去年の秋、餌をいつ止めたか思い出せますか。前に水換えをしたのは何日前でしたか。あの容器に入れたのは、何匹でしたか。
飼っているあいだは覚えている気がします。ところが半年たつと、きれいに消えます。そして困るのは、たいてい何かがおかしくなってからです。「いつからだろう」と遡ろうとして、何も残っていないことに気づく。
この記事では、記録に何を書けばいいのかだけを扱います。どの道具で書くかは別の記事にまとめたので、決まっていない人はそちらを先に読んでください。
- 書くのは4つだけです。世話・変えたこと・数の増減・測った値。これ以上増やすと続きません。
- 毎日きれいに書こうとすると、必ず途切れます。1回15秒で終わる形にしてください。
- いちばん効くのは「変えたこと」です。あとで原因をたどる手がかりが、ここにしかありません。
- 数値は1回の値ではなく傾きで見ます。だから同じ時刻に測るほうが大事です。
- 感想は書かなくていい。未来の自分が必要とするのは、事実と日付だけです。

メダカの飼育記録に書く4つ
項目を増やすほど続かなくなります。うちが残しているのは、この4つだけです。
1つめ、世話をしたこと。水換え、足し水、餌をやった・やらなかった。掃除。日付だけで足ります。文章にしなくていい。
2つめ、変えたこと。容器を替えた。置き場所を動かした。餌の種類を変えた。何かを入れた。これがいちばん効きます。不調が出たとき、原因はたいてい直前に変えた何かだからです。
3つめ、数が動いたこと。買ってきた、産まれた、死んだ。何匹か。数の推移は、言葉よりはっきり物を言います。
4つめ、測った値。水温、pH、アンモニアや亜硝酸。測ったときだけでいい。毎日でなくて構いません。
逆に書かなくていいのは、感想です。「今日も元気だった」は、半年後の自分の役に立ちません。必要なのは、事実と日付です。
なぜ「変えたこと」がいちばん大事なのか
4つのうち1つだけ残すなら、これを選びます。理由は単純で、不調の原因は、たいてい直前に変えた何かだからです。
たとえばメダカが次々死ぬとき、原因は水質・水温・酸素のどれかに集まります。けれど「なぜそうなったか」は環境の履歴にしかありません。3日前に容器を日なたへ動かしていた。1週間前に餌を変えていた。そこが分かれば、戻せます。
記録が無いと、この遡りができません。だから同じ失敗を繰り返します。記録の価値は、書いている瞬間ではなく、困ったときに発生します。
逆に言えば、順調なときは記録を見返しません。それでいい。お腹が張ったまま戻らないとか、底で動かないとか、そういう朝のために置いておくものです。

いつ書くか|続く人と、途切れる人の違い
途切れる原因は、意志ではありません。書く量が多すぎることと、書く場所が遠いことです。
まず量。1回15秒で終わる形にしてください。単語でいい。「水換え1/3」「餌なし」「ヒメタニシ3」。文章にしようとすると、書くのが面倒になって、面倒になった日に途切れます。
次に場所。容器の前で書けるかどうかが、続くかどうかを決めます。家に戻ってノートを開く、パソコンを立ち上げる。この一手間が入るだけで、記憶は薄れ、記録は飛びます。
タイミングは「世話をした直後」に固定するのが楽です。餌をやりながら、水を足しながら、その場で。思い出して書くのではなく、手を動かした流れのまま残す。
書いた記録を、いつ見返すのか
記録は貯めるだけでは意味がありません。開くのは、次の3つの場面です。
ひとつめが不調が出たとき。直前の1〜2週間をさかのぼって、変えたことを探します。たいていそこに原因があります。
ふたつめが季節の変わり目。去年いつ餌を止めたか、いつ再開したか。冬越しの成否は秋で決まるので、去年の日付があると準備の号砲になります。気温は年によって前後しますが、自分の容器の履歴は毎年よく似ます。
みっつめが増やすか減らすかを決めるとき。いまの容器で何匹まで無事だったか。産卵はいつからいつまで続いたか。数の履歴が無いと、勘で決めることになります。
逆に言えば、この3場面以外では見返しません。だから凝った記録は要らない。探せる形で、事実だけが残っていれば足ります。
よくある失敗|きれいに書こうとして、やめる
記録が続かなかった人の話を聞くと、原因はだいたい同じです。
最初の1週間だけ、写真つきで丁寧に書く。3日空く。空いた分を埋めようとして、面倒になる。そのまま開かなくなる。丁寧さが、そのまま脱落の原因になっています。
抜けた日は、埋めなくていい。前の記録が3日前でも構いません。道具を変えて解決する手もありますが、その前に書く量を半分に減らすほうが効きます。
もうひとつが、几帳面な人ほど陥る「全部の項目を埋めないと気持ち悪い」です。水温を測らなかった日は空欄でいい。空欄も情報です。測らなかった、という事実が残ります。
何日ぶんためると、役に立ちはじめるのか
始めたばかりのころは、記録の効果を実感できません。当然です。比べる相手がまだ無いからです。
目安を書くと、2週間で「直前をたどる」ができるようになります。不調が出たときに1〜2週間さかのぼれれば、変えたことは大体そこに入っています。ここまでが最初の山です。
次がひと季節。3か月ためると、水温の上がり下がりと自分の世話の間隔が並んで見えます。「去年は暑くなってから慌てた」が数字で残ります。
そして1年。ここまで来ると、記録は予定表に変わります。去年いつ餌を止めて、いつ再開したか。秋の準備をいつ始めたか。同じ場所で飼っているかぎり、翌年もよく似た日付で同じことが起きます。
だから最初の2週間だけは、意識して続けてみてください。そこを越えると、記録は「つけるもの」から「引くもの」に変わります。
写真は、撮るなら1枚だけ
記録に写真を添えるかどうか。結論は「撮るなら1枚、上から」です。
文字では残せないものが写ります。体の輪郭、水の色、葉の茂り方。とくにお腹の張りや痩せ(上から見ると頭だけ大きく見える)は、上から撮った1枚が言葉よりずっと正確です。
ただし枚数を増やすと、そこで途切れます。毎回10枚撮って整理する形にすると、整理が面倒になった日にやめます。1回1枚。同じ角度で。これだけ守れば、並べたときに変化が見えます。
撮る角度は上からが基本です。横からだと水面の反射と背景が入り、比べにくい。真上から、容器のいつも同じ位置を撮るのがいちばん再現できます。
紙とアプリ、どちらがいいか
結論から言うと、どちらでも構いません。ただし向き不向きがあります。
紙のノートは、書く自由度が高い。スケッチも貼り込みもできます。弱いのは、あとから探すときです。「あの容器の水換えはいつだっけ」を遡るのに、ページをめくることになります。
表計算は、探すのと集計が得意です。弱いのは、屋外の容器の前で開きにくいこと。結局あとでまとめて入力することになり、そこで途切れます。
スマートフォンのアプリは、その場で書けるのが強みです。アプリの選び方は別の記事に詳しく書きましたが、選ぶ基準は1つでいい。屋外で、片手で、15秒で書けるか。
容器が複数あるなら、分けて書く
ここが、飼育記録でいちばん差が出るところです。
1つの日記に全部を書くと、あとから読めません。「水換えした」と書いてあっても、どの容器のことか分からない。容器が3つ4つと増えたら、記録はほぼ役に立たなくなります。
不調は、容器ごとに起きます。同じ日に同じ世話をしていても、日当たりも水量も違えば結果が違う。だから記録も容器ごとに分かれていないと、比較ができません。
紙なら1容器1ページ、アプリなら容器ごとの記録に対応しているものを選ぶ。この一点だけは、最初に決めておくと後が楽です。
数値は「傾き」で見る
測った値の使い方にも、こつがあります。1回の数字には、あまり意味がありません。
pHが6.5だったとして、それが下がってきた途中の6.5なのか、戻ってきた6.5なのかで、やることは正反対です。pHは下がるのが正常な動きなので、大事なのは「どちらへ動いているか」のほうです。
だから測るときは、同じ時刻にしてください。pHは日中の光合成でも動きます。朝と夕方では違う数字が出るので、時刻がばらばらだと傾きが読めません。
頻度は週に1〜2回で足ります。ただし立ち上げ中、魚を足した直後、水温が大きく動く時期。この3つだけは間隔を詰めてください。

