「自宅であのキャビアが採れたら…」——そんな夢のある魚がチョウザメです。恐竜時代から姿を変えずに生き抜いてきた古代魚で、メスの卵が高級食材のキャビアになります。
アクアポニックスで飼えば、魚のフンで野菜も育てられて一石二鳥です。
ただしチョウザメ飼育で最も大切なのは「低水温を保つこと」。チョウザメは冷たい水を好む魚で、日本の夏の高水温がいちばんの大敵です。
キャビアを採るには長い年月もかかるため、じっくり付き合う覚悟で始めましょう。


- いちばん大事なのは低い水温を保つこと。日本の夏が、この魚の最大の敵です。
- 適温は20℃前後。25℃を超えると不調が出て、28℃を超えるなら冷却が要ります。
- 餌は沈むタイプ。水底で食べる魚なので、浮く餌はうまく食べられません。
- キャビアまでは長い年月がかかります(種類によっては10年近く)。じっくり付き合う魚です。
- 水槽は思っているより大きく要ります。成魚のサイズと冷却設備まで見越してから始めてください。
チョウザメってどんな魚?
チョウザメは「サメ」と名がついていますが、サメ(軟骨魚)の仲間ではなく、硬骨魚のチョウザメ目に属する古代魚です。
恐竜が生きていた時代からほとんど姿を変えていない「生きた化石」で、体の側面には硬いウロコ(硬鱗)が並び、口元には餌を探すためのひげがあります。


大きな特徴は、とても大きく育ち、長生きすること。小さい種類で1m、大きい種類は数mにまで成長し、寿命は数十年に及びます。
そして何より、メスの卵がキャビアになるのが最大の魅力。ただし卵を採れるほど成熟するには長い年月が必要で、そこがチョウザメ飼育の奥深さでもあります。
チョウザメの適水温|夏の高温がいちばんの敵

チョウザメ飼育でもっとも重要なのが水温管理です。チョウザメは冷たい水を好む低水温性の魚で、暑さにとても弱いのが特徴です。

適温は20℃前後です。飼育で保つ範囲は4〜27℃くらいで、そのなかでも調子を保てるのは25℃までです。25℃を超えると不調をきたし、28℃を超えるようなら水槽用クーラーでの冷却が必須。それより高い水が続くと弱っていき、35℃近い高水温は命に関わります。つまり日本での飼育では、冬の寒さより夏の高温対策が課題になります。
「熱帯魚だからヒーター」という感覚とは逆で、むしろ夏に冷やすのがチョウザメ飼育の基本です。なお、急な水温変化にも弱いので、温度を調整するときは1日1℃を目安にゆっくり行います。
チョウザメ飼育の4つのポイント
大きく育つチョウザメを健康に飼うには、環境づくりが何より大切です。

まず、成長を見越してできるだけ大きな水槽を用意します。チョウザメは酸素をたくさん必要とし、よく食べてよく汚す魚なので、強力なフィルターとしっかりしたエアレーションが欠かせません。
そして前述のとおり、夏は28℃を超えないよう冷却し、水温は急変させずゆっくり保つ——この4点が飼育成功のカギです。設備の負担は大きいので、アクアポニックスキットなどを活用して無理なく始めるのがおすすめです。
チョウザメの餌
チョウザメは水底で暮らす肉食性の魚です。口が下向きについていて、底に沈んだ餌を吸い込むように食べます。そのため餌は水に沈むタイプ(沈下性)のチョウザメ専用フードが基本。
水面に浮くタイプの餌はうまく食べられないので避けます。よく食べる魚ですが、与えすぎは水質悪化のもとになるため、食べ切れる量を見ながら与えましょう。
キャビアと繁殖

