容器の壁に、透明なゼリーのかたまりが付いていた。
メダカの卵かと思ったけれど、数が多すぎる。そう思って探すと、赤い渦巻きの貝が増えている。レッドラムズホーンです。これを入れたままで、メダカの卵は大丈夫なのか。食べるという人と、食べないという人がいて、どちらも本当のように聞こえます。
この記事では、貝が食べるものを、卵の状態で分けて書きます。そのうえで、守りたい卵をどう分けるか、貝を外す線をどこに引くかまで書きます。
- 死んだ卵・カビた卵は、食べる。生きた卵は、食べないと言い切れない。
- 貝のいる容器で卵が減って見えるのは、白い卵の掃除のこともある。見た目では区別がつかない。
- ヒメタニシとは別物。ラムズホーンはゼリー状の卵を壁や水草に産み、雌雄同体で1匹から増える。
- 確実に守るなら、産卵床ごと貝のいない容器へ。親メダカからも守れる。
- 貝を外す線は、卵のためではなく増えすぎたかどうか。餌を減らして手で取る。
ラムズホーンは、メダカの卵を食べるのか|死んだ卵は食べる、生きた卵は分からない
私のところではラムズホーンを飼っていないので、実験の結果と貝の仕組みから書きます。答えを先に書きます。死んだ卵やカビた卵は、食べます。生きている卵は、食べないと言い切れません。
実験があります。ラムズホーンの仲間の貝に、ワカサギの仲間の卵を、死んだものと生きたものに分けて与えた研究です(水産養殖の学術誌の論文)。4日間の観察で、死んだ卵は最初の48時間でほとんど食べられました。生きた卵は、そのあとゆっくり、少しずつ食べられました。貝は、傷んだ卵を先に選んでいたのです。
ここで、注意が2つあります。ひとつは、この実験の貝も卵もメダカではないことです。仲間の貝と別の魚の卵なので、メダカにそのまま当てはまるとは言えません。もうひとつは、生きた卵も食べられた、と読めることです。「生きた卵は絶対に食べない」とは、この実験からは言えません。
ネット上には「孵化の直前に殻が柔らかくなると食べる」「大きな貝ほど食べる」という書き込みもあります。ただ、確かめた資料は見つからなかったので、ここでは事実として扱いません。
では、貝を入れたまま卵が減ったとき、何が起きているのか。次の章で、卵の状態から見ていきます。

卵が減ったように見えるのは、なぜか|掃除と、食べられたの区別
メダカの卵は、受精していなければ数日で白く濁ります。白い卵は育たず、そのままにすると水カビが生えて、隣の卵にも広がります。ラムズホーンは、この白い卵やカビた卵を先に食べます。
だから、貝のいる容器の卵が減って見えるとき、その中身は2通りです。もともと育たなかった卵が掃除された。あるいは、育つはずの卵まで食べられた。見た目では区別がつきません。
区別するには、卵を取り出して数える方法があります。産卵床から卵を外して、別の容器で数日置く。白くなった卵を数え、孵った数と合わせます。貝のいる容器の孵化数が極端に少ないなら、貝を疑う理由になります。減り方の疑いの順番は、ヒメタニシの記事(ヒメタニシはメダカの卵を食べない)に書きました。親メダカが食べる、餌が切れる、水の急変、屋外ならヤゴ。貝を疑うのは、そのあとです。
ここでひとつ、ヒメタニシとの違いを押さえておきます。ヒメタニシの口は、面をこすって削り取る形で、丸い卵の殻には歯が立ちません。これは記事にまとめたとおりです。ラムズホーンの貝は、別の仲間です。同じ口の作りだと考えて、ヒメタニシの結論を当てはめてはいけません。
ラムズホーンとヒメタニシは、何が違うのか|卵の産み方で分ける
いちばんの違いは、卵の産み方です。ラムズホーンは、透明なゼリー状の卵のかたまりを、壁や水草に産みつけます。ヒメタニシは、卵を産みつけません。お腹の中で稚貝を育ててから産みます。
ラムズホーンの仲間は、雌雄同体です。1匹いれば、卵を産めます。水草にくっついて1匹入り込んだだけで、気づいたら容器じゅうが渦巻きだらけ、という増え方をするのはこのためです。ヒメタニシの記事で説明したスネールの増え方と、同じ仕組みです。ヒメタニシが増えすぎる原因と見分け方は、ヒメタニシが増えすぎる原因と対策に書きました。
ゼリーのかたまりは、メダカの卵と見間違えやすいものです。メダカの卵は、直径1mmほどの透明な球で、糸で産卵床に絡みます。ゼリーのかたまりは、寒天のような透明なかたまりの中に小さな粒が並ぶ形で、壁にぺたっと広がります。粒が並んだゼリーなら貝、1粒ずつ糸で絡んでいるならメダカです。
