水耕栽培の種をまいて数日。スポンジをのぞくと、白いふわふわしたものが付いている。カビだと思って、そのスポンジごと捨てた。
その白いふわふわ、カビではなかったかもしれません。発芽したばかりの根には、根毛という白い毛が生えます。見た目はカビとほとんど同じです。
捨てる前に、どこから生えているかを見てください。そこから書きます。
- 根から生えているなら根毛。スポンジや種の殻から生えているならカビです。
- 迷ったら水に浸ける。根毛は根に張り付いて消え、カビは塊のまま残ります。
- カビでも、芽が出て根が伸びていれば残せます。楊枝で取り、水道水でゆすぎ、ほかから離す。
- 出る原因は3つ。養液を使った、スポンジを全部沈めた、密閉した。
- 取り除いても翌日また出るなら、まき直したほうが早い。
白いふわふわは、生えている場所で見分ける
答えを先に書きます。根から生えているなら根毛。スポンジや種の殻から生えているならカビです。
根毛は、根の表面から生える細い毛です。芽が出て数日の根には、とくに密に生えます。白く、ふわふわして、綿のように見えます。ここまではカビと同じです。
違いは、生えている場所です。根毛は、根そのものから、根に沿って生えます。根の周りだけが白く、少し離れたスポンジには何も付いていません。
カビは、根とは関係のない場所に出ます。スポンジの表面、種の殻、発芽しなかった種の周り。根から離れたところに、島のように広がります。
もうひとつの見分け方は、水に浸けることです。根毛は水に入れると根に張り付いて見えなくなります。カビは水の中でも塊のまま残ります。
もうひとつ、種をまいた直後の「白い膜」も、カビと間違えやすいものです。シソやバジルの種は、水を吸うと表面がゼリー状に膨らみます。透明がかった白い膜が種を包む。これは種の性質で、カビではありません。数日で芽が出れば、膜は自然に消えます。
逆に、まいた直後で、種の表面に綿のような白い糸が立ち上がっているなら、それはカビです。膜は平らで、カビは立ち上がる。そこでも見分けられます。
これで、たいていは分かります。分からないときは、次の章の「触ってみる」まで進んでください。
なぜ、発芽したての根に毛が生えるのか
根毛が何のためにあるかを知っておくと、捨てなくなります。
根毛は、根の表面積を増やすための毛です。細い根1本より、そこに毛が無数に生えているほうが、水と養分に触れる面がずっと広い。発芽したばかりの苗は、根がまだ1本しかありません。その1本で水を吸うために、毛を密に生やします。
だから、根毛が濃い苗は、水をよく吸っている苗です。逆に、根毛がほとんど無い根は、水に浸かりきっていることが多い。水中の根は、根毛を減らします。スポンジの半分が空気に触れていると、その部分の根に根毛が出ます。
ダイコンやカイワレの芽で、この「白い毛」を見たことがある方は多いはずです。スーパーのカイワレの根元も、よく見ると白い毛が付いています。あれが根毛です。カビが生えたカイワレを売っているわけではありません。
根毛は、装置に移して根が水中に入ると、目立たなくなります。それで正常です。消えたからといって、根が傷んだわけではありません。
この一段を知っていれば、白いふわふわを見た瞬間に、まず「根毛かも」と思えます。捨てるのは、そのあとで決めればいい。

迷ったら、触るとにおう
場所で決めきれないことがあります。根がスポンジの中にあって、どこから生えているか見えないときです。
そのときは、爪楊枝の先で、白い部分を軽くなでてください。根毛は根に付いたまま動きません。カビは崩れて、楊枝の先に絡みます。
においも違います。根毛は無臭です。カビは、湿った土のような、少しかび臭いにおいがします。スポンジを鼻に近づけて分かるくらいです。
もうひとつ。根毛は、根が伸びるにつれて、先端のほうへ移っていきます。数日たって、古い部分の白さが消え、新しい根の先が白い。そういう動き方をするのは根毛です。カビは動かず、その場で広がります。
ここまでやって根毛だったら、そのまま育ててください。根が2〜3センチ出たら、いつもどおり装置へ移します。根毛が生えている苗は、むしろよく育っている苗です。
カビだったとき|苗ごと捨てるかどうか
カビだと分かったら、次に決めるのは、その苗を残すかどうかです。
芽が出ていて、根が伸びているなら、残せます。カビの部分を楊枝で取り除き、スポンジを水道水で軽くゆすいで、乾いたバットに置き直してください。