チョウザメ飼育の最終目標ともいえるのがキャビアです。キャビアはメスが持つ卵(未受精卵)を加工したもの。ただし、卵を採れるほど成熟するまでには長い年月がかかり、種類によっては10年近くを要します。
さらにオスとメスの見分けが外見では難しく、繁殖のコントロールも簡単ではありません。家庭でキャビア採取まで到達するのは相当な根気が要る挑戦ですが、それだけにロマンのある魚だといえます。
キャビアが採れるまで、何年かかるのか
ここは、はっきりした数字が出ています。宮崎大学農学部によれば、チョウザメが卵を抱くまでに孵化後5〜10年程度かかります。成熟が速いシベリアチョウザメでも5年、ロシアチョウザメなら6年以上です。稚魚を買った日から、早くて5年だと思ってください。
しかも、その5年はまっすぐ進みません。外から見てもオスかメスか分からないので、何年か育てて腹を確かめ、印を付けるか池を分ける。そこからさらに数年かけて、ようやく採れる大きさになります。なお宮崎県は飼育尾数が日本一のチョウザメ産地で、国産キャビアの主な産地でもあります。
途中で夏の水温を一度大きく外せば、そこまでの年数が消えます。「自宅でキャビア」は不可能ではありませんが、10年ものの計画を立てる話だと思ってください。
水槽は、思っているより大きい
大きさは、魚のほうから決まります。チョウザメのなかでいちばん小さいコチョウザメでも、1mまで育ちます。中型から大型になる種類は2mを超え、最大級のベルーガは数mです。
体長1mの魚が向きを変えられる入れ物を思い浮かべてください。奥行きと高さが1m、長さが3mなら、水は3トンです。家の床の上には置けません。屋外に池を作るか、それに近い容器を据えることになります。アクアポニックスとして組むなら、この水量を回せるポンプとろ過も要ります。
だから、買う前に決めるのは魚の種類ではなく置き場所です。どこに、何トンの水を、何年置けるのか。そこが決まってから稚魚を探してください。
どこで買うのか
まず、近所の店には売っていません。熱帯魚店でもまず置いていないので、通販で探すことになります。届くのは体長15〜20cmほどの稚魚です。
手に入りやすいのはシベリアチョウザメと、ベステルです。ベステルは大型のベルーガと小型のコチョウザメを掛け合わせたもので、親より扱いやすい大きさに落ち着きます。最大級のベルーガは数mになるので、家庭で選ぶ魚ではありません。
餌も一緒に用意しておきます。チョウザメは口が下を向いていて、底に沈んだものを吸い込むように食べるので、浮く餌はうまく食べられません。沈む種類のものを選んでください。
アクアポニックスとの相性
チョウザメも、フンを養分に野菜を育てるアクアポニックスに取り入れることができます。
よく食べて多くのフンを出すため、植物にとっては豊富な養分源になります。リーフレタスやハーブ、トマトなどと組み合わせると、水の浄化と収穫を同時に楽しめます。
ただし、チョウザメは低水温と高い水質・酸素を求めるぶん、丈夫なティラピアやメダカに比べると管理の難易度は高めです。
アクアポニックス自体に慣れてから挑戦するのが安心でしょう。仕組みや始め方はメダカで野菜を育てるアクアポニックスで基礎から解説しています。
よくある問題と対策
チョウザメ飼育でつまずきやすいのが水質の悪化と病気です。よく汚す魚なので、ろ過が追いつかないとすぐに水が悪くなります。定期的な水質チェックと部分的な水換えを欠かさず、餌の量も水の汚れ具合に合わせて調整します。
体調を崩した個体は早めに隔離し、水温・水質を安定させて回復を待ちます。とくに夏の高水温は酸欠と病気を一気に招くので、冷却とエアレーションで先手を打つことが大切です。
→ 個人で始めたアクアポニックスの費用と失敗をnoteで読む
次に見るのは、ここ
メダカで育てていて野菜が伸びないならメダカで野菜が育たないへ。水質の数字の見方を知りたいなら水質管理の基本へ。夏に魚が水面で口を動かすなら夏の酸欠対策へ。
よくある質問(FAQ)
Q. チョウザメの適切な水温は何度ですか?
A. 適温は20℃前後で、飼育で保つ範囲は4〜27℃くらいです。そのなかでも調子を保てるのは25℃までで、25℃を超えると不調をきたします。28℃を超えるなら水槽用クーラーでの冷却が必要です。チョウザメは低水温を好む魚なので、日本では夏の高温対策がいちばんの課題になります。
Q. チョウザメは家庭でも飼えますか?
A. 飼えますが、大きく育つため大きな水槽が必要で、強いろ過・酸素供給・夏の冷却も欠かせません。設備の負担は大きめなので、飼う前に成魚のサイズと冷却設備まで見越して準備しておくことが大切です。
Q. 自宅でキャビアは採れますか?
A. 理論的には可能ですが、卵を採れるほど成熟するまでに長い年月(種類によっては10年近く)がかかり、雌雄の判別や繁殖のコントロールも難しいため、家庭で採取まで到達するのは大きな挑戦です。
Q. チョウザメの餌は何を与えますか?
A. チョウザメは水底で餌を食べる肉食魚なので、水に沈むタイプ(沈下性)のチョウザメ専用フードが基本です。浮くタイプの餌はうまく食べられないため避けます。
Q. チョウザメはアクアポニックスに向いていますか?
A. フンが植物の養分になるので相性は良いのですが、低水温と高い水質・酸素を求めるため、ティラピアやメダカより管理の難易度は高めです。アクアポニックスに慣れてから挑戦するのがおすすめです。