赤い色や渦巻きの形は魅力ですが、飼う理由はそこだけでは決まりません。掃除してくれる貝がほしいのか、見た目がほしいのか。どちらでもなく、増えて困っているだけなら、増えすぎの線を見るほうが先です。
メダカの卵は、どう守るのか|産卵床ごと別の容器へ

卵を確実に守りたいなら、産卵床ごと、貝のいない容器へ移します。貝を疑うかどうかに関係なく、これがいちばん確かな手です。
理由は、貝だけではないからです。親メダカも、卵や針子を食べます。メダカに子を守る習性はありません。貝がいても、いなくても、卵は別の容器のほうが孵りやすくなります。
やり方は、産卵床を水ごと小さな容器にすくって移すだけです。水は、親の容器の水を使えば水温の差が出ません。移すとき、産卵床のゼリーのかたまりも一緒に運んでしまわないよう、壁や床の貝と卵をよく見ます。ゼリーのかたまりが一緒なら、そこから貝が増えます。
産卵床を回収する時期や、孵ってからの別容器の考え方は、稚魚の記事(メダカの稚魚はいつまで別容器)に書きました。
貝を外す線は、どこに引くのか|卵のためだけに外さなくていい
卵が心配で貝を外したくなるかもしれません。結論として、卵のためだけに外す必要は、ありません。卵を別容器に移していれば、貝の疑いは外から消えます。
外すかどうかの線は、増えすぎたかどうかです。壁一面に卵のかたまりがある、水面が見えないほど貝が動いている、底に貝の死骸が目立つ。この状態なら、卵のためではなく、水の傷みを止めるために、数を減らします。
減らす手は、餌を減らして、手で取ることです。貝が増えるのは、食べるものが余っているからです。餌の食べ残しを減らさずに貝だけ取っても、すぐ戻ります。薬で減らす方法は、メダカやエビに影響が出るので、使いません。増えすぎたときの手順は、先ほどのヒメタニシが増えすぎる原因と対策に、貝全般として書いています。
掃除役として貝がほしい場合は、増え方が穏やかなヒメタニシのほうが、容器の管理は楽です。掃除生体の選び方も、同じ記事にまとめています。
ヒメタニシなら、卵を産みつけて増えることがなく、容器の管理が楽です。
ラムズホーンは、どこから入ってくるのか|水草と、予防の順番
入れた覚えがないのに増えた。その入り口は、たいてい水草です。水草の葉の裏や根元に、ゼリー状の卵が付いたまま売られていることがあります。貝の姿が見えなくても、卵は透明で小さく、買った時点では気づけません。数日たって孵り、壁をはい回る小さな渦巻きになって、初めて見つかります。
予防の順番は、3つです。1つ目は、水草を容器に入れる前に、葉の裏と根元を目で見ること。ゼリーのかたまりがあれば、指でこすって落とします。2つ目は、別のバケツに数日置いてから入れること。そこで貝が出てきたら、メダカの容器は守れます。3つ目は、入れてしまったら早い段階で手で取ることです。1匹のうちなら、取れば終わります。10匹を超えると、取っても卵が残り、また増えます。
見た目は赤くて丸く、小さな金魚の飾りのようにも見えます。それで、そのまま飼いたくなる人もいるでしょう。飼うなら、増える前提で、最初に上限を決めておきます。たとえば容器の壁に、卵のかたまりが3つ見えたら取る、というように。上限のない貝は、メダカよりずっと早く増えるからです。
針子や稚魚のいる容器では、どう考えるのか
針子は、卵よりさらに小さく、餌も水の汚れも敏感に受けます。ここに貝がいると、貝の食べ残しや死骸が水を傷め、針子が弱りやすくなります。貝が針子を食べるかどうかより、貝が増えて水を汚すほうを先に見ます。
針子の容器は、最初から貝を入れない前提で作ります。水草を入れるなら、別のバケツで貝の卵を確かめてからにします。産卵床を移したあと、容器の壁に貝の卵のかたまりが付いていたら、その場で取り除きます。小さな容器ほど、貝の数の影響が大きく出るからです。
貝と針子を同じ容器に入れた結果を、数字で書いた記録は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。ここは、確かめられていない部分です。確かめられないものは、入れないのが安全側の選び方になります。
ラムズホーンを飼うなら、どんな容器が向いているのか
先に、飼うかどうかの目安を書いておきます。ラムズホーンは、卵や針子を育てる容器には向きません。卵を産ませたい容器には入れない。成魚だけで、掃除役がほしい容器なら、数を決めて入れる。この2択で迷いは、ほぼ片づきます。