芽が出ていない種の周りにカビがあるなら、その種は捨てます。発芽しなかった種は、それ自体がカビの餌になります。残しておくと、隣のスポンジに広がります。
取り除いても、また出てくるなら、その苗はあきらめて、まき直したほうが早いです。スポンジ種まきは数日で根が出ます。カビと格闘する時間より、まき直す時間のほうが短い。
苗を残す場合も、ほかの苗と離してください。同じバットに戻すと、広がります。別のバットが無ければ、同じバットの端に置き、間にすき間を作るだけでも違います。
取り除いたあとは、バットの水も捨てて、水道水を張り直します。カビの胞子は水に落ちています。水を残したままだと、取り除いた意味が半分になります。
なお、装置に移してからカビが出た場合は、この記事の話ではありません。水中の根が茶色くなるのは根腐れで、別の対処です。

出る原因は、水と光と空気の3つ
カビが出たなら、理由があります。うちのスポンジ種まきでは、カビが出たことがありません。出ない条件が、そのまま原因の裏返しです。
ひとつ目は、水に養分が入っていること。養液や飼育水でスポンジを湿らせると、その栄養はカビと藻が先に使います。発芽に栄養は要りません。種は自分の蓄えで芽と根を出します。発芽までは水道水だけです。
ふたつ目は、スポンジが水に沈んでいること。全部沈めると、酸素が届かず、種が腐ります。腐った種がカビの餌になります。水位はスポンジの半分。上半分は空気に触れていること。
三つ目は、密閉していること。乾燥を防ごうとラップやふたで密閉すると、空気が動かず、湿度が上がりきります。うちはバットを上から被せますが、すき間は空けています。
この3つのどれかを外していると、出ます。逆に3つとも守っていれば、出ないことが多い。
ティッシュを被せるやり方も、カビの元になります。うちはティッシュをやめました。ぼろぼろになり、芽が繊維に絡みます。湿ったティッシュは、それ自体がカビの餌です。
スポンジの種類と、使い回し
「食器用のスポンジでもいいか」と聞かれます。うちは水耕栽培用の発芽スポンジしか使っていないので、食器用の良し悪しは書けません。
ただ、ひとつ言えるのは、使ったスポンジを次の種まきに使い回すのはやめたほうがいい、ということです。前の根の残りや、切れ込みに入った種の殻が、次のカビの餌になります。
発芽スポンジは、1回ごとに新しいものを使います。単価は安いです。使い回して1回分のカビを出すより、新しいものを切ったほうが確実です。
切り方は、切れ込みを入れて、そこに種を置くだけです。切れ込みが深すぎると種が奥に入り、光が届かず、根毛の確認もしにくくなります。
種を置いたら、指で押し込まないでください。押し込んだ種は、酸素に触れる面が減って、腐りやすくなります。
光を当てる種と、当てない種で、置き場所が変わる
カビの話から少し離れますが、置き場所を間違えると、発芽が遅れ、遅れたぶんだけカビの機会が増えます。
種には、光が当たると発芽する種と、光があると発芽しない種があります。レタス、シソ、シュンギク、ミツバは光が要ります。ダイコン、ネギ、タマネギ、ナス、トマトは光が無いほうが発芽します。
レタスの種を暗い場所に置くと、発芽しないまま日がたちます。発芽しない種は、そのうち腐って、カビの餌になります。「カビが出た」の何割かは、じつは「発芽しなかった」が先にあります。
だから、まく前に、その種が光を要るか要らないかを確かめてください。袋の裏に書いてあることが多いです。
要る種はバットを被せても明るいところへ。要らない種は暗いところへ。それだけで、発芽までの日数が変わります。
藻が出たときは、別の話
白ではなく、緑のものがスポンジに付いたら、それはカビではなく藻です。
藻は、光と栄養があれば出ます。装置に移したあとの藻の対処は、別の記事に書きました。スポンジの段階で出るのは、光が強すぎるか、水に養分が入っているか、どちらかです。
藻は、根毛と間違えることはありません。色が違います。ただ、藻とカビは同じ条件で出るので、藻が出たバットではカビも出やすい、と考えてください。
藻が出たら、まず水を水道水に換えます。それでも出るなら、光を弱めます。藻は発芽自体を止めることは少ないですが、スポンジの表面を覆うと、根の様子が見えなくなります。

装置に移したあとに白いものが出たら
スポンジのまま装置に移すと、スポンジの上面が水面の上に出ます。そこに白いものが出ることがあります。