記録が効いた場面|危ない日は、あとから分かる
うちが記録の道具を自分で作ったのは、この経験からでした。
朝に容器を見て、何か変だと感じる。けれど「何が」が分からない。あとから天気を調べて、前の晩がその年いちばんの冷え込みだったと知る。危ない日は、たいてい過ぎてから分かります。
これを繰り返すうちに、必要なのは飼い方の知識ではなく「いつ何があったか」の履歴だと気づきました。水温が何度だったか。前の日に何をしたか。それが並んでいれば、次は先回りできます。
だからメダカ台帳は、飼い方を教えるアプリにしていません。容器ごとに、記録を1タップで残すだけの道具です。あわせて、住んでいる市町村が冷え込む前の晩と、猛暑になる朝、それに気象警報が出たときだけ通知します。毎日は鳴りません。
記録は、書いている本人のためというより、半年後に困っている自分のためのものです。今日の15秒が、そのときの手がかりになります。
→ 無料でできることと、有料との違いを見る
どんなアプリか見てみる(登録はメールアドレスだけ・30秒。記録と通知はずっと無料です)
まとめ
書くのは4つ。世話・変えたこと・数の増減・測った値。感想は要りません。
続けるこつは2つだけです。1回15秒で終わる量にすること、容器の前で書けるようにすること。この2つが崩れた日に、記録は途切れます。
そして記録の価値は、書いている瞬間には出ません。半年後、何かがおかしくなった朝に、はじめて効きます。
よくある質問(FAQ)
Q. メダカの飼育記録には何を書けばいいですか。
A. 4つで足ります。世話をしたこと、変えたこと、数が動いたこと、測った値です。感想は書かなくて構いません。半年後の自分が必要とするのは、事実と日付だけです。
Q. 毎日書かないとだめですか。
A. 毎日でなくて構いません。大事なのは頻度より、変えたことを漏らさないことです。容器を替えた、置き場所を動かした、餌を変えた。不調の原因は、たいてい直前に変えた何かです。
Q. 記録が続きません。どうすればいいですか。
A. 書く量が多すぎるか、書く場所が遠いかのどちらかです。1回15秒で終わる単語だけにして、容器の前でその場で書ける形にしてください。家に戻ってから書く形だと途切れます。
Q. 紙とアプリ、どちらがいいですか。
A. どちらでも構いません。紙は自由度が高く、あとから探すのが苦手。アプリはその場で書けて探しやすい。選ぶ基準は「屋外で、片手で、15秒で書けるか」の1つです。
Q. 容器が複数あるとき、記録はどう分けますか。
A. 容器ごとに分けてください。1つの日記にまとめると、どの容器の話か分からなくなります。不調は容器ごとに起きるので、分かれていないと比較ができません。