貝を飼いたい人もいます。そのときは、メダカの産卵や針子の育成をしない容器を選びます。成魚だけの容器で、餌を少なめにして、貝が増える元の食べ残しを出さない。この組み合わせなら、貝は増えすぎず、水の掃除も助けてくれます。
貝の飼育で見るのは、数と水の状態です。数が増えて壁を覆うようなら、餌を減らします。水が白く濁ったり、においが出たりしたら、貝の死骸が水を傷めているサインなので、すぐ取り除きます。貝は死ぬと、早く傷んで水を悪くします。底に動かない貝がいたら、早めに網ですくいます。
産卵や針子の育成をする容器と、貝のいる容器を、分ける。ひとことで言えば、これだけです。分けておけば、貝が卵を食べるかどうかを心配する必要がなくなります。
うまくいかないときは、何を疑うのか
貝を疑う前に、卵が減った時期と水温、餌の量を、一度書き出してみてください。原因が貝ではなかったと分かることが、案外多いからです。
貝を外したのに卵が減る。そのときは、順番に疑います。
まず、親メダカが食べていないか。次に、卵が受精しているか(白く濁った卵が多くないか)。最後に、水温が低すぎないか。この3つで、ほとんどの理由が説明できます。
ひとつ、正直に書いておきます。ゼリーのかたまりをメダカの卵と見間違えた人の話や、貝を針子の容器に入れて何が起きたかを書いた投稿は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。生きた卵を貝がどれだけ食べるかも、メダカでの実験は見つけられていません。ここに書いた内容は、仲間の貝を使った実験と、貝の仕組みから考えたものです。
まとめ
ラムズホーンは、死んだ卵やカビた卵を食べます。生きた卵は、食べないと言い切れません。貝のいる容器で卵が減って見えるのは、白い卵の掃除のこともあります。
確実に守りたいなら、産卵床ごと、貝のいない容器へ移します。親メダカからも守れます。貝は、卵のためだけには外さず、増えすぎて水が傷むときに、餌を減らして手で取ります。
よくある質問(FAQ)
Q. ラムズホーンはメダカの卵を食べますか。
A. 死んだ卵やカビた卵は食べます。生きた卵は、食べないと言い切れません。仲間の貝と別の魚の卵での実験では、生きた卵もゆっくり食べられました。確実に守りたいなら、産卵床ごと別の容器へ移します。
Q. ラムズホーンとヒメタニシは、同じように卵を食べませんか。
A. 同じとは言えません。ヒメタニシは、削る口で丸い卵の殻に歯が立たないので、卵を食べないと説明しています。ラムズホーンは別の仲間で、傷んだ卵を食べる実験があります。ヒメタニシの結論を当てはめません。
Q. 壁のゼリーのかたまりは、メダカの卵ですか。
A. 粒が寒天の中に並んで壁に広がっているなら、貝の卵です。メダカの卵は、直径1mmほどの透明な球で、糸で産卵床に絡みます。
Q. ラムズホーンは、なぜ急に増えるのですか。
A. 雌雄同体で、1匹いれば卵を産めるからです。水草に付いて1匹入り込んだだけで、容器じゅうに増えることがあります。増えるのは、餌が余っているときです。
Q. 卵を守るために、貝を外したほうがいいですか。
A. 卵のためだけに外す必要はありません。産卵床ごと貝のいない容器へ移せば守れます。外すのは、増えすぎて水が傷むときです。
Q. 増えすぎたラムズホーンは、どうやって減らしますか。
A. 餌を減らし、手で取ります。食べ残しが貝を増やしているので、貝だけ取ってもすぐ戻ります。薬で減らす方法は、メダカやエビに影響が出るので使いません。
Q. 針子の容器にラムズホーンを入れてもいいですか。
A. 勧めません。針子の容器は、水が汚れにくく卵や針子が安全なことが先です。貝を入れた結果を調べた投稿は見つかりませんでした。
Q. 貝のいる容器で、卵が減ったように見えるのはなぜですか。
A. 育たなかった白い卵を、貝が先に掃除している場合があります。見た目では、掃除と食べられたの区別はつきません。卵を取り出して孵化数を数えると分かります。
Q. 掃除役の貝は、何を選べばいいですか。
A. 増え方が穏やかなヒメタニシが、容器の管理は楽です。ヒメタニシは卵胎生で、爆発的には増えません。
次に見るのは、ここ
掃除役の貝を選ぶならヒメタニシはメダカの卵を食べないへ。貝が増えすぎたらヒメタニシが増えすぎる原因と対策へ。孵った針子を育てるならメダカの稚魚はいつまで別容器へ。

