魚がいるぶん手は減りますが、原因も減る。差し引きでは、迷う場所が少なくなります。
どこで見切るか|終わりの判断
手を打ったあと、どこまで待つかを決めておきます。
とう立ちなら、待ちません。今日穫って、その株は終わりです。翌週まで置いても、苦くなるだけです。
水温なら、次に出る葉まで待ちます。遮光してから出てきた葉を食べて、苦くなければ越えています。いま付いている葉で判断しないでください。
穫り遅れなら、穫り方を変えた次の収穫で分かります。小さいうちに穫って苦くなければ、それが答えです。
3つとも試して、それでも苦いなら、その品種がもともと苦みの強いものかもしれません。品種を変えるのが、いちばん早い場合もあります。
最後にひとつ。苦さは失敗のサインではなく、株からの合図です。先端か、水温か、葉の年齢か。どれかを言っているので、そこを読めば次は防げます。
まとめ
水耕栽培のレタスが苦い理由は3つに分かれます。とう立ち、養液の温度、葉の年齢。順番に見れば、どれかで決まります。
まず先端です。中心から茎が立っていれば、とう立ち。この苦さは戻らないので、今日穫ります。平らなら水温を見て、22℃を超えていれば遮光します。それも低ければ、穫り遅れです。
硝酸態窒素の話は最後です。出るのはえぐみで、しかも量を決めているのは光と温度。肥料をいじるのは、3つを潰してからにしてください。
いま付いている苦い葉は戻りません。戻るのは、直したあとに出てくる葉です。そこで判断してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 水耕栽培のレタスが苦いのはなぜですか。
A. 理由は3つに分かれます。とう立ちが始まっている、養液の温度が高い、葉が古い。まず株の中心を見て、茎が立ち上がっていればとう立ちです。平らなら次に水温、それも低ければ穫り遅れです。
Q. とう立ちしたレタスの苦さは戻りますか。
A. 戻りません。花に向かう段階で乳液の苦味が増え、日を追うごとに苦くなります。光を足しても止まらないのと同じです。まだ食べられる葉を今日のうちに穫ってください。
Q. 暑さで苦くなったレタスは、どうすればいいですか。
A. 水温を下げれば、そのあと出てくる葉は苦くなくなります。効くのは遮光です。いま付いている葉は戻らないので、穫ってから、涼しくなって出た葉を待ちます。
Q. 外葉が苦くて内葉は苦くないのはなぜですか。
A. 葉の年齢です。外側の大きな葉ほど日を浴びた時間が長く、苦味が溜まっています。穫る頻度を上げて、葉が大きくなる前に取れば防げます。
Q. 硝酸態窒素が原因ではないのですか。
A. 硝酸態窒素で出るのは苦さというより、えぐみです。しかも硝酸塩の量を決めているのは光と温度で、肥料の濃さだけでは動きません。肥料をいじるのは、先端・水温・葉の位置の3つを潰したあとにしてください。
Q. 苦いレタスを食べやすくする方法はありますか。
A. 冷水に浸けてから冷蔵庫で冷やす、朝の涼しいうちに穫る、切り口の白い汁を水で流す。それでも苦いなら火を通します。ただしこれは対症で、次の株を苦くしないのは原因のほうです。
Q. アクアポニックスでも同じですか。
A. 原因は同じですが、打てる手が変わります。氷や冷水は魚が参るので使えず、遮光と水量で下げます。かわりに肥料を疑う必要が最初からないので、迷う場所は少なくなります。
Q. 苦いレタスは体に悪いですか。
A. 問題ありません。苦味の元はレタス自身が持つ乳液の成分で、市販のレタスにも少量入っています。安全で気にするなら苦さではなく硝酸塩で、それは光と温度で決まります。
Q. 次の株を苦くしないには。
A. 播く時期と穫る速さです。秋に播けば育つあいだに気温が下がる側に乗れます。外葉が手のひらくらいになったら順に穫り、葉を老けさせない。株数を減らして早く回すのも効きます。
Q. 水菜や小松菜が苦いときも同じですか。
A. 見る順番は同じです。先端・水温・葉の年齢。ただし苦さの中身が違い、アブラナ科は辛みに近い刺激が「苦い」と感じられることがあります。葉が大きくなるほど強く出るので、若いうちに穫るのが効きます。
Q. いつまで待てばいいですか。
A. とう立ちなら待ちません。水温なら、遮光してから出てきた葉を食べて判断します。穫り遅れなら、小さいうちに穫った次の収穫で分かります。3つとも試してだめなら、品種を変えるのが早いこともあります。
次に見るのは、ここ
先端に茎が立っていたら水耕栽培のとう立ち|徒長と見分けるへ。暑さが原因なら水耕栽培の夏の水温|22℃で線を引くへ。穫り方を変えるならアクアポニックスの収穫|外葉から穫れば何度でもへ。硝酸塩のほうが気になるならアクアポニックスの野菜と硝酸塩へ。株を入れ替えるなら水耕栽培の定植|根が出たかで決めるへ。
