ベランダでできる家庭用アクアポニックス|必要なものと始め方・おすすめキット
アクアポニックス
2024.06.02
アクアポニックスは大がかりな設備が必要——そんなイメージがありますが、ベランダでも十分に成立します。水槽ひとつぶんのスペースがあれば、魚を飼いながら野菜を育てられます。
結論から言うと、家庭で始めるならメダカ+葉物野菜が最も失敗しにくい組み合わせです。メダカは加温なしで通年飼え、葉物は3週間ほどで収穫できます。そして最大の注意点は夏の水温。ベランダは想像以上に暑くなるので、遮光だけは必ず用意してください。
- 家庭ならメダカ+葉物野菜が最も失敗しにくい。加温不要で3週間ほどで収穫できる。
- 最大の注意点は夏の高水温。ベランダは照り返しで想像以上に暑くなるため、遮光は必須。
- 組んだあと2〜4週間は魚を入れない。バクテリアを育てる期間を飛ばすのが最多の失敗。
水槽ひとつぶんのスペースがあれば、ベランダでも成立する。プランターの下が魚の水槽。
ベランダでアクアポニックスをやる意味
この考え方は国連食糧農業機関の技術報告(2014年)にもまとめられています。小さな規模でも成り立つ、というのがこの報告の主題です。
ベランダは日当たりがよいぶん、夏がいちばんの山場になる。
ベランダでの家庭菜園というと、プランターに土を入れて育てるのが一般的です。それと比べたとき、アクアポニックスには明確な違いがあります。
ベランダは日当たりと省スペースが利点ですが、そのぶん夏の水温上昇が最大のリスクになります。遮光は必須と考えてください。
まず土を使わないこと。コバエやナメクジといった土まわりの虫が湧きにくく、ベランダが汚れません。培地はハイドロボールなので、こぼれても掃除が簡単です。
次に水やりが不要になること。ポンプが水を循環させるので、毎日の水やりから解放されます。旅行のときに枯らす心配も減ります。
そして魚を飼う楽しみが同時にあること。野菜を育てながらメダカを眺められるというのは、プランター栽培では得られない部分です。
一方で制約もあります。いちばん大きいのが夏の水温。ベランダはコンクリートの照り返しで想像以上に高温になり、水温が30℃を超えると魚が危険域に入ります。すだれや遮光ネットは必須の装備と考えてください。
もうひとつ見落とされがちなのが重量です。水は1リットルで1kg。60cm水槽なら満水で60kgを超えます。設置場所の耐荷重は事前に確認してください。
必要なもの
そろえるものは、それほど多くありません。
必要なものは多くありません。ポンプと培地さえ用意できれば、あとは水槽と植木鉢の延長で組み立てられます。
初めてなら、必要なものが一式そろったキットから始めるのが確実です。ポンプの能力と栽培ベッドのサイズが釣り合っているか、高低差は足りているか——こうした設計の部分を自分で判断せずに済みます。仕組みを理解してから、自作へ広げていくのが遠回りに見えて近道です。
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自作する場合でも、必要なのは容器・培地・ポンプ・チューブの4点です。培地はハイドロボールの中粒が定番で、通水性と保水性のバランスがよく、多孔質なのでバクテリアの住処にもなります。選び方はハイドロボールの選び方で詳しく解説しています。
設置の手順
組み立てそのものは1日で終わります。ただしすぐに魚を入れてはいけません。
いちばん省略されやすいのが「2〜4週間待つ」工程です。ここを飛ばすと、入れた魚が数日で落ちます。
もっとも重要なのが4番目の「2〜4週間待つ」工程です。水を張っただけの状態では、魚の排泄物を分解するバクテリアがいません。この状態で魚を入れると、アンモニアが分解されずに蓄積し、数日で水質が破綻します。
アクアポニックスで最も多い失敗が、この立ち上げ期間を飛ばすことです。組み上がった達成感で魚を入れたくなりますが、ここは我慢のしどころです。詳しい水質の考え方はアクアポニックスで失敗する原因は水質管理にまとめています。
キットなら、ポンプの能力と栽培ベッドの釣り合いを自分で判断せずに済みます。
照明は要るのか
ベランダなら要りません。日が当たるからです。うちでも照明は使っていません。屋外のハウスで、日光が届くからです。
要るのは、屋内に置いて日が入らないときだけです。その場合は植物用の育成ライトを足すことになりますが、そのぶん電気代が乗ります。ポンプは止められないので、照明を足すと動かし続けるものが2つになる、ということです。
先に考えたいのは、置き場所のほうです。半日でも直射日光が当たる場所があるなら、照明を買う前にそちらへ動かせないかを見てください。日光はただですし、いちばん強い光です。
ベランダ向きの魚と野菜
家庭規模なら、選択肢はある程度絞られます。