これは、養液の成分が乾いて残った白い粉であることが多いです。カビではありません。指でこすると粉になります。ふわふわしていません。
ふわふわしているなら、カビです。装置の中では、養液という餌があるので、スポンジの段階より出やすい。水換えのときにスポンジの上面を水道水で洗い流してください。
それでも出続けるなら、スポンジの上面が濡れすぎています。水位を下げて、スポンジの上半分が乾く状態にしてください。乾いているところに、カビは出ません。
根が水中で茶色くなる、ぬるぬるするのは、この記事ではなく根腐れの記事の範囲です。白いふわふわとは別のものです。
どこで見切るか|終わりの判断
線を決めておきます。
根から生えているなら、根毛。何もしないで育てます。捨てないでください。
取り除いて、2日たって出てこなければ、終わりです。そのまま装置へ移して構いません。
取り除いても翌日また出るなら、その苗はあきらめて、まき直します。スポンジは新しいもの、水は水道水、水位は半分。この3つを守ってまき直せば、次はたいてい出ません。
最後にひとつ。白いふわふわを見つけたら、まず場所を見る。根から生えていれば、それは育っている証拠です。
まとめ
スポンジの白いふわふわは、まず場所を見ます。根から生えていれば根毛で、育っている証拠です。スポンジや種の殻から出ていればカビです。
迷ったら水に浸ける、楊枝でなでる、においをかぐ。根毛は消えて動かず無臭、カビは残って絡んでかび臭い。
カビでも、芽が出て根が伸びていれば残せます。取り除いて2日出なければ終わり。翌日また出るなら、まき直します。
出る原因は、養液を使った、全部沈めた、密閉した、の3つ。水道水だけ、水位は半分、バットをすき間を空けて被せる。この3つを守れば、たいてい出ません。
よくある質問(FAQ)
Q. スポンジの白いふわふわはカビですか。
A. 根から生えているなら根毛で、カビではありません。スポンジの表面や種の殻から生えているならカビです。迷ったら水に浸けてください。根毛は根に張り付いて見えなくなり、カビは塊のまま残ります。
Q. 根毛とカビは、どう見分けますか。
A. 場所、水、触る、においの4つです。根毛は根に沿って生え、水に浸けると消え、楊枝でなでても動かず、無臭。カビは根と関係ない場所に出て、水中でも残り、楊枝に絡み、かび臭いにおいがします。
Q. カビが生えた苗は育ちますか。
A. 芽が出て根が伸びているなら育ちます。カビの部分を楊枝で取り、スポンジを水道水でゆすいで、ほかの苗から離して置き直してください。芽が出ていない種の周りのカビなら、その種は捨てます。
Q. カビを防ぐには。
A. 水道水だけを使う、水位をスポンジの半分にする、密閉しない。この3つです。養液や飼育水はカビの餌になり、全部沈めると種が腐り、密閉すると湿度が上がりきります。
Q. ティッシュを被せてもいいですか。
A. うちはやめました。ぼろぼろになって芽が繊維に絡み、湿ったティッシュ自体がカビの餌になります。代わりにバットを上から被せています。すき間は空けます。
Q. スポンジは使い回せますか。
A. やめたほうがいいです。前の根の残りや種の殻が次のカビの餌になります。発芽スポンジは1回ごとに新しいものを使います。
Q. 緑のものが付いたら。
A. それは藻です。カビとは別ですが、同じ条件で出るので、藻が出たバットではカビも出やすいと考えてください。まず水を水道水に換え、それでも出るなら光を弱めます。
Q. 装置に移したあと、スポンジの上に白いものが出ました。
A. 指でこすって粉になるなら、養液の成分が乾いたもので、カビではありません。ふわふわならカビです。水換えのときに上面を水道水で洗い流し、それでも出るなら水位を下げてスポンジの上半分を乾かします。
Q. カビだと思って捨ててしまいました。
A. 根から生えていた白い毛なら、根毛だった可能性が高いです。次は捨てる前に、生えている場所を見てください。根毛が生えている苗は、よく育っている苗です。
次に見るのは、ここ
種まきの手順は水耕栽培のスポンジ種まき|水位は半分、光は品目で逆へ。水中の根が茶色いなら水耕栽培の根腐れ|茶色い根だけ切るへ。緑のものが出たら水耕栽培の藻|出る理由と止め方へ。装置に移したあとは水耕栽培の水換え|頻度は水量と根の量で決まるへ。苗が枯れてきたら水耕栽培で枯れる|原因の切り分けへ。