最初はメダカ+葉物野菜が鉄板です。加温が不要で、どちらも失敗しにくく、収穫までが早いので手応えを得やすくなります。
魚はメダカが最適解です。日本の気候に適応しているので加温が不要で、冬もそのまま越せます。フンの量は少なめですが、家庭規模の栽培ベッドを賄うには十分です。金魚も丈夫で、よく食べるぶんフンも多く、養分としては優秀。ただし水を汚す量も多いので、ろ過に余裕が必要です。
熱帯魚を選ぶと通年の加温が必要になり、電気代がかさみます。ベランダで手軽にやるなら、加温しなくてよい魚を選ぶのが現実的です。
野菜は葉物から始めてください。レタスや小松菜は発芽から3週間ほどで収穫でき、失敗しても短期間でやり直せます。バジルやミントなどのハーブも丈夫で、少しずつ長く収穫できるので家庭向きです。
トマトやナスといった果菜は、養分の要求量が多く難易度が上がります。葉物で1シーズン回してから挑戦するほうが成功率は高くなります。
季節ごとの注意点
ベランダは屋内より環境の振れ幅が大きくなります。季節ごとに見るポイントが変わります。
夏がいちばんの山場です。水温が30℃を超えると魚が危険域に入り、同時に水中の酸素も減ります。すだれや遮光ネットで日差しを遮り、水量を多めに保って温度変化をゆるやかにしてください。朝のうちに足し水をして水温を下げるのも効果があります。
冬は、メダカなら加温なしで越冬できます。水温が10℃を下回ったら餌を与えず、そっとしておきます。ただしポンプは止めないでください。水が動かなくなると全体が凍りやすくなり、植物の根も傷みます。
春と秋は水温が上下しやすい時期です。とくに朝晩の寒暖差が大きい日は、魚が体調を崩しやすくなります。この時期は餌を控えめにして、様子をよく観察してください。
アクアポニックスは資本がある人のものだと思われがちですが、個人でも始められます。設備にいくら掛かったのか、どこでつまずいて、どう直したのか。鷲林寺アクアファームの実践の記録を
noteに書いています。見学に来られた方はのべ100人を超えました。
→ 個人で始めたアクアポニックスの費用と失敗をnoteで読む
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よくある質問(FAQ)
Q. ベランダでアクアポニックスはできますか?
A. できます。水槽ひとつぶんのスペースがあれば成立します。ただし満水時は60cm水槽で60kgを超えるため、設置場所の耐荷重を事前に確認してください。また夏の高水温対策として遮光が必須になります。
Q. 家庭用アクアポニックスにおすすめの魚は?
A. メダカが最適です。日本の気候に適応しているため加温が不要で、そのまま越冬できます。金魚も丈夫でフンが多く養分としては優秀ですが、水を汚す量も多いためろ過に余裕が必要です。熱帯魚は通年の加温が必要で電気代がかさみます。
Q. 最初に育てる野菜は何がよいですか?
A. レタスや小松菜などの葉物野菜です。発芽から3週間ほどで収穫でき、失敗しても短期間でやり直せます。バジルやミントなどのハーブも丈夫で家庭向きです。トマトなどの果菜は養分の要求量が多く難易度が上がります。
Q. 組み立ててすぐ魚を入れてもよいですか?
A. いけません。水を張っただけの状態では魚の排泄物を分解するバクテリアがいないため、アンモニアが蓄積して数日で水質が破綻します。ポンプを回したまま2〜4週間待ってから、少数の魚を入れてください。
Q. 夏のベランダは何に気をつければよいですか?
A. 水温です。コンクリートの照り返しで30℃を超えると魚が危険域に入り、水中の酸素も減ります。すだれや遮光ネットで日差しを遮り、水量を多めに保って温度変化をゆるやかにしてください。
Q. 冬はポンプを止めてもよいですか?
A. 止めないでください。水が動かなくなると全体が凍りやすくなり、植物の根も傷みます。メダカであれば加温なしで越冬できますが、水温が10℃を下回ったら餌は与えず、そっとしておきます。
Q. 照明は必要ですか?
ベランダなど日が当たる場所なら要りません。要るのは屋内に置いて日が入らないときだけです。ただし照明を足すと電気代が乗るので、買う前に日の当たる場所へ動かせないかを先に考えてください。
この記事を書いた人
鷲林寺アクアファーム(兵庫県西宮市)
植木屋として5年、アクアリウムは10年。2021年から、義理の祖母が守ってきた農地を休耕地にしないためにアクアポニックスを始め、一人で続けています。書いているのは、その農場で実際に起きたことと、確かめられた範囲のことだけです。
農場見学は全国から受け入れてきました(現在は休止中)。ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」、雑誌「Mer」などの取材を受けています。